緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第148弾 首なしライダー追撃戦

首なしライダーなんて本当にいるのか疑問だったがこれは信じるしかねえな……

目の前を通りすぎたバイクのヘルメットの中身がなかった。

一瞬だが、確かに見えた。

それに、前を疾走する首なしライダーは黒のライダースーツにバイクは見間違えるか!

MTT・タービン・ストリート・ファイターだ!

ノーマル改造では隼を凌駕する化け物オートバイだ。

本来ジェット機に使われるような技術が盛り込まれており当然のことながら乗りこなすのは相当な技量が必要だ。

それに、あの凄まじいエンジン音は間違いない。

 

首なしライダーは学園島方面に向け一般道を疾走する。

夜中でもそれなりに、交通量があるため右に左に曲がりながら車を避けていくのだが、首なしライダーの噂を知っている人達はエンジン音を聞いたら慌てて左や右に避けている。

いつか、事故が起こるぞ!

よく、これまで起きなかったもんだ

前方100メートルだ。

捕らえたぜ

 

「秋葉!」

 

「はい!」

 

秋葉が右手を俺の脇から降り下ろした瞬間、凄まじい向かい風が首なしライダーを襲う。

速度が減速したのを確認して一気に距離を詰める。

こちらは、秋葉のステルスで風の影響を中和してるため速度は変わらないため、隼でも十分追い付ける。

 

「止まれ!」

 

首なしライダーの横につき左手でガバメントを首なしライダーに向ける。

首なしライダーが上半身、体をこちらに向ける右の人差し指を天空に向けるとちっちっちと馬鹿にするように動かした。

挑発だとはわかるが首なしでやられると腹が立つ。

どうせ、頭には何か仕掛けしてやがるな

 

「上等だてめえ!」

 

バスバスと麻酔弾を叩き込む。

置いても秋葉が風でキープするから容赦ない。

効果があるかしばらく、並走するが首なしライダーは落ちない。

確かに、ライダースーツにめり込んだはずなのに!

首なしライダーはまた、ちっちっちと指を動かした瞬間、いきなり俺たちに近づくと隼を蹴飛ばしてきた。

間一髪減速させてそれをかわす

首なしライダーは攻撃はしてこないんじゃなかったのか?

不知火達に聞いた話ではおちょくるような動きをして、追撃者を翻弄し続けたんだそうだ。

 

そっちがその気ならもう容赦しねえ!

 

隼と首なしライダーのバイクが赤信号無視し、交差点をぶっちぎる。

幸い、車はいなかったが早く、確保しないと……

 

「優君、私がやります」

 

秋葉が隼の上に立ち上がる。

こいつは空を飛べるからレキのように心配はないが大きな力を使う気らしい

 

「はっ!」

 

気合い一閃というように秋葉の声と共に、首なしライダーの前方に巨大な竜巻が現れた。

首なしライダーが竜巻にもろに突っ込み、空に巻き上げられる。

強引だけどあれなら、逃げられまい。

隼を止めて、様子を見る。

徐々に竜巻は落ち着き、晴れたそこに首なしライダーが……

 

「何!」

 

「優君、後ろ!」

 

キイイイイイインとジェットエンジンのような音が背後から聞こえた瞬間、俺はガバメントを発砲。

首なしライダーに当たるが怯まず、突っ込んでくる。

その手には鉄パイプが握られている。

 

「く!」

 

秋葉が右手からかまいたちを首なしライダーに放った。

首なしライダーの右手が千切れとび、鉄パイプが地面に落ちる。

お、おい秋葉やり過ぎだろ!

だが、首なしライダーはまったく、怯まずに突っ込んでくる。

秋葉がさらに迎撃しようとするが俺は隼を発進させた。

防げないわけじゃないだろうが動いている相手に動かないのは的と同じだ。

 

『あれは本物だから』

 

不知火の言葉を思い出す。

なるほどな最初は二人いるかと思ったが違うらしい。

見ると首なしライダーの右手が再生している。

化け物かよ!

ローズマリーのような吸血鬼というなら納得はいくがああ言った無限再生能力がある奴は厄介だな。

万が一を考えて、銀弾を込めた左のガバメントを首なしライダーに撃ち込む。

すると、僅かに首なしライダーは横に逸れた。

やっぱりか!

 

「秋葉あれは魔女連隊のドリスと似たタイプだ。操ってる奴がいるぞ!」

 

追撃戦は首都高に入る。

並ぶ車を交わして、強引に入り、ETCのバーをぶっ飛ばす。

またかよ!

