高二病抜け切らなかった人が中途半端な力で   作:mahiro

9 / 21
 とりあえず前話よりはマシなモノになった……と、思いたい……

 ◇

 ※今回限りですが独自設定があります。
 『ジュエルシードは望みの内容次第で、条件が満たされないと完全には発動しないこともある』という事にしています。


第8話 「学校の怪談――いや、こんなのは知らんぞ!?」

 とある小学校の理科準備室――

 1時間目の授業前、男子達は学校に届いた『ソレ』をベタベタと触りながら騒いでいた――

 

「うっわー! こいつキモいな!」

「絶対夜中に動き出す(・・・・・・・)んだよこういうの!」

「で、人を見つけたら『かゆ……うま』って言いながら追いかけて来る(・・・・・・・)んだよな!」

「何か他のと混じってないかそれ? 『お前の皮をよこせええええ!』じゃねえの?」

 

 

 ――――クン――――

 

 

「お前らな……勝手に準備室入るなって言ったろ? ほれ、さっさと席に付け!」

『はーい!』

 

 

 ◇

 

 1時間後、実験器具の片づけをしていた女子達が、『ソレ』をいじりながら話をしていた――

 

「やっぱりこういうのって怖いよねー……一人でこの教室入りたくないもん」

「あー、なんか今にも動きだしそうだもんね。あ、腕回るんだこれ……」

「怪談でとか七不思議の定番でしょ? うわ、気持ち悪いポーズ……」

「そうそう。夜中に動き出して(・・・・・・・・)、人がいないか校内を探して回るの」

「見つけたらどうするんだっけ?」

「うーん…………見つけた人を食べちゃう(・・・・・・・・・・・)、とか?」

 

 

 ――――トクン――――

 

 

「コラ、早く片づけないと次の授業始まるぞ? というより『ソレ』で遊ぶな!」

『はーい』

 

 

 ◇

 

 昼休み、二人の教師が理科準備室で授業で使う教材の確認をしていた――

 

「配送されてる時にトラックが事故ったんでしたっけ? ヒビとか入ってないんですかねコレ?」

「この前だって生徒がイタズラして壊したばっかりだっつうのに……にしても、コイツに関しては昔っから怪談話は付き物だな」

「ああ、夜中に骨格標本と踊る(・・・・・・・・・・)んですよね?」

「なんだそのシュールな光景……夜中校舎に入って来た子供を外まで蹴散らす(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)んじゃなかったか?」

「なんですかその暴力警備員……まあ、場所ごとに話なんて違うものですよね?」

「まあそうだわな……コイツは授業で使う以外に、生徒を怖がらせるのも仕事(・・・・・・・・・・・・)なんじゃないか?」

 

 

 ――――ドクン――――

 

 

「確かに……あ、心臓のとこから青っぽい異物出てませ――いや、出てるというより埋まってる?」

「事故の衝撃で欠けた何かか? あー……この程度ならクレーム付けるほどじゃないだろ。あんまり目立たないし、いざとなれば絵の具塗って誤魔化せる」

「ですね……それでは『人体模型』君! 怪談のごとく(・・・・・・)張り切って(・・・・・)生意気な子供達をビビらせたまえ(・・・・・・・・・・・・・・・)!」

 

 

 

 ――――ドクンッ!――――

 

 

「教師が冗談でもそういうことを大っぴらに……何か今変な感じしなかったか?」

「はい? 特には何も……あ、もしかして怖がらせようとしてます?」

「昼間から男同士で怪談なんて何が楽しいんだ……さっさと準備終わらすぞー。午後の授業からは使うんだしな」

「了解でーす」

 

 

 ◇

 

 こっそりと続けている魔法の練習のおかげで、寝不足気味の少年が理科室で授業を受けようとし――

 

「タカー。今日俺ん家で遊ば――なんか顔色悪くねお前?」

「寝不足……なのかね? なんか学校来てから段々気持ち悪い感じが増してきたんだけど……」

「はーい、お前ら席付けー。今日は前に言った通り『人体模型』使って授業進めるぞー」

「うわキモッ! 見てみろってアレ!」

 

