高二病抜け切らなかった人が中途半端な力で   作:mahiro

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魔法についての知識って、デバイスも無しにどうやって得るんでしょうね?



※念話の表記に<>を使っています。


第4話 「神様……魔法が使いたいです……」

 暗い夜の木々の中、ボロボロの少年が黒い塊のような何かに襲われている――

 

「栄えたる響き、光となれ! 許されざるものを、封印の輪に!」

 

 少年が言葉が発すると、緑色の魔法陣がその手の前で輝きを強めていく――

 

「ジュエルシード、封印!」

 

 黒い塊がその魔法陣にぶつかると、眩いばかりの光が発せられた。

 魔法陣の影響でダメージを受けたのか、黒い塊はズルズルと這ってその場から離れていく――

 

 

「逃がし……ちゃった……追っかけ……なくちゃ……」

 

 なんとかその黒い塊を追おうとするものの、先の魔法を使う事で限界が来たのか、崩れ落ちてしまう少年――

 

「誰か……僕の声を聞いて……」

 

 意識が途切れそうな中、力を振り絞り願いを込める――

 

「力を貸して……魔法の……力を……」

 

 

 それは未来のエースオブエースに、今はまだ何も知らない平凡な小学3年生の女の子に確かに届いた――

 

 

 

 

 

 

「おそいよぉ……ユーノくんのバカァ……だらしねえなぁ……何やってりゅの!!」

 

 ついでにちょっとばかしアレな男の子にも届いて、妙な寝言を言わせていたのだった――

 

「タカー? もう1時なのに、まだ起きて……なんだ寝言か?」

「おー、俺なんか言ったぁ…………ん? あ!? ふおおおおおおっ!?」

「え、何? 父さん何かしたか? というよりこんな夜中に大声出すなバカ」

 

 

 

 

 

 第4話 「神様……魔法が使いたいです……」

 

 

 

 

 あれから5年経った春――

 俺は小学5年生になり、なのはちゃんは小学3年生になりました。

 

 そう、原作開始時期である! 今日はユーノ君からのSOS念話で起きました!

 

 今まで長かった……ホントに長かった……!

 

 

 低学年での学校生活は幼稚園とそこまで変わらなかった。

 分かってはいたけど話が合わないこと合わないこと……

 伝家の宝刀「そんなことより○○しようぜ!」を何度使った事か……

 

 中学年では割とマシになった。

 近所の野球チームに入ったおかげで休日は潰せるし、体力作りにもなる上、友達も増えた。

 少しずつだが周りの子とも話が合うようになり、ゲームなんて素晴らしいものも解禁されたのだ。

 仲のいい子を家に呼んではスマブラ的なもので遊び、呼ばれてはマリオパーティ的なもので遊び、帰りに寄り道してポケモン的なもので対戦した。

 親との初めて喧嘩の原因が、ゲーム没収されかけたことについてだったのは情けないけど……しゃあないやん……

 

 

 ――そんな感じで楽しいことも辛いことも色々あったが、原作開始までの小学校生活も楽しめると思ってたんだ……

 

 何と言っても小学生になってから単独での外出が許可されたしね!

 これで魔法の練習が出来ると思ってたんだけど――

 

 

 

 

 

 原作始まる日になっても未だに魔法が使えません…… 

 というより魔力光が何色かすらまだ分かっていません……

 

 

 ◇

 

 行く所さえ言っておけば単独で外出できる用になった、小学1年のある日のこと――

 

「行ってきまーす! 母さん今日帰り遅くなるから!」

「あら、どこ行くのー?」

「んー……健人の家!」

 

(馬鹿めっ! 人目の付かない所で魔法の練習をするに決まってんだろうが!)

 

「あー、山田さんのところの……お母さんからも健人君のお母さんに連絡(・・)はして置くけど、迷惑はかけないようにねー? あと5時には帰ってくるのよー?」

「……え?」

 

 嘘だとバレると面倒なので、本当にその子と遊ぶことにしました……ママ友の輪怖い……

 別に『家の子がご迷惑をかけるかもしれませんが――』みたいなやりとりしなくても……

 

 ◇

 

 母が知らない子と遊ぶと言えばいいんじゃないかと、思い付いたある日のこと――

 

「行ってきまーす! あ、母さん今日も帰り遅くなるから!」

「あら、どこ行くのー?」

「桜場の家!」

 

(二度同じ轍は踏まんぞ! 今度こそ人目の付かない所で魔法の練習をするんだッ!)

