緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第155弾 優希vsパトラ

凄まじい、速度で流れていく海と雲を視界に3時間近い、空の旅は続いていた。

間もなく、目的地のはずだが海の上には何も見えない。

 

「……」

 

腕時計に設定したアリア死亡まで、後一時間と少しか……

ここに来るまで、姉さんに敵の戦力等を聞いている。

敵はパトラに加えてイ・ウーの構成員が数名、生憎姉さんは詳しい人数までは知らないようだった。

最優先事項は実家と同じく、アリアの救出一点だ。

早急にパトラを撃破しなければならない。

ステルス無効化能力のある紫電は戦いの鍵になるはずだ。

 

「姉さんは協力してくれないの?」

 

「私はそうだな……条件つきで協力してやろう」

 

風を受けてるのにまったく揺れてない髪型の姉さんは薄笑いを浮かべながら言った。

 

「条件付き?」

 

「まあ、条件は教えんがな」

 

なんだよそれ……まあ、パトラと戦う場合多分、姉さんは協力してくれない。

そんな気がする。

 

「優君、他は私が引き付けます。アリアさんを」

 

「無茶言うな秋葉、ここに来るまでお前、相当ステルスを消費してるだろう?」

 

「ですが……」

 

分かってはいるのだ。

キンジ達はまだ、着いていないだろうから待たずに戦いを始めれば数による不利は否めない。

 

「ようは大将撃破すればすむ話だ弟」

 

「いや、姉さんはともかく……」

 

そう、姉さんならホワイトハウスだろうが要塞中央部だろうが大将を強襲できるだろうがさすがにあんな能力は俺たちにはない。

 

「ハハハ、なら手助け2だ」

 

「ん?」

 

「見えてきたぞ」

 

「え?」

 

眼下を見るとみるみると何かに近づいている。

船か?大きいな……

ちっ、やはりピラミッドがありやがる。

船の甲板には無限の魔力を得られるというピラミッドが作られていた。

船の回りには潮吹き?クジラが集まってるのか……てか

 

「行くぞ!」

 

「はい!」

 

えええ!ぶつか……

666kmのまま、俺達はピラミッドに突っ込む瞬間、その姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんじゃ!どうやって現れおった」

 

 

目を丸くしてびっくりしてるよ

いやいや!姉さん心の準備させてよ!

気がついたらラスボス(パトラ)の部屋とか!

 

「っ!」

 

素早く回りを確認して状況を把握する。

その全てが黄金で出来た部屋の奥の巨大な黄金のスフィンクスの手元というか足元にアリアを収めた黄金柩がある。

即座に、怒りが戦闘狂モードを引き起こし、回りに秋葉や姉さんもいないことに気付いた。

姉さんは瞬間移動のステルスを使ったらしいが故意かどうかは分からんが俺をここに送り込んだらしい。

ステルスはそこまで詳しくないが無限大の魔力とやらが姉さんの転移を妨害した可能性もあるがとりあえず……

 

「アリアを返してもらうぞ!」

 

言いながらデザートイーグルで驚いているパトラに向けて3点バーストで発砲する。

パトラは慌てて、盾のようなのを三枚砂から作り出したがデザートイーグルの弾丸はギギンと黄金の壁にぶち当たりパトラの両足、右手を撃ち抜いた。

 

「くっ!」

 

パトラが体制を崩した。

 

「おまけだ!」

 

ドンと再びデザートイーグルから放たれた銃弾が砂で出来た盾に命中する。

 

イイイイイイイイン

 

パトラが苦痛を上げるように口を開いたが聞こえない。

武偵弾、音響弾(カノン)

完璧過ぎる奇襲だからこそ上手く言ってるな

 

「アリア!」

 

黄金柩に向かって走り出す。

 

「やりおるのう椎名優希」

 

何!

目の前にいきなり現れたのはパトラだ。

後ろを気にするとパトラの姿をした砂が砂に戻っていく。

 

「強襲できんかったのぅ」

 

そう言って構えたのは……

イロカネアヤメか!