(ええい、人体模型ぐらいではしゃぐなっつの。あんなもん、魔法初心者の俺でもわかるくらい発せられてる魔力が濃密で、まるでジュエルシードが発動する時の気持ち悪い感じがするだけ――)

 

 

 

 

「――いやいやいや!? 何で発動しかかってるのがそんな所にあるのさ!?」

 

 突然大声を上げて、みんなの注目を変に集めていたのだった――

 

 

 

 

 

 第8話 「学校の怪談――いや、こんなのは知らんぞ!?」

 

 

 

 あの後、いきなり大声を出して不信がられたが、どうにかその場は誤魔化して授業は無事終わった。

 まあ、誤魔化せたって言っても、いつ発動するのか分からなくてずっとビクビクしてたから、不信がられたのに変わりはないけど……

 

 いや、だって先生普通にアレ弄るんだもの!

 生徒が興味本位で『それ中身とか外せるの?』と聞けばわざわざ外して見せたり、皆に見えやすいように大雑把に動かしたりとか、もう何度叫びそうになったことか……

 そこが地雷原だと知らずにタップダンスをしてる奴を見てる気持ちだったよ?

 

 あと本気でヤバいかと思ったのは、誰かが怪談の話した時に、先生が『やっぱりこいつは夜中に動き出すって言うのが定番だよな』と人体模型に触りながら言ったら、魔力が揺らいだように感じたのよね?

 慌てて『シンシアハート! セッ――』まで言ったけど、発動しなかったから途中で止めました……もちろん周りからはまるで頭のおかしな奴を見る目で見られたさ!!

 

 こんな事があるって分かってたら、ユーノ君にでも結界の使い方教わってたっつうのに……

 

「きりーつ、礼」

『ありがとうございましたー』

「うし、じゃあ皆来週まで怪我とかするなよー?」

 

 今日は早く帰ろう……そんで、ユーノ君となのはちゃん呼んで、早く処理して寝よう……

 

 

「タカ。明後日の日曜に翠屋FCのサッカーの試合あるんだけど、応援来ないか?」

 

 あら? 幼稚園時代から付き合いあるくせに、俺のリアクション見て真っ先に『頭どうかしたのか?』とか抜かしてくれた健人君じゃないですか。

 

「あー悪い、その日俺も野球の試合あるんだわ」

「そっか……そっちも試合頑張れよ!」

「うい、また来週なー」

 

 小学生サッカーの応援なんて予定無くても行きたくねー……

 父母に一人ポツンと交じって「○○頑張れー!!」ってか? それなんて羞恥プレイ? 

 それに、アイツのポジションキーパーだったよな? どう応援しろって言うんじゃ……

 

 

「貴裕くん、本当に来れないの?」

 

 あら? 髪色のことで苛められていた所を健人に助けて貰って以来フォーリンラブなのに、二人っきりだと恥ずかしがって会話が長く続かなくなる美希ちゃんじゃないですか。

 

 ――どうでもいいことだけど、海鳴市にはビックリするような髪色の人が多い中、何故かうちの学校は比較的黒髪・茶髪が多い。

 まあ、それでも学年に一人は青髪・金髪のとかがいるんだけどね……ちなみに、美希ちゃんはくすんだ金?の様な髪色だ。

 

「うん、ごめんねー……ってか、まだアイツと二人っきりになるの慣れないの?」

「べ、別に健人君のこととは関係なくて……」

「まだ健人とは言ってなかったんだけどネー……あいつの好きな物とか教えてるけど、ちゃんと活かせてる?」

「あ……うう……差し入れとかは喜んでくれてます……ありがと……」

「ドウイタシマシテー」

 

 小学5年生で色気づくとかね……末永く爆発すればいいと思うよ?

