以前の投稿から半年以上……
待っていただいた方々は大変申し訳ありませんでした。言い訳は活動報告にて。
◇
席位置
<晩飯時> <説得時>
母 なのは 母 父
『テーブル』 『テーブル』
父 貴裕 なのは 貴裕
夜の8時を少し過ぎた頃。
田中家の食卓で晩飯を食べていた二人に、別の部屋で管理局と交渉をしていた少年からの念話が届く――
<なのは、貴裕、話は無事決まったよ。協力させてもらえるって>
<ん、お疲れ様。ユーノ>
<ありがとね。それで、私達がこれからどうすればいいのかは……>
<うん。やっぱり基本はアースラで活動する事になるみたいだから、回収が終わるまでは学校を休んだり、家から離れる必要はあるって>
<うぅ……それじゃあやっぱり、お母さんを説得しないと駄目だよね……>
ジュエルシード回収作業に協力できる事になったのはいいが、今までの様に空いた時間だけ行う訳にもいかないので、学校を休み、家も空けなければならない。
当然、小学生が家族の了解もなしにそんなことする訳にもいかない為、どうにか家族を説得しなければならないのだが、少女はその説得に自信が持てず気後れしていた。
だからこそ、『説得は特に問題なく出来る』と言った少年の説得の場に同席させてもらい、自身の参考にしようとしているのだが――
「タカ、ドレッシング取ってく――何でマカロニサラダに醤油を掛けてるんだ?」
<え? あ、ミスッた。納豆に掛けようとしてたんだわ>
<貴裕くん、念話になってるよ?>
「おおうマジか。はい、ドレッシング」
「いや、それ醤油だろ」
その説得に問題がないハズ
第18話 「フワフワした話で親を説得するのは無理がある――」
今晩の我が家の食卓には、田中家の三人に加えなのはちゃんがいる。
まあ、なのはちゃんが晩飯に同席する事自体は珍しい事でも無いんだ。月に二回程度の割合である事だし。
出会って間もない頃は、
今じゃ、なのはちゃんが晩飯の場にいても『あ、今日家で食ってくの? へー』としか思わず、母と『あーん』し合ってるのを見ても大した負の感情は湧いてこないけど……慣れって凄い。
そんな具合に、なのはちゃんと晩飯を一緒にする事は一喜一憂する事じゃなくなったんだけど――
「んふー、南蛮ダレ掛かった唐揚げおいしい……って、あれ? 貴裕くん何で一つも食べてないの?」
「あら、ホントだ珍しい。」
「好物だろうに……ん? 何か顔白くないか?」
「ちょっと色々ありまして、お肉とか重たいモノは今……」
――今回に限っては、君がいるせいで食欲もわかないんですよ!! お願いだから帰って!!
さっきまでは『高町家行くよりは精神的に楽だろ』とか考えてたけど、いざこの状況になってみるとキツイ……
白紙になった説得の内容を全力で考えてるけど、微塵もイケる気がしないせいか心臓がギシギシと締めつけられる! 鼓動も何かおかしい!
いや、家の両親はかなり人が良いよ? でも、子供の言動全てを肯定する様な阿呆でも無いのよ。
なのに、学校休む&家にもしばらく帰らないのを嘘や魔法バレなしで説得しなきゃ駄目な状況にしやがってこの子は、というかこの子らは……
<貴裕くん、大丈夫? さっきから何か様子もおかしいし……もしかして、この後の説得の事で緊張してるの?>
<あー……や、ちょっとだけね。気にしないで良いよ>
まあ、なのはちゃんが家に来て俺の説得を見学したいなんて言い出したのは――――精神面が原作より
それに、本当にこのまま帰られたら帰られたでちょっと不安が残る……
今の状態でなのはちゃんが説得を上手く出来るか怪しいし、失敗しようものなら困るのはこっちだ。
――そうだ、件の禁止事項に加えて、なのはちゃんが
あれ、何でかな? 心臓だけじゃなくて、お腹も痛くなってきたヨー?
