8月3日、綴の研修旅行の参加者は俺、アリア、秋葉、レキ、理子、マリ、武藤、村上、ジャンヌ、幸村の計10人だった。
ちなみに、ハイマキをいれたら+1匹だ。
「せっかく女子と温泉旅行だってのに綴さえいなけりゃなぁ」
「なんかいったかぁ?武藤」
後部座席に座る綴が運転している武藤の頭にグロッグを押し当てる
「なんでもないです!」
青ざめた武藤が言うと綴はめんどくさそうにしながら後部座席に戻るが先生、あんた武藤死んだら事故になるから!
激しく雨が降る中、ワゴン車は山道を走っている。
ちなみに、席だが運転席武藤、助手席村上、村上の後ろは俺、真ん中はレキで隣にアリア、さらに後ろの俺の真後ろが理子、真ん中にジャンヌ、そして綴、補助シートに秋葉、ちなみに、幸村は俺の左横の補助シートに座っている。
あ、ハイマキはレキの前で伏せてる。
アクビしてくつろいでるなお前
「しっかし、嫌な雨だな」
「山の天気は変わりやすいと言うが天気予報では晴れになってる。間もなく晴れるだろう」
村上がスマートフォンをいじりながら言った。
「おお、村上、スマホかよ!それバッテリーやばいんだろ?」
「うむ、すぐに電池切れになってしまうが充電器はたくさん持ってきてある。もちろん、レキ様を撮るた……いや、何でもない」
「その話は後で聞くとして、キンジや不知火は薄情だよなぁ優」
「キンジは病院だし、不知火は普通に単位足りてるからな」
武藤と話ながらごめんねと悪くもないのに微笑んだ不知火を思い出す。
「ああ……キンジがくりゃ星伽さんも来たかもしれねえのによ」
白雪は今回不参加だ。
キンジが病院で看病が理由らしい
まあ、ヤンデレさんらしい考え方だな
「何だ、武藤これだけ美人が揃っておいて文句か?」
とジャンヌが言う。この前の件でどうやらジャンヌは武藤を認めたらしいな
「いやでも星伽さんがなぁ……」
未練たらたらだがまあ、キンジが来てりゃ白雪も来てただろうよ
「何、武藤悲観することはない。ここにはレキ様もおられるじゃないか」
「……」
レキは無言で窓の外を見ている。
お、俺を見てる訳じゃないのは分かってるがまったくの無反応かよ村上の言葉に
「まあ、レキも美人ちゃ美人なんだが……」
面白い奴ではあるんだけどなレキは
「所で綴……先生、今から行く場所ってどんなとこなんです?」
このままじゃ武藤の不満ばかり聞くことになりそうなので強引に話に割り込む
「んー、普通の村だよ。温泉が沸いてるぐらいで田舎町というか村」
「村の名前はなんなんですか?」
アリアが聞くと綴は何かを考えて
「あー、なんだったかな……あ、そうだ鬼海村だ」
「き、鬼海村?」
聞いたことがない村だな。
まあ、日本には変な名前の町も多いからさして不思議に思うことでも……
「その村の名前聞いたことがあります」
以外にも発言したのは幸村だった。
ちなみに、幸村は他校から申請して研修に参加できるように信冬が手配したらしい。
「鬼海村は今から70年前に集団失踪事件が起きた村です」
「集団失踪事件だと?」
ジャンヌが興味を持ったのか幸村に話しかける。
幸村は俺の友達ということにしてある
「はい、合計100人の人間が行方不明になり当時、の警察は大規模な捜査をし、軍まで出動する事態になっています」
「軍隊までかよ?何かあったのか?」
幸村はしまったという顔をする
「あ、いえ大規模な捜査に軍が借り出されただけで……」
何か隠してるな幸村……大方、その時代武田が協力した何かの事件があったのかもしれない。
ここは京都から遠く離れた場所。
