高二病抜け切らなかった人が中途半端な力で   作:mahiro

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 ※作品を見直してみて、この話の出来が一番酷いと再認識。
 ストーリーは変えませんが、文章に大幅な変更が有るかもしれません。(2014年4月6日)


 ◇ 

 Q.幼児期に一緒にいればフラグは立つのか? 年上ならお兄ちゃんと呼ばれるのか?


第3話 「なのはちゃんの好意の度合いが、オリ主<越えられない壁<母です……」

 第3話 「なのはちゃんの好意の度合いが、オリ主<越えられない壁<母です……」

 

 

 

 

 あの衝撃的――感動的場面から約1時間後。

 溢れ出しそうな涙をこらえながらサッカー少年が帰るまで遊びに付き合い続けた俺の前に、すっかりマイナスオーラが取り除かれたなのはちゃんと、なのはちゃんを落とした――元気にさせた母が話しかけて来た。

 

 

「なのはちゃん、この子は私の息子で貴裕っていうの。貴裕、こちら高町なのはちゃん。これから家にいっぱい遊びに来ると思うから仲良くするのよ?」

「えと、はじめまして! 貴裕くん、これからよろしくね?」

「ウン、ハジメマシテ。コッチコソヨロシクネ? ナノハチャン」

 

 ワーイ、主人公とお友達・幼馴染フラグが立ったぞー? 嬉しいなー?

 

 

 

 

 

 ――でも何だろう。母のおまけ的扱いに感じるのは気のせいカナー?

 

 

 いや、どんな形であれ好きなキャラの不幸話が終わったんだ。笑って受け入れようじゃないか…………ちくしょうめ……

 

 

 ◇

 

 自己紹介の後、終始笑顔のなのはちゃん連れて高町家に向かう事になった。

 道中では、なのはちゃんが道案内をする間、俺へと沢山話しかけてきているのだが――

 

 

「ねえ、美智子おばさんっておしごとしてるの?」

「美智子おばさんっていつもは何してるの?」

「美智子おばさんって何がすきなの?」

「あのね、さっき美智子おばさんがね!」

「美智子おばさん――」

 

 ――見事に母の話題ばかりである。

 

 いや、多少は俺についての質問もあるんだけどさ、比率10:1ぐらい?

 というより、母についての質問なら何故母にしないのか……

 

 

「なのはちゃん、次はどっちの道にいったらいいのかしら……あの、なのはちゃん?」

「あ……えと……そっちがわです……」

 

 あら? その大好きな母に話しかけられたのに、俺の後ろに隠れちゃってどうした――――ああ、もしかして今更恥ずかしいっていう感情が出て来たのかな?

 

 親戚のちっちゃい子とか見てるとたまに見かけるんだけど、結構遊んで「かなり仲良くなったかなー?」なんて思ってたのに、次に会ったら何故か親の後ろに隠れるというあの謎の恥ずかしがる行動。 

 直ぐにまた前みたいに懐き始めるんだけどさ。アレと同じなのだろうか……

 

 

 

 

 ――というより何これ破壊力がヤバいんですけど!? え、なんで俺の服とか掴んでるの!?

 

 可愛いんですが!? 頭とか撫でていいですかね、ってか撫でますね! 

 いざ、主人公の頭を撫でるという夢を――

 

 

 

 

「あらあら、なのはちゃんおばさんのこと嫌いになっちゃたのかなー?」

「え!? そ、そんなことないよ! 美智子おばさんのこと大好きだよ!」

「それなら良かったー。おばさんもなのはちゃんのことが大好きよー! いい子いい子ー」

「あ……えへへー」

 

 ――夢を母に取られましたネ……

 あなたはオリ主の夢を何回ぶんどれば気が済むのでしょうか……

 

 

 ◇

 

 なのはちゃんと母のラブラブっぷりを見せつけられ、血の涙を流しながら高町家に到着。

 

 二次小説おなじみ、高町家の皆さんへの「なのはちゃんを家で昼間預かりますよー」と言うだけの簡単なお仕事です。

 『パパっと事情説明→ありきたりな家族の和解→めでたしめでたしの流れだけで済むかな?』なんて思ってましたよ……

 

 

 ――や、大体はそんな感じだったんだ、大体(・・)は。

 

 

 ああいう展開は何て言い表わせば……………………あ、『母無双』とかどうだろう?