 

「桜場君ね……桜場君のお家に連絡(・・)はして置くけど、迷惑はかけちゃ駄目よー? あと分かってると思うけど、5時には帰ってくるのよー?」

「……え? なんで番号なんて知ってるの?」

「え? 連絡網――同じ学年の子全員の電話番号書いた紙があるからだけど?」

 

 また本当にその子と遊ぶことにしました……古き良き制度(無くなった連絡網)怖い……

 どっかのモンぺが、プライバシーの権利がどうのこうの言って廃止になんないかな……

 

 

 外で遊ぶと言えば良かったんだと気付き、外出したある日のこと――

 

(家から近い山の麓……有名な登山道とかあるわけじゃないんだ。ここら辺なら人もいないし丁度いいでしょ)

 

「うし! さーて早速「あー! ここはオレ達のヒミツキチだぞ! 何してるんだよお前!」――え?」

「あれ? リーダーじゃね?」

「あ、ホントだ。リーダーなにしてんの?」

「…………イッショニ遊バナイ? クラス別レテ最近会エナカッタカラ、久シブリニ遊ビタイナー?」

「ん! いーよーあそぼー!」

「何してあそぶー?」

「何デモイイヨー?」

 

 子供の行動範囲舐めてました……ゲームっ子じゃない子供が怖い……

 健康的なのも良いけど、ちょっと位引き籠ってもいいのよ?

 

 ◇

 

 学校や家から割と離れた所でやろうと決めて外に出たある日――

 

(家から自転車こいで30分……正直これだけでしんどいけどこの山なら……)

 

「周りに人はいない……よしっ! まずは集中して――」

 

 

 

――――ミーン、ミーン、ミンミンミーン――――

 

「集中して――」

 

――――ピーチチチチ、ピピピ! カー! カー!――――

 

「集中――うえっ!? 何か服の中に入っ、毛虫いいいいっ!?」

 

 集中すら出来ませんでした……自然の生命怖い……

 冬を待つしかないのか……あ、今度は見回りの人とかに補導されそうな予感がする……

 

 ◇

 

 いい加減に魔法を使いたいと思っていた、学校帰りの時――

 

「せんせい、さよーなら!」

『さよーなら!』

「はい、さようなら。帰り道は気をつける用にね?」

 

(どーするよ……もうやるとしたら家の中位しか思い浮かばんけど、自分の部屋はまだないし……ダメだ、帰ってからじっくり考えよ……)

 

「さて、忘れ物はな「タカー! 今日よっちゃん達とあそぼー!」――え?」

「最近あそんでないだろー? あそべー!」

「――ウン、分カッタヨ」

「うし! じゃあ家にランドセル置いたら○○公園しゅーごーな!」

「ウン、スグ行クヨー?」

 

 考える時間すら削られました……やっぱり同年代の子怖い……

 いや、断ることも出来るんだけどさ、余りにも断り過ぎるとボッチになるよ?

 中休み昼休みはひたすら図書室で過ごすとかいくらなんでも遠慮したい……

 

 

 小学2年になって、ようやく自分の部屋が手に入ったある日――

 

(もうこの際家で魔法使うのもしゃーないって。魔力光はドア閉めたから見られる心配ないし、制御ミスって壁に穴空いたとしても、バット振り回して遊んでたとか言えばいいや……)

 

「まず、リンカーコアやら魔力やらを自覚しないとな」

 

 気持ちを落ち着かせ、集中するが――

 

 

 

 

 

「――――なるほど分からん。え、どうやって感じ取るの?」

 

(胸の奥にあるって何? 心臓の鼓動ぐらいしか感じられないんだけど? 空気中にある魔力・魔素を集めるって何? ハウスダストしかないと思うんだけど?)

 

「なんだろう……心臓をイメージながら深呼吸すれば良いの?」

 

 

 練習するにはまず何をすればいいのか分からないどころか、リンカーコアを認識できませんでした……無知って怖――

 

 

「あ、貴裕。ちょっと掃除機かけるから少しの間リビングの方にいなさい」

「母さんノックしようよ……」

 

 ――家庭内における7歳児のプライバシーのなさも怖い……やっぱり家の中での練習は危険すぎる……

 

 

 ◇

 

 以後3年間――

 

「スー……ハー……スー……ハー…………俺何やってんだろ……」

 

 肺活量が他の子より少し多めになりました……たまに虚しい気持ちになるのが怖い……

 

 

 ◇

 

 

Q、あなたの望みを叶える機械がここら辺にあります。これを見つけられますか?

