緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第133弾 鉄のキス

「は……はぁはぁ」

スブリと肉体から異常な金属が抜ける。

膝をついたまま、反転させて立ちあがろうとするが激痛が走り体に力が入らない。

 

「……」

 

虚ろな目をしたアリアは技術も何もないまま、逆手に小太刀を持ち上げる。

や、やばい今度刺されたら取り返しが効かねえ!

腰から携帯用のワイヤーを取り出すと後方に投げ巻き戻した瞬間、アリアの小太刀が俺のいた場所に突き刺された。

 

「ぐ……」

 

握力が入らずに携帯用ワイヤーが手から離れ、階段を滑り落ちる。

血がどくどくと流れている。

まずい、止血しないと……

 

「やめろアリア!正気に戻れ!」

キンジがべレッタをアリアに向けて言うが発砲はできない。

「……」

 

アリアは虚ろな目をキンジに向けるとガバメントを容赦なく発砲

 

「くっ!」

 

キンジはその反射神経で弾を交わすが反撃はできない。

 

「……」

 

アリアはガバメントを左手に持ったまま小太刀を右手にカツンカツンと階段を降りてくる。

キンジとアリアのやり取りの間に、緊急用の救急道具で傷口を塞ぐ。

とは言え、圧迫して包帯で巻いただけではっきり言えば時間が僅かに伸びただけに過ぎないだろう。

刺される瞬間、なんとか致命的な場所にはもらわなかったが内蔵が無事でも血が止まらない。

武偵手帳から復活薬のラッツオを打ち込んでから立ち上がる。

状況からして戦えるのは後僅かだ。

はっ、ここは地下3階だ……死んだなこれは……

だけどこの子だけは死なせない!

 

紫電を抜くと前に構える。

そう言えば……

 

ザザザと霞がかかるような映像が頭によぎる。

昔、同じように死にかけたことあったな……確か、あの時は狙撃から女の子を……

 

「シンデ……ユウ」

 

階段を蹴ったアリアが特攻をかけてくる。

やはり、暗示で多少は技に切れがない。

悪いなアリア!

 

「飛龍一式!風凪!」

 

居合いに構えを代えてから抜きはなつとカマイタチがアリアを襲った。

傷つけないように打撃を与える。

黒いドレスを着たアリアが衝撃を受けてぶっとばされて壁に叩きつけられた。

意識はないも同然なんだ……多分……

ゆっくりとアリアが立ち上がるが正気に戻った様子はない。

やっぱり、駄目か……

く……

脂汗が出ているのが分かる。

薬で無理矢理戦ってるが風凪一発でこれかよ……

血はまだ、出ている。

人は血液が三分の一失われればショック状態で死ぬ。

止血はしたが止まらない以上いつか限界はくるだろう

 

どうする……どうすりゃいいんだよ……姉さん

 

「フフフ、いい調子ですのアリア」

 

いつからいたのか……声に振り向くとローズマリーが至近距離に立っていた。

 

「貴様!」

 

背後のアリアを警戒しながらローズマリーに向かい紫電を薙ぎ払う

 

「もうすぐ私の願いは叶いますの」

 

ローズマリーはばさりとコウモリのような翼を出すとふわりと俺の刀から逃れた。

 

「願いだと?」

 

「優希、私がアリアに駆けた暗示はあなたを殺すこと。暗示を解きたいならあなたが殺されるかあたながアリアを殺すしかありませんの」

 

俺にかけた暗示だと……

とっさに、暗示が解けた瞬間を思い出す。

あれは姉さんを刺し殺した瞬間に解けた。

死ぬほどショックな相手を刺せば暗示は溶けるということか?

俺を刺した時点で戻らないということは……

 

「優希」

 

ニコリとローズマリーは天使のような笑顔で微笑んだ。

 

「アリアにとって貴方は遠山キンジと並び大切な存在。昔の私の暗示ならあなたを刺した時点で溶けていましたの。なぜか分かりますか?」

 

「改良版ってわけか……」

 

「そうですの」

 

つまりアリアの暗示をこの場で解く方法はアリアに殺されることか……

初めから、俺はアリアを殺す選択肢はない。

昔、多くの人を殺した罰を受ける時がきたんじゃねえか……

だが……

微笑む、ローズマリーを見ていると違和感を感じる。

自意識過剰ではなくこいつは俺にこだわっていたはずだ。

なぜ、今になって殺しにかかる?

