高二病抜け切らなかった人が中途半端な力で   作:mahiro

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※念話の表記に<>を使っています。



デバイスについて希望したこと②―②

・サーチャーは、魔力消費少なく、ステルス性の高い状態でも高画質・高音質で録画出来る機能がついてるように……血迷ってエロ目的に使おうとするかもしれないから、その時はデバイスが止めてくれるように
・あまりにも強すぎる人間臭さは無いように――――具体的に言うと、デバイスなのになぜか趣味を持つ、なぜか意味もなく所有者に逆らう、なぜかハイテンション、挙句の果てにはユニゾンデバイスでもないのに人に変身、なんてことはないように



第7話 「メインキャラの出来ることが、オリ主に出来るとは限らない」

 とある少年。かつては青年だった男には、好きなアニメ・漫画・小説がたくさんあった。

 

 本来あり得ないことが重なり合って、好きだった作品の中の一つの世界に転生し、原作に大いに関わることが出来た少年は今――

 

 

 

「貴裕ー? 調子はどう? あ、そろそろ体温計出しなさい」

「あ゛ー、まだいまいちかも……ほい」

「そう……熱もあるみたいだし、大人しく休んでなさい」

「了解ですだ……」

「じゃあ、学校に連絡しておくけど……夜中に体力切れるまでフェレット追いかけまわして、汗だくで過ごした結果風邪ひくって、何考えてんだかアンタは……」

「いやー、(思念体が)想像してたよりもずっと早くてもうね……怖すぎて泣きそうになった……」

「いや、その状況のなにが怖いの?」

「こんなはずじゃなかった世界の全てとか」

「ん? 何かの漫画のセリフなのそれ?」

 

(ヤダこの人、変な所で勘鋭過ぎて怖い……)

 

 

 がっつり体調を崩していたのだった――

 

 

 

 

 

 第7話 「メインキャラの出来ることが、オリ主にも出来るとは限らない」

 

 

 

 魔法初使用の翌日の朝――体が思ったよりダルイとです……

 

 朝起きてみると、昨日の寝る直前の記憶――なんで夜中に一人で出て行ったのかを親に説明した辺りから記憶が曖昧だった。

 父と母に何があったのか聞くと、俺が家に帰ったら即お説教タイムにしようかと思ってたらしいんだけど、俺が事情説明してる途中で、『魔法』だとか『黒もっこり』だとか『汚物色に』だとか、頭を揺らし口の端からヨダレを垂らして喋るのを見て中断し、とりあえずベットに放り込んだら大いびき掻いて爆睡し始めたらしい……

 

 

 眠気と戦ってたとはいえ、結構ヤバいワード言ってたのね俺。記憶にないんだけど……

 

 

 

 ――まあ、そんな事があったおかげか、ダルイから学校休もうと思って『風邪引いたっぽい』と嘘をついたらすんなり信じてもらえた。

 今は布団の上で体を休めている所である――

 

 

 

 ――――ピリリリリ、ピリリリリ――――

 

 あり? こんな朝っぱらから携帯に着信? 

 もう学生は登校し始める時間だろうに――ってなのはちゃんから?

 

「もしもーし? なのはちゃん?」

『あ、貴裕くん? おはよー』

「はよー。昨日はあの後大丈夫だった?」

『お兄ちゃんに見つかって怒られちゃった……あ、ユーノ君は家で大人気だったよ。まあ、そのせいでほとんどお話出来なくて……普通に名前を呼んで、普通にお話してね、ってことくらいしか言えなかったんだ』

「そうだったんだ。ところでなのはちゃん、昨日の影響で体調悪かったりとかしないの?」

『うん? 全然平気だけど?』

 

 この公式最強キャラめ……いや、チート頼まなかった俺の自業自得なのは分かってるんだけどさ?

 いざこの状況になると妬ましく感じるよ、そのハイスペックボディ……

 

『――ふぇ? あ、そうだね。その方が良いかも』

「ん? どしたの?」

『えっとね、貴裕くん今シンシアハート持ってる?』

「おお、あるけど?」

『良かった。じゃあ大丈夫なのかな?』

 

 ああ、もしかして念話かね?

 

<――貴裕さん、聞こえますか?>

「おおう!? なんかビビっと来た……今のってユーノ君?」

『あ、通じた? それじゃあシンシアハートを持って、心で喋るようにしてみて』

 

 なんとなくだけど相手がいる方向とか分かるのね……第六感ってやつ? 

