緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第140弾 最強の姉(?)達

5時間目は専門科目の時間、俺は授業に行かずに屋上で携帯をいじっていた。

 

「……というわけなんだ」

 

「お兄さんいい加減に刺されますよ?」

 

にっこりとしてテレビ電話の向こうで微笑んでるツインテールの小学生、藤宮千夏ちゃんだ。

偶然、電話がかかってきたからレキの名前は出さずに状況を説明したのである。

でも刺された方がいいって……一度、アリアに刺し貫かれたけどな

 

「なんでだよ」

 

「はぁ、お兄さんってなんでそっち方面は抜けてるんですか?お姉ちゃん苦労するなぁ」

 

「奏ちゃんがなんだって?」

 

千夏ちゃんの姉の藤宮 奏ちゃんは今、兵庫武偵高で武偵を目指している変わり者である。

 

「なんでもありません。それで、お兄さんその誘った人って誰ですか?」

 

「いや、それは……」

 

言いたくないんだが……

 

「アリアさんですね?」

 

ん?

 

「違うぞ」

 

「あれ?おかしいなぁ……じゃあ、りこりんさん?」

 

「違う」

 

「じゃあマリさん?」

 

「違う」

 

はっとすると誘導されてるぞ!

 

「まさか、レキさんですか?」

 

「……」

 

誘導されるかと思い黙るがこれでは肯定だな

 

「なるほどレキさんですか……お兄さんあんな頼めばなんでもしてくれるような静かな美人が好みだったんですねぇ……アリアさんならまだ、お姉ちゃんにも望みあったけどレキさんはなぁ……」

 

やばい!なんか、千夏ちゃんの中で俺の好みの女の子はレキと固まりつつあるぞ

 

「いや、だからな!友達に無理矢理メール送られただけなんだって!」

 

「じゃあ、レキさんと出掛けるの嫌なんですか?」

 

「……」

 

レキと出掛けるのがか?

うーん、レキと遊んだのはあの祭りだけだが意外にも、退屈しなかったな……

特に射的の時は……

 

「成る程、分かりました。お兄さんはレキさんは嫌いではないけど大好きでもないと考えますね」

 

もう、それでいいか……

 

「そうしてくれ」

 

「お姉ちゃんには悪いですけど正直、お兄さんは見てられません。まず、レキさんにメールしてください集合時間は6時に変更、それから……」

 

延々とアドバイスを受けてようやくそれが終わる。

 

「……以上です」

 

「おお、詳しいんだな千夏ちゃん」

 

「お兄さんが馬鹿なだけです。これぐらい常識じゃないですか」

 

そうなのか?

 

「じゃあ、私はこれから用事がありますから切りますね」

 

「ああ、サンキュー」

 

 

「お礼は今度、会った時デート1回でいいですよ」

 

「ええ!」

 

チシャ猫のように千夏ちゃんは笑い言う

 

「嘘です。その代わり、お姉ちゃんに電話かメールまた、してあげて下さいね」

 

「ああ、それぐらいなら……」

 

お安いごようだ

 

「それではお兄さん」

 

プツンと回線が途切れる。

とりあえず、これでなんとかなるかな……

 

♪♪

ん?メールか?

 

題名 アリアが危ない

本文 第一体育館でアリアとカナ交戦中、山洞秋葉、水無月希も交戦中

 

それだけの内容だったが俺は仰天して飛び起きた。

カナと姉さんが!この武偵高に!

ミスった!いくら、曖昧だったとはいえ、秋葉だけに任せてアリアから離れたのは失態だ!

屋上から飛び降りて木にワイヤーを引っ掻けてターザンみたいに地面に降りると第一体育館に走り出す。

第一体育館とは名ばかりであそこはローマのコロシアムみたいなアサルトの戦闘訓練所だ。

飛び込んだ瞬間

ドオオオオオオオンという爆発音と共に、砂ぼこりが中央の防弾ガラスの向こうに見えた。

 

「おい!」「む?椎名か?」

 

近くにいたアサルトの生徒を捕まえるとレキ様ファンクラブ会長村上だったがこの際仕方ねえ

 

「村上、なにがあっ?」

 

「札幌武偵高から来た生徒2人とお前のロリとちょレキ様に似ているお前の女が模擬戦をしている。相手二人の希望らしいがな……」

 

激しく突っ込みたいが無視だ。

土煙が晴れてくると4人の人影が見えてきた。

 

「はぁ……はぁ」

 