唐揚げ? 旨かろうが、んな脂っこいモノ今は食せる自信がないですわ。
<ユーノー、交渉終わったんならこっちおいでー。おいしいタレの掛かった肉があるよ肉が>
<あ、僕も貰って良いの?>
<うん、遠慮なく食べちゃって>
唐揚げはユーノ君に進呈しよう。食欲が本当に……
豆腐の味噌汁ぐらいならまだイケるかもだけど、流石にそれだっけってのもな……余所の子の前でお行儀悪いけど、ぶっかけご飯にして食うか。
全く食わないのは流石にアレだし、何でもいいから少しは腹に入れないと頭が働かない――
「タカ、醤油取っ――何で牛乳をご飯にかける!?」
<えっ、あっ、ミスったああああああっ!?>
<貴裕くん、また念話になって…………うえぇぇ……ぎ、牛乳ごはんってどうなのそれ?>
「アンタ、何て事してんのさ……」
――って言うのに、自分で食欲下がるような事をしてどうしたいんだろうね俺は!?
ストレスのない環境でエネルギーを頭に補給させて下さいよ!
ただでさえ上手くいくか分からないのに加えて、頭が働かなくなったらもうどうしようもないじゃないの……
あ、何か血の流れがおかしい? 手先と顔が冷たく……
◇
居間に来たユーノ君に『フェレットでも食べられるようにしたご飯だよ』と騙して牛乳ごはんを食わせようか迷ったり、罪悪感が半端なかったから結局自分で食べて体調が悪化したり、母がなのはちゃんと『あーん』をし合ったり、タレの掛かった唐揚げをユーノ君に『あーん』してみたり、父も餌付けをやってみたかったのかユーノ君に『あーん』するのを生暖かい目で見てから数分。
全員が晩飯を食べ終わる頃を見計らって、両親に『大事な話がしたい』と伝えた。
母となのはちゃんが『あーん』し合う為の席位置から変えて貰い、俺の隣になのはちゃんが座り、ユーノ君はその膝の上。テーブルを挟んで斜め前に母が、父とは真っすぐ対面する形になり、いざ説得の開始――
「それで? 話って何だ――と言うかお前、大丈夫か? もう完全に顔真っ白だぞ」
「風邪? 晩御飯の時もボーっとしてたし、あんまり食べてなかったけど……話って今日じゃないと駄目なの?」
「気にしないであげて。話は今日じゃないと駄目なのよ」
<貴裕、本当に大丈夫? 顔色悪くなる程って緊張し過ぎじゃ……>
<貴裕くんってこんなに緊張するタイプだっけ……?>
<気にしないであげて>
――と行きたかったんだけど、その前に体調不良を心配されております。
頼りにするはずの人がダメだと分かったら不安も加速するだろうし、なのはちゃんには俺が顔色悪くなるほどストレスを感じ――緊張しているのは出来れば隠し通したかったんだけどな……
不安を顔に出さない事は頑張ればどうにかなるけど、血色をコントロールするのは流石に無理でしたネー。
「いや、その状態を気にしないのは無理が……今日じゃないと駄目にしても、時間置いた方が良いんじゃないか?」
「そうよねぇ、少し休んでからとか……なのはちゃんを送ってからでもいいんじゃない?」
「あ、えと、私にも関係してる話だから、貴裕くんのお話が終わるまではお邪魔させて欲しんですが……」
「あら、そうなの?」
「そうなのよ。なのはちゃんが家に帰るのが遅くなるのもあれだし、早く終わらせないとでしょ?」
心配してくれるのはありがたいけど、これ以上延ばすのはよろしくないのよ。
時間置いた所で話が終わらん限りはストレスから解放されない……延ばせば延ばすだけ辛いんです。
加えて、なのはちゃんの帰る時間が遅くなる過ぎると、食後の運動に出て行ったであろう高町家剣道部の三人が帰って来て、なのはちゃんが説得する相手が
なのはちゃんの不安感を減らす為にも、俺のストレスを解消する為にも、高町家説得の難易度を上げない為にも、まともな内容の説得を今やらなきゃならんのです…………自信は全くないけど……
本当に何か説得の参考に出来そうなものは無いのかね――――って、ああ、なのはちゃんもこんな気持ちだったのか。
そりゃ、参考に出来そうなモノが有れば飛びつきたくもなるよね……
こっちは参考に出来そうなものなんて原作の幾つかのセリフぐらい。その原作ですら、桃子さん説得シーンのなのはちゃんのセリフは一言だけという素晴らしいまでの飛ばし方だったはずだし、二次小説でもオリ主が両親説得する部分をガッツリ書いてある作品はなかったんじゃないか?
