僕たち兄妹はBABELで訓練を受けることになった。
母親も忙しくまた、普通人であり幼い僕ら高超度エスパーが覚醒した際に、多大な危険があるため。
訓練を受ける中でゆっくりと制御を学んでいこうということになったらしい。
僕自身は、うまく制御しているが、
薫は自身の力より重いものを持ち上げていたり僕の手を引く力が強かったりと、
無意識下で能力を使用しているようだ。
確かに、暴走したら危険そうだ少なくとも部屋の中の小物はぐちゃぐちゃになるだろう。
そして、今日僕たちはBABELの訓練室に来ている。
訓練室といっても、保育所のようなものだったなんというかメルヘンだ。
ぬいぐるみやおもちゃがたくさん置いてあり、床もクッション仕様だ。
しかし、壁紙一枚向こうは金属のようだ。
いろいろな意味で、僕たちが暴れても問題が無いようになっているのだろう。
しかし、今まで使われた様子はない。
壁に触って部屋の中の思念を読み取ろうとしたが、ほとんど痕跡がなかった。
(どんな訓練するのか気になったのだが・・・)
しかたなく、薫に誘われおもちゃで遊ぶことにした。
しばらくするとドアを開く音がする。
薫が背後に回る。
(母がいなくて緊張しているのかな?)
「初めまして、陽君、薫ちゃん。 超度4の念動能力者の椎名美菜です。」
大学生くらいのおねーさんだった。
「今日から一緒に超能力のお勉強しましょう。」
すぐ後に局長も入ってきた・・・やけに上機嫌なんだが何かあったのだろうか?
「まず初めに、陽君と薫ちゃんも念動能力者です。」
まず初めは、説明から入るようだ。
念動力の代表。
精神の力で物を動かし、超度が上がるほど重いものを動かしたり、細かいコントロールができるようになる。
しかし不安定さも増すため、常に暴走の危険があるそうだ。
(注意しなければ・・・だが僕は大分制御ができているからなたぶん。問題ない。)
超度6あたりで自分の体を持ち上げて飛ぶこともできるようになるが、かなりの才能と特訓が必要だそうだ。
(あれ? 自分の体を持ち上げて飛ぶ事くらいすぐにできそうだ試してみよう)
「じゃあ、まずやってみますね」
僕の目の前にあったぬいぐるみが持ち上がる。
同じ能力ゆえに力の流れを感じることができる。
(力の流れに無駄が多いな、もう少し少ない力で持ち上げることもできるでしょ)
しかし、やはり体外に力を流すと感知しやすくなるな。
しかし薫は驚いているな、確かに超能力者を見たことないしな。
「じゃあ二人も一緒にできるように練習しましょう」
すでに薫はやる気満々だ。
しかしどうしたものか・・・。
(今まで通り薫と同じペースで進めるべきか・・・。)
さっそく薫は人形を持ち上げようとしている。
そしてそれをニコニコしながら見つめる局長。
孫を眺めている感じなのだろうか?
(それとも、ここは薫の少し先をいってみるか・・・。)
考えていると薫が飽きてきたようだ・・・。
(ここは少し先に行ってみるか。)
目の前の人形を少し持ち上げすぐに落とす。
「すごい!見てた薫?僕持ち上げられたよ。」
美菜さんと局長そして薫が覗き込んでくる。
「いやーすごいネ!陽君!まさか初日から成功するとはネ!」
局長が抱きつきながらべた褒めしてくる。
「さぁこの調子で薫君もがんばるんだヨ!」
さてしばらくコロコロ人形を転がしておく。
薫も頑張っているようだが反応がない。
(たぶん感覚がつかめていないな)
美菜さんにアドバイスをもらっているがいまいちわかっていないようだ。
「薫、いい?掌からパワーを出して手の代わりに人形を動かすの」
少しアドバイスをする。
すると薫は何かを掴んだ様な顔をして人形を見つめる。
しばらくすると人形が少しだけ動く。
「すごい にーちゃん動いたよ!! 本当に動いた!!」
さすがの局長も驚いている
「ふふーん!見て見て薫!僕、人形浮かせられたよ。」
すぐに薫の一手先を行く。
こうやって一歩前を歩き続けて薫を成長させる。
(我ながらいい作戦だな)
局長と美菜さんは言葉も出ない様子。
何やら、二人で内緒話を始めた。
しばらくすると美菜さんが話しかけてきた。
「じゃあ次の訓練に移りましょう」
薫はすごく食いついている
「今度は私がボールを投げるからそれを超能力で動かして躱してね。自分が動いちゃだめよ」
なるほど今度は、もともと動いているものの力場を変更させるのか
(あれ結構、難易度高くね? 僕はともかく薫にはまだ難しそうだな?)
一瞬目離したすきに美菜さんがボールを投げてきた。
一瞬反応が遅れ反射的にボールをずらしてしまった。
(しまった)
反射的に動かしてしまったボールを気が付かれる前に元の軌道に戻し、
自分の体を無理やり動かし、あたかも自分が反射的に避けたかのように見せかける。
(危なかった、さすがにこんな難しいこといきなりやったら怪しまれるな。)
「あはは にーちゃん動いちゃだめだよ。」
よかったどうやらばれていないようだ。
そのまま、訓練は成功することなく、休憩交じりの3時間がたち訓練は終了した。
母が迎えに来たので、家に帰ることになった。