 すごい自然に探知能力?身についてるけど、今までが今までだったから後々ペナルティがないか怖い……

 

 ないよね神様? そこまで鬼畜設定じゃないよね?

 

「んっと……<ユーノ君? もしもーし?>

<――あ、はい。ちゃんと届きました。『念話』の魔法は問題ないみたいですね>

『あ、私の方にも聞こえたよ! 方向も分かったから、電話の方は切るね?』

<了解……ユーノ君元気ー?>

<はい、大丈夫です。昨日は本当にありがとうございました>

<いえいえお気になさらずー>

 

 そういえば、昨日と違って念話受けても気持ち悪さは感じないのね。

 

 一度、正しく魔法を使ったおかげか?

 まあ、逆に言えば俺の魔法の訓練法間違ってたって事なんだけど……間違った方法を5年近く無駄に続けて……

 

 

<もしもーし? ユーノ君、貴裕くん、聞こえる?>

<あ、うん。大丈夫よー><こっちも大丈夫>

 

 深く考えないでおこう、うん。

 今寝込んでるのだって、念話の影響じゃないんだし何の問題も無い……

 

<私も貴裕くんも学校あるし、帰ってきてから集まってお話聞かせてもらおうと思ってたけど、念話の魔法があるなら空いてる時間に済ませちゃおうと思うんだけど……貴裕くんの今日の授業ってなにがあるの?>

<あ、今日は俺学校休んでるからいつでも良いよ>

<うん、わかった……って、学校休んでるの!? どこか悪くしたの!?>

<もしかして昨日魔法を使用した影響で体調が悪くなったりしているんですか!?>

<うえっ!?>

 

 軽く流されるかと思ったら、予想外な程に突っ込んできた!?

 あ、でも心配して貰えるのはちょっと嬉しい……ええ子達や……

 

 

 ――昨日のアレのせいなのは間違いないんだけど、そのまま言ったら絶対ユーノ君は落ち込むよな……

 なんて誤魔化せば…………ん? よくよく考えれば落ち込むだけじゃ済まない?

 

 責任感強い子だから『これ以上負担をかける訳にはいかない!』とか言って、戦力外通知されてしまう可能性もあるんじゃ……

 

 

 

 

 アレ? 対応間違えればもしかしなくてもヤバい状況かコレ!?

 

<いや、体調悪いっていうのじゃないんだ!? えっと……ほら! 昨日思念体から逃げ回るために、なのはちゃん達載せて全力で自転車こいでただろ!? おかげで足もうパンパンでさ! それで学校行くの面倒になって仮病使って休んでるだけだから!!>

<あ、そうなんだ。もービックリさせないで……って仮病使ったの!?>

<た、大したことないなら良かったです……こっちの学校制度については何も知らないんですが、休んじゃっても大丈夫なんですか?>

<小学校の授業なら、一日ぐらい休んでも全然大丈夫!>

<ユーノ君騙されちゃ駄目だよ! やっちゃいけないことだし大丈夫じゃないから! というよりなんで仮病だってバレないのかな……熱とか計ったりしなかったの?>

<具合悪い振りして、体温計渡されたら布団でこするだけの簡単なお仕事です>

 

 今日は素だったけど、いつもは『演技力up』と組み合わせて有効活用してます。

 まあ、電子体温計だったら使えなかった方法なんだろうけどさ。

 

 

 低学年の頃は頻繁に使ったな……いや『サボる俺カッコ良い』みたいな変な思い違いはしてないのよ?

 ただ、やっぱり幼稚園の時と大差ない環境だったから、精神的にちょっとキツイ時が多かったんだもの……

 

 特に本当に風邪ひいて休んだ次の日は狙い目だった。もう回復してるんだけど、まだ具合悪い振りして休むっていうね。

 前世でも何回かやったことあるし、友達に聞いたら皆経験のあったメジャーな方法である。

 

<うわあ……>

<だめだよそんなことしちゃ! 美智子おばさんが本当に病気かと思いこんで心配するよ!!>

 

 まあ、真面目な主人公勢には不評だったようですが……

 

 

 あと、なのはちゃん?

 気のせいか怒る内容が、学校をサボることから母さんを心配させる事についてにシフトしてないかい?

