緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第174弾 明かされた真実

なぜだ?おいつけない

年は7〜8ぐらいの女の子相手に俺達は追いつけずにいた。

うぬぼれではなく7〜8歳ぐらいの子のレベルなら世界一の速さでも追いつけるだけの自信はある。

それだけ、俺は鍛えてる。

だが・・・

「・・・」

パンと音を立てて女の子がふすまを閉める。

俺がそれをあけると畳10畳分ぐらい先で再び女の子がふすまを閉める。

その繰り返しだ。

おかしいぞ

ワイヤーを使うか悩むがだめだと結論する。

女の子にそんなもの使うなど論外だ。

「ん?」

ふと、走りながら背後を振り返る

「みんな?」

後ろには誰もいなかった。

アリアもレキも、マリも、理子もいなかった。

カシュと木がすれる音に目を向けると女の子が再びパンと扉を閉めた。

罠か?

びりびりと、本能がここは引き返せと告げている。

「・・・」

どうするか・・・女の子が消えたふすまを見る。

こんな時、姉さんなら迷わず入るだろう。

血筋ってやつじかな・・・虎穴入らずば虎子を得ず。

俺はふすまを開けて中に飛び込んだ瞬間、後悔した。

「なっ。なんだここ!」

その部屋は異常だった。

壁、天井にびっしりと赤いしみのついたお札が満遍なく張られている。

部屋の中心には日本人形が並んでいる。

この部屋で行き止まりか?

パンパンという音を聞き、振り返るとこれまで、通ってきたふすまが閉じていっている。

明らかに異常、ここにいたらまずいと悟るがもはや、逃げるのは手遅れだろう。

ていうか幽霊!幽霊なのか!

「アハハハハハ」

部屋の四方八方から赤ちゃんの笑い声まで聞こえてきた。

「っ!」

こんな怪奇現象慣れてねえよ!ステルスとはまた、違う異能の力

紫電を掴むが気休めにもならんぞ!

ガタガタという音に目を向けると隣の部屋に続く、ふすまが少し開いている。

中からはミイラのような手がのぞいており、長い髪の白装束の女がこちらを血走った目で見ている。

「ひっ!」

情けないが冗談抜きでびびった。

慌てて、ガバメントを取り出す

「く、くるな!」

フルオート射撃で撃ちつくすが、女がずるずると床を這ってよってくる。

逃げようとふすまにかじりつくが開かない。

「じ、冗談じゃないぞ!」

退路は絶たれた。

銃弾が効かない化け物

「死死死死死死死死」

女が不気味な声を上げながらザザザと這ってくる。

もうだめだおしまいだ!

覚悟を決めた瞬間、俺の背後のふすまが開いた。

「優希!」

信冬だった。

彼女は手に御札を持っており、それを悪霊に投げつけるとピタリと悪霊の頭に張り付く

「破!」

人差し指を天空に向けて信冬は悪霊を見ながら言った。

「きいいいいいいああああああ!」

悪霊は恐ろしい断末魔の叫びを上げると黒い霧になって消滅する。

た、助かったのか?

「危ないところでしたね優希」

と信冬はにこりと微笑んだ。

髪が金髪になっているのは風林火山の能力を使っているのか?

「お館様!」

信冬の後ろから雪村がかけてくる。

「雪村、どうですか?」

微笑を信冬はやめると雪村に凛とした目で問いかける。

「はっ! 予想通りです。 今はジャンが調査してますお館様の予想通りかと」

「ふむ」

信冬はうなずくと先ほど悪霊が這い出てきた部屋の方を見ると

「だそうですよ」

え?

俺も釣られてそちらを見ると先ほどの女の子がゆっくりと部屋から出てくる所だった。

「もう大丈夫ですよ」

と信冬は慈悲深い母親のように女の子の頭を自愛に満ちた微笑を浮かべてなでてあげる。

「待ってた・・・」

と、女の子は言う。

だめだ、状況がさっぱり分からん

「信冬、これは一体どういうことなんだ?」

信冬は立ち上がると

「あれは、優希と東京で別れた後の話なんですけど依頼が入ったのです」

「依頼?」

「はい、自分は鬼に捕まってる助けて欲しいとこの子からメールが入ったのです」

「・・・」

女の子は黙って信冬の服を掴んでいる。

よく見ると透けてないかこの子?

「まさか・・・」

「はい、この子は幽霊です。 太平洋戦争が始まるさらに前に生まれ、この地に縛られているかわいそうな子」

なるほど、幽霊って実在するんだな・・・

ちょっと、混乱してきた

「お館様の武田家は霊能力者の家系でもある。今までもこういった依頼を受けてきたんだ」

自慢するように雪村が言うのでなんか悔しい・・・

でも、そうか・・・武田家は裏の世界でそんなことを・・・

戦国から長い時を得てそういった変革があったと考えてもおかしくはないか

「それにしても、なぜすぐに姿を見せてくれなかったの? あんないたずらまでして」

「ごめんなさい・・・本当に助けてくれるか分からなかったし、生贄にする前にせめて最後くらいは楽しくしてもらいたかったの」

「いや、ぶっ飛ばされてみんなぼろぼろなんですが」

と、雪村が言う。

「雪村」

「はい」

信冬に制されて雪村が黙る。

詳しく聞いた話によれば、この村には鬼の穴と呼ばれるものが山の中にあり、中にいるらしい鬼がこの子を

使い生贄を求めているらしい。

そんなことをしたくなかったこの子は信冬に助けを求めたということか・・・

「じゃあ、この村に残る集団失踪事件って・・・」

「うん、鬼の生贄にされて・・・私だけは開放されて死んでこの血に縛られた」

衰弱して死んだって子もこの子か・・・

さぞつらかっただろうに・・・

「それで鬼って?」

吸血鬼がいるんだ。

鬼がいても別に驚きはしない

「鬼は人間の生き血をすすって、寿命を延ばそうとしてるの、洞窟からは封印があって出てこれないけど

恐ろしく強い」

「それは剣で切れるのか?」

こくりと女の子はうなずいた。

うん、なら決まりだな

「で?どうするんだ信冬」

「封印強化か鬼そのものの討伐、選択肢は2つありますね。でも、この子の骨が鬼の下にあるのです。

それを、媒介に鬼はこの子をあの世にいかせまいとしているのです」

「なら決まりだな」

俺は女の子に1歩近づくと

「名前なんていうんだ?」

「多恵・・・」

「多恵ちゃんか。鬼は俺が退治してやるよ」

剣で戦える相手ならやりようがある。

先ほどのような悪霊は勘弁だが・・・

それに、信冬もいるし、みんなも・・・

「そういえば、アリア達はどうしたんだ?」

「ご、ごめんなさい。 あなたの仲間はみんな眠ってもらって2日は起きないの」

申し訳なさそうにいう多恵ちゃんを見て俺は苦笑した。

まさか、幽霊と話すことがあるなんてな

しかし、秋葉達も戦闘には参加でできないのか・・・

2日待って強襲の手段もあるが・・・

「優希、子のこの監視である悪霊は滅してしまいました。 鬼が気づく前に決着をつける必要があります」

「短期決戦か・・・」

いきなり動き出した状況だが悪くねえな。

うまくいけば単位ももらえるかもしれない

「言い忘れていましたが」

「ん?」

信冬はのこりと微笑んで

「武田家が霊退治も兼任してうことは可能な限り伏せたいので皆さんには内緒ですよ」

と、鬼のようなことを言って綴に単位を認めさせる俺の希望は撃滅された。

なんてこった。

 


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