「んで、俺が父さん母さんに話したい事、って言うより了解して欲しい事なんだけど…………明日からしばらく野球と学校休ませて欲しいんだわ。あと、家も空ける事になります」
だから、殆ど自分で考えた――それも白紙なった状態から一時間弱しか考えこめなかった話で説得しなきゃならんのよね。
おかげで話の質が……実際に言葉に出すと、とんでもない事言ってるのが再認識出来るわ。
一般市民な両親を相手にいきなりこんなトンデモ発言をすれば――
「――は? 家を空ける?」
「何言ってんのアンタ? しばらく休むって……え?」
こういった困惑混じりの反応が返ってくるのは当たり前ですよネー……罵倒が来なかっただけマシな方?
いや、当初の予定では話をじっくりゆっくり進めて、その都度質疑応答もしっかりして理解・納得させて了解をもらう予定だったんですよ?
でも、それは結構な時間を掛けて考えていた魔法バレ有り嘘有りのデタラメストーリーが使えてこその話でして……
というのも、隣にいる子たちがね? 『魔法バレはダメだ』って言うのに加えて真面目で純粋な子なものですからね?
俺が嘘付いたら顕著な反応するだけじゃ無く、こういった
いつもみたいなカッコ悪いところを見せるとかそういうのとは違う話だし、それは流石に避けたいもんですから……
そんな状況で急造の話に途中で何度も突っ込まれると、ボロが出て対処し切れなくなる&話が頭から飛ぶと思うんですよ。詳しく話そうとすればするほどマズイ。質問とかないのがベスト……いや、それは無理だろうけどさ。
「まあ、最近帰りが遅いのにも関係ある事なんだけど……ちゃんと理由は話すからさ、色々と聞きたい事や言いたい事はあるだろうけど、俺の話が一段落するまでは待って」
「いや、そんなこと言ったってお前――」
「うん、話が一段落するまで待って」
「え……あ、いや、だから――」
「待って」
「お……おう?」
だから、『最初にインパクトのある事を言って、困惑している内に話を強引にでも一気に進める』って方法で行くことにしたんです……ゴリ押しで話潰してスマンね父さん。
こっちは下手くそな感情論&勢いで話そうとしてるんだし、説明している内に冷静になられて理詰めで責められでもしたら辛いモノがあるんだよ。
他に出来る小細工と言ったらと言ったら……真面目な感じを装うぐらい?
顔を引き締めて姿勢を正して、両親から目を逸らさず堂々と真面目な感じに話せば、少し訳の分からん事を言っても空気を読んで黙って聞いてくれたり、説得力も幾らか上がるかね?
まあ、顔色悪いから顔を引き締めたところで違和感は残るしと思うし、あんまり力入れて話そうとすると晩飯が口からカムバックしそうなんだけど……
どっちにしろグデっとした状態で話すのも良くないし、どうにか頑張りましょう……
「――4月の頭頃の話なんだけど、友達が厄介な困り事を抱えているのが分かったんだ。その友達がすっごい真面目な子でさ、その子がやらなきゃいけない責任なんて無いのに『放っておいたら周りに迷惑が掛かるから自分がやらなくちゃいけないんだ』って大変な作業を一人で無理して頑張っていてさ…………ただ、俺やなのはちゃんはその作業を手伝えることが分かったから、その友達の助けになれればと思って一緒に作業をやり始めたんだ」
まずは、大分省いてぼかした経緯説明を――――もう、この時点で突っ込みどころ満載ですよねネー?
