緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第158弾 緋弾

「嘘だろ……」

 

砂の中に棺ごと消えたアリアとキンジがいた場所を見て見ながら俺は呆然と呟いた。

砂に飲み込まれたら助からない。

 

「!?」

 

何やってるんだ俺は!

アリアとキンジを救うために二人が消えた場所に走り出した瞬間

 

とがあああああんと爆発音と共に室内に何かが激突してきた。

 

「30分か……よく持った方だな」

 

そういいながら穴に立ちながら不敵に笑う姉さんと……

 

「ええ、紫電の雷神の能力は打ち止め、ですが、私は戦えますよ」

 

砂煙の中から黒髪を揺らしながら姉さんを見上げる少女

お、お前

 

「の、信冬!」

 

日本の名家の一人、武田信玄の子孫

彼女は俺を見ながら

 

「お久しぶりですね優希」

 

と柔らかく微笑んだ。

 

「あ、ああ。お前がなんでここにいるかは置いとくが今は……」

 

「待ちなさいパトラ!」

 

はっとして見るとパトラがアリア達が消えた流砂に飛び込むのが見えた。

逃げる気か!

ガバメントを向けようとするが弾を入れ換えないと

そうこうする間にパトラの姿が見えなくなった。

カナが追撃しようとしたが流砂が止まってしまう。

パトラが流砂の穴を閉じたらしいな。

 

「くそ!」

 

だが、パトラが飛び込んだといいことはこの下は空洞か?となればアリア達も生きて……

 

「水無月希」

 

信冬が姉さんを見上げながら

 

「戦いは終わりです。今はパトラの追撃を」

 

「ん、お前とヤり合うのは楽しいんだけどしょうがないな」

 

姉さんはそう言いながら刀を鞘に戻した。

後はどうやって下の空洞に行くかだが……

 

「優希」

 

そう言いながら信冬が俺の前まで来てから俺を見上げつつ俺の胸に右手を置いた。

その髪は黄金に光ながら揺れている。

 

「今は、瞬間移動のステルスのストックがこれしかありません。貴方だけ先にいってください」

 

姉さんを見上げるが姉さんは協力する気はないらしい。

 

「悪い信冬……いきなりあって迷惑を……」

 

「いいですよ。昔から慣れてますから」

ステルスを妨害しないように紫電を鞘にしまう。

俺が何かを言う前に景色が歪んだ。

空間転移だが、相変わらずなれないなこれ……

 

「さらばぢゃ、トオヤマキンジ」

 

その場面は致命的な場面だった。

斜面の上からWA2000を構えるパトラとアリアを庇おうと前に立ちふさがるキンジ

間に合わねえ!

 

「「キンジ!」」

 

俺とアリアの声が重なった瞬間

 

ダァーン

 

キンジが真後ろにひっくり返った。

倒れからからして頭を……

 

「キンジ!キンジ!」

 

アリアの悲鳴を聞きながらぶつんと何かが切れた気がした。

あの感覚に変わっていくのを感じながらドンと斜面に向かい飛び上がった。

数十メートルを一気に跳躍したことにパトラは仰天したのか慌てて狙撃銃を俺に向けて発砲する

ダァーン

ギイイイン

紫電で銃弾を薙ぎ払うとパトラの心臓目掛けて滅壊を放った。

ドオオオオオオオン

と慌てて避けたパトラがいた場所に巨大なクレーターが出来る。

 

「な、なんじゃ!なんなんじゃその力は!」

 

うるさい黙れ

 

「死ね!」

 

横殴りに振るった紫電の軌道はパトラの首のあった場所だ。

パトラは転げるように下に逃げる。

よくも、キンジを殺したな!

 

「キンジィ!」

 

アリアの絶叫にアリアを見た瞬間、怒りが冷えるのを感じた。

だって……

 

ぺっと口から銃弾を吐き出したキンジが見えたからだ。

お、お前銃弾噛んで止めたのかよ!

なんてやつだ……

俺には絶対に真似できね……

 

カツン……カツン

ん?

音に振り替えるとパトラが黄金の床を踏み鳴らしつつ、斜面を上がるように後ずさっていく。

青ざめた顔で何も言わず

なんだ?何、怯えて……

あれは……

がしゃんとその時、信冬やカナさん達が側面のガラスを破って傾いた室内に入ってきた。

全員が愕然とした顔で驚いている。

姉さんだけはいつものように腕を組んで微笑しているが……

みんなが見てるのはアリアだ。

アリアが立ち上がってパトラの方を向いていた。

 

「う……」

 

ドクンと心臓が跳ねた。

激痛が走り、色が変化した部分に痛みが走る。

なんだよこれ……

 

「共鳴だ優希」

 

いつの間にか、近くに来ていた姉さんが言う。

 

「き、共鳴?」

 

「見てろ。あれが緋弾のアリアだ」

 

無言のまま、黄金のサンダルで床を渡るアリアの瞳孔が何かの動物のように光を放っている。

立ち止まったアリアは右手を前に出したかと思うとパトラを指した。

パトラがすくみあがる

 

「何ぢゃ、こ……この感情は?……こわい……?わ、妾が……お、恐れて……?」

 

パトラの膝が震えている。

パトラが黄金床を盾に変えた。

同時にアリアの拳銃のように突き出されたアリアの人差し指の先端がが緋色に輝き収束していく

 

「「……緋弾……」」

 

信冬と白雪がつぶやく。

アリアはステルス使いじゃない……だが、アリアの血を移植した俺もあれに近い力を使えた……一体何なんだ緋弾ってのは……

 

ぱあっ

 

「避けなさいパトラ!!」

 