左目を閉じて左膝を地面につけ、右手の槍を杖代わりで荒く息をはいているのは秋葉だ。

ステルスを使いすぎたのか相当消耗しているらしく息が整っていない。対峙しているのは……

姉さんか……

水無月希が腕を組んで不適に笑っている。

夢ではなかった……

そして、もう一つはアリアだ。

 

「ぐっ……」

 

アリアがどこかに被弾したらしく膝をついた。

口は軽く出血しているらしく赤い。相手はカナか……

間宮あかりが動揺するのは仕方ないかあの状況じゃ

 

「アリアさん!」

 

秋葉が左手をカナに向けて薙ぎ払うように振った。

あれだけで秋葉は俺の風凪と同じカマイタチを発生させられる凡庸が高く消耗が少ないステルスだ。カナは気付いたようだがにこりと微笑んだだけ

 

「言ったろ秋葉?手出しはさせないと」

 

姉さんがカマイタチの射線に割り込むと拳を高速で前につき出した。

 

「ふっ!」

 

カマイタチが消え、姉さんと距離がある秋葉がぶっ飛ばされた。

こっちまで飛んできて防弾ガラスに叩きつけられて再び膝をついた。

むちゃくちゃだ!拳で風凪をやりやがった!しかも、威力は俺のと何倍も違う

 

「秋葉!」

 

「優……君……」

 

秋葉は防弾ガラスを背に槍で無理矢理立ち上がりながら姉さんを見ている。

 

「すみません………」

 

謝るな、俺がそう言おうとした時、

 

「ど、どけ!どいてくれ!」

 

声の方を見るとキンジが防弾ガラスに張り付く所だった。

お前もメール受けたか?キンジはインケスタの専門授業の時間だからな

 

 

「キンジ!」

 

「優か!」

 

俺達が言った瞬間、カナの声が聞こえてきた。

 

「おいで、神崎・H・アリア。もうちょっとあなたを、見せてごらん」

 

武偵高の女子制服を着て、片膝をついたアリアを見下ろしてるカナはパァンとインヴィジビレを放った。

バシイッ!と鞭で叩かれるような音

 

「うっ!」

 

アリアは短い悲鳴をあげて前のみりに倒れた。

防弾制服に当たったんだろうがいつまでもそれが続くか分からない。

いや、防弾制服でも辺りどころが悪ければ死ぬぞ

 

「蘭豹やめさせろ!こんなのどう考えても違法だろ!また死人が出るぞ!」

 

キンジが悲鳴のようにおそらくはこの決闘方式の戦いを承認した蘭豹に言う

こう言ったのは完全に体を防護するC装備の着用が義務付けられているのだ。

制服での決闘はあるにはあるがこれは明らかに武偵法違反である。

 

「おう死ね死ね!教育のため、大観衆の前で華々しく死んでみせろや」

 

蘭豹はそう言いながら手にした瓢箪から酒を飲んだ。

 

くそ教師が!酔ってやがる!

俺とキンジは防弾ガラスの扉をICキーで開け放つと中に飛び込んだ。

 

「キンジ!アリアを助けるぞ!」

 

俺が言った瞬間

 

「くォらお前らァ!授業妨害すんなや!脳ミソぶちまけたいんか!」

 

ドオン

落雷のような発砲音と共に地雷のような着弾の衝撃が走る。

蘭豹が撃ったのはM500、世界最大級の巨大拳銃で像殺しと言われる化け物拳銃だ。

俺達は構わずにアリアに向けて走る。

 

「カナやめろ!」

 

 

「おっとここからは通行止めだ」

 

俺達の前には世界最強の壁が立ちはだかる

 

「どいてくれ姉さん!」

 

「いいぞ、遠山キンジは行け、優希は私と遊ぼう」

ぐっと拳を握り姉さんが殴りかかってきた。

 

「キンジ先に行け!」

 

予想してたので体を捻ってかわしながら右、左腰からワイヤーを発射するが姉さんに当たる直前にワイヤーは軌道を変えて交わされてしまう。

紫電を抜きながら横に走る。

 

「ハハハ、鬼ごっこか優希?」

 

姉さんも俺を追撃して走ってくる。

 

「姉さんが相手だからな!」

 

ガバメントで姉さんを発砲した瞬間、大爆発が起こった。

武偵弾炸裂弾だ。

周りがどよめく。

そりゃ、模擬戦で武偵弾使う馬鹿なんて俺が始めてだろうよ。

 

「お、おい椎名の奴、札幌武偵高のやつ殺したんじゃ……」

 