『友達の厄介な困り事って何? 大変な作業って何? そもそも大変な作業なら何で3人だけでやるの?』っていう……
今さっき頼んだおかげか突っ込みは我慢してくれてるみたいだけど、お二方とも眉間に皺が……
うん、困惑状態になるのはいいけど、あんまりにも度合いが過ぎると我慢の限界が来るかもだし早く話を進めよう。
「そうして始めてから今日までずっと三人で頑張ってやってきて、その困り事が解決するまで残り半分って所なんだけど……今日になってその友達の困り事を解決出来るプロの人達が来たんだよね」
「プロの人って何よ?」
「話が一段落するまでは待ってってば、お願いだから」
残念ながら、母的には『詳細不明のプロ』発言は我慢の限界ちょっとはみ出るようです……
父の方も口には出さないモノの、こっちを見る目が……いや、自分でもどうかと思ったけど全く的外れの表現でもないのよ? 突っ込みどころは多いけど話としてはギリギリ成立しているレベルではあるんじゃないかと思うんですよ。うん。
現にホラ、今の所はなのはちゃんから『え、貴裕くん説得に自信あるんだよね? 何この頭の悪い発言?』って内容の念話はないし、特に変わらずこっちを横目で見てるだけで…………あ、若干不安の色が視線に交じってら。
や、そんな目でこっちみんといて? プレッシャー半端ないから。顔がひきつって自信がないのがバレちゃうから。
この次からはいくらかマシになると思いますんで。ね? ね?
「続けるからね? やっぱり大変な作業なせいもあるのかさ、その人達に『後は私達でやるから君達は手を出さなくても良いよ』って事を言われたんだけど……そのまま『はい、分りました』って言って終わるのは嫌だったんだ」
ほら、もう経緯説明的なものは終わって、今の心情を語るというか決意表明的なモノなるからそこまではひどいものにはならないはずなんですよ。
ここら辺からなら、元々の説得で使う予定だった話も使えるから中身も安心していいのよ?
何より――
「始めたばかりの頃――『友達を助ける為の手伝いとして』って理由だけでやってた頃なら、普通に引き下がれたと思う。その友達の困り事が解決する事には変わりないんだし…………でも、今はもうそれだけが理由じゃ無いから。三人で成功したり失敗したりしながら続けて行くうちに、『自分の意志で、最後まで本気でやり通したい』とも思うようになっていたから、こんな中途半端な所で終わらせたくなかった」
――原作なのはちゃんの温泉の時のセリフを掘り下げたものを混ぜたものだから安定感は抜群のはず……!
いや、全部オリジナルで考るのはキツかったんですヨ。
まあでも、俺が話すの楽ってだけじゃ無くて、なのはちゃんが説得の参考にし易いってメリットもあるのよ?
だって、当人の言葉になるはずのモノだったんだし……原作とは多少の違いはあっても大元の志は変わってないみたいだし、問題なく使えるんじゃない?
「だから、そのプロの人達に無理を言って協力させて貰える様にはしたんだけど……その『仕事』に協力させてもらう以上、今までみたいに学校終わってから3・4時間だけとか、用事の無い休みの日だけとか、のんびり家から通ってやるっていう訳にはいかないんだ。最初に言った通り、解決するまでしばらくは野球と学校休んで、家も空ける事になるんだわ」
協力させて貰う立場なのに、『平日殆ど活動できません、プライベートな時間は守りたいです、実家から離れたくもありません。ただ、やる気はあるので参加させて欲しいです!』とか舐めてるとしか言いようがないものね。
今回に限っては、
約半月分の高い授業料が無駄になって申し訳ないとか考えないで済む……まあ、給食費と少年野球の月謝については目をつぶってください……
「そういう問題もあるんだけど……やっぱり、大切な友達と一緒に始めた事は最後までやり通したいって気持ちがは変わらない」
決意表明もどきの場面でも、
特にトラブルがなければ、なのはちゃんはこの時点で桃子さんの説得完了するんだろうなぁ……羨ましい……
いや、桃子さんがチョロいんじゃなくて、家庭の事情とか士郎さんの過去とか、なのはちゃんの本心からの説得があるからこそ上手くいくんだろうけどさ?