 

 

 

 

「今晩は。昼間この子をうちで預かりたいんですがどうでしょう?」

「今晩は。え、どうしてそうなったんですか?」

「この子寂しいのを我慢してるんですよ奥さん! だから誰かが傍にいてあげないと!」

「ああ、私はそんなことにさえ気づいてあげられなかった! なのはごめんね!」

「おかーさーん!」

「私は母親失格ね……」

「何を言ってるの貴方は良く頑張った!」

「え?」

「旦那さん事故で入院中なんでしょ? その上始めたばっかりのお店も維持するなんて大変よ……今までよく頑張ったわね……」

「……っ! ふぐっ……ううううううう!!」

「よーし泣け泣け泣きなさい! そんで明日からまた頑張りましょう。こんなおばさんにできることなら協力するから」

「美智子さーん!!」

 

「くっ、何が家族を守るだ! 小さな妹一人守れないなんて……」

「私も……お父さんの看病ばっかりで、なのはの事見ていられなかった……」

「お兄ちゃん、お姉ちゃんそれはちがうよ! わたしがなにもできなかったから……」

「あなた達は何を言ってるの!」

『え?』

「あなたたちみたいな子供が一人で何でも出来るわけがないでしょう? むしろ今まであなたたちがやってきたことだけでも十分すぎるの。頑張ったり我慢したりすることが全部悪い、とは言わないけど、もっと周りを頼りなさい。貴方達はとても素敵だから手を差し伸べてくれる人だっているはずよ? 現に、こんなおばさんでさえ貴方達に幸せになって欲しいと思ってるんだからね?」

『美智子おばさん……』

 

 

 ――以上、ダイジェスト版を一部脚色有りでお送りしました。

 

 ええ、そんな形で和解させるだけでなく、高町家のほとんどを落としましたよこの人。 

 

 

 

 いや、俺もね? 『何か良い事言えないかなー』とは思ってたんだ?

 でも、あの空気の中発言するのは無理でしたよ。壁際でポツーンと立っていただけ……

 

 最後に『この子はうちの息子の貴裕です』って紹介はあったから、 美智子さんの息子(・・・・・・・・)って事で顔も覚えてもらえたし今度遊びに行った時に「初めまして」状態にはならないと思うんだけどね……

 

 

 

 

 ウン、大丈夫。ワタシハココニイマス。ギリギリデスガ確カニ存在シテマスヨー? 

 コレデモオリ主デスヨー? 誰カ僕ヲ見テー?

 

 

 ◇

 

 次の休日、迎えに行った母に連れられて、なのはちゃんが我が家に遊びに来た。

 

「ただいま! さ、あんまり大したものはないんだけど上がって上がって!」

「おじゃまします! あ、貴裕くんこんにちは!」

「いらっしゃい、なのはちゃん! お母さんもお帰り!」

 

 燦々と輝く笑顔、汚れを知らない純粋な瞳――

 やっぱり可愛いねー女の子は…………幼稚園の子? 知らん。

 

「なのはちゃん、おばさん少しだけお家のお仕事残ってるから、それが終わるまでおばさんと遊ぶのは少し待ってね? 貴裕、貴裕の方がお兄ちゃんなんだからしっかりね?」

「はーい!」「うぇーい!」

 

 了解です母よ。

 2歳程度の差だけど、俺の方が年上だからお兄ちゃんですもんね……お兄ちゃん……

 

 

 

 

 ――うん、小さい頃から刷り込んで『お兄ちゃん』って呼ばせるのもイインジャナイカナ?

