高二病抜け切らなかった人が中途半端な力で   作:mahiro

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魔法について希望したこと

・魔法の才能・魔力量は、主人公達レベルまでは届かないが、そこそこのものを
・砲撃魔法とか使えると調子に乗りそうなんで、補助とか補縛系の適性メインで
・魔力の色が『虹色』とか『黒』とかやめてください。目立たない色で



二次小説のオリ主で、よく『スポーツ・ランニングやって体力付いた。だからこの程度では疲れない(ドヤァ』っていうの見かけるけど、小学生までやったところでそこまでのモノにはならないと思うんですよ。

いや、そこまで突っ込むのも無粋な話だと分かってはいるんですけどね……




第6話 「ようやっとリリカルなのはらしく……らしく?」

 

 不自然なほど人気がない夜中の住宅街。

 必死の形相で自転車をこいで走る子供達と、それに追う黒いバケモノがいた――

 

「ハッ――ハッ――ハッ――!」

『オオオオオオオオッ!!』

 

 黒いバケモノがすぐ後ろに迫り、雄たけびを上げる一方――

 

 

 

 

「貴ッ、裕君! これカゴが当たってるとこがいひゃい!? うぇ、舌かんら……」

「ごめん、もー少しで捲けそうだから待って!! あとちょっとで曲がり角だか『グオオオオオオッ!!』――うっせーぞバカが!! 近所迷惑な――ゴメンナサイ調子乗りました謝りますから追跡スピードあげないでええええええっ!?」

「ぐえっ!? 待って、体重掛けないで! 潰れちゃう! 僕潰れちゃうから!!」

 

 子供達は色々いっぱいいっぱいになっていた――

 

 

 

 

 

 第6話 「ようやっとリリカルなのはらしく……らしく?」

 

 

 

 

 

 

 思念体相手にまさかのDEADENDしかけてから20分。

 

 今は電柱の裏で身を隠し、いつ補足され襲われるんじゃないかとビクビクしつつ、色々ユーノ君から説明してもらってる最中なんだけど――

 

 

 

 

「――話をまとめると、君はある探し物の為に異世界から来て、ハァ、一人でやろうとしたんだけど上手くいかなくて、ハァ、その探し物はかなりヤバいもので……うっぷ……あの思念体っていう黒いのもその探し物が原因で……んぐっ、とりあえず封印には魔法の力が必要だけど今君はそれを使えない状態で、ハァ、資質を持った人を呼んでみたらなのはちゃんが来たんだけど…………おえっ…… 」

「貴裕くん!?」

「大丈夫ですか!? ごめんなさい、無理をさせてしまって……」

「おおぅ……大丈夫だ、問題ない」

 

 ――今度は魔力酔いじゃ無くて、ストレスのかかる状態で急激な運動をしすぎたせいで吐きそうです……

 この子達(カッコつけたい相手)の前じゃなかったら、我慢せずぶちまけてるわ……

 

 

 ◇

 

 とりあえず思念体から離れられた15分前――

 

「どうにか捲けたっぽいか……あ゛ー(思念体にも、原作通りに行かなかったことも)ビビったー……」

「ふぇー、やっと降りられるの? よいしょ……あ、カゴに当たってた腰回りが痛い……」

「やっと新鮮な空気が……危ない所をありがとうございました。あなたは……?」

「ああ、俺は田中貴裕っていう――――フェレットが喋るのとか、実際見るとシュールな光景……」

「え? あ、これは変身魔法の一種で、こっちの姿の方が魔力の回復とかが早いからフェレットの姿をしているだけで、本当は人間の姿ですよ?」

「え? そうなの?」

「はい。僕の部族では結構使われてます」

「へー、ソウナンダー……」

 

(ノオウッ!? 『アースラにて、ユーノ君の正体を知りあわあわするなのはちゃん』のシーン意図せず潰しちまった!?)