 

「何度も言ってるけど、健人は少なくとも美希ちゃんのこと嫌ってないよ? ガンガン行けば大丈夫だと思う」

「わかってはいるんだけど……恥ずかしくて……」

 

 むしろ、健人も美希ちゃんのこと好きだって言ってるんだけどネー。

 アイツもアイツで恥ずかしがるから、二人っきりにすると何とも言えない空間が出来上がるし……

 そのために俺が橋渡しの様な存在をやってる……多分さっき健人が誘ったのは、それも期待してのことだったのだろうかね?

 人が甘い空間で血反吐吐きそうになるとも知らずにこの二人は…………いいけどさ、二人とも割と好きだし。

 

 まあ、ともかく『好き』っていうのは本人が言わないとダメだろ。前世じゃ恋愛相談なんて受けた事ないから、正しいかどうか分からんが。

 

「もういっそ告白すればいいのに……」

「ま、まだそこまでは自信が……もう少し仲良くなってから……じゃあ、また来週ね!」

「うぇーい、頑張れ若人」

「うん! ……って、私達同い年だよ!?」

 

 残念、前世の分も含めると別の魔法使いになれる年齢なんだ……

 

 

 にしてもサッカークラブのカップルね……木のジュエルシード事件もそろそろだっけ? 日曜日?

 あんまりはっきりしないけど、男の子の方が派手に活躍してた描写があったような……

 キーパーなんて活躍のしようがないし、あいつらではないだろ。

 

 というより、ホントあの子ら早くくっつけ! 折角ちょっとした布石(・・)もしたんだから……

 

 

 ◇

 

 帰宅した後、学校で見つけたジュエルシードの事を二人に念話で連絡した。

 とりあえず我が家に来てもらい、リビングで相談中である――家にあるお菓子出してみたら、ユーノ君(フェレット)が両手で持ってサクサク食べるという絵が見れたので、心癒されながら進めております。

 

「――と言う訳で、学校にあるのを見つけたんだわ」

「その人体模型っていうのがよく分からないけど……まさか貴裕の学校にもあるなんて……」

「この前、私が行ったプールにもあったけど……偶然ってすごいねー?」

「ホントダネー?」

 

 そこは突っ込んじゃいけないよなのはちゃん?

 名探偵の行く先々で殺人事件が起こるのを不思議に思ってはいけない位ダメだからね?

 

 

 

 それにしてもプールか……俺は参加できなかったんですよネー……

 や、お誘い自体はあったんだけどさ、時間がまず合わないのよ。

 学年どころか学校が違うんだから授業終わる時間も違う、向こうは午前授業でもこっちは通常授業。

 黒髪ロングの美人という、個人的にストライクな美由希さんの水着姿とか見たかったし、すずかちゃん・アリサちゃんの歌とかも聞いてみたかったんだけどね……

 

 サーチャーだけでも飛ばそうとしたんだけど、シンシアハートに止められたとかそんな事実はなかった……なかったったらなかった!

 

 

「魔法の伝わってない世界で、学校みたいな人目の多い場所で魔法を使うのは避けるべきだし……日が落ちる頃に行って、念のため結界も張ってから封印しよう」

「今の時期なら6時にはもう暗くなり始めるし、生徒もいないと思う。教師は……あ、結界あるなら大丈夫か」

「じゃあ6時ぐらいに貴裕くんの学校行こっか。人体模型にジュエルシードって、発動したらどうなるんだろね?」

「やっぱ動き出すのかね? 万が一それ見られても、ただの怪談話で終わるんじゃない?」

「えー……私、怖いのとか苦手なんだけどな……」

 

 あらやだ、それじゃあ涙目のなのはちゃんとか見れるのかしら?

 シンシアハートさん。サーチャーの数、倍プッシュでお願いします。

 

 

「ただいまー。あれ? 靴が多い?」

 

 ――っと、母さんパートから帰ったか。

 

 ユーノ君がいることだし、これからは念話で話さないと……そういえば、母がユーノ君(フェレット)見るのって初めてか?