右手で紫電を抜きながらイロカネアヤメと紫電、二本の日本刀が激怒して火花を散らした。

 

「知ってやがったのかてめえ!」

 

「水無月希がお前に荷担してるのは知っておったのでのぅ。妾は常に先を見て動く」

 

真っ赤なマニキュアをした手から渾身の力でパトラが刀を押す。

くそ!左手が使えねえから力が入りにくい!

なら!

右左の腰のワイヤーを射出するパトラは慌ててかわしたが、左のワイヤーがパトラの右腰をかすった。

体制が崩れた!

 

「飛龍一式風切り!」

 

すれ違い様の斬撃をパトラは砂の盾を出したが紫電は紙のように切り裂き、パトラの右腕を切り飛ばした。

イロカネアヤメが砂の上に落ちる。

 

「……」

 

にぃとパトラが笑い、砂になって消えていく。

こいつも偽物か!

 

「!?」

 

殺気を感じて後ろに飛ぶと、砂の中からパトラがイロカネアヤメを掴んで突き上げてきた。

なるほど……厄介だな……

この部屋の砂全てがあの偽パトラを作れるとしたら……

 

「どうした?椎名優希?同じ土俵で戦ってやってる妾にすら傷1つつけられんか?弱いのう」

 

「はっ、よく言うぜ……」

 

本体さえ出てくれば剣術では俺が上だ。

どこだ?どこにいる紫電を右手で構えながら目を閉じる。

視線ではなく気配を感じるんだ。

 

「目など閉じおってもう、あきらめたのか?つまらんのう」

あった!

 

「飛龍一式風凪!」

 

カマイタチが柱ごと隠れていたパトラを切り裂いた。

 

 

「外れじゃ」

 

「何!うっ!」

 

再び背後からの殺気に紫電で受けようとした瞬間、パトラのイロカネアヤメが紫電を空中に吹き飛ばした。

ひゅんひゅんと音を立てながら紫電が吹っ飛ぶ。

 

「ちっ!」

 

ガバメントを抜いてフルオート射撃でパトラを撃つ。

 

「ホホホ」

 

笑いながらパトラは砂の盾を展開して銃弾を弾いた。

正面からじゃ無理か!

 

ワイヤーを壁に撃ち込んで空中に飛ぶと紫電を空中で手にすると再び空中で離して、もう一丁のガバメントでパトラを狙う。

あれが本体なら!

 

ドオオオオオオオン

大爆発と紅蓮の炎がパトラを包んだ。

炸裂弾だ。

再び、紫電を掴むとワイヤーで更に上昇し、更に、天井を蹴ると重力を加えて落下する。

 

「飛龍一式雷落とし!」

 

パトラは慌てて、砂の盾を6つ展開するがパリンパリンと皿のように全てを打ち砕いた。

 

「く……手加減しておれば付け上がりよってからに!」

 

 

パトラの回りに黄金の鷹が10羽現れる。

接近戦を捨てたか!ガバメントで撃ち落とすが3羽が突っ込んでくる。

転がりながら交わす。

 

「ほれ、どうした!」

 

再び、パトラの回りに黄金鷹が次々と現れ出した。

紫電で切り払いながらワイヤーで空中に逃れる

近づけない!

片手なため、満足にマガジンを入れ替える隙も与えてもらえない。

せめて、両手さえ使えれば!

 

「ぐっ!」

 

右肩に激痛が走った。

黄金の鷹が右肩をついてきたのだ。

肉を少しえぐられたか!

これじゃ、満足にワイヤーを使えないぞ。

いや、剣術すら……

 

「……」

 

地面に降り立つ。

 

「ほっ」

 

万策尽きたと思ったのかパトラが笑う。

 

「命乞いをせい。椎名の後継。許してやらんでもないぞ?」

 

「はっ、誰が……」

 

構えは刺突……

このままではアリアは死ぬ。

武偵は決して人を殺してはならない。

例え、仲間が殺されたとしても……

だが、それがどうした?

俺は仲間が殺されてまで、犯罪者を擁護してやる意思はない!

アリアは死なせない!

