緋弾のアリアー緋弾を守るもの   作:草薙

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プロローグー運命の出会い

―空から女の子が降ってくると思うか?

 

少なくても俺、椎名 優希はそう思わない。

なぜなら、そんな事態は異常事態に決まっているからで武偵である俺はそれを、見過ごせないからだ。

 

「おい、糞ガキ、今度サボりやがったら殺すからな!」

 

マスターズの鬼武偵の折檻も怖いが何より留年だけはしたくない。

だからこそ、今日から巻き込まれ体質を改善するのだ。

 

「さて、今日も気合入れていくか!」

 

3丁の銃をそれぞれ装備し、

部屋を出て鍵をかけてから腕時計を見る。

時刻は7時57分、もうバスは間に合わない時間だ。

なら自転車で行くかと俺は自転車置き場に向かうのだが俺はこのバスに乗れなかったことを後悔半面、幸運半面だったと生涯で語る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数分後、俺は半泣きだった。

 

「そのチャリには爆弾が仕掛けてありやがります」

 

機械的な妙な声、聞き覚えがあるようなその声。

 

「チャリを 降りやがったり 減速 させやがると 爆発 しやがります」

 

「なんでだ! ちくしょおおお!」

 

俺は怒鳴りながら自分の自転車を並走するタイヤつきのかかしみたいな乗り物に向けて怒鳴った。

その乗り物にはスピーカーと短機関銃が装着されている。

銃に手を伸ばそうとして嫌な予感がしてサドルの裏に何かがあった。

ぞっとしてそれをなでるとプラッチック爆弾だと確信した。

これじゃ、この変な乗り物を破壊したとしても・・・

いや、破壊した方がいいのか?

とりあえず助けを・・・

と、携帯に手を伸ばすと

 

「助けを求めてはいけません 携帯を使用した場合も爆発しやがります」

 

ああ、そうかよ了解だ。

 

伸ばした手を止めて俺は悪態をついた。

まずいぞ、チャリジャックで死ぬなんてお笑いにもならないじゃないか

武偵を志した日から死ぬ覚悟はできているがこんな情けない死に方は嫌だ!

 

「加速させてください。 増加が認められない場合爆発しやがります」

 

まじかよちくしょう!

 

俺はペダルを踏む力を入れて自転車をわずかに加速させる。

とりあえず人気がない場所に・・・

そう思って前を見た時だった。

俺と同じように自転車をこいでいる人が見えた。

って、あれキンジじゃねえか何してんだ?

あ、あいつもかよ!

 

昔、といってもそんなに前じゃないが強襲科つまり、アサルトでよくコンビを組んでいた友人だ。

彼の兄が事故で亡くなり、ショックだったのかアサルトをやめ探偵科、つまりイケスタに転科していった遠山 キンジもまた、俺と同じようにチャリジャックに合っているのだった。

俺はとりあえず彼の横に自転車をつけ

 

「ようキンジおはよう」

 

「優! お前もか!」

 

一瞬で自分と同じ状況に陥っているとキンジは理解してくれたようだった。

とはいえ、どうしようもないのが現状だが・・・

 

「どうしよう? これ?」

 

半笑いで俺は自転車を指さした。

 

「人気のない所に向かってるんだが・・・」

 

「そこで爆死なんて嫌だぞ俺は!」

 

「じゃあ、どうすんだよ!」

 

「とりあえず、誰かが気付いてくれるまで第2グランドをぐるぐる回るのはどうだ?」

 

「それしかないか・・・」

 

キンジは諦めたように言うと武偵高の第2グランドへ自転車を向ける。

ほぼ、並走するように俺も続きやがて、グランドが見えてきた。

金網越しに見たが誰もいないようだ。

 

「なあ、キンジ短い人生だったなぁ」

 

「おい優! もうあきらめたのかよ」

 

「嫌、だって俺だけならなんとかなるよたぶん。 でも、キンジも同時に助けるとなるとなぁ・・・」

 

そう、実の所打開策はある。

俺の特技を使えば俺だけなら助かるのだが・・・

 

「おい! 見捨てるのか優!」

 

「いや、だからそうしたくないから困ってるんじゃないか」

 

どうするかなと思っていた時、俺とキンジは信じられないものを見た

グランドの近くにある7階建ての女子寮の屋上に女の子が立っていたのだ。

遠目にも分かるピンクのツインテールがいきなり屋上から飛び降りた。

 

「ええええ!」

 

俺とキンジは仰天してその光景を見た。

少女はバラグライダーを展開してゆっくりとこちらに向かってくる。

 

「ば、馬鹿こっちにくるな! この自転車には爆弾が・・・」

 

キンジが慌てた様子で言っている。

少女が左右の太もものホルスターから黒と銀の大型拳銃を抜いた。

あ、あの銃、俺と同じ銃だな。

 

「ほら、そこの馬鹿ども! さっさと頭を下げなさいよ」

 

2丁拳銃の水平撃ち。

俺とキンジの横に張り付いていた乗り物はばらばらになってぶっ壊れた。

おお、すごい腕だ。

少女は2丁拳銃をホルスターに戻すとさらに近づいてくる。

あ、まさかこの子俺達を助ける気か?

一瞬で、少女がやることを理解した俺は少女に向け怒鳴る。

 

「おいあんた! 俺は助かる方法がある! こいつを助けてやってくれ!」

 

そういうと俺は少女の進行方向から離れるため右にハンドルを切る。

 

「ちょ、ちょっと! 待ちなさいよ!」

 

後ろから少女の声が聞こえてくるが俺は無視して全力疾走した。

振り返るとやはりと言うべきか少女が逆さ吊りの姿勢になっている。

キンジを受け止めて自転車だけ進ませ爆発させる気なのだろう。

一時を置いて後方で爆発が起こった。

爆風を背中に受けて俺の自転車が加速する。

うわ! あぶねえ!