 自宅のペットでもない珍しい動物が、予告も無く家にいるのを見たら驚くんじゃ――

 

 

 

 

 

 

「母さん、お帰り「美智子おばさんお帰りなさい! お邪魔してます!!」――あ、久しぶりに始まった……」

「あらあらあら! なのはちゃんじゃないの、3週間ぶり? 会いたかったわー、うりうりうりうり!」

「えへへへへ……」

 

 ――ないかと思ったんだけど、それよりなのはちゃんの方が優先されましたネー?

 

 そっかー、3週間も会ってなかったのかー。今日の愛の劇場は何十分続くのカナー?

 

<あ、あれが美智子おばさんなんだ……分かってはいたけど、なのはすごい懐きっぷりだね……>

<そっか、なのはちゃんから母さんの話を聞いたんだもんな……どうだったよ?>

<最初は『凄い嬉しそうに話すなー。その人が大好きなんだなー』としか思わなかったんだけど、10分過ぎても終わらないから『アレ?』って思って、30分過ぎると流石に聞いてるのが辛くなったよ……>

<お疲れ様。まだあると思うから頑張って>

<え!? あれで全部じゃないの!?>

<続けようと思えば1時間でも行けたはずだよ?>

<うわあ……>

 

 

 ――結局、ラブシーンが終わり、母がユーノ君(フェレット)の存在に気づくのさえ10分以上掛かった。

 その後の「晩御飯食べて行きなさい!」の一声により、結局学校行くのは夜の8時近くに……おのれ母め……

 

 

 ◇

 

 もう先生もおらず、その上結界を張ったため、人気がまるで感じられない夜の学校。

 今は、1階にある理科準備室に、2階から(・・・・)向かっているところである――

 

「まだ発動はしていないみたいだけど――やっぱり時間の問題かな……急がないと」

「了解。それにしても飛行魔法をあんなことで使うことになるって……ロマン何処行った……」

「あ、あはは……仕方ないよ、一階は扉も窓も閉まってたんだから」

 

 学校に着いて、いざ入ろうとしたら当然の様に閉まっている正面玄関。

 どっか開いてるだろうと全て試してみるも、開かない1階の理科室・他教室の窓・グランド側の玄関。

 流石にイライラして、「窓割っちゃわない? 大丈夫、バレなきゃ犯罪じゃないって誰かが言ってたし」とデバイス振りかぶりながら聞いたら全力で止められました……

 

 おのれ教職員共、無駄に防犯対策しおってからに……まあ、やってない方が問題なんだけどさ。

 

 

 結局は、その場で教えてもらった飛行魔法を使って、開いてた2階の職員室の窓から侵入することになった。

 理科室の鍵もいるから寄る必要はあったんだけど、学校侵入するために飛行魔法初使用ってなんかな……

 

「――しっかし、夜の学校って独特の雰囲気あるよな。風で揺れる木々や窓の音、月明かりと緑色の非常灯だけが廊下をこうポウっと照らして……」

「や、やめてよそういうの!? 魔力のスフィア出してるからそんなに暗くは感じないけど、不気味なのにはかわりないんだし……」

「僕は遺跡発掘の仕事とかもあるし、こういうのは慣れてるけど……やっぱり苦手な人は苦手なんだね」

「うぅ……あ、ここが理科室?」

「うん。鍵開けるからちょっとお待ちを……うし、じゃあ入ろう」

 

 怖がっているなのはちゃんを、ステルスサーチャーで撮りつつ(愛でつつ)からかっている内に理科室へ到着した。

 あとは、理科室の中から理科準備室の方に行くだけなんだけど――

 

「凄い魔力……とういうより、何でここまで魔力が出てるのに発動しないんだろう?」

「やっぱりコレって変なの? 前ジュエルシード発動した時って一瞬気持ち悪い感覚がしただけだったんだけど、コレはずっと気持ち悪い感じが続いてるんだよね……」

「あ、それ私も。気持ち悪いって訳じゃないけど、ずーっと違和感みたいなものが続いてるの」

「うーん、僕も詳しい事はわからないんだけど……とりあえず発動してないなら好都合だよ。今回は楽に封印することが出来そうだね?」

 

 ユーノ君、フラグ全力で建てるのとかやめてくれない!?

