緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第126弾 敗退

剣は一本折られてもう、蒼龍は使えねえ……武器破壊が出来るならあの仮面の男と接近戦はかなり厳しいものになるだろう。

そして、ローズマリー……

 

「……」

 

俺は油断なく現場を認識する。

背後5メートルには秋葉、アリアまでは100メートル近い距離がある。

二人を掴んで撤退……

無理だ。

車に乗り込む前に撃破されるのは目に見ている。

援軍を望むのは都合がよすぎる。

なら、どちらかを倒して……

 

マガジンには武偵弾が後、2発。

閃光弾と音響弾だ。だが、これ系の弾丸を持ってることを相手が気づいてるとしたら……

使うか奥の手……

たが、この場所で剣が破壊された状況で使うのはリスクが高すぎる。

やはり、武器はこのままでやるしかないか。

 

「ヘヘ、ローズマリーお嬢さん、あいつ私にくれませんかね?」

 

仮面の男の言葉にローズマリーは見下すように男を見る。

 

「殺されたいんです乃?」

 

にこりと微笑ながら言う。

その周囲は高温のため陽炎のように揺れている。

 

「おー、恐い恐い。いやね。純粋に力比べしたいんですわ。椎名の後継。水無月希……いや、椎名希の弟とね」

 

「……」

 

陽炎は消えない。

 

「もちろん、手順は守りますよ。適度にやりますわ」

 

「……次の準備があますの優希」

 

クスクスと笑いながらローズマリーはお辞儀する

 

「それでは失礼しますの」

 

な、お前!

俺は驚愕した。

背後に跳躍したローズマリーは気絶したアリアをお姫様だっこで抱き上げたのだ。

ヴァンパイアの力で持ち上げて……

 

「目覚めたら厄介ですの」

 

ローズマリーはそういって注射器を取り出した。

させるかよ!

ガバメントで注射器を破壊しようと狙うが仮面の男が地を蹴る。

構わず発砲するが弾丸は地面から蒼い炎が壁のようにローズマリーと俺の間に巻き上がり弾丸を融解させた。

正面から駄目なら!

左のワイヤーを発射し、木に命中させ、巻き戻す。

 

「おおっと!待ちなさいな」

 

仮面の男も跳躍する。

武器破壊を恐れて破壊された機神の鞘で受け止めるが拳と激突した鞘はベニヤ板見たいに砕け散った。

当然、拳が俺の胴体にめり込んだ。

 

「ぐっ!」

 

ぶっ飛ばされ、ワイヤーで勢いを殺しながら地面に落下。

まだ、戦える。

ガバメント、デザートイーグルをフルオートで男に向かい発砲する。

横に走りながら男は 弾き、あるいはかわした。

こんな化け物、日本にまだいたのか!

その間に、ローズマリーはアリアに注射を終えた。

びくんとアリアが痙攣したように見えた。

 

「貴様!」

 

「よそ見してんなよと!」

 

再び、男が接近してくる。

とんでもない速さだ。

鬼道術で身体能力を向上させているのか……

銃が効かないなら刀で戦うしかねえ!

 

「……」

 

神経を極限まで集中させる。

接近してくる男に全神経を集中。

ゴッと男の拳が振るわれた。

4発の連打を体を捻ってかわす。

腰のワイヤーを発射しさらに、振りかぶる。

 

「飛龍一式!風切!」

 

ダンとその場を踏むと豪速の一撃を男に叩きこむ

 

「うお!」

 

男は拳で受け止めるがよろめいた。

武器破壊は姿勢を安定させないと使えないらしいな。

姿勢を崩したことにより追撃の攻撃を加える。

ワイヤーを発射し、突きを連打する。

ワイヤーがいつ飛び出すか分からない相手にとってはやりにくい攻撃だろう。

反撃の隙は与えない。

キン!

そんな音と共に、俺は驚愕した。

男が刀を指二本で受け止めたのだ。

 

「蒼天流、風取り、いやぁ、簡単にはとらせてくれませんな椎名の後継」

 

右で刀を掴みながら男が左手を振りかぶる。

剣を引こうとしたがまったく動かない。

刀を捨てて離脱をする選択をとらなかった刹那が命運をわけた。

 

「お返しだよっと!蒼天流!龍撃!」

 

左足を思いっきり蹴った。龍の一撃を思わせる一撃が顔面に激突し、俺はぶっ飛ばされた。

 

「がっ……」

 

木に叩きつけられるがすぐに立ち上がろうとするもぐらりと視界が揺れて左膝を地面に付ける。

世界が赤く染まる。

くそ……出血してる……

 

「ハハハ!留めだ。蒼天龍奥義!」

 

男は拳を振りかぶるが

 

「おっと!」

 

ゴオオオと爆風が男のいた空間を薙ぎ払う。

とんと、俺の体が誰かに抱き抱えられる。

 

「秋葉!」

 

気絶していた秋葉だった。

目を覚まして援護してくれたのか……

 

「離脱します!」

 

「ま、待て!アリアを……」

 

ローズマリーは動かないアリアを抱えながら微笑んでいる。

 

「アリアさんを助けるのは無理です。あなたを失うことはできません」

 

風が俺達の周りを包む。

爆風と共に舞い上がる。

 

「離せ秋葉!アリアが!アリアが!お前を助けにきたんだぞあいつは!」

 

「私は椎名の近衛。戦えば全滅します。あなたの命を優先する」

 

地面が遠ざかっていく……

 

「あ、アリア……アリアああぁ!」

 

アリアの方に手を伸ばしながら俺は意識を失った。

意識を失う瞬間、秋葉の声が聞こえた気がした。

 

「ごめんなさい……アリアさん」


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