 別に間違っちゃいないし、どっちにしろ悪いことには変わりないし、誤魔化せたならなんでも良いけど……

 

<うん、何かゴメンナサイ。とりあえずそういうことで、なのはちゃんの都合がついたときに念話し合うってことでOK?>

<むー、それでいいけど……あ、もうバス来ちゃった。それじゃあまた後でね? いってきまーす!>

<あ、いってらっしゃーい><いってらー>

 

 送迎バスで登校とかいいな。

 学校まで座って行けるとかマジうらやましい……おのれ私立校め……

 

 

 

 ――さて、この後はどうするかね? 

 ユーノ君とダラダラ喋っているか、デバイスの機能について確認でもするか……あ、そうだ。

 

<ユーノ君、ちょっとシンシアハートについて聞きたい事あるんだけど、大丈夫?>

<あ、はい。なんでしょうか?>

<あー……その前にだけど、敬語とか使わないようにしない? なのはちゃんにも『普通に名前を呼んで、普通にお話して』って言われなかった?>

 

 俺だけ仲間外れとか泣くぞコラ。いじめ、カッコ悪い。

 

<え、でも貴裕さんは僕より年上ですし……>

<あれ、そうなの? まあ、どっちにしても敬語無しだと嬉しいんだけど……ってか二人はタメ口なのに俺だけ敬語とか寂しいんですが……>

<あはは……うん、わかりました――じゃないや、わかったよ。『貴裕』で良いのかな?>

<うん! これからよろしく! 俺も『ユーノ』って、呼び捨てでも良い?>

<大丈夫だよ。こちらこそよろしくね>

 

 まあ、すずかちゃんみたいに、深く関わらないだろう子だったら別に敬語でも全然問題ないんだけどね?

 これからガッツリと魔法関連で関わるのに、ずーっと敬語ってのも個人的にアレだし……

 何より、『将来有望』『ここでは数少ない同性の魔法使い』『9歳? 何それオイシイのってレベルの精神面を持っている子』とは是非友達になっておきたい……!

 

<それで、シンシアハートについてだっけ? 何かあったの?>

<あー、何か問題があったっていうんじゃなくて、ちょっと気になったんだけどさ。昨日なのはちゃんの適性について話してた時、ユーノが『あの(・・)シンシアハートが』って言ってたでしょ? あれってどういう意味なのかなって思ってさ>

<ああ、そのこと。シンシアハートは――レイジングハートもだけど、なんていうか……色んな意味で凄いデバイスだったから……>

 

 何その嫌な感じがバリバリする表現は……

 

 

<えーっと……詳しく話せる?>

<うん、大丈夫……あの二機は店の売り物なんかじゃ無くて、僕が遺跡の発掘をしている時に見つけた物なんだ。安全性も確認し終わって使おうとしたら、適性がそこまでないのが分かってさ……管理者としての権限も相まってある程度は使えたんだけど、使いこなせてるとは言えなかったし、マスターとしても認められなかったんだ>

<そうなんだ……その遺跡ってどんなモノだったの?>

<いまいち分かってないんだよね……それから少ししてからなんだけど、どこからか二機の話が流れたみたいで、自分が使えるかどうか試してみたいって人がたくさん出て来たんだ。どっちもかなりの高性能だし、謎の遺跡から見つかった、所有してる僕自身も使いこなせていってなると……ね?>

<あー……>

 

 興味を引くには十分すぎるわな。

 自分ならどうなのか試したいって人も出てくるか……

 

<色んな人が試したんだけど、やっぱり使いこなせる――マスターとして認められる人は出てこなかったんだ。僕みたいに半端にしか扱えなかった人が大半だったんだけど、全く使えず起動すらできなかった人もいてね……それで、シンシアハートはレイジングハートより機械的に応答する(・・・・・・・・)特徴があるんだけど、目をキラキラ輝かせてる小さな子に対して『あなたには適性が全くありません。レイジングハートの方にも適性が無いかと思われます。これ以上は無駄です』ってハッキリ言っちゃって……その子大泣きしながら帰って行ったよ……>

<うわあ……>

<その子以外にも、老若男女身分関係なくそんな事を繰り返して……フォローするのが大変で……>

 

 名も知らぬ魔導師の皆さん、特別な力を夢見た少年・少女達、なんかすいませんでした……

 そしてユーノ君は本当にお疲れさまでした……

 

<だから二人がしっかりとあの二機を使えたのには驚いたんだ。封印魔法使える程適性があるならそれに越したことはないけど、使えなかったら防御や補縛をしてもらって、その隙に僕が封印しようと思っていたから……あれだけの人数がいて一人も適性合わないなんておかしいと思ってたけど、まさか別の次元世界で見つかるなんて、それも二機とも……>