 ほら、大人になってから『お兄ちゃんって呼ぶのを恥ずかしがる女の子』の図とかみれるかもだしグヘヘ。

 

 さて、そういうことだから――

 

「俺の方が年上だから、『お兄ちゃん』って呼んでもいいのよ?」

「んー?」

 

 ヤバい、首掲げる3歳児可愛い。

 思えば幼稚園の子達の行動にほっこりしたことも少なからずあったな……ストレスの方が大きいけど……

 

 まあ、そんなことより個人的には、未来の魔法少女に『お兄ちゃん』なんて呼んでもらえると、俺のテンションが超上がるんですが――

 

 

 

 

 

 

「貴裕くんは貴裕くんだよ?」

 

 ――いや、そうなんですけどね? こうオリ主のロマンと言うものがありましてね?

 

「や、だけど俺の方が年上だからさ? ね?」

「んー? 貴裕くんだよね?」

 

 そんな純粋な目で見ないでください! 自分がどんだけ汚れてるか再確認させられるでしょう!?

 

「何かすいませんでした……」

「んー? どうかしたの?」

「いえ、なんでもないっす、ハイ」

 

 やっぱりお兄ちゃんポジションを奪うのは無理だったよ……

 

 

 ――別に良いですよ『お兄ちゃん』と呼ばれなくたって。

 俺の一番やりたい事は『リリカルなのはを間近で体験し楽しむ』ことだもん……

 主人公に『お兄ちゃん』と呼ばせることなんて全然重要じゃないもん…………くやしいのう、くやしいのう……

 

 

 

 

 

 ――頭切り替えよう。

 さて、母の家事が終わるまでどうするか……適当に遊べばいいのかね?

 

「よし、じゃあなのはちゃん。お母さん来るまで二人で遊ぼっか?」

「うん!」

「何して遊ぶ?」

「んー……あ、おままごとがいい!」

 

 あら、女の子らしいことで。 

 なんでしょう? 『ワンちゃんの役やれ』とか無茶振りされない限りは演じきってみせますぜ? 

 

「オッケー、じゃあおままごとしよっか。なのはちゃんは何の役?」

「わたしは『こども』の役をやるよ!」

「うい、了解。俺は何の役?」

 

 

 お父さん役とかかね? それなら楽なんだけど。

 

 

 

 

 

「貴裕くんは、美智子おば――『お母さん』の役をするの!」

「うい、了か……え?」

 

 何ですかソレ――あ、ハイハイ分かりました。 

 『おばさんいなくて寂しいな……そうだこいつがおばさんになればいいじゃない!』っていう考えですね。 

 

 足りないものはよそから持ってくる。3歳児にしてこんな考えを思いつくとは、流石は主人公……え?

 

 

「えっと……お、俺男だしお母さん役はちょっと……ね?」

「あ……うん……」

 

 すまぬ、さすがにやりたくない……

 別に女の子役は我慢できないこともないんだけどさ……

 

 

 母の代用品的な扱いって、いくらなんでもそれはあなた――

 

 

 

 

 

「そうだよね。ダメ……だよね……」

「やっぱり私は一向にかまわんッッ!!」

 

 やるから!! 全力全開で思いっきり演じて見せるから!! 

 子供らしく『なんでやってくれないの?』って首かしげる感じの疑問形どころか、『ああ私はなんてことを言ってしまったんだろう』みたいな顔すんなコラ!!

 てめえホントに3歳児か!?