 

「遺跡の発掘の時でも、狭い所にも入れるから便利で……ってそうじゃない!? 早くあの思念体をなんとかしない『グルルル……』――と?」

 

 

 

 

『グオオオオオオオッ!!』

「イエアァァァァッ!?」「わあああああっ!?」「ええええええっ!?」

 

 もう一回ユーノ君、なのはちゃんのケツの順でカゴにシュートして逃走しました……思念体怖い……

 

 

 ◇

 

 どうにか振り切ることができたので、事情に関して説明して貰った8分前――

 

「――あなた達には資質があります! お願いです、その力を貸して下さい!」

「アレがヤバいのは分かるし、力を貸したいのは山々なんだけど……具体的には何をどうすればいいの?」

 

(知ってるけど、ここで突っ込まないと違和感持たれるからね……クズい思考でゴメンナサイ……)

 

「あれは忌わしい力の元に生み出された、思念体という存在です。あれを停止させるには、あなた達の持つ魔法の力を使って封印する必要があります。だから『グオオオオオッ!!』――また!?」

「あわわわわ……」

「空気読めよお前!!」

 

 説明途中なのに再度逃走……思念体の索敵能力マジ怖い……

 

 

 

 

 ――ええ、落ち着いた状況での説明なんぞなく、今までほとんど逃げ回っておりました。

 戦う前から足パンパンでほとんど動けない、体力も削られ息切らしてるってどういうこっちゃねん……

 

 例えスポーツやっていようと所詮は11歳の体。

 大した体力もないのにほぼ20分間全力で自転車をこぎ続ける――オプションに26㎏前後の動く人間を乗せて不安定なバランス、後ろから猛スピードで迫る命の危険つきってこともあり、ちょっと吐き気がするほどですだ……

 

 

 というより、あの黒もっこりが空気を読まなさすぎて怖い……

 こういうのは変身とかが終わる直前に襲いかかって来るけど、ギリギリ間に合って「ここからが本番だ!」ってなるのがお約束(ご都合主義)ってもんだろうに……

 

 あれか? 作用するご都合主義は幼児期なのはちゃんに会えるだけなのか?

 いや、ご都合主義必ず発動するように願った訳でもないし、全部が全部それで片付けられると微妙な気持ちになるけどさ……

 

 

「あの思念体がまた直ぐに来るかもしれませんから、詳しい説明は後に。とりあえず二人ともこのデバイスを…………本当に大丈夫ですか?」

「貴裕くん、まだ顔青いよ……?」

「うぇー……うん、何とかいけます」

「――分かりました。頼んでおいて何ですが、無理はし過ぎないで下さい……」

 

 おおう、なんか心配してくれてる……

 

 ユーノ君もなのはちゃんもそんな顔しなくていいのよ?

 自業自得の様なものだと思うし……そんな清い目でこっちみんな。浄化されるでしょうが。

 

 

「青い方がシンシアハート、赤い方はレイジングハートという名前のデバイスです。これがあれば、あなた達にも魔法が使えるようになります」

 

 にしても、やっとこさマイデバイスが俺の手に……ホント、主人公の愛機変更とかマジ勘弁。

 

 『シンシアハート』ね。名前からしてレイジングハートの姉妹機みたいなもんなのかね?

 

 レイジングハートの訳が『不屈の心』だったよな?

 確かシンシアの意味は――

 

 

 

 Sincere[訳]うそ偽りのない,誠実な,正直な本心からの,正真正銘の,真摯,etc……

 

 

 つまりシンシアハートは『誠実な心』か…………神様これもしかしなくても皮肉ですか?

 

 一応神様と対面した時には真面目な態度とってたけど、それだけでデバイスの名前にまでつけないよね?

 実は心の中とか読めてて「転生うっひょい! ぐへへ」とかなってたのを見て、あえてこの名前にしたのか?

 それとも、こっちに来てから色々アレな行動多いから「自重しなさい」って遠回しに伝えたいの?

 

 

「それじゃあ二人とも、目を閉じて、心を澄ませ、僕の言うとおりに繰り返して下さい」

 

 ユーノせんせー、心の中が邪念・雑念でいっぱいっぱいで澄んでないと思うんですが問題ないですか?

