緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第172弾 カカシ少女ジャンヌ

(痛い……痛い……)

 

闇の中で、少女は着物を掴みながら壁に肩をつけた。

あの存在は少女に早くしろと急かしている。

だが、少女はせめて彼らにしてあげたいことがあったのだ。

 

(せめて……最後くらいは……)

 

少女は廊下から飛び出すと歩いているジャンヌに襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武田信冬の実家は戦国の世で敗北した後は裏の世界で長らえてきた。

信冬の先祖は過去に、異能の能力者達が戦い会う大きな戦いにも参加しているし信冬達もいつ、その戦いに巻き込まれるか分からない。

否、会戦はもはや時間の問題だろう。

 

「幸村、あなたという子は……」

 

廊下を浴衣姿で黒い髪を揺らしながら歩く信冬にしかられながら幸村は

 

「あ、あれは誤解なんですお館様!本当にのれんは男湯でした!」

 

「私が出たときは女湯でしたよ?」

 

「そ、そんなぁ」

 

泣きそうな顔で幸村が言うと信冬は微笑みながらそっと幸村の頭に手をのせて撫でた。

 

「分かってますよ幸村。あなたがそんなことする子じゃないってことは」

 

「あ……お館様……」

 

幸村はされるがままになっている。

現在の武田家は風林火山の将が信冬を支えているからこそ成り立っている。

互いの信頼が無ければとっくに武田家は機能しなくなっていただろう。

風呂での幸村への制裁は回りを考慮してのこと、まあジャンは完全に自業自得だし信冬もその意味では諦めてる。

 

「それにしても……」

 

信冬は幸村を撫でるのをやめると真剣な顔で

 

「いますねこの家は」

 

「いますか?」

 

信冬は頷く

 

「では、優希……様に伝えなくてよろしいのですかお館様」

 

「もう少し、待ちましょう。深刻な害が出たら考えますが……それとも……」

 

信冬がそこまで行った時だった。

 

「うわああああああああああああ!」

 

「「!?」」

 

武藤の甲高い悲鳴が聞こえてきたと同時に信冬達は走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな……ひどいジャンヌ」

 

俺が到着した時、理子が口に手を当てて庭を見ている。

他のみんなも絶句して庭を……

 

「おい!みんななにが……う」

 

そこにあったのは等身大の人形だった。

かかしのように両手を棒にくくられ、和風の服に着替えさせられ、花をこれでもかと飾り付けられて目を空けてピクリとも動かないのは

 

「じ、ジャンヌ」

 

ジャンヌが殺された?

いや

 

「お、おい!」

 

俺がジャンヌが生きてるか確認しようと庭に降りた瞬間

 

「ん?」

 

ジャンヌが動いた。

 

「ジャンヌ!」

 

みんなで駆け寄ると彼女はきょとんとした顔でみんなを見渡す

 

「ど、どうしたんだ?」

 

状況を理解できてないみたいだが無事だとわかると……

 

「プッ……」

 

まず、理子が吹き出し

 

「アハハ!なんだよジャンヌその格好は!」

 

「格好だと?な、なんだこれは!」

 

まるでかかしのような格好にジャンヌは顔を真っ赤にして焦っている。

 

「ハハハ……ん?」

 

みんなが笑う中、信冬と幸村だけが笑っていない。

真剣な顔で建物を見上げている

 

「……頼みましたよ幸村油断しないよに」

 

「はい、お館様」

 

幸村が走り去ったので俺は信冬に近寄ると小声で

 

「信冬、ジャンヌのこれ、お前がここにいるのと関係あるのか?」

 

信冬は口元を軽く緩ませ

 

「この程度であればよいのです」

 

「俺に手伝えることはないか?」

 

何らかの事態が起こっている。

そもそも、風呂からして何かおかしかった。

 

「ありがとう優希、助けてほしかったらお願いしますね」

 

と嬉しそうに微笑んだ。

 

ぎゅうううう

 

「痛え!」

 

尻に激痛を感じたので振り替えると秋葉が俺の尻をつねっていた

 

「秋葉お前!何するんだよ!」

 

ぱっと手を話した秋葉は

 

「手が滑りました」

 

嘘つくな!

心の中で突っ込む

 

「信冬様と楽しそうにお喋りですかゆ・う・き・さ・ま」

 

あ、あれ?秋葉ってこんな子だったか?

なんか、信冬が現れてから秋葉の様子が少しおかしい気がするが……

 

「フフフ、モテるんですね優希」

 

と、可笑しそうに信冬が笑う

 

「いや、こいつはただのともだ……いた!」

 

ぎゅうううと今度はマリが手をつねってきた

 

「何するんだマリ!」

 

「別になんでもありません。少しは可愛いアミカに構ってほしいなんて思ってないですよ。ゆ・う・せ・ん・ぱ・い」

 

なぜなんなんだ……さっぱり意味が分からないぞ。

なんで秋葉もマリも怒ってるんだ?

 

「……」

 

レキと目が合ったがさっきの風呂を思い出して慌てて視線を外した。

ちょっと気まずいぞ……

 

「ま、まあそれはともかく、む、武藤はどこだ?」

 

話題をそらすために言ったが叫びをあげたのは武藤だが、本人が見当たらない。

そして……

 

「うわああああああああああああ!」

 

「!?」

 

再び、武藤の悲鳴が旅館の中から聞こえてくるのだった。


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