椎名よりも武田に当時の政府は頼ったんだろう。
「それでその失踪した人達見つかったのユッキー」
と、理子が身を乗り出して聞いてくる。
その豊満な胸が席に乗せられて強調されたので幸村は顔を赤くしながら
「見つかったのは女の子一人だけです。しかし、その子も助け出された後衰弱して死んでしまったそうです」
ホラースポットじゃねえかよ……
暇があったら幸村に裏も聞いとこう
「ん?おかしいな」
「どうした武藤?」
「ラジオがつかねえさっきまでついてたのに」
とラジオをいじっている。
見るとナビもクルクルと同じ場所を回っている。
「さ、真田先輩が変なこというからですよ!」
マリが顔を青くして言う
「そ、そんな俺は」
ん?アリアも静かだな
「どうしたんだアリア?怖いのか?」
「こ、ここ怖くなんてないわ」
「あー、アリアびびってる~」
「び、びびってないわよ理子!」
クフフと理子は左手を口に当てながらアリアをからかっている。
「あー、まあもうナビもいらんだろ」
と綴が言う通り、今回の研修の村に入ったようだった。
温泉が出るのに寂れた町だな……
俺達は車を降りると、ちょっと先にある旅館に向かい歩き出す。
何て言うか嫌な予感がする
この先とんでもないことが起こりそうな……
「……」
レキとハイマキの後ろを歩きながらこんな時、姉さんがいたらと考えてしまう。
姉さんがいれば多分、魔王でも倒してしまうような人だから何があっても安心できるんだが……
「ねね、ユーユー!旅館ついたら理子と温泉入ろうよ」
うお!腕に抱きつくな理子
「ああああ!何やってるんですか理子先輩!優先輩は私のです!私が先輩とお風呂に入るんです!」
グイっとマリが俺の右手に抱きついてきた。
「おいお前ら!」
「えー、じゃユーユーに決めてもらおうよ。理子とマリリンどっちと入りたい?これ理子フラグとマリリンフラグ回収選択肢だよユーユー」
な、何!究極の選択だ!
てかフラグってなんだよ!
「と・う・ぜ・ん!優先輩はカワイイアミカを選びますよね」
いたたた!握りしめるな痛い!痛い!
「ユーユーは私の王子様なんだよね?」
う、真剣な顔で見上げてくる理子が少しだけ可愛く見えるぞ。
い、いや理子のヒーローとは言ったが王子様なんて言ってねえ!
「「どっち(ですか)!」」
え、えーと……
レキが立ち止まってこちらを見ている。
駄目だ流れて的にレキって言ったら殺される
アリアならさらに死亡フラグだ。
ここは……
「ん?」
ジャンヌと目があったので
「じ、ジャンヌで!」
「なっ!し、椎名」
まさかの選択にジャンヌがぼんと赤くなる。
「最低です優君」
秋葉の声が背中に突き刺さる!
「ち、ちが……」
ミスった!男の誰かにすべきだったろ俺!
「あ、あんた達!特に優!なんて会話してんのよ!」
怒りで顔を真っ赤にしたアリアがガバメントを俺に向けてくる。
「ま、待て!」
すすすとマリと理子が俺から離れた。
理子はウインクする。
裏切り者!
「風穴ぁ!」
「うぎゃあああああ!」
悲鳴をあげながら全部、45ACP弾を銃弾切りで迎撃する。
いやぁ、俺銃弾切りの練習には事欠かないね……
「ふん、ハーレム野郎め死ね」
「まったくだあいつは地獄に落ちるべきだな」
「やはり、優希は信冬様にふさわしくない」
と村上、武藤、幸村は意見を合わせるのだった。
ただ、一人だけレキはそんな喧騒を横に深い森が生い茂る方を見ている。
雨はやんで湿った風がレキの髪を揺らした。
「……風が荒れている」
と、誰に聞かれることもなくレキは呟いた