<へー、確カニスゴイ不思議ダネー?>

 

 うん、流石に違和感覚えるよね……

 偶然で済ますにはキツイかもだけど、どうにか納得しといて下され。

 

<うん……他に聞きたい事はある?>

<あー、後はなのはちゃんと一緒に聞いておいた方がいいことだから大丈夫。まだ本調子じゃないだろうし、なのはちゃんから連絡来るまでは休んでおいたら?>

<そう……だね。うん、じゃあしばらくお休み>

<お休みー>

 

 

 個人的にハイテンションだったり、『もうお前機械じゃないよね?』って言いたくなるようなデバイスは嫌だったから『人間性は抑えて』みたいなこと言ったけど、まさか子供を泣かせる原因になるとは……

 まあ、俺に実害はないし別にいい……かな?

 

 

 

 

 ――さて、俺はその問題のデバイスに確認しなきゃならんことがあるのよね……

 

「シンシアハートさんや、ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」

《What is the matter with you?(どうかしましたか?)》

「離れた場所から、録画・録音したりする機能ってある?」

《Yes, it is possible if I apply magic called the 『Area Search』(はい、『エリアサーチ』という魔法を応用すれば可能です)》

「それってステルス性高くしたりできる? 才能ある人にも見抜けない位に」

《Yes, I can》

 

 ――イエスッ!! この機能は問題なし! 神様マジでありがとうございます!!

 

 いやー、『名シーンを生で楽しみたい!』って気持ちはもちろんあるけど、それって結局一回きりしか楽しめないじゃない?

 それだけだと何かもったいない気がして、いっそのことビデオカメラでも持ち込んで映像だけども残そうかと考えてたけど、『デバイスってあれだけ高性能なら、撮影ぐらいは出来ても不自然じゃないよな?』って思ったから神様にお願いしといたんだよね。

 

 無事機能は搭載されているようだし、これであの数々の名シーンを盗撮――もとい撮影して何度も楽しむことが出来る!!

 

「うっし! じゃあこれからは、起動したらすぐにステルス状態でそれ使って。戦闘が起きている場所には複数の箇所から、あと俺が場所指示した時にもお願いね?」

《All right》

 

 よしよし、これで暇な時は名シーン見て過ごせるな。

 楽しみだな……グへへへへ――

 

 

 

 

 

 

「貴裕? 母さんそろそろパート行くけど――大丈夫そうね、そんな気持ち悪い笑い方できるんだったら……あれ、アンタそんなアクセサリー持ってたっけ?」

 

 ――だからノックをしろといつも言ってるじゃないですか母上……気持ち悪いとか言うなし!

 

「これは前に道で拾ったヤツ。そして母さんノックしようよ……プライバシーどこいったの?」

「子供が何言ってるんだか……あ、17時には帰れるけど、その間に何かあったら電話しなさいね?」

「何と言う理不尽……いってらー」

 

 全く、小学生の家庭内におけるプライバシーのなさと言ったらもう…………アレ? 

 

 俺撮影するのは大丈夫だろうけど、ちゃんと見れる機会ってあるの?

 モニターとか出して見てる途中で親が突然突入してくる→魔法バレ、とかやめて頂きたいんだが……脳内再生とか出来るんだろうか?

 

 

 ◇

 

 シンシアハートに『戦略シュミレーションの応用で、映像の脳内再生も可能。なんだったら疑似体験の様な形にも出来る』と教えてもらい、体調不良の状態で狂喜乱舞した結果へばったり、他の魔法について教えてもらったりして過ごしている内に、なのはちゃんからの念話が届いたので説明会タイムになり――

 

 

<――ジュエルシードは僕らの世界の古代遺産なんだ。本来は手にした者の願いを叶える魔法の石なんだけど、力の発現が不安定で、昨日みたいに単体で暴走したり、間違って使用した人や動物を取り込んで暴走することもあるんだ>

<そんな危ないものが何でウチのご近所に?>

<僕のせいなんだ……僕は故郷で遺跡発掘を仕事にしていて、古い遺跡の中でアレを発見して、調査団に以来して保管してもらったんだ。だけど、運んでいた時空艦船が事故か何らかの人為的災害にあってしまって……21個のジュエルシードはこの世界に散らばってしまったんだ。今まで見つけられたのは、昨日封印したのも含めてたった二つ……>

<あと19個か……結構あるんだ……>

 

 ――空気にならにように、ちょいちょい発言に交じっております。

 

 