家の両親は一般家庭の普通人だし、俺は本心で話しているわけでもないからな……いや、『演技力up』の効果もあってそれっぽく話せているとは思うし、説明の中で言った『ユーノ君を助けたい・ジュエルシード事件を自分達で終わらせたい』って気持ちは確かに少なからずあるよ?
でも、『原作に関わりたい』って不純な動機の方が圧倒的に大きいんだもの
確実に通るかは自信が持てん。
「――無茶苦茶なこと言ってる自覚はある。病気でもないのに、俺がやりたいって言って始めた野球や、大切な事を勉強する為の学校を何日も休むのは悪い事なのも分かる。家を何日も空けるのがほめられたことじゃ無いのも分かってる」
まあ、例え本心で語っていたとしても、今の時点の話だけで納得してくれるかどうかは自信がない。
だから――っていうか誠意を見せて説得力アップ云々の前に、こんな野次馬根性な阿呆みたいな動機で学校を休み、家も空け、両親に迷惑と心配を掛けるんだから――
「分かってはいるけど……それでも、ここで終わりたくないから。最後までやり通したいから……許可して下さい! お願いします!」
――せめて、この軽い頭ぐらいはちゃんと下げましょう。
おふざけ成分抜きで両親に本気で頭下げたのって初めてかね?
それ以前にこんな真面目に頼み事をするのだって初めてか……謝罪交じり、説得力を上げるためっていう打算も交じりの汚いものだけど。
さて、これで一旦俺の話は終わるんだけど、お二方ともどういう反応してるんだろ?
困惑しっぱなしなのか、真面目な顔で受け止めているのか、『何ふざけた事を言っているんだこいつは』と怒っているのか……
「――タカ、頭上げなさい」
「うん……」
気になる反応は――あら、真面目な顔。一応、ちゃんとした話として受け止めては貰えたのっぽいかな?
まあ、それなら許可が貰えるのかっていうと話は違うんだろうけどさ……
「とりあえず、お前にとってそれが大事な事だってのは分かった。おふざけじゃ無く本気でやりたい事だってのも……でも、具体的にどんな事をするのかは殆ど説明してないだろ。全部遠まわしの表現ばっかりだ。何か隠したいんだろうが、それを説明されない限りには許可なんて出来ないぞ」
「お母さんも同じ。貴裕が真面目に頼んでるのは分かるけど、詳しい事情分からないなら良いも悪いも判断のしようがないでしょ」
「あー……うん……」
『隠したい』って意図が有るのを察したのなら、そのまま触れないで欲しかったカナー?
いや、危険が無いのかも、本当に学校休んだりしてまでやる程の事なのかも分からない訳だし、スルー出来ないのは当然なんだけどさ。
この子らの前で
まあ、説得失敗したら元も子も無いんだからどうにもならないようなら考えるけど、もう少し粘ってみるかね……
「ごめん、詳しくは話せない。ただ、犯罪とか悪い事するつもりではないから、そこは安心して」
「悪い事しないのは当り前の事だろうが。詳しく話せないってお前……あ゛ー、もう!」
あ、やっぱり無理臭いよコレ。
父は手で顔を覆って天井仰いじゃってるし、母も渋顔というか困った顔になってるし……
下手な誤魔化しを言ったり、これ以上粘ろうものなら説教すら来かねない状態なんだけど……え、詰んだ?
やっぱり魔法バレしないと無理?
<ね、ねぇ、もしかしておじさん怒ってる? 美智子おばさんも何か顔が……大丈夫なんだよね? 上手くいくんだよね?>
<やっぱり、魔法の事を隠して話をするのは無理があるのかな…………あの、なのは? 何で僕の胴体を握っては放しを繰り返してるの?>
あらやだ、なのはちゃんが空気を察して本格的に不安がり始めて……
まあ、他所の子の前で――特になのはちゃんがいる時は、父はあんな体勢にならないし声を荒げる事も無い。母も基本は笑顔だからね。
それも合わさって、無意識に
自信持って『大丈夫だよ』とも言えないし、何て返す――――ってあら?