 

「ハイハイなのはちゃんは子供役ね! うしっ! はりきって演じちゃうぞー!!」

「あ……ありがと!」

 

 

 ――子供の笑顔、プライスレス。

 その後のおままごとは、演技力upの効果もあったのかとても喜ばれました。 

 

 でも何故だろう、なのはちゃんは終始笑顔なのに俺の心はボロボロになっていくんだ。

 素直に喜べない……何かくやしいのう、くやしいのう……

  

 

 ◇

 

 精神的疲労の度合いが酷いため、おままごとは早めに切り上げる事に。

 何か玩具でもないか探すと、買ってもらったけど手はつけていなかった知恵の輪が見つかったので、それで時間を潰すことにした。

 

 

 そうして知恵の輪に挑戦するが――

 

「むー……」

「なのはちゃん、どう? 解けそう?」

「むずかしい……」

 

 ――流石に天才主人公も苦戦しているようです。まあ、まだ3歳だし仕方ない。 

 

 俺が先に解いて自慢しようかね? 多分解き方分かるし。

 こちとら前世の20年分の経験があるのに加え、転生してからの室内遊びで多かったのはパズル関連だし、この程度余裕でしょう。

 

 

 さて、ここをこうして……

 あれ、これってこうじゃなかったの? したらこう? え?これも違うの? じゃあ―― 

 

 

 

 

 

 

「できぬッ!」

「できたー!」

 

 感情に任せて知恵の輪を壁に向かってシュートした瞬間解きやがったよこの子。

 やはりこれが主人公の格というものか……どうやっても俺では勝て――

 

 

「何やってるの貴裕!」

 

 ――ない? あらお母さん、家事が終わったのですか?

 

「あら? なのはちゃん知恵の輪解けたんだ! 凄いねー」

「えへへへ! すごいでしょー?」

「うんうん! いい子いい子」

 

 あらあら母さんに撫でられて嬉しそうだな、なのはちゃん。 

 ほっこりしますな、こういう場面って……まあ、仮に俺がなでてもキョトンとするだけけだろうね……

 

 ――なのはちゃん限定ナデポ持ちの母さんや、ちょっとそのポジション代われ。 

 全くうらやまけしか「で?」――らん?

 

 

 

 

「貴裕。自分が解けなかったらからって物投げちゃ駄目でしょ。投げた物もぶつけられたものも壊れちゃうかもしれないし、もし人に当ったら怪我しちゃうかもしれないんだよ?」

 

 おお……ただ怒鳴るのではなく、なぜそれが悪いかも子供にも分かるように説明しながら言い聞かせるとはお見事!

 しかしながら5歳ぐらいの子は感情を制御しきれず、それを外に出す際に暴れるという特性も無きにしも非ずな訳でありまして、リアルに「クッ! 静まれ俺の右腕――!」状態のものでありますので、それを制御するのは中々に大変なものがあるのです。

 

 だから――

 

 

 

「ごめんなさいは?」

「ごめんなさい」

 

 もうしないように気をつけます。

 

 

 ――その後は、母も交わり家遊び再開。

 相変わらず、いやむしろ強くなったなのはちゃんと母のラブラブっぷりを見せつけられました……おのれ母め……

 

 

 ◇

 

 夏も過ぎてすっかり秋になったとある日。

 

 今日は、田中家+なのはちゃんで遠くの公園に車でお出かけである。

 もちろん高町家にも許可はとってあるし、なのはちゃん含めたメンバーで車使って出掛けるのも無かった訳じゃないが、これ程遠くまで行くのは初めてじゃなかろうか?

 周りの風景や、両親やなのはちゃんとの会話を楽しみなが「うえ……」ら――

 

 

 

 

「お……おじさん、おば、さん……きもちわるいよぉ……うえっ……」

「なのはちゃーん!? もう少しで道路広くなるからな!? そしたら直ぐに車止めるからな!? もうちょっとだけ待ってな!?」

「なのはちゃん、もうっちょとだって! 今回はエチケット袋忘れてないから、いざって時も大丈夫だけど――」

「なのはちゃん頑張れー! ……うっぷ」

「貴裕は無理しない! 前ほどじゃないけど気持ち悪いんでしょ!」

 

 ――ただいまの車内は、いつかのように絶賛カオスである。

 

 うん、まだ3歳なんだ、主人公だって車に酔うさ。 

 どんなにかわいい子でも生理現象は起こる、当然吐くことだってあるさ。

 

 ちょっと目の前でやられると、色々と夢が壊れそうできついけど……

 いや「○○たんはアイドルなんだ! だから『ピー』も『ピー』もしない!」なんて頭のおかしいことは言わないけどさ……なんかね?