 

「な、なんじゃ?」

 

パトラが後ずさる。

ビリビリと殺気がパトラを襲う。

本気の殺しの殺気。

体の内面から何かが変わっていく。

 

「な、汝何をした!なんじゃその姿は!」

 

ああ、知ってるなこの感覚。

ローズマリーの時も……姉さんと戦った時にも感じた……

『緋刀』

そう、姉さんは言った。

右手と左手で紫電を掴む。

なるほどな……この力、ヴァンパイアみたいな治癒能力まであるのか……道理でローズマリーと戦った後、治っていたはずだ。

だが、ローズマリーを倒したあの力の使い方は分からない……

だが、筋力増強、身体能力は2~7倍か?

 

「新撰組奥義……」

「や……」

 

滅壊を繰り出す直前にパトラが言った瞬間、ぎしりと体が動かなくなった。

何!

 

「影縫い」

 

スッと影の中から首都高で戦った霧島 楓が現れた。

 

「ワハハ!苦戦してるな!パトラよ」

 

そう言いながら現れたのはジャンか!

 

「苦戦などしとらん!止めを指すとこじゃ!」

 

「嘘……」

 

霧島楓が呟いた。

他にも数名がパトラの背後に立った。

7対1か!

 

「うぐ……」

 

「無駄、影縫いは体の動きを止める」

 

「少年!悪く思うな!」

 

ジャンの言葉を耳にしても俺は動こうとあがくがまるで、動かない。

 

「ホホ、キリシマカエデ、そやつを押さえておけミイラにしてくれる」

 

余裕を取り戻したパトラは両手を俺に突きだす

喉が渇き、水蒸気が体から立ち上る。

まずい、動けねえ。

紫電を影に落とせば解除できるはずだが握力すらまるで、動かない。

 

「ほれ、ミイラになるがよい」

 

こんなところで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおいそれは流石に卑怯だろ」

 

気づいたときには俺は広間の端にいた。

霧島楓がキョロキョロとしている前に姉さんが降り立った。

 

「優君」

 

秋葉がポケットからペットボトルの水を取り出したのでそれを飲む。

 

「秋葉、お前らどこに……」

 

「すみません、希様の転移がピラミッドの魔力に妨害されて来るのが遅れました」

 

「いや、助かった」

「優君その姿は……」

 

秋葉が見るのは初めてだったか?

 

「説明は後だ」

 

気が抜けたからか

しかし、姉さん……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どういうつもりじゃ水無月希!貴様約束を違えるのか!」

 

パトラが明らかに動揺して言った。

 

「約束ぅ?先に破ったのそっちだろ?私はお前単独でなら優希との戦いには手を出さないと言ったんだ。他の手を借りた時点で約束もないださ?」

 

姉さんは紛れもない化け物クラスのパトラや回りに全く気後れしていない。

 

 

「じ、じゃが……」

 

「そこで私は考えた」

 

ニヤリと姉さんは笑った。

パトラ以外の8人のイ・ウーの構成員を見て戦闘狂の目で見回す。

 

「邪魔が入らんようにお前らは私が相手をしてやろう」

 

「気でも違ったか?」

 

ジャンヌに似た騎士 風の女性が言った。

 

「こっちは条件しだいではRランクにも匹敵する8人だ。いかに、貴様といえ……」

 

「女は殴れんが……あんたは別格だな」

 

ジャンもやる気になっているようだった。

他のメンバーも異論はないようでそれぞれが武器を構えた。

 

「そうそう、それで……ん?」

 

ギシリと姉さんの動きが止まる。

 

「影縫い……」

 

霧島楓が姉さんを影に縛り付けたようだ。

沖田の時のための教訓か影の中に入って影縫いをしているようだ。

 

「パトラ殿は椎名達を!他のものは今だ!水無月希を討ち取れ!」

 

7人が動く直前

 

「影縫いね。ようはこうすればいいふっ!」

 

「!?」

 

驚いた顔の霧島楓が影から放り出された。

 

「ようは金縛りなんてものは気合いでどうにかなるものさ」

 

立ち止まった7人を見て姉さんは面白そうに

 

「さて、やろうか?」

本当に楽しそうな笑顔だった。


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