 このやりとりも出来れば邪魔したくなかったんだけどな……終わるまで黙ってるのもアレなのよ。

 

<あれ? 話を聞く限りジュエルシードが散らばっちゃったのってユーノ君のせいじゃないんじゃ……>

<アレを見つけてしまったのは僕だから……全部見つけて、あるべき場所に返さないと>

<いや、あるべき場所に返すのは賛成だけど、それはユーノがやらなきゃダメって訳じゃないのに……責任感強い、ってより凄い真面目だな>

<――何となく、何となくだけど、ユーノ君の気持ち分かるかもしれない……貴裕くんの言うとおり、真面目なんだね、ユーノ君は>

<え……?>

 

 ホントにええ子やねー、ユーノ君は……

 

 

 ――そして、俺の話す内容が二人に比べれば中身無さ過ぎて困る。

 いや、変に流れ変えないためにはこれで良いはずなんだけどさ……

 

<えっと、夕べは巻き込んじゃって、助けてもらって本当に申し訳なかったけど……この後は僕の魔力が戻るまでの間、少し休ませてもらいたいだけなんだ。一週間、いや五日もあれば力が戻るから、それまで……>

<戻ったらどうするのさ? また一人でやるの?>

<うん……また一人で、ジュエルシードを探しに出るよ>

<<それはダーメ>>

<だ、駄目って、二人とも……>

 

 ちょっとかぶせて言ってみたかったセリフ……男が言うと可愛くないを通り越して気持ち悪い……

 

<私、学校と塾の時間は無理だけど、それ以外の時間なら手伝えるから>

<俺も、学校と野球の日はアレだけど、それ以外は大丈夫>

<――昨日みたいに危ない事もあるんだよ?>

<だってもう知り合っちゃったし、話も聞いちゃったもん、ほっとけないよ。それに、夕べみたいな事がご近所で度々あったりしたら大変だし……ユーノ君、一人ぼっちで助けてくれる人居ないんでしょ? 一人ぼっちは寂しいもん……私達にもお手伝いさせて!>

 

 この主人公のなんという綺麗な心……

 俺の方はそんなこと考えておらず欲望全開ですけどネー? なんだろう、心が痛い……

 

 

 ――次に言うのは、士郎さんの教えについてだったかな? 

 アレは当たり前の事の様に聞こえるかもしれないけど、実際にやるのは本当に難しい事――

 

 

 

 

 

 

 

 

<それにね、私が大切だと思ってることの中で、『困っている人が居て、助けてあげられる力が自分にあるなら、その時は迷っちゃいけない』っていうのがあるの。これ、美智子おばさんの教え(・・・・・・・・・・)!>

 

 ――士郎さんゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ……

 

<美智子おばさん? 朝も言ってたけどそれって誰?>

<俺の母さん……士郎さんゴメンナサイ、本ッ当にゴメンナサイ……! しょうがないですやん! そんな似たり寄ったりの言葉なんて何処にでもあるし、誰だって言うじゃないですか!>

<いきなりどうしたの貴裕? 士郎さんって?>

<尊い犠牲になった人です……>

<え?>

<帰ったらユーノ君にも美智子おばさんのお話聞かせてあげるね! えへへへ……>

<え? あ、うん>

 

 あーあ、了承しちゃったよ。長いぞー? なのはちゃんの『美智子おばさんマジリスペクト!』は……

 

 うん、なのはちゃん若干トリップはいちゃったから俺が話進めよう……

 

<あー、とりあえずユーノは困っていて、俺達は魔法の力でその手助けが出来るんだよね?」

<あ、うん>

<正直ちゃんとした魔法使いになれるかどうか自信はないけど、これから色々教えてくれない?>

<――二人はもう魔法使いだよ。特になのはは、多分だけど僕よりもずっと才能がある>

<えへへへ……って私!? えと、よく分からないけど……これからよろしく! 私達頑張るね!>

<うん、ありがとう……!>

 

 あ、トリップ状態終わった? 

 久しぶりに母さんの話を初めっからする人ができて、よっぽど嬉しかったんだネー……おのれ母め……

 

<さて、もうすぐウチに着くよー。とりあえず一緒におやつ食べよ!>

<あ、うん。ありが――――これはッ!>

 

 

 あ、もしかして暴走体が――――うえ゛っ、何この気持ち悪い感覚!?

