緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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第103弾 バニラ色のキス

サイド 理子

 

私は倒れた優希の傷の手当てをして膝枕で寝かせて彼の寝顔を見つめていた。

ありがとう……優

、アリア……キンジ

「神崎・ホームズ・アリア。遠山キンジ」

 

キンジが出口を塞ぐようにたっている。優をそっと地面に寝かせる。

 

「あたしはもう、お前たちを下に見ない。騙したり利用したりする敵じゃなくて対等なライバルとみなす。だから下に約束は守る」

 

空に滞空させてたパラグライダーをリールで巻き戻す。

 

「Au revoiir Mes rivaux。あたし以外の外の人間に殺られたら許さないよ」

 

「理子!」

 

背後にアリアの声を聞きながら私はパラグライダーで空を飛んだ。

気分がいい。

まだ、あいつの問題はあるけど優達に頼るかはまた、考えよう。

助けてと言えば優は助けてくれる……

だって彼は理子のヒーローなんだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイド アリア

 

「やられたな。これで二度目だよ」

 

キンジの言葉を聞いてあたしは目をぱちくりした。

そうね。

理子の一番の得意技は逃げ足なのよ。

 

「ったく派手にやりやがる」

 

突然の声にあたしとキンジは振り替えると黒い髪にスーツ、右の腰に日本刀を付けた男が歩いてくる。

 

「だ、誰?」

 

まさか、ブラドの知り合いなんて線もありうる話だが男は左目をとじながらめんどくさそうに

 

「よせ、神崎、遠山。俺は公安0を率いてる土方 歳三だ。そこに寝てる椎名 優希の知り合いでもあるけどな」

 

「公安0だって!」

 

キンジが目を丸くした。

あたしも驚いた。

以前に、公安0の沖田と会ったが今度は公安0を率いているという人まで出てきた。

こいつの人脈はどうなってるのだろう……

 

「そんなに驚くんじゃねえ。別にとって食おうってわけじゃねえんだ。ブラドを引き取りにきたんだよ」

 

「今更、後から出てきてか?」

 

キンジが言う。

無理もない。

言い方からして公安0はあたしたちの戦いを見てたんだ。

 

「そんなに怖い顔すんじゃねえよ。俺達にもいろいろある」

後ろから警察がわらわらと倒れたブラドに群がっていく。

どうやら、逮捕はしてくれるようだ。

 

「あ、でもブラドはあたしのママの裁判の証言を……」

 

そうだ。

これをしないと戦った意味が薄れてしまう。

しかし、土方さんはふっと微笑むと

 

「裁判には出るように計らってやるよ。迷惑かけちまったからな。神崎、明日の朝時間とれるか?」

「え?う、は、はい」

 

「短くてすまねえが1時間だけ神崎かなえとの面会を取り付けておいた。アクリルバンなしの面会だ。野暮な監視はなしだ。ただ、神崎かなえを脱走させようとしたりなんかするなよ?やれば俺達が責任を持ってお前を殺さねえといけなくなるからな」

 

え? ママに?

1時間も……アクリリル版なしで?

今までは面会時間はわずか数分、しかもアクリリル版越しだった。

常識では考えられない。

 

「一体どういうルートを使ったんです?」

 

キンジがあたしの考えを読んで言う。

 

「大したことじゃねえよ。仕事柄、上には顔が聞くんだよ。それに、今回の面会は優希の希望だからな」

 

「優の?」

 

あたしは驚いて優を見る。

 

「ああ、ブラドを倒して逮捕させてやるからアリアとかなえさんを面会できるようにセッティングを頼まれてな。いくらか、こいつには仮もあるから頼まれたんだがな。それに、個人的にも不当逮捕の人間に会えないのはおかしいと俺は考えてる」

 

まただ……沖田といい公安0の人間はママが無罪だと確信しているようだ。

 

「ま、神崎かなえの無罪を知ってるんなら!」

 

なぜ、助けてくれないのと言おうとしたが土方は首を横にふる。

 

