もし好きな物語の世界に入れたとして、好きなキャラが目の前で傷ついてる時、あなたはどうするだろうか?
――自分なら打算込みで話しかける。
◇
作中で子供の行動を否定的に見るような場面がありますが、別に作者は子供が嫌いな訳ではありません。
むしろ、はしゃいでギャーギャー騒いでるのとか見るとほっこりします。
ただ『実際に人生やり直したらこう感じるんじゃなかろうか?』という妄想で書いています。
第2話 「あれ? 母さんそれオリ主の仕事……」
現在は燦々と太陽の光が降り注ぐ夏。
自分が主人公ズと同い年では無いと確定したあの日から2年。
色々な事があった……いやホントに――
再び両親を誘い駅前商店街に行って、翠屋が出来てないか探した帰り、母方のじいちゃんばあちゃんに会いに行った際には――
「大きくなったなー貴裕! ほれ、じいちゃんの膝の上に来なさい! うーりうりうりうり!」
「あんた! そんなにひっついたら貴裕君に煙草臭いのが移るでしょうが! 貴裕君、おばあちゃんのとこに来なー。 おーよしよしよしよし!」
「貴裕! じいちゃんとオセロやろうか! オセロってわかるか? おお、わかるのか! 貴裕は賢いなー! うーりうりうりうり!」
「貴裕君、庭にたくさんお花見えるでしょ? あれ、おばあちゃんが育ててるのよー。え?綺麗? ありがとうねー! お花さんもおばあちゃんも嬉しいわ! よーしよしよしよし!」
「うーりうりうりうり!」
「よーしよしよしよし!」
もみくちゃにされすぎてボロボロになった……
一ヶ月後辺りに、また両親を誘い駅前商店街に行って、翠屋が出来てないか探した帰り、今度は父方のじいちゃんばあちゃんに会いに行った際には――
「よく来たなー貴裕。また大きくなって……ほれ、チョコのお菓子あるから食べなさい」
「あなた、最近のお菓子なんて体に悪い添加物とか、着色料とか、保存料とか一杯入ってるんですから、子供の体に悪いですよ。ほら貴裕君、おばあちゃんの作ったカステラ食べなさい」
「心配のし過ぎだろう。逆に今のうちに色んなもん食わせた方が腹も強くなるだろうに……ほれ、こっちもテレビのCMでも出てたお菓子だから上手いと思うぞ?」
「まったく……ほら貴裕君? おばあちゃんの作ったあんこたっぷりのお饅頭もあるわよー?」
「ほれほれほれほれ」
「ほらほらほらほら」
お菓子をたらふく食わされお腹を痛めた……
◇
4歳の春、幼稚園に入れられた。
これが本気でキツかった……毎朝お迎えのバスが来るたびに憂鬱になったもの。
周りは当然チビッ子だらけ。喜怒哀楽の激しすぎる子供達と、限定的な空間の中で6時間程一緒に行動ですよ……
最初の方は特に酷かった。
まだあまり他の子と関わるのに慣れてない子もたくさんいたのだ。
つまり――
「おがーさんどごー!! あ゛ーー!!」
「せんせー! やまだくんがわたしのおもちゃとったーー!!」
「やーい、うんこーうんこー!!」
「アンパーンチ!!」
「わたしがおかーさんやくなの! わーたーしーなーのー!!」
――先生と一緒に、過労とストレスで倒れそうになった。
ある日、全方位からの大音量にとうとう頭がいかれたのか、「殺られる前に殺る!」という考えの元、一番ひどい騒ぎ方してる大きな子を殴った。
当然先生と両親に怒られたが、次の日から男子メンバーの多くには「リーダー」と呼ばれた……殴った子からも呼ばれた。
彼ら曰く、自分より体の大きい子を倒したのが凄いカッコ良いらしい……それでいいのか君ら……
それからはちょっと楽になった。
とりあえず晴れてる日は外遊びに誘えば大体の男子はついて来てくれるようになった。
走りまわれば自分のストレス発散にもなるし、他の子が騒いでもそんなには気にならないし。
他の男子は放置! そこまで面倒みてやる義理はない……と言うより、余裕が無い。
あくまで自分が余り疲れない範囲でしか動きたくないし、園児皆に好かれたいとか考えてないもの。
それにあの子らは自分のやること邪魔されるとぐずるタイプだ……これ以上ストレス増やしてたまるか!