 

 

<今の変な感じって……>

<新しいジュエルシードが発動している……すぐ近く!>

<どうすれば!?>

<一緒に向かおう。二人とも手伝って!」

<うん!><了解!>

 

 やっぱりジュエルシードか……毎回発動するたびにあの気持ち悪い感覚がするのかね……鬱だ……

 

 

 ◇

 

 ジュエルシードが発動してる神社への道の途中でなのはちゃん達と合流。

 今は無駄に長い階段を駆け上っているところだが――

 

 

「二人とも、そろそろデバイスを出しておいて!」

「あ、うん! 貴裕くん、足は大丈夫?」

「あ゛ー、大丈夫。気合いで行ける!」

 

 激しい運動とか、体調悪い今の状態では遠慮したい……

 

 まあ、さっきの嘘のおかげで、キツそうな顔してもそんなに怪しまれないんだけどね?

 

「さっきこっちから唸り声が聞こえ――――いた! 現住生物を取り込んでる!?」

「どうなるの?」

「実体がある分、手強くなる……」

 

 おおう、やっとこ登り切れた……さて暴走体は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭の横には赤い角らしきもの――電波でも受信するんだろうか?

 

 目の数が増え、計4つに――なんで下の目の方が小さいんだろ?

 

 目の上あたりに青い宝石らしきものがそれぞれ一つずつ、両肩にもサイズは違いのものが――用途すら分からないよ……

 

 口元の両側にはひげ?が鋭利になったようなもの――首曲げた時に刺さらないのソレ?

 

 上あごの横から微妙な長さの短い角?がそれぞれ二本ずつ――モノ食べる時大変そう……

 

 顎には謎の突起物――ちょっと触ってみたい……

 

 胸からもなにか生えてる――だからその用途は……

 

 

 ――まとめると、『小学生の僕がデザインした強くてカッコいい犬!』っていう感じの、機能性を度外視した外見をしていますね……

 

 

『グルルルルル……』

 

 アニメで見た時はそんなに気にならなかったんだけど、生で見ると『どうしてそうなった!?』って突っ込みたくなる代物になってる……

 こっちの方が昨日の思念体より強いはずなのに、心に余裕が持てるぞオイ。

 

 

 あ、そういえばあの犬の飼い主さんってどうしたんだっけ? 

 確か気絶して倒れた描写が…………オゥ……

 

 

 

 

「何かあそこにいる女の人、顔がヨダレらしきものでベッタベッタになってる状態で倒れてるんだけど……」

「うわぁ、ホントだ。あの犬にやられちゃったのかな……あれ? あの人この前犬の散歩してた……え? もしかして、あのちっちゃい犬がコレに!?」

 

 愛情表現が素晴らしい事に……発動してから結構時間経ってるもんね。

 

 でも、モグモグ(お食事的な事)もパンパン(マニアックな18禁的な事)もされず、顔面デロンデロンだけで済んだのはむしろマシな方?

 

 

「二人とも! それより早くデバイスの起動を!」

「あ、うん……起動ってなんだっけ?」

「え?」

『グルルッ』

 

 なのはちゃんが首を傾げるのと同時に、残念なデザインのワンコこっちに動き出した。

 ずっと飼い主の顔舐めまわしてりゃいいのに……

 

「昨日デバイス起動する前に言った、呪文みたいなやつのことじゃない? 『我、使命を』ってやつ」

「え、そうなの!? あんな長いの覚えてないよ!?」

「僕がもう一回言うから繰り返して!」

 

 

 ところで、あのワンコって俺たちを襲うつもりなんだろうか? 

 外見がアレだから分からんけど、本当は『ヘイ、ガキども遊ぼうぜ!』って来てるんじゃ――

 

『グルァァァッ!!』

「キャッ!?」

 

 うん、大口開けてそれはないね! 『俺様、オ前ラマルカジリ。肉ヨコセ!』って感じだよ!?

 流石にこの距離まで来られると、あんなデザインでも怖いもんは怖い!!

 

 

 念のためになのはちゃんごと逃げれるように――――あ、レイジングハートさん光り始めたから大丈夫か。

 

「レイジング……ハート?」

《Stand by Ready. Set up》

 

 よしよし原作通り――思ったより桜色の光が眩しっ!? 

 

「パスワードなしでレイジングハートを起動させるなんて……!」

「光が目に優しくない……何でユーノは平気なの?」

「僕は慣れてるから――じゃなくて! 貴裕は早く起動を! なのはは防護服を!」

「は、はい!」「了解!」

 

 

 そういえば、何でシンシアハートさんは起動し無かったんだろ? 俺も割とピンチだったのに……

 まあ、何事もなかったしいっか。ちゃっちゃと起動させよう――

 

「うっし! シンシアハート、セットアップ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

《All right, please say a password to set up(起動パスワードをどうぞ)》

「おうっ! …………ん?」

 

 ん?