A、無理です。範囲あいまいな上にその機械の外見も知りません。というか探し方もわかりません。

 

Q、一度も操作したことのない複雑な機械があります。これを動かせますか?

A、無理です。直接指導してもらうか、説明書プリーズ。

 

 

 ――ええ、そうですよ。

 この5年間、魔法の練習どころかリンカ―コア(魔力)さえ認識できませんでしたよ!

 仕方ないじゃん、魔法なんて使ったことも使われたこともないんだから……

 

 こんなことならデバイスは先に貰えるようにして置くべきだったかな……いや、ないわ。

 どこで手に入れたのか聞かれても答えられないし、管理局の人とかに「ちょっと調べるからしばらく預かるね?」って言われても抵抗できない……

 

 

 例えば、子供が出自が全く不明のやたらと高性能な銃を持ってたら、警察は間違いなく没収するだろう。

 

『これは俺が拾ったものだから俺のものだ。貴様らに渡す理由はない(ドヤァ』

『これは旅の人(身元不明者)にもらった大事なものなんだ……手を出させる訳にはいかないな(キリッ』

 

 ――怪しさ大爆発すぎるわ! そんな事情なんて知ったこっちゃないだろう。

 もしかしたら何かの犯罪で使われていたかもしれない、暴発の危険性だってあるかもしれない。

 メンテナンスの知識なんて持ってるはずがない(・・・・・・・・・)んだから即没収されてもおかしくはない……

 

 うん、やっぱりデバイスが手に入るタイミングは、ユーノ君が持ってくる時がベストなんだ……

 ベストなんだと信じたい……

 

 

「きりーつ、礼」

『ありがとうございましたー』

「うし、皆気をつけて帰れよー?」

 

 まあ、どっちでもいいや……なんといっても今日から原作が開始なんだから!

 

 どうすっかなー……とりあえず学校から帰ったら夜に備えて寝るか?

 ユーノ君の次の念話に応えるのは無しだな。俺が病院連れてったら流れが変になるかもしれないし……

 

 よし、そうと決まればさっさと帰って―― 

 

 

「タカー。今日俺ん家に佐藤も来ることになったから」

「――え? 何の話?」

「いや、今日俺ん家で遊ぶ約束してただろ? それに佐藤も来るって話」

 

 『リリカルなのは』始まることで頭一杯になってて素で忘れてた……

 まあ、これからしばらくは遊べなくなるんだし、今日はこっち優先してもいっか。

 

 

 ◇

 

 現在、佐藤と途中で合流して、自転車こいで友達の家を目指してる最中である。

 

 ――ふと思ったけど、なんで二次小説のオリ主って自転車使う人が少ないんだろうね?

 籠付き自転車とかメッチャ便利だし、移動時間も大分削減されるのに……『身体能力高いから自転車なんて必要ないぜ!』ってことなんだろうか?

 あと考えられるとしたら演出の都合? そんなに自転車ってダサく感じるのかね……

 

 

 まあ、今通ってる所みたいに道が悪い所なら、自転車使うより走った方が良い――ってあら? こんな道通るっけ?

 

「なあ、あいつん家ってこっちの道行くんだっけ?」

「道悪いんだけど、こっちの森林公園(・・・・)通った方があいつの家まで早いんだよねー」

「へーそうなんだ…………え?」

 

 待って、森林公園で道悪いとこって言ったら、もしかしてユーノ君が倒れている所じゃ――

 

 

 

 

<――――助けて――――>

「うえっ!?」

「タカ? どうかしたか?」

「いや、なんでも……アレ? 何か気持ち悪……い?」

 

 噂をすれば……今のって、もしかしなくてもユーノ君からの念話?

 というより、何だこれ……何か胸がムカムカして気持ち悪い……

 

「おい、大丈夫か?」

「多分大丈夫……じゃないかも……先行って、すぐ追いつくから」

「顔青いぞ……無理すんなよ? ゆっくり走ってるから」

「うぇーい……」

 

 何の予兆も無く体調悪くなるって……本当にどうしたんだろ俺? 