 

 ――いや、それ抜きにしても絶対何かあるよねコレ? 

 アニメの描写だとカットされるぐらい何事もなく終わってたような気がするけど、それが全然当てにならない気がするのはなんでじゃ……

 

 まあ、教室に入る以外選択肢ないんだけどさ……無駄かもしれないけど、発動しないよう祈ろう……

 

「さっさと終わらせられますようにっと。じゃあ準備室の鍵で……開いたな」

「夜中に人体模型とか見たくないなあ……し、失礼しまーす……」

「なのはちゃん、誰もいないのにそれ言う必要あるの?」

「へー、中はこんな風になってるんだ……あ、人体模型ってアレ? わ、人間の体の内側を見れるようになってるんだ……」

「これは割とデフォルメされた奴だけど、もうちょっとリアルな奴もあったりするよ?」

「あ、骨格標本もあるんだ。やっぱり不気味……」

 

 

 そんなことを話しながら理科準備室に入った瞬間――

 

 ()子供達(・・・)が人体模型の前に出た瞬間――

 

 

 

 

――――ドクンッ!――――

 

 

「なっ!? 発動した!?」

「ふぇ? キャッ!?」

「お約束にも程が――眩しッ!?」

 

 案の定発動しやがったよチクショウめッ!!

 人体模型取り込んだ暴走体って、一体どんな形になるんだか…………ん、光も収まって来たか――

 

「二人とも大丈夫!?」

「うぅ……うん、大丈夫だけど……」

「あー、目チカチカするし……ユーノも大丈夫?」

『ハァァァァァ……』

「いや、深い息つかれても分かんないぞ?」

「え? 僕そんなことしてないけど……」

「へ? じゃあ誰が「た、貴裕くん、ア、アレ」――なのはちゃん? 何かあった?」

 

 震えながら服の端を掴んで引っ張るシチュエーションとか、個人的にストライクです。ありがとうございます。

 

 

 じゃなくて何の用――ああ、怖がってるってことは、もしかして人体模型が動いたとかそんなんかね?

 まあ、お約束だわな。実際に見たらキモいだろうけど……

 

 さて、どんな感じになって――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――コンバンワ、人体模型ノオ兄サン。随分ト血色ガ良ク(・・・・・)ナリマシタネ?

 肌モ、トテモプラスチックニハ見エマセンネ? マルデ本物ノ肉(・・・・)ノ様デスネ?

 全裸ドコロカ見エテハイケナイ生々シイ中身(・・・・・・)マデ見エテマスヨ? 

 ッテカ、ビクンビクン脈打ッテル(・・・・・)ヨネソレ?

 

『ハァァ……』

「――――人体模型が動くどころかリアルになっとるううううッ!?」

「ふやああああああッ!?」

「えっ? えっ!? だってアレ模型、え、わあああああッ!?」

 

 三人とも封印なんぞせず、その場を逃げた事は誰も責められな『アアアアアッ!!』――あひいっ!? 

 何か叫んでらっしゃる!?

 

 

 ◇

 

 とりあえず理科室から全速力で逃走した。

 今は、一階の玄関口のすぐそばで息を整えているところである――

 

「ハァ、た、ハァ、たた貴裕くん!? 何アレ!? 何なのアレ!!?」

「ヒィ、フゥ、俺も知らん!! ってかああなるとは思わんかった!! 動くだけだと思ってた!! 何あのR指定かかっちゃう存在!?」

「ハァ、動いてた、ハァ、何かピンク色のモノが動いて「ユーノ君、言わないで! 思い出しちゃうから!」――ゴメン、まさか模型が実物になるなんて……」

 

 そんなの誰が想像できるよ! ジュエルシード頑張り過ぎだろ!!

