転生者は静かに暮らしたい   作:あんにん

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昔書いていた奴をふと思い出して投稿してみました


爆死ってどの位痛いんだろうか?

 

 

 

 

 

俺は死んだ、死因は不発弾が埋まっていた場所を歩いていて

偶然にも起爆してしまい、爆死―だそうだ

 

 

全くついていない、不発弾があった場所は大通り

真夜中だったので誰も歩いていなかった―つまり死んだのは俺一人だけだ

ついていないと言うのは其処では無い

何故なら人間、何時かは死ぬ運命にあるのだから

 

俺は二流大学の三年生、内定も普通のサラリーマンだが決まっていた

丁度、その内定についての詳しい話を会社の方々から聞いた帰りに死んだのだ

ついていないと言うのは其処でも無い

俺の学力なら一流大学に入り

1年で超一流の会社の内定を取る事など片手間で出来た

 

ついていないと言うのは『真夜中に爆発を起こし、俺一人だけが死んだ』事だ

 

俺は事あるごとに目立つことを嫌った

目立つと言う事は人に妬まれ、恨まれ、馬鹿にされる事だ

俺の平穏を求める心はそんなものを望まない

故に俺は自らの持つあらゆる才能を制限し、親からもそれを隠し通した

子供の頃にとった賞は全て3位、更に特技が分からない様に

体操、書道、剣道、歌唱…あらゆるもので3位を取った

俺は完璧だった、そう

『目立たず普通の平穏な人生』を手にする筈だった

その矢先にこれだ、爆発…しかも真夜中に一人で…?

 

完全に目立つじゃないか、それこそニュースで日本中に俺の名が知れ渡る

そんなもの真っ平御免だ、俺は生前、死後両方で平凡な一市民で居たかったのだ

 

 

 

「俺の存在を抹消する事は出来ないのですか神様?」

 

俺は目の前に居る若く見えるが中年の男『神様』にそう乞う

 

「駄目だ、お前は何ら悪さをした訳じゃあないが

 流石にそんな事は出来ん、数百年昔にやったことがあるが

 かなり面倒な事になって結果、一つ世界を壊す事になったからな

 まあ、善人度100のお前の頼みならやってやらなくもないが

 その場合、神々の中で有名人になるぞ?」

 

 

善人度と言うものの最高値が分からんが

言うことを聞いてくれるという事は100とは結構高いのだろう

しかし、俺の考えでは神とは不老不死の存在

噂も75日所か75世紀になりかねん

 

 

「ぐっ…分かりました…非常に歯がゆいですが…」

「人の噂も75日、気にする事じゃあないさ

 それで、お仕事の話に入りたいんだが良いか?」

「仕事…?そう言えばこの部屋には神様と俺…あとあそこに居る

 天使様しか居ないな、此処はどう言った場所なんだ?」

 

「此処は転生の間、生前に何かやり残したものを選別し

 記憶を引き継いだ状態で転生させる部屋です」

 

天使様、初めて改めて見ると凄いアホ毛だな

どこぞのバーローの姉ちゃんみたいだ

 

「転生…記憶の引き継ぎ…断りたいのですが…」

「お前にもかなりメリットがあるんだがなぁ

 記憶を引き継いだ状態なら目立たずに一生を終えられるんじゃないのか?」

「……それもそうか」

 

予め、自分の身に迫る何かを知っているなら目立たずに回避するなど容易い事だ

そう考えれば、記憶の引き継ぎはバレることのデメリットより

それらを回避できるメリットの方がかなり大きい

 

「イエスと受け取るぜ?」「構いません、ですが頼みたいことがあります」

「何だ?」「俺が指定した…物語の世界に転生させて下さい」

「…別に良いぜ、つい最近大きな事故があって

 『殆どの世界を再構築したんだ』空きなら幾らでもある」

「……ゼロの使い魔、と言うのはご存じですか?」

「ああ、知ってるぜ」「其処でお願いします」

「え、良いんですか?

 記録を見た所、貴方ファンでもなさそうですけど…」

 

そう、精々処世術の一つ、教養の一環として斜め読みしただけだ

勿論、本はア○ゾンで秘密裏に購入そして読後焼却、ヲタク趣味だと

周囲に思われたくないからな

 

 

「構いません、うろ覚えですがあの世界の文明は中世程度だった筈

 それならニュースも新聞も無い、そして魔法がある世界なら

 前回の様に爆発事故で死んでも目立ちにくい筈ですから」

「成程ねぇ、じゃあお次はチート能力でも決めるか

 これ関係も教養の一環として一通り知ってるだろ?」

 

神様の前で隠し事は出来ないと聞いたが…本当なのだな

 

 

「はい、他にも転生者は居るのですよね?」

「ああ、と言ってもお前が行く世界には居ないけどな」

「…ではスタンド『キラークイーン』をお願いします」

 

教養の一環として読んだだけの娯楽本だが

たった一つのシリーズ、一人のキャラクターに強い共感を持った

それが吉良吉影、ジョジョの奇妙な冒険4部のラスボスだ

俺に殺人衝動や手に対する執着は無いが、彼の生き方は俺とそっくりなのだ

 

「キラークイーンか

 確かに目立たずに厄介者を始末するにはピッタリだな

 他には…要らないのか?」

「はい、平穏に暮らすのにこれ以上の能力は寧ろ邪魔になります」

「そうか、そうそう

 お前原作殆ど覚えてないみたいだからこれをやろう」 パチン

 

神様が指を鳴らすと俺の前に一冊の黒い本が現れる

「これは…デスノートですか?」

「違う違う、あんな呪われたアイテムじゃない

 それには原作がどう行った方向に進んでいくかの時系列

 キャラクターの設定、その世界の設定が記されている

 勿論お前以外には普通のノートにしか見えないけどな」

 

「はぁ…有り難く受け取っておきます

 どの様に出し入れするのですか?」

「念じれば出る、破いても取られても

 幾らでも出せるから安心しろ

 他には?」

「俺の顔は不細工でもイケメンでも無い、あの世界で

 ごく平凡な普通の顔にしてください」

「ふむふむ…魔法…普通…ですね」カタカタ

天使様がキーボードで何やら打ち込んでいる

最近の宗教はデジタルなのだな

「終わりました、それでは

 今度こそ平凡な日常を送れますように」タンッ

 

俺の感覚が消えて行く―これが転生か―――

 

 

 

ビーッ!!ビーッ!!ビーッ!!

「わわっ!!またミスしちゃいました!?」

「また世界を修正するお仕事が始まるんですね分かります(泣)」

 

 

 

―何故だか知らないが俺はとんでもない失敗をしてしまったかもしれない

 

 

 




のし

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