一方、女子メンバーにも、おままごととかにちょくちょく誘われもした。
なんだろう、本能的にお父さんお母さんと同じ雰囲気でも感じ取ってるんだろうか?
お兄さん元の年もそんなにいってないはずなんだけど…………ああ、20でもおっさん呼ばわりする奴はいるか、ちくしょうめ。
『演技力up』の影響もあるんだろうか?
男子メンバーにはヒーローごっこで、各キャラクターを演じるようにねだられる事も……
戦隊モノなんて見てないのに、どないせい言うんじゃ……ん?
「たっくんおままごとしよー」
「いや俺このあと鬼ごっこしたいから」
「うぇ……」
「と思ってたけどやろうかおままごと!? おままごとサイコー!!」
ただでさえやんちゃな子、男子の半分以上を率いるリーダー格、ということで先生にマークされ気味なのだ。
この上女の子泣かせたとかなると、もっとマークが厳しくなるんで勘弁して欲しかった……
――というよりお前らチビッ子どもの泣き声とか、もうウザくてウザくて耐えられ……ゲフン。
小サナ子供達ノ泣キ顔ナンテ見タクナイノサ!
◇
5歳になった春。
再び両親を誘い駅前商店街に行って、翠屋が出来てないか探したところ、『テナント募集』の紙の代わりに『喫茶翠屋・5月中旬より開店』という張り紙を見つけた!
もう、めちゃくちゃテンションが上がったね!
余りのはしゃぎように両親が引きずって連れ帰るぐらいには……迷惑掛けて申し訳ない……
そうして年少組から年長組になった幼稚園での生活。流石の園児達にも少しは落ち着きが見えて来たかと思った頃――
「リーダーはぼくたちとあそぶんだよ! けいどろー!」
「ダーメー!! たかひろくんはおままごとするのー!!」
「ブース!ブース!」
「バーカ!バーカ!」
「痛い痛い痛い!! 腕引っ張らないでっ!」
――外遊び派男の子グループと、おままごと派女の子グループで俺の取り合いになった……
どっちにも騒がれたくないから、バランスとって接していたのが裏目になるって……
これでもかと言うぐらいに求められてる、頼られているのは分かるけど、何これ微塵も嬉しくない……
ああ、幼児が相手だからか……綺麗な姉ちゃんぷりーず。
――あ、ちなみに服は破られました。幼児だから力加減なんて知らないですよネー?
その結果、俺の上着がワイルドに……なんだろ涙が……
◇
うん、改めて思い返してみても碌なもんじゃ無かったね。
「小学校入る前にストレスで禿げんじゃね?」って思うぐらいだったよ……
――だがしかし! ようやっとその辛い日々が報われる時が来たのである!
今日は今日とて母と共に行った公園で何をしようかと考えて周りを見渡してみると――
栗色の髪でツインテールという『高町なのは』っぽい特徴を持った幼児が、酷く辛気臭いオーラを垂れ流しながらベンチにポツンと座っているのを見つけたのだ!!
――うん、ちょっと近寄りがたいぐらいのマイナスオーラなんだけど、あれホントに
受験に失敗して沈んでる友達を思い出すレベルなんだけどあれ……ホントに同年代?
――まあ、気にしないでおこう! うん、どうにかなるでしょ! 多分!
今までの苦行かとも思えた日々は、主人公と幼児時代から仲良くなるためのチュートリアルだったんですね神様!
ああ、そう考えれば全てに感謝できる!
おままごとも!
やられ役を全力で演じさせられたのも!
おうたの練習で素晴らしいまでの不協和音に耳がイカレそうになったのも!
給食で嫌いなものが出たら俺に「あげる」と言って押しつけてきたヤツにも!
喧嘩を止めようとしてグルグルパンチに巻き込まれ泣いたあの日も!
やばい、また目から心の汗が……
いや、今日からはきっと今まで以上の耐えがたい日々がこようと大丈夫だ!