 精々、顎をカクカク鳴らしながら走ってくる位の予想だったのに……

 左半身筋肉まる見え、脈動する臓器まる見えのナイスガイが出てくるとか何事!?

 

「アレを封印しなきゃいけないってことは、アレを見なきゃいけないってことで……貴裕くんの学校だし、貴裕くんだけで解決した方が良いんじゃないかな!?」

「逃がさんぞコラ! 3人全員で協力してやるんだよ! ……よし、なのはちゃんが逃げたら母さんに『なのはちゃんってビビりなんだよ』と教えておこう」

「うっ!? そんなのズルイよぉ……」

「た、貴裕? それ男としてなんか何か情けなくない?」

「じゃあ、俺らだけでやるの?」

「なのはも一緒に頑張ろうねっ!!」

「ううぅ、ユーノ君まで……」

 

 何かスマンね? 『大丈夫。俺に任せろ!』とか言えたらカッコ良いんだろうけど、アレを夜の校舎で相手するとか精神的に無理です。 

 人数多い方が少しは心強いんだもの……プライドって何だっけ?

 

「で、どうするよアレ? 外とか広い所に出てから――いや、中でやった方がいいのか? 広い所と狭い所ってどっちが有利?」

「分からないけど……とりあえず1・2階の校内で済ませてもらえるとありがたいかも。結界の範囲は大きい程負担がキツくて……ゴメン」

「いや、校内だけでもありがたいよ? じゃあ、中で済ませるってことで」

「どうやって封印するの? 出来ればあんまり近づきたくないかなー……なんて思うのですが……」

「うん、俺もアレを至近距離で見たくない……そうだ、なのはちゃんもバインド使える様になったんだよね? 出来る限り離れた場所からバインド掛けて動けないようにして、それから封印しよう」

「分かった。それならまだ大丈夫……かな?」

 

 やっぱりゾンビみたいに『あ゛ー』とか言いながら迫ってくるんだろか……

 出来れば一発で決めたい……アレを何度も見るのはちょっと……

 

「じゃあ、方針も決まったし理科室の方へ戻『ァァァァァ……』――むこうから来るっぽいな……」

「うぅ……ヒタヒタって歩く音がだんだん近づいて来てるよぉ……」

「曲がり角あるし、そこから現れた瞬間バインド掛けるっていうのはどうだろう?」

「それ採用で。速攻で縛って速攻で終わらせよう。なのはちゃんもそれで良い?」

「うん、すぐ終わらせちゃおう! すぐ帰ろう!」

 

 なのはちゃんが若干テンパってらっしゃる……グロ耐性の無い女の子にアレはキツイか……

 まあ、だからといって帰すつもりもないけどネ? 

 

 

――――ヒタ……ヒタ……ヒタ……ヒタ……――――

 

 

<そろそろ来るだろうし念話に切り替えるけど、なのはちゃんは胴体を、俺は足の部分を捕まえるってことで>

<う、うん、分かったよ!>

<二人とも気をつけて、いざとなったら僕も加わるから>

<了解。でもユーノはもう結界貼ってるんだし、無理はしないようにな>

<そうだよ、私達で終わらせられる様に頑張るから!>

<――ありがとう……>

 

 昨日のプールでも結界貼ったっらしいし、相当疲れてるだろうに……ええ子や……

 なのはちゃんも、友達の為なら恐怖を押し殺して頑張る……ええ子や……

 俺はホラー的な状況なのに、女の子すら逃がさない……マダオや……

 

 

 

――――ヒタ……ヒタ……ヒタ、ヒタヒタ――――

 

 

 

 まあ、せめてユーノ君が参加しなきゃいけない状況にするのは避け……あれ?

