緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第127弾 兄弟対決優希vs鏡夜―刹那の決闘

「優、あんたはいい奴よ」

 

アリア……

 

 

「……」

 

薄く微笑むローズマリーが動かないアリアの体に手を置いた。

やがて、蒼い炎が彼女を……

師匠の……姉さんの時のように……

 

駄目だ……やめろ!

 

 

 

 

 

 

 

「やめろぉおおお!」

 

 

はっとして起き上がると薄暗い部屋の中だった。

 

「ここは……」

 

布団をどけると頭に激痛がした。

 

「っ……」

 

包帯が巻かれており手当されたようだった。

部屋は畳の和室で昨日使った部屋ではないようだ。

 

「アリア……」

 

痛みをこらえながら立ち上がるり、ふすまを開ける。

 

「……」

 

レキがいた。

廊下でドラグノフ狙撃銃を肩にかけて体育座りをしていた彼女は顔を俺に向けてくる。

 

「レキ……」

 

言葉が見つからない。

脅されていたとはいえ、黙ってローズマリー達と戦い、アリアを奪われたのだから……

 

「事情は……聞いたか?」

 

「はい、秋葉さんから全て聞きました」

 

「それで……どうなってる?俺はどれくらい寝ていた?」

 

「2時間ほどです。捜索隊が山に入っていますがアリアさんは見つかっていません」

 

「そう……か」

 

今は椎名の家の主戦力は日本各地に散っている。

捜索に避ける人員も限られるだろう。

志野さんに会わないといけないか……

度重なる襲撃で実家もピリピリしてきたな……

魔女連隊もそうだがローズマリーに対抗できる戦力が今はいないからな……

 

「レキ、俺は今から……」

 

「優兄ぃ!」

 

うわ!

どーんと激突するように咲夜が背中からぶっかってきた。

左目には涙を浮かべている。

 

「大丈夫なの?頭の怪我」

 

「俺はな……」

 

咲夜の頭を撫でながら

 

「だが、アリアが……」

 

「アリアさんは今、捜索してもらってるよ。優兄ぃは休んで……」

 

「いや、志野さんに会う」

 

「お、お母さんに?」

 

「ああ、居場所がわかり次第強襲する。戦力を借りないといけないからな」

 

ローズマリーもそうだが仮面の男、Rランクとまでは言わないが化け物クラスであるのは否めない。

 

「……優さん」

 

俺が振り向くとレキが立ち上がっていた。

 

「その時は私も連れていってください」

 

「いいのか?」

 

「はい」

 

アリアを救うためには戦力が必要だ。

次に対峙する時は切札を使わせてもらう。

 

「ありがとうレキ」

「はい」

 

無表情でレキは頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついてくると言う2人と別れて廊下を歩いていると

 

「「優!」」

 

キンジと理子が走りよってきた。

 

「どういうことだ優!なぜ、アリアをみすみす拐われた?」

 

男言葉で捲し立てる理子に俺は事情を話す。

 

「優、私も連れていけ」

 

「俺もだ優、どこまでやれるか分からないが……」

 

おまえら……

不覚にもじんわりきたぜ。

 

「ありがとう理子、キンジ、その時は頼むぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人と別れて志野さんの部屋の前に来る。

護衛の近衛に面会を願い出ると暫くして、中に入るようにと言ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

「事情は分かっています」

 

入るなり、志野さん……いや、母さんは布団から上半身を起こして言った。

俺は畳に正座する。

 

「アリアの行方は何か分かりましたか?」

 

「……ええ、目星はついています」

 

その言葉に俺は歓喜した。

 

「どこですか?すぐに助けに……」

 

「それを貴方が知る必要はありません」

冷たく冷淡に、母さんは言い放ったが俺は引かない

 

「俺の責任なんです……だから」

 

「……優希」

 

母さんはじっと俺を見ながら

 

「ホームズ家の救出は近衛が実行しています。あなたは、明日の後継者選びの……」

 

「そんなことはどうでもいい!今の家にローズマリーに対抗できる戦力はない!月詠も戻ってないんだろ!」

 

腹が立った。

こんな時にまで、後継者の争いの心配か……

後継者選びなんてアリアに比べたらどうでもいい!

 

「確かに……」

 

母さんは表情を変えず

 

「殲滅は出来ませんが救出のみなら現行の戦力で可能です。あなたは、もう休みなさい。その怪我も癒えてはいないのでしょう?」

 

母さんは教える気はないようだった。

これ以上、話しても平行線でしかない。

「分かりました……」

 

アリア救出部隊は動いているらしい。

ならば、それに望みをかけるのも1つの出だ

 

「……優希」

 

部屋を出る前に母さんに声をかけられる。

 

「ホームズ家の娘は貴方にとって何なんですか?」

 

俺は振り替えると迷いなく言い放つ

 

「大切な友達で俺のチームメイトです」

 

「……そうですか」

 

母さんはそれ以後無言になったので部屋を後にする。

こうなった以上、自身の情報網を駆使するしかないだろう。

携帯を取り出すと電話をかける3コール後俺は相手が出たのを察知した瞬間

 

「アリアが拐われた」

 

「いきなりだね」

 

アリアの護衛を依頼してきた男。

何者か知らないが相当な人物だと俺は見ている。

千鶴に頼んでもよかったが時間が惜しい。

 

「ああ、単刀直入に聞く。アリアはどこだ?」

 

「ほぅ」

 

依頼主は面白そうに息をはいた。

 

「なぜ、僕が知ってると推理を?」

 

「推理じゃないカケだ。あんたはアリアの護衛を依頼するような人物だ。衛星やあるいは発信器なんかでアリアの位置を把握してるんじゃないか?」

 