 大丈夫だよね? クズな精神の持ち主には使えないとかそんなことはないよね?

 

 

 まあ、このままやる以外に選択肢なんてないんだけど――――ってあら?

 

「なのはちゃん、そんな暗い顔してどしたの?」

「ふえっ!? えっと……」

 

 思念体にビビってるとかかね? 何か表情が暗いけど……

 

 

 

 

「あの……私で本当に大丈夫なのかな? さっき適性ないって言われちゃったんだけど……」

「ああ、そういえばシンシアハートにそんなこと言われてたっけか?」

 

 あそこまでバッサリ言われるとキツイものがあるか。

 加えて、直前までは「大丈夫! 君ならできる!」的なこと言われてたのに、結局使えなかったらそりゃ疑う気持ちも出るわな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――いやいやいやいや!? そこ疑っちゃいかんでしょなのはちゃん(魔法少女モノの主人公)は!?

 『不屈の心』はどうなった!? こんなところで折れちゃいかんよ!? 

 

 

 というか何でデバイス取り違えた事からここまで酷い状況になるん!?

 俺のせいか? 全部俺が悪いのか!? とにかくどうにかせねば!!

 

「だ、大丈夫だって! さっきそのデバイスの声聞こえたけど、そっちの『レイジングハート』とは相性が良いって言ってたじゃん! な!? そうだよなフェレット君!?」

「え? あ、はい。あの(・・)シンシアハートが言ったことだから間違いはないと思います」

「ね!? 大丈夫だって!!」

「うーん、そうなのかな……というより、何で貴裕くんはそんなに慌ててるの?」

「俺一人だと(リリカルなのはじゃなくなるから)無理だと思うの!!」

「プッ、あはは……それ自信満々に言えることじゃないよ?」

 

 

 ――っし、笑顔も出て自信なさげな顔ではなくなったか。もうこれ以上のトラブルは勘弁して……

 

 そしてあの(・・)ってなんだよ。滅茶苦茶気になる……や、追及してる時間もないけどさ。

 

 

「レイジングハートはさっきの起動呪文と少し違う部分があるから気をつけて。始めるよ!」

「うん!」「了解!」

「我、使命を受けし者なり。契約のもと、その力を解き放て!」

『我、使命を受けし者なり。契約のもと、その力を解き放て!』

 

 

 ようやっとマトモな流れになりそうだな……途中で出てきて邪魔すんなよ、あの黒もっこりめ……

 

 

 ――こうなるまで長かったなー……

 今までは本当に思いどおり上手く行かなさ過ぎて、何度血涙を心の中で流したことか……

 

 

「風は空に、星は天に」

『風は空に、星は天に』

 

 

 あれ? 何気無く一緒にやってるけど、主人公とシンクロ状態で初めての魔法発動させるって、結構凄いことなんじゃ…………しゃあああああああッ!! 

 

 これだよ! 俺が求めてたのは、こういう原作介入・改変なんだよ!!

 

 

「そして、不屈の心は、誠実なる心は」

「そして、不屈の心は」「そして、誠実なる心は」

 

 

 自分じゃ無くて、自分の母と主人公が仲良くなってるなんて誰得だよ!

 物語の重要ポジションの子が小学生のおふざけで死にかけるって誰得だよ!

 主人公初めての魔法発動が失敗するどころか、雑魚・チュートリアルキャラに負けそうになるって誰得だよ!

 

 それも全部自分の行動・存在が原因とか、泣こうにも泣けないじゃない!!

 

 

『この胸に!』

 

 

 これからは存分に楽しもう!

 出しゃばり過ぎず、かと言って空気の様な存在にもならないように気をつけて、主人公たちの活躍を間近で体験しよう!!

 

 

『この手に魔法を!』

「レイジングハート! セットアップ!!」「シンシアハート! セットアップ!!」

 

《《Stand by Ready. Set up》》

 

 

 良し! 今度は両方とも起動成功――うおっ!? 魔力が体から出るの、何か気持ちいいー! 

 なのはちゃん程じゃないけど、俺の魔力も結構な高さまで伸びてるな!