 

 

 

――――ヒタヒタ、ヒタヒタタタタタタタタ――――

 

 

 

<うっそ!? あいつ動くどころか走れるの!?>

<うえぇ!? 映画のゾンビみたいにゆっくり来るかと思ってたのに!? どどど、どうしよう!?>

<お、落ち着いて! 結局やることは変わらないんだか――もう来るっ、タイミング合わせて!!>

<お、おう! なのはちゃん準備!>

<う、うん!>

<<せー……のっ!!>>

 

 

 

 

 

「リングバインド!」「レストリクトロック!」

『オマエノ皮ヲヨゴッ!?』

 

 よっしゃ成功!! なんでアイツ骨格標本持って――

 

 

 

――――ビチャビチャビタァッ!――――

 

 

 

 ――何の音? 何か濡れた物を落としたような音が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人体模型ノオ兄サン? 中身(臓物)ハドウシタノカナー? 何カ周リニ色々散ラバッテマスヨ?

 ヨクヨク見レバ、ナノハチャンノバインドニソーセージ(・・・・・)ラシキ物ガブラ下ガッテ――

 

 

『カユ……ウマ……』

「見てない見てない俺は何も見ていない!! 慣性の法則で、取り外し可能だった臓器が周りに散らばったなんて事はありえない!! つまりジェルシードの力で実物になって脈打ってる生々しい臓器が廊下に散らばってるなんてことはない!!」

 

 そう、ありえない!

 だから俺の掛けたバインドで足がもげて断面図が見えてるとか、そんなこともありえない!!

 

「――え? え? あ、ばらばらに……足とか心臓とかかっかかかかか――――ふにゃあ」

「なのはちゃーん!? ショックなのは分かるけどここで倒れちゃ――気絶しとる!?」

 

 待って!! なのはちゃんが戦闘不能なら動けるの実質俺だけ――いや、あの惨状になってまだアイツが抵抗できるのか分からんけどさ!?

 

「レイジングハート! とりあえずなのはちゃんに呼びかけ続けて!」

《All right! Master! Please wake up! Master――》

「ユーノもなのはちゃんの傍に――――お前もかよ!? ごめん、ユーノの方にも呼びかけ頼む!」

《All right!! 》

 

 口も瞳孔も開いた状態でフェレットが倒れてるし、いつの間にか結界も解けてる!? 頑張れよ男の子! 

 気になる可愛いあの子の為にそこは踏ん張れよ! いや、その子も今絶賛気絶中なんだけどね!?

 

 二人ともこんな状況の時だけ年相応の反応見せやがってチクショウ!! 俺だけでやらんきゃならんのか!?

 

「俺だって意識失えるもんなら失いたいのに! お前ら気絶したら俺が気絶する訳にはいかないでしょうが!! っていうかこの状況で一人とかホントにやめて!?」 

《Attention. It is supposed that it is low-risk, but something jumps up and down here.(注意して下さい。危険性は低いと推定されますが、何かがこちらに飛び跳ねてきます)》

「ああ、お前がまだいたか! 心強い――――へ?」

 

 何かってなんぞ?

 

 

 

――――ベチッ――――

 

 

 

「うえあっ!? 顔に何か――このっ、張り付くな!!」

 

 何か生温かいし、一体何が当たったん――

 

 

 

 

 

 

――――ドクン、ドクン、ドクン、ドクン――――

 

 

 

 

「…………わーい、ジュエルシードの方から手元にやってきたぞー。最後の抵抗かー? 残念だったなー、全然効いてないぞー?」

《We were able to omit trouble to look for. Let's seal it early.(探す手間が省けましたね。早く封印しましょう。)》

「そうだねー?」

 

 うん、そうだ喜ぶべきなんだ。ジュエルシードが自分からこっちに来るなんて幸運過ぎて何も言えない。

 

 だからジュエルシードについてる赤い何か(・・・・)のことなんて微塵も気にならない。

 だってホラ、あくまでジュエルシードが目当てだったんだもの。付属品なんてオマケみたいなもんだよ、うん。

 それが何か脈打ってることも、俺の顔にぶち当たった後、素手で今もそれを握っているのも取るに足らないことだよ。うん、間違いない。

 