後ろから怒声が聞こえたが首なしライダーを見たのか青くなるドライバーが見えた。

首都高はこの時間、トラックがかなり走っている。

気を付けないとあの世いきだ。

というかこのまま、いけば隼のガソリンが尽きるのを待つだけだ。

首なしライダーは再び前を時速190キロで走っている。

車やトラックの間を走りながら……

操ってる本体はどこだ……

 

「優君!」

 

はっとして、前を見ると首なしライダーが何か手に持っている。

何をするか分かった瞬間

 

「秋葉!」

 

背後の秋葉が風に乗って離れる気配を感じながらデザートイーグルを隼につけたホルスターから抜くと首なしライダーに向ける。

距離50メートル、拳銃の射程じゃないがやるしかねえ!

首なしライダーの前方にはタンクローリが走っている。

引金を絞ろうとした瞬間、射線に馬鹿みたいな改造したバイクが割り込んできた。

ば、馬鹿野郎!

派手な金髪に二人乗りのバイク、首なしライダーの噂を聞き付けた不良か何かだろう。

その間に首なしライダーがタンクローリに何か……いや、爆弾を投げつけた。

ぺタリとタンクローリに何かが着いた瞬間、俺は前方にワイヤーを発射しながら隼から飛び降りた。

ワイヤーが前方を走っていた二人乗りしている二人に絡み付き引っ張りながら空中で左のワイヤーを発射し、防音壁にワイヤーをめり込ませてブランコのように宙吊りになった瞬間

 

ズドオオオオオオン

と凄まじい爆発音が東京に響き渡る。

高速道路に転がりながら激しく燃えるタンクローリを見つめつつ、気絶した不良二人を端によせいるとタンクローリの運転手とおぼしき人を抱いた秋葉が空から降りてくる。

首なしライダーはどこだ!

左右を見るが見当たらない。

逃げたか?

 

「秋葉、ここは……」

 

こいつらなんとかするぞと言おうとした、瞬間

 

 

「水無月希の弟、期待外れじゃったか?」

 

声のした方を見ると防音壁の上に誰かがいる。

 

「てめえか!首なしライダーを操ってたのは!」

 

「生意気口を聞くのう。見てやるから緋弾の力見せてみい」

またか、こいつらの言う緋弾……姉さんは知ってるみたいだったが……

だが、首なしライダーを操っていたのはこいつだな

 

「使うまでもねえよ!」

 

ガバメントを頭に黄金のコブラの飾りをつけた半裸の女に向け引き金を引こうとした瞬間突然手が硬直した。

な、なんだ体が動かねえ

 

「影縫い」

 

背後から聞こえた声

まだ、いやがったか

 

「優君!」

 

秋葉がかまいたちで俺の背後を凪ぎ払った。

そいつは後ろに下がりながらタンクローリの炎を背にする。

 

「風使い……厄介」

 

全身が黒ずくめの女だった。

長い黒髪をポニーテールにし、髪飾りも黒い

めんどくさそうに秋葉を見ながら

 

「影道」

 

ドプンとまるでタイブするように地面の中に女が消えた。

なんだ?なにかのステルスか?

 

「!? 秋葉後ろだ!」

 

「!?」

 

秋葉の影から女は飛び出すとべレッタTowoを秋葉の背中に向けて発砲する。

 

「う……」

 

風で周囲を感知できる秋葉だが、距離から避けられなかったらしく、転がりながら距離をとるが口を空けて苦しそうに女を見ながら連結槍を取り出す。

あいつ、防弾越しとはいえ肺を撃たれて一時的に息ができなくなってるのか

 

「秋葉!」

 

女に向けてガバメントを三点バーストで発射する。

 

「痛いのやだ」

 

再びトプンと炎で出来た影の中に女が入る。

自分の影を警戒するが、狙いは

 

「秋葉!」

 

動けない秋葉の影から再び、女が飛び出すと息がしにくくなっているため動きの鈍った秋葉の脇を抱えてしまう。

息が乱れてステルスが使えねえのか秋葉

 

「ちっ!」

 

秋葉を助けようと動こうとした、瞬間

 

「動くでないシイナユウキ」

 

後ろの半裸の女に言われるまでもなく足を止めた。

 

「うふ」

 

と不気味に笑みを浮かべながら秋葉を捕らえた女がべレッタTowoを秋葉の頭に押し付けた。

 

「や、やめろ!」

 

「なら、緋弾の力を見せてみいシイナユウキ」

 

見せたくてもわからねえんだよ。

どうやったらあれが使えるかなんて……

 

「……」

 

俺がまだ、躊躇してると半裸の女は思ったらしい

 

「なら、煮じゃ、やれ楓」

 

「うい」

 

楓と呼ばれた女の引き金に力が籠る。

秋葉はまだ、動けないらしくステルスを使わない

 