緋色の光がアリアの指先から飛び出してきた瞬間、カナが叫んだ。

パトラは慌てて腰布を翻して黄金の床に尻をつき浮かび上がった盾の下から滑り台を滑るようにして間一髪で光を避ける。

緋色に輝く光の弾は砲弾のように黄金の大盾を紙のように貫通し、さっきパトラがいた場所を通過して大爆発をおこし緋色の光が室内の全員に降り注ぐ。

それは全てを塗りつぶす閃光

バシュウウウウウウと異音を聞きながら目を開けると青い空が見えた。

今のアリアが放った一撃がピラミッドの上部をゴッソリもぎ取っていったのだ。

音もなく。熱もなく。何の衝撃もなく消滅させた。

室内には壊れたピラミッドの建材、ガラスや破片が降り注ぐ。

唖然として破壊されたピラミッドを見上げていたパトラの黄金の衣装が砂金に戻っていく。

 

「う……っ!」

 

ピラミッドの無限の力に頼ってたから自分の中の力で魔法使えなくなったらしいな

 

「あ、あ、ああっ!」

 

とうとうただの水着姿になってしまったパトラが慌てて両腕で体を隠す

回りの像や装飾品が次々と砂に戻っていく。

アリアの装飾品も砂金に戻りながらアリアがぐらりと無表情のまま倒れるのをキンジがお姫様だっこする。

同時に胸の痛みが消えて髪の色が元に戻るのを俺は感じた。

この力……まだまだ、制御できないな……

って!

パトラが逃げようとしてるぞ

 

「そーれ♪」

 

姉さんが楽しそうに片手でアリアが入っていた柩を持ち上げるとボーリングのように砂の上を滑らせてパトラの足に当てた。

 

「うあ!」

 

ただの人間に戻ったパトラが柩の中に、ひっくり返る。

意図は理解したぞ

さらに、斜面を滑り落ちてきた柩の蓋にワイヤーを撃ち込んで放り投げる。

もちろん狙いは柩だ

 

「こ、こら!何しおるか!わ、妾は覇お……」

 

挟まれては適わないので手足を慌てて引っ込めたパトラの柩にゴオオオオオンと重なった。

白雪に魔力封じのお札をべたべた貼られた黄金柩の中でパトラは出せ出せと暴れていたが

 

「パトラ、おやすみ。ご先祖様と同じ柩の中でね」

 

とカナに言われてようやく大人しくなった。

ふぅ……これで今回の護衛おしまい……ああ、疲れた……と俺は地面にどかりと座り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリアを抱きしめるキンジを白雪が日本刀で尻をつんつんとついているのを苦笑しながら見ていると

気絶している秋葉を寝かせて信冬が歩いてきた。

 

 

「信冬、悪いな助けてくれて」

 

立ち上がりながら言うと信冬はお嬢様見たいな微笑を浮かべ

 

「あまり、お役にはたてませんでしたけど力になれたならよかった」

 

「ああ、なんでここにいたかは大体わかるけど……」

 

といいかけた時、姉さんが俺の前に来た。

 

「姉さん……」

 

姉さんは真剣な目付きで俺を見てから海の方を無言で見た。

 

「正念場だな優希」

 

「え?」

 

ぞくりと何かを感じた。

な、なんだこれ……

姉さんが見ている場所から何かが来る。

 

「逃げるのよキンジ!急いでここから撤退しなさい」

 

あのカナが取り乱している。

一体……

辺りは静寂だ鳥も魚の気配すらない。

海が盛り上がる。

 

「あそこよ!」

 

アリアが海面を指差した。

盛り上がり海上に出てきた300メートルはあるそれは……

白く書かれた『伊』『U』の文字

イ・ウー

 

そして、この潜水艦は武藤達が作っていた模型の原型……ボストーク号

 

「見て、しまったのね」

 

カナが、アンベリール号の甲板に突っ伏しながら言う

 

「そう。これはかつてボストークと呼ばれていた戦略ミサイル搭載型原子力潜水艦。ボストークは沈んだのではないわ盗まれたのよ。史上最高の頭脳を持つプロフェシオンに……」

 

ターンを終えて停止した原潜の艦橋に立っていた男を見て

 

 

「いけない!」

 

信冬の髪が黄金に輝き出す。

メタモルフォーゼ、またの名を風林火山を発動させてだれかの能力を使う気らしい

 

「プロフェシオンやめて下さい!この子たちと戦わないで!」

 

パパパパ

 

カナが見えざる手に殴られたように跳ね返され真後ろに倒れるのをキンジが受け止める。

発砲は4だ。

カナ、そして信冬も撃たれたらしく後ろに倒れるの受け止める。

 

「う……」

 

「おい!」

 

防弾服だが、心臓付近を集中的に撃たれたらしく信冬は気を失ったようだった。

「今の……」

 

まったく、発砲の瞬間が見えなかった。

 

不可視の銃弾、しかも狙撃銃であいつやりやがったのか

 

ひょろ長い痩せた体。

鷲鼻に角張った顎。

右手に持った古風なパイプと左手にはステッキをついている。

イ・ウーのリーダー……いや……

 

「……曾おじいさま……」

 

アリアがかすれ声で言う。

 

そう、奴はシャーロックホームズ1世だった。

そのRランク級の圧倒的な威圧感を感じながら姉さん並の力量を相手から感じながら冷や汗を流す。

姉さんが味方なら勝てる。

たが、もし姉さんが敵か力を貸してくれなければ……

秋葉と信冬は気絶、後はボロボロの俺達。

やばいな……本気で不味いぞ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パトラ編完


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