「よーし、お兄さん頑張っちゃうぞー? シンシアハート、封印だー」

《All right. SealingMode――Set up》

 

 茶色い魔力の帯がジュエルシードを縛る。

 決して、血液の循環を行うポンプの役目を担っている臓器を縛っている訳ではない。

 あくまでジュエルシードを縛っているんだ。 

 だから、手のひらでヌメっているナニカの鼓動が激しくなったなんて事実は一切ない。

 

《Stand by ready》

「リリカルマジカル、ジュエルシードシリアル――」

《Spell is different. It is her passwaord?(それは彼女の呪文では?)》

「あ、そうだっけ? もう全部どうでもいいんだけど――じゃねえや。力あるものに魔法の枷を、ジュエルシード、シリアルXX封印」

《Sealing》

 

 ――よし、終わった。 

 他の臓器も全部プラスチックに戻ってる……どうでもいいことだね……

 

《Receipt number XX――――They just woke up before a little.(彼女達も少し前に目を覚ましたようですね)》

 

 おお、目覚めたんだ。よかったなー? んふふふ……

 

 

「貴裕くん大丈夫だった!? ごめん手伝えなくって……ちょっと、あの、ビックリし過ぎて……私、もうバインド使うの嫌かも……」

「僕もゴメン! いざとなったら手伝うって言って――貴裕? 何か様子が変だけど本当に大丈夫?」

「んふふ、大丈夫っすよ? あんなグロイの見たら気絶しても仕方ないって……ところでユーノ?」

「うん、なに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジュエルシードさ、封印するんじゃなくて跡形もなくブッ壊さない? その方が世の為だと思うんだ」

「何言ってるの貴裕!? そんなこと出来るわけ――おーい、どこ見てるの? 僕たちの事見えてる!?」

「どうしたの貴裕くん!? 何があったの!? 目が死んでるよ!?」

「何もなかったヨー? 無事に封印したから世界は平和だヨー?」

 

 短い時間とは言え、たった一人でアレを相手してただけだヨー?

 俺の顔にアタタカイナニカが当たっただけですヨー?

 

 うん、ホントにそれだけ……ホント……

 

 

 

 

 

 

 

「うん、ホントに大した事ないんだ、ただ、か、お、に当だっだだげ、で……ひっく、うえ……」

「えええええ!? 貴裕くん泣いて、本当に何があったの!?」

「どこが怪我した!? 待って、すぐ回復魔法かけるから!!」

「怪我と違っ、ひとりっ、ごわくて……ひっく、心臓もきだじ、ぎもち悪かっただけ……うぅぅ」

「あーあー! 分かったから! 無理に話さなくて良いから! もう大丈夫だから! よく頑張った!!」

「本当にごめんね! 貴裕くんいい子いい子ー! ほら、ユーノ君も!」

「あ、うん! いい子いい子ー!」

「む゛ううぅぅぅぅ」

 

 

 

 

 9歳児達に慰められ、中身20歳児(精神年齢は成長してないと思われ)はガチ泣きしてしまいました……

 

 

 ――しょうがないじゃない! 

 『前世で俺は、血と硝煙に塗れた世界で戦い続けた……』なんてことはないし、特別グロ耐性あったワケでもないのに顔面にだもの!!

 

 

 泣きやむまで、年下の子供達に頭撫でられるのだって仕方ない事で……いや、どうしてこなったし……

 




 平凡な前世のクール(笑)なオリ主「お前に生きる価値はない(キリッ」
 なんか凄い剣技を繰り出す→踏み台転生者ブッコロ→やれやれ、これでヒロイン達を守れたぜ……さ、帰ろ。

 ――ねえねえ、死体から色々出てると思うんだけど、リアクションそれだけ?

 ◇ 

 見え見えの伏線について、突っ込む人もいるかもなんで一応

>アイツのポジションキーパーだったよな? どう応援しろって言うんじゃ……
>キーパーなんて活躍のしようがないし

 オリ主はサッカーに大して興味ないんで、ちょっとした偏見を持っています。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。