 

「さあ、殺しあってくださいな」

 

「!?」

 

「優!」

 

キンジが動こうとした、瞬間蒼い炎の壁がキンジと俺達のいた、空間に立ち上った。

 

「邪魔はいけませんの」

 

ギイイイン

と金属が激突する音、紫電とアリアの小太刀つばぜり合う。

「あ、アリア!正気に戻れ!」

 

殺されてアリアが正気に戻るならと考えたがここにはローズマリーがいる。

ただですむわけがない。

 

「後5分ですの♪」

 

フフフと笑いながらローズマリーは言う。

 

「アリアのにつけられた首輪には青酸カリが仕込まれてましてよ優希、後五分でプスリですの」

 

なっ!

 

「アリアが正気に戻れば外れましてよ優希」

 

「信用できるか!」

 

クラリと貧血を感じながら言うとローズマリーは笑う

 

「フフフ、ヴァンパイアの誇りにかけて誓いますの。教授にもそれが絶対条件と念を押されてますから」

 

教授という人物が誰かと疑問が出るが考える余裕はないそうこうしてるうちに1分だ。

後、4分

 

「アリア!アリア!」

 

紫電は放出系のステルスは無効に出来るが暗示はどうにもならない。

 

「かなえさんを!母さんを助けるだろ!正気に戻れ!アリア!」

 

右左と小太刀を繰り出してくるアリアの攻撃を紙一重でかわすがついに右手が小太刀で切りつけられる。

 

「ぐ……」

 

「……マ……マ?」

 

アリアの動きが僅かだが鈍った。

アリアにとって、誰よりも大切な人

 

「そうだ!かなえさんだ!イ・ウーから助けるだろ!」

 

「あ……う……」

 

だが、暗示が溶ける様子はない動きが鈍った程度だ。

 

「無駄ですの。優希後、1分ですの」

 

駄目だかなえさんの話だけでは間に合わない。

それに体ももう限界に近い

いや、待てよ……

死ぬほどのショック……

俺は頭にあることを思い出した。

え?やるの?ここで?

ええい!迷ってる暇はねえ!

零式陽炎を発動させ、動きの鈍ったアリアに肉薄するとアリア両手首を掴んで持ち上げると壁に叩きつける。

目が虚ろなアリアは脱出しようと僅かに動いた瞬間俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリアの唇を自分の口で塞いだ。

つまるところ接吻、キスだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ!」

 

後ろからローズマリーの驚愕した声が聞こえてくるが知るか!

ああ、触れてはいけないものに触れた感じ、かわいいと思っていた女の子との鉄の匂いがまじったキス。

血のファーストキスだよ。

深く、キスし虚ろだったアリアの目が見開かれ光が戻る。

 

「む、むー」

 

始めは、両手で押し返そうとしたアリアだがやがてくたりと手から力が抜けた。同時にカチリと音がして、首輪が左右に割れて地面に落ちた瞬間、首輪から針がカチっと現れ、液体を放出した。

ギリギリだったな

 

「「ぷは」」

 

アリアが正気に戻ったと判断すると唇を離した。

 

「ゆ、ゆゆゆ優!あ、あんたにゃ、にゃにしてくれるのよ!き、キンジに続いてあんたまで無理矢理!か、かざあにゃ……」

そうか……アリアのファーストキスはキンジか……ちょっと嫉妬するな……

 

「悪いなアリア緊急事態だからな」

 

死ぬほどのショック。

つまり、アリアにとっては縁が遥かに遠い色恋沙汰、つまりキスは死ぬほどのショックだ。

ローズマリーにとってはこんなことで暗示がとけるとは思わなかったろうな。

驚愕した声聞こえたし

 

「だ、だからって!」

 

「子供は出来ないぜ言っとくが」

 

にっと笑ってやる。

ああ、もう……

 

「かざあ……」

 

「使えアリア、炎向こうにキンジがいる紫電で炎を切り裂いて……」

 

そこまで言って視界がプツリと暗闇になった。

体の感覚がない……

 

「優!凄い怪我!優!?」

 

アリアの声が聞こえた気がした。

 

アリア、キンジ、レキ、理子、秋葉……母さん鏡夜、咲夜……みんな……ごめんな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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