 

 物語の開幕を彩るためといわんばかりに、天まで伸びるなのはちゃんの桜色の魔力スッゲー綺麗!!

 その隣にある、高層ビルぐらいの高さの茶色(・・)の魔力がスッゲー邪魔!!

 

 

 空気読めや、誰だよこんな時に汚物色の魔力出してる糞は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――あれ? 俺の手先から出てる魔力の色何コレ……濃い茶色(・・)

 

 いや、神様? 『虹色』とか『黒』とかそういうアレなのに比べたら全然いいけどさ……『青』とか『緑』とか普通の色じゃダメだったの?

 目立たない色にしてくれと言った記憶はあるけど、誰も汚物色にしろとは頼んでないよ……

 

 

 あ、何かテンションがどんどん下がっていく……

 何で大声で起動パスワードとか言えたんだろ俺……落ち着いてみると凄い恥ずかしいんですが……

 

「わ、わぁ……!」

「女の子の方は、なんて魔力を……落ち着いてイメージして! 君達の魔法を制御する魔法の杖の姿を! 身を守る強い衣服の姿を!」

「そ、そんな、急に言われて「うえーい、了解……」――もう決まったの!? あれ、なんか表情てが……やっぱりまだ具合悪いの?」

「大丈夫デスヨー……」

 

 ちょっとテンションが一気に下がっただけデスヨー。

 何で決めるの早いかって言うと、今まで魔法使えない分、色々妄想してたからデスヨー。

 

「全然そうは見えないんだけど……と、とりあえずこれで!」

 

 桜色の魔力がなのはちゃんの体を包んで――って、なんだやっぱり脱げるのは見えないのか……

 まあ、ロリの裸見せられても反応に困るだけだから良いけどさ。

 

 

 さて俺の方もイメージして……え? ちょっ、やだ何コレ俺の全身を隈なく汚物色が包んで――!?

 

 

 

 

 

 

 

「二人とも成功だ……! あれ? また青い顔をしてますけど……大丈夫ですか? やっぱり、まだ体調が……」

「ちょっとウジ虫の気持ちが分かっただけだから気にせんといて……」

「はい?」

 

 茶色一色で包まれるのは、数秒とは言え精神的にちょっとキツかったとです……

 まあ、デバイスとバリアジャケットは色を含め想像通りのデザインになのが救いやね。色まで汚物色だったらどうしようかと……

 

 ――デバイスの形はレイジングハートのシューティングモードの色違い。

 バリアジャケットはスーツ上下・ビジネスコート風にしてみました。

 

 2月頃にニュース番組を見ていた時に思いついて、これなら前世で就活の時に使ってたからイメージしやすいと思っていたんだけど……

 イメージ正確すぎるのも問題だな。首元きついし、ちょっと重いんですけどコレ……

 

 

 なのはちゃんの方は――原作通りのバリアジャケットっぽいね。

 

「ふ、ふぇー!? 何なのこれっ!? あ、貴裕くんも服変わってる!」

「おー、なのはちゃんその服可愛いねー」

「あ、ありがとう。貴裕くんの方も……えっと、多分似合ってる……のかな?」

 

 あれ、なんか思ったよりイマイチな評価?

 

 そんなに痛々しくないし、変でもないと思うんだけど……

 何て言うか、『お父さんの服を着てみたけど全く似合っておらず、カッコ良いのではなく微笑ましい』みたいな状態だと……あれ? 

 

 

「これであの思念体を封印する事が出来ると思います! ただ、さっき二人の魔力が解放されたので、すぐにこの位置がバレると『グオオオオオッ!』――来たッ!」

 

 人がファッションセンスの無さに気付いて落ち込む暇すらないのか……空気読め思念体! 

 まだユーノ君だって説明してる途中だったでしょうが! 

 

 まあ、今回は変身終わってたからまだマシな方だけどさ……

 

 

 

 この後は、思念体タックルをなのはちゃんがプロテクションで弾くんだっけか?