 

「えっとさ……省略できないの? ほら、なのはちゃんみたいに……」

《Do you omit it? All right. For a setting change, please say a password to set up(省略しますか? 了解しました。設定変更のため、起動パスワードをお願いします)》

「貴裕急いで! さっきのはなのはが特別なだけで、普通はパスワードが必要なんだ!」

 

 

 

 

 

 ――ええええええええ!?

 

 え、マジで省略できないの!? あの長ったらしいのもう一回言わなきゃいけないの!?

 今回やれば次回からは大丈夫っぽいけどさ、何そのすごい現実的なパスワードの省略方法は!?

 

『グルァァァァッ!!』

「なのはッ!!」

 

 だああああッ!? もう時間ねえし! 何もしないのはイカンよ俺! いらない子扱いされてまう!

 

「我使命を受けし者なり契約のもとその力を解き放て風は空に星は天にそして誠実なる心はこの胸にこの手に魔法をシンシアハートセットアァァァップァ!!」

《Stand by Ready. Set up》

 

 今回も汚物色の魔力が全身を包みこんでいくけど、そんな事は気にしてられない!

 

「うわ、あの長い詠唱を一呼吸も無しで……」

「そんな所に感心されても嬉しくないからね!?」

 

 それよりワンコは――――いた! 鳥居の上か! 

 

 確かこの後は、なのはちゃんに襲いかかるけど弾かれてダウンした所を封印だっけ……

 ヤバい、参加できる所がもう……

 

 

『グオオオオオッ!!』

「ああもうっ! リングバインド!」

《All right》

 

 あれだけでかいサイズなんだ、思いっきりガッチリと締めつけるイメージで魔力をば――何か自然に魔力とか感じられてるんだけど、俺の5年間の努力っていったい……

 

 

 とりあえず空中に固定して、そこでなのはちゃんに封印をしてもらう形で――

 

 

 

 

 

 

 

 

『グオオオ――――ゲェッ!?』

「ひゃい!?」

『ガハッ! オォ……』

「た、貴裕? け、結構えげつない手を使うんだね? もう少し優しくしてもいいんじゃないかなー……なんて思うんだけど……」

 

 へ? 何が――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――て胴体縛って吊るすつもりが、首に決まって吊るされてる!?

 

 え、何ソレ犬の首吊り自殺とか初めて聞く――あ、やったの俺だから自殺じゃねえや。

 

『グ……カ……カ……』

「た、貴裕くん? あの、私は大丈夫だからこの子に掛けてる魔法外してあげて……くれませんか?」

「何で敬語!? 違うから!! 狙ってやったんじゃないの! こう、胴体あたりを縛るつもりだったんだけど、焦ってたせいか狙い外しただけだから!!」

「わ、分かったから! とりあえずバインド外そう! 傷めつければ元の生物にもダメージはあるんだから!」

「お、おうさ!」

 

 とにかくさっさと外して――あ、力なく落ちたぞ大丈夫かアレ? 

 うわ、なんかビクンビクン跳ねてるし……

 

「だ、大丈夫かなこの子……」

「多分大丈夫だとは思うけど、一応後で回復魔法掛けておこうか……っと、貴裕、封印を」

「うえッ、俺!?」

「だって貴裕が潰し――止めたんだし、貴裕がやるべきだと思うよ、うん」

 

 今『潰した』って言いかけたよな!? まあ、反論できないけど……

 あ、そういえば――

 

「ユーノ、俺の封印の為の呪文って?」

「え? あ、昨日はなのはが封印したんだもんね。心を澄ませれば貴裕の呪文が思い浮かぶはずだよ」

 

 オリジナル……中二爆発呪文は避けたいな。かといって『リリカルマジカル』も何だけど……

 

 とりあえず集中して――――お、アレなワードはあるけどそこまででも無かった。

 

「よし、シンシアハート。封印の準備お願い」

《All right. SealingMode》

 

 シンシアハートのグリップ先が少し伸びて、そこから羽が生えて――あら、レイハさんのシーリングモードと同じ形なのか。 

 

《――Set up》

 

 色が濃い目のガムテープと見間違えそうな、茶色い魔力の帯の様なものでワンコをきつく締め上げてと……

 

 ん? きつく(・・・)締め上げて?