 

 

 今車が走っているのは、前俺が酔った所と同じコースである。

 俺の方は、あれから少しは車に体が馴染んだのか、まだ気持ち悪いだけで吐くほどじゃあない。 

 たぶん公園到着まで持つんじゃないだろか?

 

 父よ、焦るのは分かるがまた運転が荒くなってんぞ。

 母よ、今背中さするのは逆効果だとまだ分からんのか、エチケット袋があるからって車内で出すとアレだろ?

 なのはちゃんも、我慢せずに「さするのやめて」って言わないと、いつまでも母は続ける――あ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――未来の魔法少女の貴重なシーン生で見れるなんて中々無いんじゃないんだろか?

 まあ、特殊な性癖なんぞもってないから何も興奮しないけど……

 

 ところでこの世には『もらいゲ○』という言葉があってだな――

 

 

 ◇

 

 公園に到着した。 

 すっきりとした顔の子供組の後ろには疲れた顔の両親が……や、ホントスイマセン……

 

 まあ、とにかく折角遠出までしたのだ。楽しまなきゃ損だろう。

 何して遊ぶかね? 

 

 

 まずはなのはちゃんを誘って――

 

 

「おばさん! あのながーいすべり台いっしょに行こっ!」

「あーはいはい、良いわよー。でもゆーっくり行きましょうね?」

 

 誘って――

 

「うっし! 回復した! そしたらタカは父さんと遊ぶか! 何して遊――どうしたいきなり抱きついて?」

「む゛ううううううううっ! む゛ううううううううっ!!」

「あれ? 泣いてる? 何で?」

 

 む゛ううううううううっ! む゛ううううううううっ!!

 

 

 ◇

 

 年をまたいで冬。 

 高町士郎パパの意識が回復し、現在はリハビリ中のようである。

 高町家もまだまだ大変ではあるものの、少しは余裕が出来たようで、なのはちゃんが家に来る回数も段々減り気味である。

 

 そんな今日はバレンタイン――

 

「貴裕くん、これどーぞ!」

「わぁ! なのはちゃんありがとう!」

 

 なんと! なのはちゃんが手作りのクッキーを持ってきたのである!!

 いや、幼稚園の先生や、女の子達、母からも貰ったんだけどね? 

 これはもう別格なんだ!! テンションなんて上がりまくりですよね、もう!

 

 

「あのね……これお母さんに手伝ってもらいながらだけど、がんばって作ったんだよね……」

 

 あらあらまあまあ、なんでそんなに照れてるかねこの子は……可愛いのぉ……

 何かね? 『いつも一緒に遊べて楽しいよ! これからもよろしくね!』的な言葉でも掛けてくれる――

 

 

 

 

 

「美智子おばさんも、よろこんでくれるかな?」

「ウン、チョウ喜ブト思ウヨ……?」

 

 ――ええ、どうせそんなことだろうと思ってましたよ! 期待なんて微塵もしてなかったですよ!

 思えばさっきの反応も初めて書いた絵を親に見せて褒めてもらえるかドキドキって感じだったものね……

 

「あらあら、なのはちゃんいらっしゃい!」

「あ! 美智子おばさん、こんにちは! これバレンタインのクッキーです!」

「あら私に? ありがとう! とっても嬉しいわよー! うりうりうりうり!」

「えへへへ……」

 

 まあ、幸せそうならいいか。子供は笑顔が一番――――ねえ、なのはちゃん? 