 じゃあ、その直後に思念体にバインド掛けて、サポートポジションへの足懸かりにでも――

 

「来るよ! 二人とも気をつけて!」

「う、うん! 貴裕くん、頑張ろうね!」

「おう! 頑張ろう! ……ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれ? なのはちゃん立ち位置おかしくね? なんで俺より後側に立ってんの?

 ほら、思念体が猛スピードで俺らの正面方向から迫って来てますよ? ここはなのはちゃんの出番――

 

 

 

 

『オオオオオオオッ!!』

 

 あ、今からじゃ間に合いませんね。つまり自分でやれってことですね? 分かりま――――え?

 

 

「ちょ、イヤアアアアアッ!? デバイス様なんか防御的なものはよ!!」

《All right. Protection》

 

 ギリギリ発動間に合っ『ガアアアアッ!』――ダァ!? 思ったより衝撃的なものが来るよコレ!?

 

 というより怖い!! 汚物色の壁は貼られているけど半透明なんだもの!!

 めっちゃグイグイ押しこんでくるのが見えるんですが!?

 

『グルルルルルル……!』

「ふおおおおおお……ま゛ッ!!」

『オオオッ!?』

 

 おし! なんか変な声出たけど、気合い(魔力?)入れたら弾け――って言うより体が飛び散った!?

 

 

――――ガガガガガガガガッ!――――

 

 

 思念体の体が弾丸のようにそこらに飛び散って……やだ、住宅の塀も電柱も道路も穴だらけに……

 

 近隣の皆様方には大変ご迷惑をおかけします……

 オリ主は『黄金律』とか持ってないため、後々こっそりお金を家に投げ込むとった保証はありませんのであしからず……ホントスイマセン……

 

「うわぁ、何か周りが酷いことに……貴裕くん……」

「僕もこれはちょっと予想外……急いで貼った結界だから、人避けの作用しかないんだけどな……」

「いや、俺のせいじゃないよねコレ? 思念体のせいだよね!?」

 

 本来ならなのはちゃんがこの惨状を作り上げるはず――いや、実際にやったのは俺だから何の言い訳にもならないけど、何か! 何か言い返したい!! 何この気持ちは!?

 

「し、仕方ないですよコレは……それより早く封印魔法を! さっきみたいに、攻撃や防御などの基本魔法は心に願うだけで発動しますが、より大きな力を必要とする魔法には呪文が必要なんです!」

「呪文?」

「心を澄ませて。心の中に、あなた自身の呪文が浮かぶはずです」

 

 封印はなのはちゃんに任せよ。もう、本人も目をつぶって集中し始めたし……

 まあ、呪文が『リリカルマジカル』ってのは分かってるんだけど、教える訳にも行かな……あれ、俺の呪文ってどんなんだろ?

 

 

『グオオオオッ!!』

 

 ちょ、思念体さん復活早ッ!? なんか触手っぽいので攻撃してきたし!!

 

「ヤバッ!? 防御!」

《Protection》

『グッ! グルル……』

 

 あら? 触手攻撃はそんなに衝撃来ないのね。なんなく弾けた。

 

 ヤダ、余裕持って防ぐとか、今の俺なんとなくオリ主っぽいんじゃ『ガアアア!!』――即追撃とか君は本当に空気読まないね!?

 ちょっとぐらい悦に浸らせてくれても良いじゃ――ってアレ? 

 

 今度は俺狙いじゃなくて、なのはちゃんの方に触手攻撃――

 

 

《Protection》

『オオオオオオッ!?』

 

 うわ……なのはちゃんのプロテクション、触手弾くどころか消し飛ばしたんですが……何アレ怖い。

 いや、呆然としてる場合じゃねえやこの隙に――

 

「シンシアハートさんや、あいつの動き止める魔法とかってある?」

《Yes, there is it. In this case, I recommend that I use the 『Chain bind』(今回のケースなら、『チェーンバインド』の使用を推奨します)》

「オッケー、したらそれお願い!」

《All right. Chain bind》

 

 おおう、何か魔法陣が足元に! とりあえず何本かの鎖がアイツに絡みつくイメージで――

 

「そおいっ!!」

『ガァ!? オオオオオオオ!?』

 

 おっしゃ、ヒット! ザマア見やがれこの黒もっこり!