 

こけそうになりながら競輪選手と同等ぐらい出てる自転車はみるみる川に迫る。

ミスしたら死ぬよな絶対。

 

俺は右手を川の前に生えている枯れた木に向かい向けボタンを押しこむと同時に爆発するような反動と共にワイヤーが飛び出し木に巻きつく。

そして、ペダルを最後に踏み込むとワイヤーに引っ張られ自転車から離れる。

ボタンをもう一回押しこんでワイヤーが俺の体をひっぱりあげる。

自転車は川に落ちたかと思った瞬間、巨大な水しぶきが川に現れる。

あれが、けつの下で爆発したらと思うとぞっとする。

ワイヤーにぷらぷら揺られながら衝撃に強いデジタル時計を見るとまだ、時間は問題なかった。

まあ、全力疾走したのだから時間短縮にはなったか・・・

 

「たく、キンジ達大丈夫かな?」

 

そういや、これニュースでやってた武偵殺しの手口にそっくりじゃねえか。

また、巻き込まれたのか俺?

 

「あ、自転車・・・」

 

命は助かったが1万円で買った自転車は廃車らしかった。

買ってまだ、2か月しか乗ってないのに・・・

ため息をつきながら俺はワイヤーを回収し腕の中の器具に戻すととぼとぼと校舎に向かい歩き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここ、武偵高こと武偵高校はレインボーブリッジ南に浮かぶ南北およそ2キロ・東西500メートルの長方形をした人口島である。

学園島と言われているこの島は武偵の総合教育機関である。

武偵とは凶悪化する犯罪に対抗するために作られた国際資格で武偵免許を取ったものは武装を許可され逮捕権を有するなど警察に近い活動ができる。

警察と違うのは金をもらうことで武偵法の許す範囲ならどんな荒事でもこなす。

ようは、便利屋だ。

ちなみに、武偵には武偵憲章というものが存在しその1条はこうだ。

『仲間を信じ、仲間を助けよ』

ようはあの少女はこれに従ってキンジを助けたのだろう。

 

そこでだ。

 

「なんじゃこりゃ?」

 

俺がそこに着いた時、全て終わっていた。

いや、始まりか?

先ほど俺とキンジを追いまわしていた乗り物の残骸が散らばる仲先ほどの少女が後ずさるキンジに突進している。

2つの日本刀だ。

まてよ、2丁拳銃に2つの刀ってことは双剣双銃かよ。

ってあれは!

 

キンジがはっとして右を向いた。

あれに気付くってことはお前、ヒステリアモードか。 あの子でなんかしたな?

 

「待て!アリア」

 

怒りで血が上ってるのか少女・・・アリアというらしい少女は気付いていない。

茂みから機関銃を装備した乗り物が飛び出してきたのだ。

キンジがアリアに向け走り出した。

かばう気か!?

俺はとっさに右手を前に突き出した。

腕に衝撃が走りワイヤーは飛び出すと同時に機関銃が発射された。

飛び込むようにアリアにタックルしたキンジ達がいた場所に射線が横切る。

同時にワイヤーが乗り物に絡みつき俺は引き戻しのボタンを押しこむとホルスターのガバメントではなくデザートイーグルを取りだしぶっ放つ。

迫撃砲のような轟音と共に乗り物がばらばらになる。

うん、破壊力だけなら抜群だなこいつは

自動式拳銃では最強クラスの破壊力のこの銃は俺は今のような速度ではなく破壊力を求められる時に使用している。

はっとして、殺気を感じ見ると乗り物が3体4体と現れる。

 

「キンジ!アリア!」

 

俺は巻きついた右手のワイヤーを切断するとグリップに炎のイメージで描かれた黒の装飾のガバメント2丁を2人に投げる。

2人は状況が読めたのかガバメントを受け取ると応戦し乗り物を破壊していく。

そして、最後のデザートイーグルの1撃により破壊される。

周りを確かめたが打ち止めのようだった。

 

「なんて日だよ今日は」

 

デザートイーグルを太もものホルスターにしまいながら俺は再びため息をついた。

とおもったらキンジが走りだした。

一瞬、遅れてアリアが声を張り上げる。

 

「強猥男は神妙に・・・わきゃお!?」

 

ステーンと倒れたアリアが踏んだのは銃弾のようだった。

なんであんなとこに?

 

「こ、このみゃおきゃ!?」

 

再びステーン転ぶアリア、おいパンツ見えたぞ。

 

「優、逃げるぞ」

 

すれ違いざまキンジが言ってきたので俺も走り出す。

おい、ヒステリアモードだけあって早いな。

追いつくの苦労するじゃないか。

それでも、なんとかついていきながら

 

「キンジ何やったんだよあの子に? ヒステリアモードで強猥男ってまさか・・・」

 

「誤解だ」

 

キンジは短く返しながらガバメントを俺に渡してくる。

あ、そういえばアリアに貸したガバメントどうしよう?

振り返るとツインテールを揺らしながら両手の腕をぶんぶん振っているアリアが見えた。

うーん、今話しかけたら切られそうだな。

まあ、手段はあるかと思いながら走っているとアニメ声の怒声が空に響き渡る。

 

「このひきょう者! でっかい風穴あけてやるんだからぁ!」

 

これが後の長い付き合いになる遠山キンジ 神崎・H・アリア 椎名優希の硝煙にまみれた最悪の出会いだった。

 


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