 それ俺に渡したのよりずいぶん出来が良いように見えるのは目の錯覚――って、もうラブ結界貼られてる!?

 

 

 追求できる雰囲気じゃねえし……父の所に撤退しよ……

 

「おとーさーん……」

「ん? どうした? なのはちゃんと遊ぶんじゃんなかったのか?」

「何かあの中入りづらい」

 

 ストロベリー結界が貼られたんで逃げてきました。

 あんな中に入ってたら嫉妬で悶え苦しみます。

 

「ん? あー、あれはな……お母さんは女の子が大好きだからな、我慢だ我慢!」

「うん……」

 

 まあ、そうなんでしょうねあの可愛がり方見るに……家遊び進めてたのもその影響かね?

 

 

 

 ――というよりあれ程なのちゃんを可愛がるのは、単に女の子が好きだからってだけじゃなくて、俺自身にも原因はあるんだよな絶対……

 

 子供っぽく振る舞ったりすることはあったけど、やっぱり中身は20の良い年したあんちゃんなんだ。

 変な違和感は感じただろう…… 

 

 

 あと、これが一番の原因だろうけど、子供らしく『甘える』ってことを余りしなかったからな……その反動もあったのかな?

 

 あんなに純粋で、自分にこれでもかと甘えてくれる可愛い女の子がいるんだ……そりゃ夢中にもなるわ。

 

 

「タカもお母さんとられて寂しいだろうに……なのはちゃんにあたらない、いじめないのは偉いな。もう今年の春には小学生になるから大人なのかな?」

「え? ああ、うん」

 

 さーせんお父さん。感心・フォローしてくれてるとこ悪いんですが、逆です逆。

 なのはちゃんじゃなくて、母に嫉妬ビームかましてやりたいんです。

 

 

 

 

 ――まあ、いいさね別に。 

 流石に幼児期光源氏計画は諦めました……元々そんな事出来る器でもないし、『ユーなの』も好きだしね?

 

 これからは原作イベント楽しみにしつつ、小学校生活送りますよー。

 

 最初に見れるだろうイベント『アリサ・すずかの喧嘩をなのは仲裁→友達へ』を見るのさえ、後3年近く掛るけど……

 その間はスポーツと、単独外出許可出た時の魔法の練習でつぶしますかね?

 

 

「幼稚園よりもっと同い年の子が居るからな。きっと楽しいぞ?」

「へー、ソウナンダー」

 

 低学年抜けるまではストレスの日々バージョンアップですね? 分かります。

 

 

 

 

 

 

「おう! ()()()()()小学校新一年生、田中貴裕くん! これからも頑張りましょう!」

「うぇーい……え?」

 

 え? 今何ておっしゃいました? 

 ()()()()()小学校? 私立聖祥大付属小学校でなく?

 

「どうした、ビックリした顔して? 何回か車で通った事あるから知ってるだろう?」

「え……や……聖祥は?」

「聖祥? ああ、小学校から私立なんて入る必要はない……って言っても分かんないか。うーん……聖祥は家から歩いてだと遠いからバス通学になるんだが、そこまでして通わせるほどなのかなってことと、勉強が普通のより難しいらしいんだよな……」

 

 いや、確かにそうでしょうけど……

 

「お父さんもお母さんも、タカには小さい頃から勉強ばっかりじゃ無くて、他の事にも目を向けて欲しいと思っていてな……あ、だからと言って勉強全くしないなんて言ったら怒るからな?」

 

 

 

 

 ――えっと? つまりお二人とも聖祥、というより、私立は全く視野に入れてないと。

 まあ市立の方が学費とか色々融通効きますもんね……うん、悪くないと思うよ?

 

 

 

 OK。仲良し3人組み結成イベントの見学カット&便乗して仲良くもカットの方向ですね。分かりまし――

 

 

 

 ――いや、どうしてこうなったし!?

 




 A.んなこたあない。 現実は非情である。



 やっとこさ次回から無印入ります。 

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