 

 あー、それよかユーノ君近くにいるのか……どうしよっかな?

 ここまで近くまで来たなら、やっぱり俺も仲良し3人組と合流して病院まで行こうかね……

 

 

<――――助けて! ――あ、来てくれたんですねってあれ? 念話が聞こえてな――え? 何するの?>

 

 うぇっ、今度は頭までグワングワンしてきて気持ち悪……

 これもしかして念話のせいか? 初めて使われる魔法に体が反応してるのかね?

 そうだとしたら、ジュエルシード発動した時とか大丈夫なんだろか俺?

 

 ってか、ユーノ君に何が起こった――

 

 

 

 

 

 

 

 

<え? ちょ、待って、乱暴に、そこは駄目! あ、やめて! 出ちゃう何か出ちゃうからそんなに強く、ってうわああああああああああああ!? あ……>

 

 いや待て本当に何があったし!? 

 待ってろユーノ君今行く――あ、また気持ち悪……いや、吐くほどじゃないから大丈夫! 

 

 

 多分この先からだと……あれ? 佐藤のやつまだあんなとこにいたのか。

 

 俺の事待っててくれたのか? いや、アイツ何か持って――

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおー何これスゲえ胴体長いな! やわらかー! フェレットって名前だっけコレ? どんな鳴き声なんだろ? 鳴かないのかなコイツ?」

「きゅ……きゅー…………」

「おー、鳴いた! あれ、なんかぐったりしてる? よく見てみれば汚いなコイツ……」

 

 あら、ユーノ君かと思われる赤と()の宝石を首から下げているフェレットを、両手で乱暴にシェイクしていたのね。

 

 見慣れれない動物とか見ると、ちょっかい掛けたくなるよネー…………いやいやいや!?

 

 

「おまっ!? お前何して「あれ? 貴裕くん?」――なのはちゃん?」

「声が聞こえたと思ったんだけど……どうして貴裕くんがこんなところに? あれ? その動物は?」

「え? あー……友達の家行く途中なんだわ。フェレットっぽいのは、見つけたばっかだからよくわからん」

 

 意外と早くついたのね、なのはちゃん。1週間ぶりです、こんにちは。

 

「お、タカもう大丈夫なのか? ってかその子知り合い?」

「ん? おー、もう大丈夫。こっちの子は高町なのはちゃんっていって、5歳の頃から……ってそれよりまずユッ――そのフェレットっぽいの振るのやめれって! 死にそうだぞソイツ!?」

「え? あれ? コイツ汚れてるだけじゃなくて怪我してる?」

 

 ただでさえボロボロなのに、舌出しっぱなしになって、なされるがままになってたぞ!?

 どこにいったフェレットとしての可愛さは!?

 

「――どうしたのよなのは!? 急に走り出して……あれ? もしかして貴裕?」

「え? あ、本当だ。貴裕さんこんにちは……あれ? あの動物、もしかして怪我してる?」

 

 あら、アリサちゃんとすずかちゃんも来たのね。約2カ月ぶりですね、こんにちは――って違う違う! 

 挨拶はいいからさっさと軌道修正しないと――

 

 

「二人とも久しぶりー。あの動物は怪我してる所を俺の友達が止め刺しちゃったっぽい」

「え、俺のせい? 死んだのコレ?」

「いや、生きてはいるだろうけどさ……誰かここら辺に獣医さんあるとこ知らない?」

「えーと、この近くに獣医さんってあったっけ?」

「あー、この辺りだと確か……」

「待って、家に電話して聞いてみる」

 

 

 

 ――あっぶな……本当に変な流れになっちゃうところだったよオイ……

 

 ユーノ・スクライア、9歳。 

 子供に遊ばれて、その命をフェレット姿のまま終える――リリカルなのは、完。

 

 そんな終わり方誰得だっつの……

 ちょっとコレ俺も病院までついて行こう……ユーノ君本当に無事か確かめたいし…… 

 

 

 

 ――何だろこれ、記念すべき初めての原作介入なのにすごい無駄な……どうしてこうなったし……




空気中の魔力を集める=深呼吸したら集まる、なんてことは無いことに気づいてない頭の可哀想な子。

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