こんなので死んでくれる奴なら助かるけどな……

ギャラリーの声に苦笑しながら爆煙が晴れるのを待っていたが姉さんの周りに竜巻が起こり、煙をかきけした。

当然、余裕の顔の姉さんが腕を組んで微笑む

 

「中々、派手な花火だな。安くないだろ?」

 

ちっ、やはり利かないか……

炸裂弾は高位の炎のステルスを使われたら意味を無くす

破片は姉さんは全部避けてるか違うステルスで交わしてるんだろう。

複数の高位ステルスを笑いながらこなす。

水無月希と戦い、ステルスを引き出したものはここでほとんどが戦意を失う。

ここで、戦意を失わなくても……水無月希に攻撃を当てたものはさらに絶望の事実を知ることになるのだ。

さて、どうするか……

ちららとキンジ達の方を見るとキンジがべレッタをカナに向けてどなっている。

カナが目を見開いてるな。

 

「さあ?次はどうするんだ優希?」

 

降参しますっていいたいよ……本当にこの化け物の相手……

 

「優君!」

 

その時、鋭い秋葉の声が響いた。

振り替えると暴風が秋葉の周りに巻き起こり槍に収束されていく。

あ、あいつ!

 

「やめろ秋葉!そんな消耗した状態で撃つな!死ぬぞ!」

 

ステルスはただでさえエネルギー食いだ。

秋葉の最大技とも言えるあれを撃てば秋葉は下手すりゃ衰弱死する

 

「私は優君からアリアさんの護衛を……」

 

「馬鹿野郎!お前が死んで完遂しても嬉しくねえよ!」

 

「ほぅ」

 

姉さんが後ろでにやりとしたが気にしない

 

「……」

 

秋葉はそれでも暴風を押さえない。

紫電で解除するかと思ったその時

 

「こ、こらぁー!何をやっているんですか!」

 

見ると湾岸署から駆けつけてきたんだろう。

小柄な婦警が、生徒達をかき分けるようにアサルトに入ってきていた。

誰か通報したか……

 

 

「逮捕します!この場の全員緊急逮捕します!」

 

 

 

ホイッスルを鳴らしながら言う婦警に生徒達は慌てて顔を見合わせる。

 

キンジ達の方を見るとカナはふぁとあくびしている。

やる気を失ったのか?

 

「あなた達も解散しなさい」

 

婦警の登場で秋葉も気が抜けたのか暴風を収めるとがくりと前に崩れ落ちた。

 

「お、おい!」

 

秋葉が倒れる前に抱えると完全に気絶していた。

 

「中々、たらしになったな優希、お姉ちゃん驚いたぞ」

 

といいながらふわりと空中に飛び上がる。

 

「こ、こらぁ!待ちなさい!」

 

婦警が慌てて手を振り上げるが姉さんはウインクしながら

 

「またな、優希」

 

「姉さん!」

 

パッと姉さんはいきなりその場から消えた。

テレポートか……

 

 

「ケッ」

 

ざす、と不機嫌そうに飛び降りた蘭豹が、生徒達の方を振り向いた。

お前ら失せろ!という強烈な殺気に、生徒達は走って解散していく。

大股で婦警に近づき俺より高い背を曲げて小柄な婦警にガンをたれた。

 

「ケッ。サムい芝居で水差しやがって。後でマスターズに来いや―峰理子」

 

え?

俺が婦警を見ると

 

「……くふっ。くっふふふふ!」

 

と頬をひきつらせつつ笑い出した。

おいおい……わかんなかったぞ

カナがアクビをしながら踵を返して出口に歩いていく。

追撃するか悩む。

姉さんよりは補足しやすいだろうが腕にはお姫様だっこした気絶してる秋葉がいるし、蜂の巣をつつくみたいなことはしない方がいいな……

見るとキンジは防弾制服に撃たれたのか脇腹を押さえて膝をつき、アリアは立ったまま気絶してたらしく、次の瞬間には膝を折ったかと思うと顔面から地面に倒れ込んだ。

 

「アリア……!」

 

キンジが慌てて助け起こす

秋葉を抱えたまま近づく

 

「大袈裟にさわぐなやアホウが」

 

蘭豹が口をへの字に曲げながら言った。

 

「大袈裟も何も……殺されるところだったろ」

 

いや、キンジカナはわからんが姉さんは……

 

「アサルトを抜けてからホンマに昼行灯になりよったなぁ、遠山。あのアマども、峰理子の猿芝居に気づいてシラケる前から殺気なんぞ無かったやろが」

 