 

 

『オオオオオオッ!!!!!』

 

 ――捕まえたのは良いけど、俺のチェーンバインドって魔力の色のせいか『錆びた鎖』に見える……

 耐久性とか大丈夫だよね? めっちゃアイツ暴れようとしてるけどちゃんと押さえられるよね?

 

 

「良し! 彼が押さえてる間に君が封印を!」

「分かった! リリカル、マジカル!」

「封印すべきは忌わしき器! ジュエルシード!!」

『グオオオオオオッ!!!』

 

 うん、折角の名シーンなのに、バインド壊れないか心配でそっちに集中できないよ!? 

 さっきより強く『この鎖を今すぐちぎって挽肉にしてくれるわ小僧!』って言わんばかりに抵抗して来るんですけどコイツ!?

 

「ジュエルシードを、封印!!」

《Sealing Mode. Set up》

『オオオオオ!?』

 

 ああ、でも桜色のバインド?らしきものが思念体を包んでいく――

 やっとこさ封印開始か……

 

《Stand by Ready》

「リリカルマジカル、ジュエルシード、シリアル21、封印!!」

《Sealing》

『オオオオォォォォ……』

 

 なのはちゃんによる桜色のビームらしきもの連続で受けて、思念体は光になって封印完了っと――

 お、あそこで光ってる宝石は……

 

「これがジュエルシードです。デバイスを向けて下さい」

「えっと……こう?」

 

 レイジングハートのコア部分に吸い込まれるようにしてジュエルシードが入って行く……

 どういう構造してんだろねアレ? いや、魔法なんてある時点でそんなの考えたら負けかもしれんけど。

 

《Receipt number XXI》

《《The Sealing seemed to be over safely. Thank you(封印は無事終わったようです。お疲れ様でした)》》

 

 バリアジャケットが解けてデバイスが元のサイズに――あ、結界らしきものも解けたっぽい?

 

「あ、あれ? 終わったの?」

「はい、あなたの達おかげで……ありがとう……」

 

 あら、緊張が解けたのかユーノ君が倒れちゃった……

 この後は確か――

 

「わ、大丈夫!? ねぇ!?」

「疲れが出たのかね…………なのはちゃん、何かサイレンの音聞こえない?」

「え……もしかしたら私達、ここに居ると大変アレなのでは……」

「アレだね……ちょっと自転車取ってくるわ。なのはちゃん二人乗り出来たっけ?」

「え? 出来ないけど……あ、カゴはもうヤダよ?」

 

 オウ……魔法少女との二人乗り、一回やってみたかったんだけどな……

 

「さいですか……したら先行ってて、すぐ追いつくから」

「うん、分かった……と、とりあえず、ごめんなさーい!」

 

 わざわざ謝って……律儀な子やのー。まあ、そこが美点の一つなんだけど。

 

 

 さて、俺もさっさと自転車取りに走って……………………アレ?

 

 

 

 5分ほど経った後なのはちゃんと合流し、近くにあった公園で小休止中。

 なのはちゃんが息を切らしてベンチに座ると、ユーノ君が目を覚まして起きあがった――

 

「すみません、運んでもらったみたいで……」

「あ、起こしちゃった? 怪我は大丈夫?」

「怪我は平気です。もうほとんど治っているから……」

 

 そう言って身震いすると包帯が解けたが、昼間に見た怪我は綺麗に消えていた。

 

 ――うらやましいねーその魔法……

 

「治るの早っ……それも魔法?」

「はい。助けてくれたおかげで、残った魔力を治療にまわせたので」

「よく分かんないけど……そうなんだ。あ、そうだ自己紹介し合わない?」

「賛せーい」

「あ、うん」

 

 なのはちゃんの膝の上で立つフェレット、少女と小動物の戯れ……微笑ましい光景だねー。

 

 ――うし、これだけで後5分程度なら頑張れると思う……多分……

 

「私、高町なのは。小学校3年生。家族とか仲良しの友達は、なのはって呼ぶよ」

「俺は田中貴裕。小学校5年生。タカか、貴裕って呼ばれるよ」

「僕はユーノ・スクライア。スクライアは部族名だから、ユーノが名前です」

「ユーノ君か、可愛い名前だね!」

 

 男の子に可愛いってどうなんでしょうか?

