高二病抜け切らなかった人が中途半端な力で   作:mahiro

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 本当は今話で両親の説得シーンも書きたかったんですが、そうすると10000字どころか20000字越しそうな勢いだったので、その前辺りでカットしております。
 
 4月27日の話だけで何話使うのか……次話も含めれば4話分……


第17話 「一緒にお話しなの?」

 次元航行船アースラの一室。

 管理局の二人はロストロギアの危険性を少女らに説明した後、この事件から手を引くように促す――

 

「これより、ロストロギア――ジュエルシードの回収については時空管理局が全権を持ちます」

『えっ……』

「君達は今回の事は忘れて、それぞれの世界で元通りに暮らすといい」

「でも、そんな……」

「次元干渉に関わる事件だ。民間人に介入してもらうレベルの事案じゃない」

「でも!」

 

 敵対している少女の事が気になるのか、途中で終わらせるのが嫌なのか、その両方か。

 少女は納得がいかずに不満の声を上げるも、聞きいれられはしなかった――

 

 

「まぁ、急に言われても気持ちの整理もつかないでしょう。今夜一晩ゆっくり考えて、それから改めてお話しをしましょう?」

 

 この船の艦長でもある女性が話を切り上げたため、少女はしぶしぶと言った形で言葉を止める。

 

 これで話し合いは終わり、後は執務官の少年が少女達を元の場所に送って行く――

 

 

 

 

「それじゃあ、後は貴裕君の件ね。フェイトさん達にあんな事をしていた理由を聞かせて貰える?」

「え、それ必要? あ、違う、必要なんですか?」

「ごめんなさいね。さっき説明した通りロストロギアは危険なものだから、それを巡る事件となると本部に送る調書も可能な限り詳しくしないといけなくて……特に、さっきのジュエルシードの回収前後の映像は資料として提出するだろうからどうしても……」

「オゥ……分かりました……」

 

 ――のが原作の流れだったのだが、少年が余計な事をした影響で元の場所に戻るのは少し遅れるのだった……

 

 

 

 

 第17話 「一緒にお話しなの?」

 

 

 

 

 アースラでは『こういう事情でジュエルシードを集めていたんですよ』『こんなことがあったんですよ』という説明をしたり、『ロストロギアは危ない、だから手を引いて』と言われりなど、概ね(・・)原作通りの流れで進んだ。

 ちょっと恥を晒されたり、ゲス顔で煽った事について聞かれたりもしたけど……許容範囲のレベルだね、ウン。

 

 そうして話が終わり、クロノ君に転移魔法を使ってもらって公園に戻った頃には、日も落ち辺りは暗くなっていた――

 

 

「あり、もう暗くなっとる? 時間は……もう19時過ぎてんのか。色々話したり聞いたりしたから割と時間かかったのね」

「『ジュエルシードの回収をしなくていい』って言われるとは思わなかったけど……まあ、僕達がやるより、ちゃんとしたプロにやってもらった方が良い……のかな……」

「でも、私はまだフェイトちゃんと話しをしたいし……それに、ここまでやってきたのに途中からは人任せっていうのは嫌だなぁ……」

「それは僕も嫌だけど……うーん……」

 

 お二人とも微妙に暗い雰囲気を漂わせちゃっております……

 まあ、分かりきった事だけど、ジュエルシード回収が出来なくなるのに納得いかないのね。

 

 なのはちゃんの方はその場で不満の声を上げてたぐらいだからなぁ……

 

 リンディさんが『時間経ってから話しましょう』って話を切ったのは、言葉通り気持ちを整理させるため――なのはちゃんを落ち着かせるためだったんじゃないかね? 

 あのまま、なのはちゃんが話し続ければクロノ君とヒートアップしそうな勢いだったし……

 

 例えそうでなかったとしても、アンチ小説にある様な穴だらけトンデモ理論の『都合のいい戦力として利用するために、あえて即断らずに自発的に協力うんぬん』っていう意図はなかったと思う。

 

 いや、確かにあの理論は当てはめようと思えば(・・・・・・・・・・)当てはめられるけど、当てはまれば即DANZAIならどんな発言だって……

 リンディさんが『利用する為に騙してやんぜグヘヘ』って企んでる明確な描写は何処っていうか、穿ち過ぎた見方じゃないかというか、裏を読み過ぎというか……あれは、アンチしたいがために作られた陰謀論じゃないかね?

 

 

 

 ――さて、とにかくこの微妙な雰囲気を払拭しつつも、『アースラの人達と協力してジュエルシード回収する』っていう原作の方向に誘導せねば。

 特段、描写もなかったシーンだから、下手こかないように一層気をつけよう……

 

「貴裕くんはどう思うの? あの人達の言う通り、やめた方が良いと思う?」

「いんや、俺も二人と同じ。プロに任せれば綺麗に片づけてくれるのは分かるけど、だからってここで終わるのは何か微妙な気持ちになる」

 

 二人に合わせるために、それっぽい理由を――もちろん嘘だけどネ。人任せとかお兄さん大好き。

 ぶっちゃけると、大変だし、危険だし、やめるのが正解だと思うんだけどネー?