やはりか……あの人工島の件からカナや姉さんは考え方を変えている。

そもそも、姉さんが本気で殺す気できたら10秒も持たないだろう。

秋葉の命がけの奥義も姉さんの前では無意味に等しい

それに、蘭豹はカンの鋭さは信用できるからな

 

「あの女の技術はガキ共の教育に良さそうやったからな。ホンマの殺しあいやと思わせて注目させただけや。それと椎名、水無月希と同性同名とかいっとったあの女、本人やろ?」

 

「蘭豹……先生このことは……」

 

「けっ。うちにはどうでもええことや」

 

そういいながら蘭豹は再び瓢箪から酒を飲むのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンビュラスにキンジと怪我した二人を背負って向かう途中、アリアは目覚めたが秋葉は眠ったままだった。

だが、一言も俺達とは口を聞いていない。

無人のアンビュラスの救護室に入る。

アリスも今は武偵病院で実習か……

理子は婦警の格好で消えた。

 

秋葉をベッドで寝かせる。

とりあえず、後でチョコレートを買いに行くか……秋葉のステルスは糖分で補えるらしいからな

 

 

「……どうして止めたのよ」

 

振り替えるとキンジに手当てされているアリアがベッドね上で体育座りして顔を伏せていた。

 

「止めるも何ももう勝負はついてただろ?」

 

「ちがう!」

 

アリアはうつ向いたままヒステリックにさけんだ

 

「あんたが邪魔しなければいくらでも勝つ手段はあったんだもん」

 

「自分ごまかすな。兄さ……カナとお前の力量差は誰の目にも明らかだった」

 

「力量差があっても勝たなきゃいけなかったのよ!」

 

「……」

 

姉さんがアリアと戦ったなら俺にも言えることはあるがカナのことはキンジに任せるしかない。

 

「あれはカナ!理子が紅鳴館に行くときに化けた、あんたの……昔の知り合いで……あの時あんたが一目見ただけで動揺した女!そいつがいきなりアサルトに現れて決闘を挑んできた。逃げるわけにも負けるワケにもいかなかったの!それをあんたが……」

 

「アリア……」

 

俺は諭すように割り込む

 

「お前より強い武偵なんてごまんといるんだ。姉さんだって……」

 

「優……あんたのお姉様にだってあたしは負けるわけにはいかない!あたしは強くなくちゃいけないの!いくら差戻審になったって……ママはまだ拘留されてる!1審の終身刑だって消えていない!あたしが強くなくちゃ……ママを……助け……られ……ない……」

 

う、うとアリアは泣き出してしまう。

そう……アリアの母親かなえさんの裁判は可笑しすぎるほど上から圧力がかかっている。

土方さんが一度はかなえさんとアクリル板なしの面会をとりつけたが、一度きりで再び、時間は短くアクリル板に戻ってしまった。

土方さんは舌打ちしつつ、謝っていた。

公安0ですら、押さえ込むほどの相手……政府レベルだろうな……多分

 

「ああ、お前は強い。強いよ俺はそれを分かってる。だから負けを受け入れる強さを持て。あいつを相手にしたら次は殺されるぞ」

 

「……」

 

「カナとはもう戦うな」

 

「……」

 

「わかったか?」

 

「…………」

 

アリア……都合が悪くなると黙るくせがあるな……

 

「そんなに頬を膨らますな。フグみたいだぞ」

 

アリアは下を向いたままキンジの胸をポカポカ殴り出した

 

「こら、なんで俺に八つ当たりすんだよ!」

 

「うるさいうるさいうるさい!もうあんたなんかどっか行け!」

 

後退したキンジにアリアはコールド缶を投げつけて頭に命中させた。

キンジが逃げていく。

 

「お、おいアリア」

 

やばいと思った瞬間にはガバメントが俺に向いた。

 

「あんたも出てけぇ!」

 

うわああああ!

 

慌てて外に逃げる俺だった。

まあ、秋葉はアリスに電話しとくか……

 

 

 

 

 

 

 

 

キンジとやれやれと部屋に戻ったんだが、俺達の心労は終わってなかったみたいだな……

 

キンジがリビングでひっくりかえってガツンと後頭部を壁にぶつけてしまう

 

「よう弟」

 

すって右手をあげソファーの横に立ってる水無月希、そして緋色に燃える夕空を背景に、ソファーでカナが昼寝していたのだ。

 

 

 

 

もう、勘弁してください姉さん


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