体制戻した父が母に意味ありげな視線を送った?
母の方はそれを受けて頷いてるんだけど……え、何そのアイコンタクト?
あれか? 父のは『もう、流石に怒っちゃう? あんまりにも滅茶苦茶な事言ってるし、ちゃんとした説明する気も無いみたいだし、なのはちゃんの前だけど怒っちゃって良い?』って問いかけの視線?
母のは『構わん、やれ』って了解の頷き?
「タカ、お前が詳しい事を話せないのは…………あー、その、なんだ……」
あ、良かった、口調からして怒る訳ではないっぽい……というより、何か戸惑っている感じ?
まあ、魔法バレしなくとも説得できる余地が残っているのなら何でもいいんだけど――
「その困り事とやらに…………『魔法』が関わってたりするからなのか?」
「――――ん?」
「ふえっ?」
「キュ?」
今、何ヲ言ッタノカナコノ人ハ? 魔法ガドウシタッテ?
突然そんなこと言われても、口が『ん?』の形のまま首を90度近くまで曲げて固まる事しか出来ませんよ俺?
ほら、なのはちゃんとその手元で握られてるユーノ君も、驚きの余り口をあんぐり開けた状態で固まってますがな。
「――お前やなのはちゃんの反応を見る限り当たり、か……何と言うか、まぁ……」
「いっそ、『魔法とかいきなり何言ってんの?』って笑い飛ばしてくれれば良かったんだけどねぇ……ホントに……」
おっかしーなー? 父どころか母の口からも『魔法』なんて不思議ワードが出て来たぞー?
まだ、こっちから魔法バレなんてしてないのにどうして――――あ! ハイハイ、分かりました!
『魔法が既にばれてたパターン』ですね!
そんなに数は多くないけど、ギャグ系の作品でなら何作かリリなの二次でも見た事あったよ、うん!
ハイハイ、魔法が既にばれてたパターンね、魔法が既にばれてたパターン。分かりま――
「いやいやいやいや、微塵も分からないよ!? え、何がどうして!? 何で!? 何で!? なーんーでー!?」
「おばっ、美智子おばさんが、魔法っ、おばっ、おじさんも、私もっ、うぅぅん!?」
<何で魔法の事を知って――ちょっ、握り具合が強いっ!?>
「二人とも落ち着きなさい! タカはテーブルを叩くな! ちゃんと説明するから…………はぁ……」
隠してる事を何の構えも無く突然言い当てられたのに、平静でいられる訳が無いでしょうが!!
というか、何でバレた!? 少なくとも家の中で魔法練習する時は細心の注意を払ってたし、外でやる時もちゃんと結界貼ってたぞ!? どこで下手打ったと!?
「うぅん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ッ!?」
「うぅぅぅぅぅぅんっ!?」
「ギュッ、キュゥゥゥ……」
「どういう声を出してるんだ二人とも……あと、なのはちゃん。フェレットが可哀想だから放してあげなさい」
「えっ? あ、ユーノ君!? ご、ごめん! もしかして、力いっぱい握ってた!?」
いつだ、どこだ、何で二人とも知ってるんだ!?
どうしてなのはちゃんの手元でユーノ君がぐったりしてるんだ!?
どうしてこうなったし!?
フワフワした話で親を説得するのは無理がある――親は子供のことをよく知っているんだもの。
案外、自分の中では『完璧に隠せてるぜ!』なんて思ってることって、親にバレてるもんですよね。
◇
>こっちは参考に出来そうなものなんて原作の幾つかのセリフぐらい――その原作ですら、桃子さん説得シーンのなのはちゃんのセリフは一言だけという素晴らしいまでの飛ばし方だったはずだし、二次小説でもオリ主が両親説得する部分をガッツリ書いてある作品はなかったと思う
おかげで困難しましたよ!! イメージが全くわかなかったの!!