アリアと秋葉が戦ったその日、寮に戻ってシャワーを浴びてからにソファーに倒れ込むように転がる。
つかれた……今日はいつも以上に疲れたぞ……
秋葉が転校してきてようやく落ち着けたぞやれやれ……
「あむ、ん……優君も食べますか?」
そう、目の前にチョコレートケーキを食べてる秋葉がいるわけないんだ……って!
「あ、秋葉!」
「はむ?」
もぐもぐと口を動かしながら秋葉が首を傾げる。
「なんで秋葉がここにいるんだ!」
ていうかどこから入ってきたんだ?
秋葉は俺が聞きたいことを理解したのか窓を指差す。
風の能力で飛んできたのか……
理子の過去を思い出した副産物でステルスのことも大部思い出したが秋葉の風は応用が聞く……いいなぁ……
「すみません。能力を使用した後はこれを食べないといけませんので」
秋葉の前に並べられたチョコレートの山。
そう、グレードが高いステルスは能力を使うと何かでエネルギーを補いといけないらしい。
個人によってちがうが酒であったり食事であったりとするようで秋葉の場合は甘いものがその対象だ。
「まあ、ゆっくり食べたらいいが食べたら寮に戻れよ」
「寮ですか?」
「ああ、女子寮だ」
「今日から私はここに住みます」
「ああ、ここに……ってなに!」
「私は椎名の近衛です。主の傍から離れず守らないといけません」
いやいや!お前、アリアと戦ったし、なんか誤解されてるからやめてくれ!
「き、キンジの許可とらないと駄目だ!」
「必要ありません。」
駄目だ……こいつどうにかしないと……
「椎名の家に帰るなら私はここには住みません優様」
「だから……嫌なんだ」
「なぜですか?」
「……」
帰れば否応なしに過去に触れることになる。
それに……咲夜と鏡夜を初めとして、実家の連中には味方がいないような気がするんだ。
もちろん、実際は違う。
咲夜は帰ってきてほしいと本当に思っているだろうしな……だが、秋葉……お前は……
「お前は俺に帰ってきてほしいのか?」
「はい、椎名の家の意思は……」
「違う。山洞秋葉としての意見だ」
秋葉はチョコレートを机に置いてから俺を真っ直ぐに見ると確かな怒りを俺に向けた。
「……」
だが、結局何も言わずに立ち上がる
その背中を見ながら幼い秋葉が泣いているあの光景が
「……」
炎の中、彼女は……
「……」
そうだな……逃げ回ってても償いにはならないんだよな……
「分かったよ秋葉」
「?」
「家に帰る」
すこしは、過去に向き合わないといけないらしい……
でも、できたら帰りたくないな……
「……」
秋葉は黙って、玄関の方を見た。
長い蜂蜜色の髪が一瞬だけ見えたが気にもとめなかった。