 

 

 

 

『ガッ!? グォォォォ……』

「た、貴裕くん? もうちょっと優しくしてあげてもいいんじゃないかと思うん……ですが……」

「俺がわざと締めつけたいと思ってる訳じゃないから!? こういう仕様だから!!」

「あ、あははは……」

 

 引かないのそこ! ユーノ君、引き攣った笑いなんかじゃ無くてフォローを! フォローをお願いします!

 

《Stand by ready》

「マイペースだねお前は!? ええい、力あるものに魔法の枷を! ジュエルシード、シリアルXVI、封印!!」

《Sealing》

『オアッ!? ァァァ……』

 

 帯のようなものの本数が増え、ワンコが苦しげな声を上げながら光の粒子になって消えて……

 なにこの罪悪感……こんなの知らんよ……

 

 

《Receipt number XVI》

「――はぁ……これでいいんだろうか……」

「う、うん……多分?」

 

 断言してくれよユーノ君……原作展開が迷子過ぎる……

 

 

 

 元に戻って気絶しているワンコに、ユーノ君の指導のもと俺が回復魔法を使った。

 そのワンコが目を覚まして俺を見た瞬間、飼い主の元にダッシュで逃げて行ったりなどという出来事があってから少し――

 

 

「――ん、あれ? 転んで頭でも打ったかな……なんか生臭ッ! 顔ベトベトだし「キューン!」――うわっ!? どうしたのいきなり……って舐めまわしたのはアンタか……アレ? 何か震えてる?」

「キューン! キューン!」

「え、何どうしたの? ちょっ、服噛んで引っ張らない! 何、帰りたいの? 分かった、分かったから――」

 

 ワンコのアピールにより帰って行く飼い主を見届け、ようやっと一段落である……

 

 

「お疲れ様……なのかな?」

「うん、そう……だと思うよ?」

「なんか無駄に疲れた気がするな……」

「あ、あははは……」

 

 俺を含め、三人のコメントが微妙に……

 やっぱり、原作の様な綺麗な形に行かない事が多すぎるよ!?

 

 だからと言って、途中退場する気もないけど……『とりあえず、色々頑張っていかなきゃ、と思います!』ってか?

 

 

 ――いや、本気でバインドの練習はしっかりしよう……

 人に使う時にアレやったらヤバいもの……首ゴキっていくよ絶対? 

 

 

「あー、とりあえず日も暮れたし帰りますか?」

 

 ってかもう帰らないと外出バレるから、急いで――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、そうです――だね!」

 

 ――帰ろうと思ったんだけど、ちょっと待とうか。

 今なのはちゃんに敬語使われなかった俺?

 

「えっと……なのはちゃん? 何かおかしくね?」

「え!? 別に何でもないで――ないよ!?」

 

 隠せてねーよ!? なんで敬語――まさかまだ俺の事怖がってらっしゃる!?

  

「ちょ、だから敬語とか辞めて!? さっきも言ったけどアレわざとじゃない――距離とんなコラ!!」

「えっと、分かってはいるんで――だけど……ご、ごめんなさーい!」

「あ、逃げた!?」

「逃げんなし!? というか弁解させて下さいお願いします!!」

 

 いやホントに待って! 違うの! 何度も言うけどワザとじゃ――

 

 

「レ、レイジングハート! セットアップ!!」

 

 ――レイハさん起動させんなし!? なんなのそのガチの対応は!? ああもう!

 

 

「そっちがその気ならバインド掛けんぞコラ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ねえ、冗談のつもりだったんだけど……

 その泣きだしそうな顔で、全力でガード体勢取るの辞めてくんない?

 

 

 

 

 

 

 ――原作介入した結果、主人公(9歳児の女の子)に避けられました……

 

 何とか捕まえて説得するまでかなりの時間が…………どうしたこうなったし……

 




優しい(え?)オリ主「目に余る残虐な技!」→敵が倒れる→心優しいヒロイン「オリ主君、カッコ良い(ポッ///」

 ――え? どゆこと?

 ◇ 

>違うから!! 狙ってやったんじゃないの!

 戦闘訓練積んでるはずのアルフだってバインド外すことがあるのに、魔法歴一日の素人が掛けたらまともな成功なんてするはずがないよね!

 ◇

 人間臭さは無いように→機械的な応答→融通が利かない。

 ◇

 3月19日(2014年)
 何度目かの本文修正&後書きでのツッコミ追加。初期より大分マシになっただろうか……


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