いざゆかん! 大事な大事なアタックチャ――
「ねーいっしょにあそぼ!」
――どっから出て来やがった短パン小僧。
さあ、光源氏計か――リリカルなのはの場面をより近くで楽しむために、未来の主人公と友情フラグをと意気込んでいた所に、サッカーボールを持った男の子が俺に話しかけて来た。
「ねー、いっしょにあそぼーよー」
「君だーれ?」
いやホントに誰ですか君?
「やまだけんと、5さいだよー。よろしくッ!」
「えと……田中貴裕だよ、同い年。よろしく?」
ふーん、けんと君て名前なんだー。
つい自己紹介返しちゃったけど、なぜこのタイミングで誘いに来たし。
いや、体動かすのは確かに好きなんだけど、今は未来の主人公とのフラグ建――会話を優先する時なのよ。
少し可哀想だけど、今回は適当な理由言って断らせてもらいますか……
「えっとね。俺サッカー派じゃなくて野球派だからやらない――」
「いっしょにサッカーやろう!」
「……えっと、俺サッカー派じゃなくて野球――」
「僕がキーパーでいいよ!」
「……俺野球が好き――」
「サッカー楽しいよ!」
「話を――」
「早くやろっ!」
「……うん、やろうか」
「やたっ! はいボール!」
同年代の子(話を聞かない子)マジ怖い。力技で押し切られたんだけど……
何なの君のサッカーへのその執念は? 超次元サッカーでも始めるつもりなの?
――いや! 押し切られはしたが、主人公の幼児期に接触というチャンスを逃すわけには……そうだッ!
「ねえ! あっちにいる子も誘おうよ!」
「あのこはね、さっきさそってみたんだけど、うんちだからやらないっていってたよ!」
うん!?――運動音痴の事だよな? ちょっとお兄さん頭の中が真っ白になりかけたよ?
女の子表現するのにうんちって……ああ、幼児なら珍しくもないか。
とりあえず下の話しとけば「きったねー!」とか言いながらはしゃぐお年頃だもんな。
ってか凄いね君。あのマイナスオーラ気にせず話しかけられたの?
お兄さんにしたら、ちょっとハードル高過ぎて引き気味なんだけど……ん?
「――――でも――――何処かに――――」
「いいえ――――来たころにはもう――――」
「何か――――ったのかしら――――」
「――――私――――ってみます」
いつのまにかママさんズに交じって母が何か話してるし。
相変わらず馴染むの早いですね……ってあり?
母がママさんズの輪から離れた?
「はやくボールけってー!」
「あ、ごめん。蹴るよー!」
仕方ない。この子が飽きるまで付き合うか……主人公もすぐに移動はしないでしょ。
可能性は低いけど、遊んでる内に「私も混ぜて」って来るかもしれないし。
「うりゃ! あ……」
「あー……くさむらはいっちゃった……とってくるねー!」
「大丈夫かー? 俺も探そうかー?」
「だいじょうぶ! まっててー!」
意外にええ子やった……さて、俺はどうすっかねー? やっぱり一緒に探そうかな?
いや、待ってる間なのはちゃんウォッチングでもしますか……ん?
あれ、お母さん? なんでそこにいると?
「こんにちは! 今ちょっといいかな?」
「ふえっ? あ、こんにちは……はい……」
あれ、お母さん? なんで話しかけてると?
「ありがとうね。あ、お名前教えてくれるかな? おばさんの名前は田中美智子っていうの。よろしくね?」
「えと……高町なのは、3さいです。よろしくおねがいします?」
あ、やっぱり未来の魔法少女であってたんだヒャッホウ!
テンション上がりまくりなんですけ――待て、俺より母の方が先に名前交換、自己紹介し合う……だと……?
「あの……田中「美智子おばさんでいいのよ。あ、私もなのはちゃんって呼んでいい?」――はい……えと、美智子おばさんはなんでわたしにはなしかけてくれたんですか?」
俺もそこが非常に気になるんだけど、それよか何で会って早々ファーストネームで呼び合ってるの?
いや、幼児相手ならそんなに珍しくもないか? でもなんか……あるぇ?