「証拠が揃っちまって裁判で有罪が確定してんだ。俺達公安0に出来るのは証拠を捏造した。犯人を殺すことだけだ。だから、神崎、神崎かなえの無罪を証明したいなら犯人を捕まえ続けろ。俺も可能な範囲で協力してやるよ」

 

ぐっと唇をかんでそれ以上の追求はやめる。

ママと直接面会できる。

今はそれでいい

気絶している。

優を見てなぜか顔が暑くなった。

ど、奴隷のくせに本当によくわからないやつね……

理子を助けて、あたしを気づかって公安0に働きかけてくれていた。

 

ありがとう優……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、お兄さん相変わらず不死身ですねぇ。化物と戦って打撲や擦り傷、軽い輸血や点滴だけで2日入院だけですむなんて」

 

「余計なお世話だアリス!てかなんでお前が武偵病院にいるんだよ!」

 

頭に包帯を巻いて全身、擦り傷だらけの俺が言う

 

「私、お兄さんの担当ですからぁ」

 

「最悪だ……」

 

いつも中華料理屋炎でバイトをしているアリスはアンビュラスのSランク武偵でもあるのだ。

 

「今日は安静にしといてくださいよお兄さん?明日には退院できますからねぇ」

 

出ていってしまったアリスの方を見ながら俺はため息をついて書類を取り出した。

司法取引の書類だ。

また、書くのかよ……

まあ、ランドマークタワーの屋上で炸裂弾使ったりしたから仕方ねえか……

でも、夜でいいや。

ぱさりと書類の束の作成を諦め、布団を被るといい眠気が襲ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かちゃりと音がする。

浅い眠りと半覚醒状態の俺はバニラの香りから理子だと推測する。

だが、眠いから体を動かしたくないから寝たふりするか

 

「寝てるのか?優?」

 

男しゃべりで理子が言ってくる。

裏理子だな。

 

「……」

 

しばらく沈黙が続く、うう……理子俺の寝顔見てるのか?

 

「ありがとう……優助けてくれて……」

 

バニラ香りが濃くなり、唇に何かが……

!?

慌てて目だけ開けると目を閉じた理子がどあっぷで……さらに、理子がゆっくり目を開けた。

 

「……」

 

「……」

 

キスしたまま、一瞬、固まる。

 

「!!!」

 

理子が慌てて離れる。

 

「り、理子?」

 

「か、勘違いするな!こ、これはお礼だ!」

 

「いや、お礼って」

 

ぼんとアリアみたいに赤くなった理子は目をそらしたが

小悪魔の笑みに戻る。

 

「ん?くふ、ユーユかっこよかったよ。理子の二番あげちゃった」

 

「はい?」

 

俺が言った瞬間、ばさりと何かが落ちる音。

床を転がるのはも、ももまん?

まさか!

 

「ゆ、優……」

 

「優先輩……」

 

「……」

 

げっ!

うつむいてるアリアにマリ、レキは無表情に花を持っている。

レキが二人の前に出ると

 

「優さん。お見舞いです」

 

「あ、ああ」

 

とレキが病室を出ていく。

それだけ!レキさん!助けてください!

「り、理子二番って何?」

 

アリアが理子に聞く。

 

「くふ、二番は二番だよ」

 

そういって理子は俺にパチリとウインクして病室の窓からワイヤーで降りていった。

 

に、逃げやがった。

 

「優先輩……今度は理子先輩ですか……私が目を離した隙に……」

 

「せっかく、ママに会えたから気分よく来たのに調教が必要ね優」

 

ゆらりと二人が拳銃を取り出した。

ハハハ……土方さん約束守ってくれたんだな……

にしても理子のキスは相変わらずのアリア達をからかうためだった訳ね……

二人の銃が俺に向くのがゆっくり見えてくる。

防弾布団を蹴飛ばしながら

 

「助けてくれぇ!」

 

と窓に走るのと

 

「風穴ぁ!」

 

「浮気者は死んでもください」

 

と、ふたりの銃が火を吹いたのはほぼ同時だった。

ああ、日常だなぁ……

 

 

 

ブラド編完


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