「さてやろうか!」
水無月希が一歩前に出ると全員が一歩下がる。
「お、恐れるな!囲んで討ち取れ!」
騎士風の女の異名は豪雷と言った。
他の7人も名だたる使い手だ。
全員でかかれば負けるものはいないとさえ思っている。
なのに……
「ここじゃ狭いな。外でやろう……か!」
ゴオオオオオと凄まじい突風が豪雷を含めてパトラ、優希、秋葉を除いて吹き飛ばした。
たまらずに、出口からピラミッドの外に放り出され、甲板に着地する。
「めちゃくちゃだあの女」
そう言ったのは7人の中のサングラスをかけた男だ。
「落ち着け!相手は一人だ!チームでかかれば負けは……」
ドオオオオオオオン
と凄まじい爆発音がした瞬間、手に持つ西洋剣がビリビリしびれ、後ろにぶっとばされた。
右拳を握りにやりと笑う怪物
「水無月希!」
それぞれ7人が一斉に襲いかかった。
「ワハハ!お前は女という定義に当てはめるのは可笑しいな!」
そう言いながらジャンは空間転移の力で船の中に隠してあった武器を転送した。
改造されたそれは、戦闘ヘリにつけるようなチェーンガンと呼ばれる人間を一瞬でミンチにできる兵器である。
ジャンはそれを躊躇なく水無月希に撃ち放つ。
ブオオオオオオオと秒速625発という凄まじい数の銃弾、いや砲弾が水無月希を襲う。
「はっ!」
水無月希が風を纏い空に飛ぶ
「ワハハ逃がさんぞ!」
怪力で改造チェーンガンを持ち上げようとしたジャン
「なるほど、物を手元に転移させる能力か?こうだな」
「ぬぁ!」
ジャンが驚いた声を上げた。
水無月希の手には予備に船内に隠していた予備のチェーンガンがあったからだ。
「ハッハッハ!」
ブオオオオオオオとチェーンガンが慌てて飛び退いたジャンのいた場所、甲板を撃ち抜いて、ズタズタに引き裂いた。
「影縫い!」
霧島楓がチェーンガンを投げ捨てて、甲板に降り立った瞬間、影から現れ動きを縛り付ける。
「効かんといったろ?」
気合いで金縛りを砕こうとした瞬間、
ザアアアと水無月希の足元に水が流れ、パキパキと足を凍らせていく。
ジャンヌには及ばないが氷使いと水使いの合成技
「徹底的に私の動きを封じ手も勝てんぞ?」
水無月希がそう言ったとき、バチバチと空気が帯電する音が聞こえてきた。
見ると西洋剣を帯電させた、豪雷と呼ばれた彼女が駆け出していた。
「豪雷一閃!」
空中に飛び上がるとバチバチと帯電する剣を水無月希に向かい叩き落とす。
バチイイイン
「何!」
女の剣は砂で出来た盾で防がれていた。
「砂は電気と相性が悪いよな!」
「くっ!」
後ろに引く瞬間、顎に衝撃を受けて吹き飛んだ。
見ると水無月希の右手は砂にコーティングされている。
「ば、化け物……」
そう言って雷使いの女は床に沈んだ。
「次はお前だ!」
水無月希はジュウウと熱を発生させ、氷を一瞬で溶かすと左手で影を殴り付けた。
「うあ!」
影から霧島楓が引きずり出される。
「こ、降参」
勝目なしと判断した少女は合理的に判断して白旗を上げた。
「ちぇ」
水無月希は手をパット放すと残りの5人に襲いかかった瞬間、上空から竜巻が水無月希を囲む。
「風使いか!」
ニヤリと笑って言った瞬間、竜巻の中に、炎が入り交じる。
「その技ならもう、修得してるぞ!ふっ!」
水無月希が炎の竜巻の真ん中で両手をを左右に広げた瞬間、同規模の竜巻が発生し、竜巻を中和して消滅させる。
竜巻が晴れると驚いたステルス使いが2人。
それぞれに一瞬で肉薄した水無月希が右手と左手で二人に拳を叩き込むと二人は壁に叩きつけられて動かなくなった。
「後、3人!」
「ひっ!うわあああ!」
残った水のステルス使いが悲鳴を上げて、水球を海から作り出してマシンガンのように撃ち放った。
「よ!」
水無月希はそれを軽快なステップでかわしながら水のステルス使いに近づくと拳を叩き込んだ。
「つ、強すぎる……」
そう言って沈んだのを見てから水無月希はジャンとローブを被った残りを見る。
「後はお前らだな!」
「むぅ……」
ジャンが何かを転移させようと手を動かした瞬間、それをローブが右手で抑える。
「引きなさいジャン。貴方ではあの人には勝てません」
「しかし、お館様!」
「そろそろ、潮時でしょう。引きなさい」
「仕方ないですな」
豪快な男、ジャンにしては珍しい敬語なるほど
「雷使いがリーダーかと思ってたがお前が真のリーダーだな?」
「……」
ローブの中から見える口元は微笑んでいる。
「貴方なら惜しくはない」
「何?」
刹那、ローブ相手が消えた。
バチイイイン
気づいたときには水無月希の腹に拳がかすっていた。
ローブの存在はバチバチと帯電している。
見覚えのある紫の雷
「紫の雷、お前まさか……」
そう、あの雷を纏える存在は水無月希が知る限りでは4人、それも真のオリジナルを持つのはたった、一人だけだ。
だが、声は女のものだった。
「なるほど、私相手に紫電の雷神の……」
「……」
ローブの女は黙ってマイクロイーグルを取り出した。
バチバチと紫の雷を帯電させながら引金を引いた。
雷の光が水無月希の刀とぶつかり、銃弾が霧散する。
「雷砲か、やはりお前……」
「……」
ローブを脱ぐとまず、見えたのは黄金の色の瞳に長い黒髪、手にはマイクロイーグルと扇子が握られている。
パンと扇子を開くと文字が描かれている。
字は『風林火山』
「やはりな、なんでお前がここにいる?」
「お久しぶりですね水無月希」
臨とした雰囲気を持つ少女は真っ直ぐに、水無月希を見ている。
「ほぅ、武田の跡取り娘がなぜ、イ・ウーにいるんだ?家の方も大変だろう?」
「心配には及びません。そちらは妹がなんとかします」
「で、どこで掴んだかか知らんが優希を援護しに来た訳か?武田家だって核で脅されるだろう?」
「心配には及びません。イ・ウー構成員が偶然、ここに居合わせて止む終えなく戦闘に巻き込まれた。そんな筋書きですから」
「屁理屈だな……まあいい、その紫電の雷神の能力後何分使える?」
「教えるとでも?」
「優希の援護にお前を行かせるのはまずいからなぁ、ここで足止めしてやろう。オリジナルではないとは言え紫電の雷神の力とは一度やってみたかった」
刀を構えながら水無月希は言う。
本気で……少なくても紫電の雷神の力には敬意を持って戦うという証だ。
「困った人です……」
パンと風林火山の扇子をしまうとバチバチと紫の雷を纏いながら武田を名乗る少女はマイクロイーグルを構える。
「武田信玄が子孫武田信冬参ります」
「スサノオが子孫、水無月希!行くぞ!」
バチバチと同じく、雷を纏った水無月希と武田信冬が甲板で激突した。