「秋葉ぁ!」

 

ドオン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

べレッタTowoが宙を舞い、道路を滑る

今の発砲音は……

 

「まったく、またきみかい?優希君、面白そうなことしてるね」

 

「お、沖田!」

 

公安0の沖田刹那が車から降りて戦闘狂の目を半裸の女と秋葉を捕らえている女に向ける。

 

「いいところに!誰じゃ貴様!」

 

半裸の女がわめきだす。

水を指されて激怒したらしい

 

「ミイラにしてくれるわ!」

 

半裸の女が沖田に手を向けるとシュウウと沖田の回りに水蒸気のようなものが立ち込める。

あ、あれは体の水分を蒸発させてるのか

 

「キリシマカエデ!」

 

半裸の女が言った瞬間、秋葉を突き飛ばした女が影に消える。

 

「沖田!」

 

沖田の影に入り、動きを止めるつもりか

 

「ふーん」

 

沖田がデザートイーグルを半裸の女に向けた瞬間、沖田の動きが止まる。

 

「影縫い。私は影を繋げて動きをとめられる。運がなかったね」

 

「ほれ、どうした?動かんとミイラになるぞ?」

 

沖田の回りからは水蒸気が出る量が増えてくる。

 

「優君」

 

回復したらしい秋葉がこちらに来る

 

「沖田様が」

 

「大丈夫だろ」

 

そう、俺は沖田を助ける気はまったくない。

なぜなら、あいつは……

 

「な、なぜじゃ?どうしてミイラにならん?」

 

水蒸気は圧倒的に沖田から立ち上っている。

半裸の女の能力が体内から水分を蒸発させるものと考えてもう、立ってられないくらい水分を失ってるはずだ

 

「そろそろ。動いてもいいかな?」

 

弱者を見下ろすというように沖田の後ろの女が何かに吹き飛ばされた。

じゃりっと沖田が動く

 

「な、なんじゃそれは!」

 

見ると沖田の回りには透明の球が6つ浮いている。

 

「誉めてあげるよ君、僕にステルスを使わせたんだから」

 

「そ、そうか汝」

 

にやりと沖田は笑う

 

 

 

 

「沖田は水のステルス使いだからな」

 

秋葉に説明してやる

 

「ですが今まで……」

 

「使うまでもなく沖田は強いからな」

 

そう、沖田にステルスを使わせるほどの相手はあまりいない。

だが、そう考えるとあの半裸の女達は強い部類なんだろうが相手が悪すぎる

 

「な、何者じゃ!名を名乗れ」

 

「公安0、沖田刹那」

 

「こ、公安0じゃと!しかも、その名は日本のRランクの」

 

「君は名乗らなくていいよ。殺すから」

 

沖田の水球が旋回しだした。

高密度に圧縮された水の固まりだ。

当たれば鋼鉄すら撃ち抜く

 

ドオオオオオオン

その時、タンクローリに残っていた燃料が新たな爆発を起こした。

一瞬、気を取られた俺達が再び半裸の女を見るとすでにそこになく、影使いの女も離脱した後だった。

まだ、近くにいるはずだが……

 

「あ、優希君、僕がここにいたことは土方さんには内緒だよ」

 

といい沖田は車に歩き出す。

車には女が乗っており、沖田が戻ると抱きついてる。

また、女変わってるのかよ

 

「優君」

 

沖田が行くってしまうと秋葉が声をかけてくる。

 

「なんだ?捕まったことなら気に……」

 

「どうするんですか?」

 

「あ……」

 

眼前には破壊された高速とタンクローリ、それに、転がってる隼

遠くからはパトカーや消防車や救急車のサイレン

やばい!

 

「に、逃げるぞ秋葉!」

 

隼を秋葉の風で持ち上げてもらい夜の空に逃げる。

下ではパトカーが到着していたがこれやばいよな……

携帯を取り出すと

 

「土方だ」

 

「ひ、土方さん?ちょっと頼みがあるんだけど……」

 

「ああ?」

 

「首都高で爆発があったんだけどそれ、沖田と俺だから事後処理お願いします」

 

「何!こら、まちやが……」

 

プツン

 

携帯を切って俺は死ぬほど心の中で土方さんに謝りながら実家にも隠蔽工作のメールを送っておいた。

結果的に実家の力をまた、使うがまあ今回ばかりはやらないと冗談抜きでやばい。

やったのは半裸の女達だが最悪、カジノ警備ができなくなるからな。

魔女連隊かランパンか知らんが勘弁してほしいよまったく……

 

首なしライダーの犯人を捕まえられなかった俺は結局、タダ働きだ。

あ、隼修理するからマイナスかよ!

もう泣いていいよな……はぁ


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