fate/faker oratorio   作:時藤 葉

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リメイク版投稿記念でボツネタを供養

なんで無限の剣製使えるのとかローアイアスなんであんのとかそもそもなんでアイズと戦ってるのとかはボツネタだから…ということでご容赦いただければと思います


無限の剣製(ボツネタ)

 

 眼前に立つのは、一人の少女(剣姫)

 

 手には決して壊れぬ剣、一等級特殊武装『デスペラート』。

 

 そこを通せと、全身がそう告げていた。

 

「――――悪いがここを通す訳にはいかない」

 

 だが、そういうわけにもいかない。

 

 アイズがここを通りたがるように、こちらにもここを通せない理由があるから。

 

 すると眼前の少女は、無言で剣を構えた。

 

「……無理矢理にでも、押し通る」

 

「そう、か……」

 

 片手を中空に差し出す。

 

 同じファミリアで、苦楽を共にしてきた仲間に剣を向けるのだから、彼女の決意は相当なものだろう。

 

――――ここで彼女を止めるというのも、ただの偽善かもしれない。

 

 その想いは胸中から消えることはなく、今でも燻っている。

 

 だがそれでも自分はここに立ち、剣のような少女を止めることを選んだ。

 

 自分は確かに贋作者(フェイカー)だ、偽善だって悪くない。

 

 両目を見開き、アイズを見据える。

 

 まずは彼女の一撃を受け止めるために、丘から盾を引きずり出す――!

 

投影開始(トレースオン)――」

 

「【目覚めよ(テンペスト)】――」

 

 俺の剣製は、剣を作ることではないと、あの紅い弓兵は言っていた。

 

 言われて納得した、確かに自分にそんな器用な真似ができるはずもない。

 

 自分にできることは唯一つ、自分の心を形にすることだけ。

 

 右手の拳を握りしめる。

 

 そして、トロイア戦争において大英雄の投擲すら防ぎきった盾の名前を高らかに謳う――――

 

「――――熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!!」

 

「――――【リル・ラファーガ】っ!!!」

 

 風を纏った弾丸のような刺突と、七枚花弁の盾がぶつかり合い激しい衝撃を撒き散らす。

 

「――――っ!」

 

 瞬く間に一枚、二枚と花弁が破られる。

 

 投影によってワンランク下がった上に、投擲ではなく刺突を受け止めているのだから本来の数分の一以下しかその防御力を発揮できていない。

 

 だが三枚、四枚と、明らかに破壊の速度が落ちる。

 

 アイズは微かに目を見開いていた、それは打ち破れぬほど強靭な盾に対する称賛か、自らの未熟さに対する屈辱か。

 

 この盾は衛宮士郎自身だ。

 

 ひび割れ、砕かれるたびに自身は傷付いていく。

 

「――――体は剣で出来ている(I am the born of my sword)

 

 元よりこの盾は時間稼ぎのためだけに造ったもの。

 

 ならば我が身がどれほど傷つこうと大した問題ではない。

 

「――――血潮は鉄で(Steel is my body)心は硝子(and fire is my blood)

 

 続く呪文を詠唱する。

 

 詠唱とは自己変革を暗示させる道具でしか無い。

 

 この言葉は、あの紅い弓兵と同じように、衛宮士郎という存在を繋げるもの。

 

 アイズは焦るように刺突を強める、直感でこの言葉を最後まで告げさせてはならないと感じているのかもしれない。

 

「――――幾たびの戦場を超えて不敗(I have created over a thousand blades)ただの一度の敗走もなく(Unaware of loss)ただの一度の勝利もなし(Nor aware of gain)

 

 体の端々から血が吹き出す。

 

 盾の残り枚数は後二枚だ。

 

 剣姫の全力の一撃を受け止められていることが、望外の奇跡と言ってよかった。

 

 ならばその奇跡に応えるべく、死力を尽くすのみ。

 

「――――担い手はここに孤り(With stood pain to create weapons)剣の丘で鉄を鍛つ(waiting for one's arrival)

 

 盾の残り枚数は一枚。

 

 最後の一枚は最も強靭だが、そう遠くない内にそれも打ち破られるだろう。

 

 だが、構わない。

 

 この盾の役目は元より『ある魔術』をなし得るためだけの時間稼ぎにすぎないのだから――――

 

「――――ならば(I have no regrets)我が生涯に意味は要らず(This is the only path)

 

 自分に許された魔術は、自分の心を形にすることだけ。

 

 ならば今から為す魔術も、同じ、否、逆だ。

 

 心を形にするからこの魔術があるのではなく、この魔術があるから心を形にすることができる――

 

「――――この体は(My whole life was)無限の剣で出来ていた(unlimited blade works)!」

 

 真名を告げると同時に、最後の一枚が打ち砕かれる。

 

 固有結界、術者の心象風景を具現化し、現実を侵食する大禁呪。

 

 炎が走り、境界を描いた側から世界を変えていく。

 

――――そこには荒野、無数の剣が突き立てられた剣の丘が広がっていた。

 

「――――」

 

 剣姫(アイズ・ヴァレンシュタイン)は何も言葉を発さない、その姿が何よりも雄弁に驚愕を表現していた。

 

 そう、自分に許された魔術は、無限に剣を内包した世界を作る『無限の剣製(unlimited blade works)』のみ。

 

 投影も強化も、この魔術の副産物にすぎない。

 

 生物の気配はなく、荒野だけが広がり剣が眠るように突き立った世界。

 

 この世界は直視しただけで剣を複製する、紅い弓兵(自分自身)から授けられたこの世界に存在しない剣はない。

 

 ここには何もなく、そして何もかもが存在する。

 

 生涯を剣として生き、自身を貫き守護者と成り果て、一度は自分を否定し、それでも自分は正しかったのだと証明された男の、唯一の確かな答え――――

 

「――――この世界が、シロウの能力」

 

 一歩踏み出す。

 

 左右には最も扱い慣れた夫婦剣が突き立っている。

 

「そう大したものじゃない、これらは全て贋作。本物なんてこの世界には一つも存在しない」

 

 両手を伸ばし、剣を引き抜く。

 

 夫婦剣は、馴染み深い感覚とともに、容易く抜き放つことができた。

 

「だがな、偽物が本物に劣るという道理はない。完全に複製された贋作は、本物を凌駕しその存在を叩き落とすに足る存在だ」

 

 剣を構える。

 

 眼前には、剣の名を冠する少女。

 

 

「――――臆せずかかってこい、この世界、無限の剣が相手となろう。アイズが正しく究極の一(強者)であるというのならば、この剣の丘を越えて見せろ」

 

 

「――――私は、負けない……っ!」

 

 

 (仲間)は不壊の剣を閃かせ、猛然と近づいてくる。

 

 荒野を疾走る。

 

 異なる二つの(剣姫と剣製)は、ここに最初で最後の激突(敵対)を開始した。

 

 

 





というわけでリメイク版はこちら
https://syosetu.org/novel/242320/

リメイクに当たって色々変更点とかもありますしよろしければお願いします
こちらの方での更新はこれで完全に終了です

リメイクについて

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