「おばさんの勘違いなら良いんだけど、なのはちゃんがとっても寂しそうに見えたんだ。違ったかな?」
「あ……いえ……」
「うーん……そういえば、今日は誰とここに来たの? お父さんやお母さん、お兄ちゃんやお姉ちゃんは? 近くに誰もいないから気になってたのよ」
「…………」
何だろうコレ? 何かマズイ気がする。
いや、これといった根拠なんてないんだけど、特に問題ないはずなんだけど……あるぇー?
「お父さんがしごとで大けがしちゃって……お店はじめたばっかりだからお母さんもお兄ちゃんもずっといそがしくて……お姉ちゃんはずっと病院でお父さんのかんびょうで……家にだれもいなくて……」
「それで寂しくて家から出ちゃったのかな?」
「……はい」
あ、何がマズイのか分かった。このままいったら、リリなの
いやー、スッキリした! 何か気になってしょうがなかったんだよねー。
そうかそうか、オリ主の仕事が無くなるのか……
――――――あるええええええ!?
「そっか、それは大変だね……ねえ、なのはちゃん。友達ってどういうものか知ってる?」
「えと……いっしょにいて楽しい?」
お母様!! えっとあのですね!?
いや、自分の子じゃ無くても、周りに保護者の影も見えず一人でいる子に声を掛ける、っていうのは素晴らしいと思うんですがね!? 今回は遠慮してほしいかななんて思ったりですね!?
「うん、それも間違っていないと思う。でもね、楽しさだけじゃないんだ。楽しいこととか嬉しいことは、二人で喜んで2倍になるし、辛いこと悲しいことは、二人で分けあって半分になる、そんな事が出来るのが友達だと思うの」
「わけあう……?」
あ、ダメだ。あの空気には割りこむのは無理。
幼児でもなんとなく割り込むのを戸惑うほどの結界貼られてる。
そういえば、その類の台詞、結構どこでも聞きますよね。
何すか? 自分達の結婚式のスピーチにでも使われましたか?
「そ、同じ気持ちを分け合えること。おばさんの個人的な考えなんだけど、寂しい時にして欲しいのは優しくしてもらう事じゃなくて、寂しいこと、悲しいこと、嬉しいことを、分け与え合う。そんな相手が傍にいる事だと思うんだ」
「……そばに……」
あ、それお母さんが言っちゃうんだ。
そこの主人公が、フェイトと何度目かに対面した時に思うセリフなんだけどねソレー……
アハッ! もうどうにでもなーれ! ラララララ、ララララ、ララララ、天使……
「だからね、なのはちゃん。こんなおばさんでよければ、私と友達になってくれない?」
「あ……ふえっ……うあーーん! うあーーん! あーーーーーーー!!!」
オガーザーン! オガーザーン! オガーザーン! オオオオオオオアアアアアァァ!?
「ボールみつけたよー! あれ? なんでまわりながらないてるの?」
うるせー! 見るんじゃねーよバーカ!
あれだよ、きっと主人公が救われた事が嬉し過ぎて涙が出たんだよ!
決して出番とられて、フラグがぼっきりと折られたからじゃねーよ、バカ!
ママさんズも拍手してんじゃねーよ! そこ! 何涙ぐんでるんだよ!
――ああ、ホントにどうしてこうなったし!?
>ラララララ、ララララ、ララララ、天使……
最後ら辺の、あのネタ分かった人はいるんでしょうかね?
「テンプレなんて嫌いだ! 俺はそんなことしない(キリッ」
そんなこと考えてたのに、ちゃっかり原作開始前から、なのは(主人公)と接触をはかるオリ主……
◇
※念のため突っ込まれそうなところを……
・オリ主母のなのはへの対応は、大人として正しいのか?
あの母は、別に精神科医でもなければ学校の先生でもありません。
ただ素人なりに考えた結果があのやり方だった、ということでご勘弁を……
・結局このオリ主も「現実」を認識できてない、「キャラ」が「世界が」うんちゃらかんちゃら……
この作品のオリ主は、この世界が「現実」だと一応認識はしていますが、どうしても「リリカルなのはの世界」という考えも抜けていない上、未確認ながら魔法なんて力も持ってるため、性格が若干アレになっており、「チュートリアル」だの「フラグ」だの「主人公」っていう発言をしています。
――というか、好きだった漫画・小説・アニメのキャラが居る世界で、完璧に分けて考えるとか、ありふれた精神性の人には無理だと思うの……