 

 ――あ、やっぱりだめだ。まだか……まだなのか……

 

「すいません、あなた達を巻き込んでしまいました…」

「あ、その……えーと、私達は平気だよ? ね?」

「ん? ああ、大丈夫大丈夫。気にしないで」

「ね? あ、そうだ、ユーノ君怪我してるんだし、外じゃ落ち着かないよね。とりあえず私の家に行って、後のことはそれからで、ね?」

 

 

 ――よし、ここだあああああああっ!

 

 

「したら一先ず帰りますか。こんな時間だし、ちゃんと説明しないで出て来たから母さん怒ってるかもな」

「あ、私もだ……じゃ、じゃあ急いで帰って、明日また集まって話そう!」

「了解。ユーノ君もそれで良い?」

「あ、はい。大丈夫です」

「じゃあそういうことで。家まで送ってこうか?」

「ううん、大丈夫。それじゃ貴裕くん、明日ねー!」

「あの、今日はありがとうございましたー!」

「おー、明日なー! どういたしましてー!」

 

 

 

 

 

 

 ――行ったかな? 行ったな。じゃあ、もう我慢しなくて良いよね……?

 

「早く、SOSをば……」

 

 ポケットから携帯を出して番号を押す。持ってこなかったらどうなってた事やら……

 

 

『prrrr,prrrr,prr――もしもし、タカ? どうした? 牛乳もう切れたか?』

「うんにゃ牛乳じゃない。あ、食パンが無かったような……じゃなくて、父さん今仕事帰り?」

『おお、そうだけど?』

「車?」

『おお、そうだけど……どうした?』

 

 ああ、本当に良かった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「○○公園にいるから迎えに来て下せえ……もう足がガクガクだわ、指は震えるわ、体はダルイわで……ちょっと動けない、てかもう色々限界なんです……」

『いや、何があった!? って、今家にいないのかお前!? もう夜の10時近いぞ!?』

 

 さっきまで膝が笑うのを全力で我慢しておりました――

 

 いやね? 魔法使う事でハイになってたから忘れられていたんだけど、俺もう魔法使う前の時点で体力なんてほとんど残ってなかったはずなんですよ。

 その上魔法なんて慣れないものを使ったもんだから、疲れた体に鞭を打つような状態だったらしくてね?

 戦闘終わった直後に、体が休みを強制的に取ろうとしたのか一気に疲れが戻り始めて、しばらく歩けなかったんだから……

 

 流石にあの子達の前では、気合で押さえてたけど、もー無理。

 さっき「送ろうか?」とは言ったけど、社交辞令みたいなものでホントは送る気なんて微塵もありませんでした。

 あそこで「じゃあお願い」って言われたら死んでた自信があるね……もう、座ったベンチから動きたくありません、動けません……

 本当はユーノ君に治癒魔法とか掛けて欲しかったんだけさ、魔力ほとんどない残ってない子に頼むのもアレじゃないですか……と言うか、疲労は治癒魔法でどうにかなるのか?

 

『とりあえず、あと10分ぐらいしたらそっち行けるから着いたらまた電話する。その時には何でこんな遅くに出てるのか説明しろよ?』

「うぇーい、お願いしますだー……何かこのままだと寝そうなんでお早く……」

 

 

 

 ――戦闘終わったら親に迎えに来てもらうオリ主とか……どうしてこうなったし……

 




 オリ主の「目立たない」=特徴のない、無難な、自己主張しない……
 神様の「目立たない」=俗受けしない、くすんだ、パッとしない、地味な、見栄えのしない……

 日本語って難しいよね!



 あの名シーンは、主人公が○○する。
 そんな思い込みがあるから不測の事態には素が出て焦りまくるオリ主

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