「知ってると言ったら?」

 

「場所を教えてくれ。アリアが殺されてしまう前に」

 

焦ったような声で言う。

 

「ふむ……確かに僕はアリアが拐われた場所を知っているが君はローズマリーに勝つことはできないんじゃないのかな?」

 

「勝てないかもな。でも、関係ない。アリアだけは救出する」

 

「決意は堅いようだね。いいだろう。アリアは君の家の近くの旧椎名本邸だ」

 

「ありがとう……」

 

名前を呼びたかったが俺は相手の名前を知らない。

だから、礼だけ言って電話を切る。

半分はかけだったが一体、何者なんだろうな依頼主は……

いや、それより今は後1つ切札を……

そこに向かう途中

 

「優」

 

庭の曲がり角からキンジ、理子、レキ、ハイマキが現れた。

ハイマキは甲冑のような金属の鎧を着けている。

 

「お前ら……」

 

「行くんだろ?アリアを助けに」

 

キンジの声の感じが違う?こいつはヒステリアスモードか?

後に知ったことだがこれはヒステリアスモードベルセ、女を奪われた時になる攻撃的なヒステリアスモードなんだそうだ。

 

「いいの?」

 

来るなとは言わない。

一人で救出は不可能に近い。

仲間がいる。

 

「水臭いぞユーユー、理子達友達じゃん」

 

「……私は優さんと行きます」

 

「ぐるおん」

 

仕方ないやつだと言うようにハイマキが吠える。

 

 

「ありがとうみんな」

 

「さっさとアリアを助けにいこうぜ優」

 

「いや、キンジその前に取りにいかないと行けないものがある」

 

「取りにいくもの?」

 

理子が可愛らしく小首を傾げた。

俺は頷くと

 

「紫電、ステルス殺しのあの刀がいる」

 

俺の刀は破壊されてしまったからな

 

「話にあった例の刀か……確かに、ローズマリーに有効だな」

 

「どこにあるのユーユー?」

 

「宝物庫だ。時間がない行くぞ」

 

「はい」

 

と、レキ

 

「あ、待ってよユーユー」

 

早足で目的の建物の前にくると入口に人影があった。

やはり、警備がいるのは仕方ないか……最悪、倒してでも……

 

「遅かったなクズ」

 

「鏡夜……」

 

鏡夜は壁から背中を離すと

 

「お探しのものはこれだろ?」

 

「それは……」

 

鏡夜の手に会ったのは紫電だった。

見間違えるはずもない。

父親と姉さん、秋葉の母親を殺した刀

 

「それが今いる。貸してくれ鏡夜」

 

左手を前に出して言う鏡夜は目を閉じて馬鹿にしたように

 

「女を奪われて泥棒の真似事か?本当に貴様はクズだな」

 

 

「おい、お前!」

 

理子が殺気を放ちながら怒りの視線を向ける。

ハイマキは唸りだし、キンジは黙って鏡夜を見ている。

レキは変わらないが無表情で鏡夜を見ている

 

 

「クズでいいさ」

 

「何?」

 

鏡夜が目を開ける。

「だから、その紫電を貸してくれ。鏡夜は抜けないんだろ?」

 

「くっ……」

 

鏡夜は舌打ちした。

紫電にはとある鬼道術がかかっているらしい。

資格はないものには抜くことができない術。

これは震電にもかかってたらしい。

俺は抜けて、鏡夜は抜けなかった。

プライドの高い鏡夜にはさぞ屈辱だっただろう。

 

「必ず返す。だから、今夜だけ貸してくれ鏡夜!」

 

「そうやって……貴様はまた、俺を馬鹿にするのか?」

 

「……何言って」

 

「欲しいなら力ずくで奪え!明日を待つまでもない後継者選び、ここで決めてやる」

 

「時間がないんだ鏡夜!明日必ず戦う。だから……」

 

「抜け、優希」

 

そう言って鏡夜は紫電を腰につけ、違う刀を抜いた。

鏡夜……いい加減にしろよ

 

「どうする優?みんなでかかるか?」

 

すでに、みんな臨戦態勢だ。

だが……

 

「必要ない」

 

俺は戦闘狂モードよりも冷たい視線で鏡夜を睨む

 

「10秒で終わる」

 

無理だと全員が思っただろう。

俺は鏡夜の前に立つと調達した刀を抜いた。

 

「合図はいらないな?」

 

「ああ」

 

言いながら、俺は1つのボタンを数回押す。

 

ドンドンとワイヤー発射装置が地面に落ちる。

 

「き、キンジあの装置」

 

「ああ、かなり重いな」

 

理子とキンジが絶句しているのが分かる。

そう、俺はいつもあえて重いワイヤー装置を着けている。

6個以上で数6キロの重み

 

「鏡夜、零式が使えないって思っただろ?」

 

濃密な殺気が鏡夜にぶつけられていく。

恐らく、鏡夜の目には俺が殺気でぼやけて見えてるはずだ。

 

「飛龍零式『陽炎』」

 

「え?」

 

理子が呆然とした声を出した。

優希の姿がぼやけて消えた瞬間、鏡夜が倒れたのだ。

その背後に優希は現れる。

紫電を手にしながら悲しそうに弟を見る。

鏡夜は思っていたんだろう。

兄を超えた絶対的な自信。

それを自分は圧倒的な暴力でねじ伏せたのだ。

重いワイヤーがあっては勝てない。

鏡夜……お前は強いよ……少なくてもブラドやシンやジャンヌには俺はこの切り札を使わなかった。それだけでお前は強いんだ。

 

「……」

 

かける言葉が見つからず俺は弟に背を向けて歩き出した。

アリアを助けるために


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