緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第114弾 若奥様騒動

「え? 師匠でかけるんですか?」

 

木の玄関に腰を下ろし、ブーツの紐を縛る師匠を見ながら少年は言う。

 

「ああ、ちょっと用事があるんだ。なんだい優希?私がいないと寂しいのか?」

 

かっと顔を赤くした少年……優希は顔を真っ赤にしながら

 

「うるさい馬鹿師匠!さっさと、出掛けろよ!」

 

「はいはい」

 

女性だというのに黒のコートを手に取ると女性は出ていった。

 

「帰りは夜になると思うけど今日は最低限の鍛錬したら遊んでていいぞ」

 

「え!本当!」

 

少年がぱっと顔を輝かせる。

 

「うただ家の本宅からはでちゃ行けないぞ?」

 

「なんでだよ?」

 

女性はふっと笑いながら

 

「お前はよく迷うからなぁ。フランスしかり、中国しかり、ルーマニア、ロシアしかりな」

 

「ルーマニア……」

 

少年の顔が曇る。

思い出すのはあの金髪の少女……

 

「優希」

 

それを察したのか女性は優しく

 

「あの時は仕方なかった。でも、彼女はもう、ルーマニアのブラドの元を逃れてるはずだ」

 

「本当?」

 

「ああ」

 

疑う余地はなかった。

この人のいうことに間違いなんてあるわけがないのだ。

 

「あの子に会えないかな?」

 

自分で助けられなかったことは不本意だが逃げられたならあってみたかった。

 

「そのうちな」

 

そういいながら師匠は出ていってしまった。

 

「よし、じゃあやるか」

 

今日もあそこに行こう。

きっと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

ちゅんちゅんと雀の声を聞きながら重たい目蓋をうっすらと開く。

無駄に広い天井を見ながらため息をついた。

今の夢はあの日の朝か……

どうも最近、忘れてることが夢に出てくることが多い気がするな……

同時に悲しくなってきた……

師匠……

そこで、俺は何気なく横を見たんだが……

 

「……」

 

「え?……」

 

「おはようございます優さん」

 

ええええ!なんでレキが俺の部屋の壁で寝てたんだ!

なんと、体育座りでドラグノフを肩に置いたレキがいていたのだ。

 

「ち、ちょっと待て!レキ」お前いつからそこに……」

 

「深夜からです」

 

無表情に無感情の抑揚のない声でレキは言う。

部屋に入ってきたのお前か!

 

「不法侵入だ!まあ、レキならいいか……」

 

本心から言う。

キンジ以外だと大変なことになりそうだからだ。

理子は布団に潜り込んで来かねないし、アリアは俺を踏みつけるだろうからな

 

「で?なんで俺の部屋にいたんだよ一晩中」

 

俺だからいいけど好意もない男の部屋に夜中にくるなよレキ……相手が悪かったら襲われるぞ

 

「風に命じられました。優さんの傍であなたを護衛しろと」

 

ハハハ、この子も結構、ずれてるよな……

すっとレキが立ち上がり俺の前までやってくる。

 

「着替えるから出てくれよレキ」

 

「はい」

 

流石に、女の子の前で着替えるわけにはいかないからな

レキが外に歩き出そうとした瞬間

 

「優兄!起きてる?」

 

コンコンと控えめなノック……

ま、まずい

 

「や、やばいどうしよう」

 

「?」

 

レキがお構いなしに部屋の出口に向かったので慌てて手を掴んで引っ張る。

うわ、軽いなお前とか言ってる場合じゃねえ!

 

「寝てるのかな?フフフ、起こしちゃお」

 

や、やばい入ってくる!

朝に女の子と二人きり、夜中に見つかるよりはいいがどう考えても死亡フラグばっきばっきにたってるよ!

 

「こ、こいレキ!」

 

焦った俺はレキをベッドに押し倒して動くなと懇願してから俺もベッドに飛び込んだ瞬間、ドアが開いた。

 

「あれ?優兄起きてるの?」

 

「あ、ああおはよう咲夜」

 

「うん」

 

ありえんだろこれは!

布団が分厚いのとレキが小柄だからばれてないが俺の布団の中にはレキとドラグノフ……

なんて、カオスなんだ!

と、とにかく咲夜を

 

「さ、咲夜なんだ?」

 

「うん、ご飯食べに行こう優兄」

 

「わ、分かった!い、今俺、今、下、トランクス一丁だから着替えたいから出ていってくれないか?」

 

「え?」

 

咲夜がじーと布団を見てくる。

ま、まずいてか、今気づいたが俺の足にレキの体のどこかが接触してるよ!

 

「さ、咲夜?」

 

「あ、ごめん優兄直ぐにでるよ」

 

ぱたぱたと和服を揺らしながら外で待ってるねと出口に向かう。

た、助かったぞ。

だが、運は味方しなかった。

 

「おはようございます!咲夜様、優希様」

 

「おはようございます」

 

げ!昨日の小学生仲居と近衛じゃねえか!

「おはよう睦月、日向」

 

 

咲夜は当然知ってるらしい。

小学生仲居が睦月(むつき)でポニーテールの近衛が日向(ひなた)か……

ってそんなこと考えてる場合じゃねえ!

 

「き、着替えるから出ていけ3人とも!」

 

「お着替え手伝います優希様」

 

ニコニコしながら睦月が部屋に入ってくる。

 

「く、来るな!」

 

「? 優希様何を焦ってるんですか?」

 

日向が首を傾げながら俺を見てくる。

 

「あ、あの優兄の布団の下は……」

 

咲夜が何か言おうとしたが睦月の方が早かった。

 

「シーツかえますからどいてください」

 

「や、やめろ!」

 

俺はレキが潜んでいる布団を必死に押さえつけようとしたが睦月が下から布団を上にまくりあげたために下半身だけが持ち上がり

 

「はやく起きて……え?足が二つ?」

 

も、もうだめだ

 

「申し訳ありません優希様……」

 

ひゅんと風の音がし日向が一瞬で俺に肉薄すると布団を掴むと一気に引っ張った。

慌てて、力を込めようとしたが後の祭り。

布団の下からレキが現れる。

もちろん、彼女は無表情で上半身を起こした。

 

「……」

 

ぜ、全員が沈黙してるぞ!

 

「い、いやこれは……」

 

「わーあ!次期椎名の奥様候補ですね優希様」

 

「違う!」

 

全力で否定するが突き刺さるような視線にはっとすると咲夜がアリア見たいに顔を赤くしながら

 

「ご、ごめんなさーい!」

 

と走り去ってしまった。

あああああ!やばい!

 

「それで優希様のどこが気に入ったんですか若奥様」

 

「?」

 

きょとんとしているレキとなんだかいらん誤解と原因を作った睦月

とりあえず頭に拳骨を叩き込んでおいた。

はあ……また、家での立場が悪くなるよ……


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