 

「勝手に俺らだけで探索やったら怒られるだろうし、向こうと協力をさせて貰うって形ならどうだろ?」

「協力?」

「うん。『自分達の住むこの街を守りたいので協力させて下さい。今なら、暴走体や例の子達との戦闘経験もある、すっごい魔力量を持つ天才魔導師+優秀な結界魔導師+αがタダでついてきますよ?』ってな感じに、主になのはちゃんをアピールしつつ、手伝わせてって頼めばどうにかならないかね?」

 

 さりげなーく方針を原作の(危険な)方向に誘導して――というか、ユーノ君がリンディさんを説得する時に言ったセリフをパクってと……

 

 本来、コレを思いついたのは二人のどっちだったんだろ? 

 お願いするだけじゃなく、自己PRもするなんて9歳児の考えられるレベルじゃない――のは今更か。

 

「て、天才魔導師って私の事!? ちょっと恥ずかしい……というか持ち上げ過ぎだよ。ねぇ、ユーノ君?」

「いや、合ってると思うよ」

「え?」

「そっか、僕や貴裕はともかく、なのはは向こうにとっても有効な戦力になるだろうし……それならまだ向こうも受け入れてくれるかも」

「でしょ?」

「あ、あれ? あれ?」

 

 ユーノ君にあっさり肯定されたせいか、なのはちゃん(公式チート)が戸惑っていらっしゃる……

 

 まあ、比べる相手が少ないんだもの、自覚がなくても仕方ないよね。

 フェイトちゃんには勝てていない訳だし……(格下)がいるから『私ってちょっとは凄いのかな?』程度の認識はあったけど、天才レベルとまでは思ってなかったとか?

 

「向こうと話をするのはユーノに任せて良い? 同じ世界の人の方が話は通じると思うし」

「大丈夫だよ。じゃあ、向こうに通信を――するのは時間空けた方が良いよね。『一晩じっくり考えて』って言われたんだし」

「ユ、ユーノ君? まさかとは思うけど、本当に私の事を『天才魔導師』とかってアピールしたりしない……よね?」

「あははっ、流石にそれはしないよ。実際にアピールするのは『膨大な魔力を持ち、砲撃魔法が使える』って所かな?」

「そ、そうだよね、良かったぁ……」

 

 アピールしなかろうと、なのはちゃんが天才って事はすぐに知られると思うんだけどネ。

 

 

 ――とにかく、これで誘導は無事完了っと……

 原作絡みでここまで綺麗に思い通りに出来たのって、初めてじゃなかろうか?

 

 まあ、絶対思い通りにはならないだろう、『両親の説得』という大問題が後には控えてるんだけど……

 

「あのさ、向こうに協力させてもらえる事になったら、やっぱり今まで通りの生活ってのは無理だよね? 学校休んだり、家からしばらく離れたりしないといけない感じ?」

「えっ、そうなの?」

「それは……そうかも。多分、ジュエルシードを回収し切るまでアースラの方で活動する事になるんじゃないかな?」

「デスヨネー……父さん母さんをどう説得するか……」

 

 ずーっと考えてはいるんだけど、確実に説き伏せられるような話は思いつかないのよね。

 どうにかなればいいけど……多分、魔法の存在をばらす事になると思う。いや、むしろばらさないでどうやって説得しろと言うのか。

 

「そっか。僕はいいけど、なのはと貴裕は家族に話をしなきゃいけないよね……」

「えぇぇ、どうしよう……貴裕くんはどうやって説得するの?」

「自分の気持ちというか、やりたい事を上手くまとめて伝えようかなーと。一応、なんとなくの形は思いつくし、多少突っ込まれてもどうにか出来ると思う」

「そっかぁ……」

 

 俺の話を聞いて参考にしようとするのは止めときなさい。

 基本、魔法バレ&嘘たっぷりで誤魔化して押し通すつもりだから、なのはちゃんには向かないって。

 

 

 

――――ピリリリリ、ピリリリリ――――

 

 

「――っと? 電話?」

「貴裕くんの携帯?」

「うん……あ、家からだ。母さんか? 悪い、ちょっと待ってて」

 

 その、説得しなければいけない人物から電話が……何だろ? 何かあったけ?

 

「あい、もしもし?」

『あ、繋がった……たーかーひーろー? 母さんちょぉぉぉっと聞きたい事があるんだけど?」

 

 あれ、何で怒ってるの?

 何かやらかしたか? 飲み食いした後はちゃんと片付けたし、お湯のガスも止めて出たはずだけど……

 

「えっと、俺なんかした?」

『うんうん、あのね? 今何時だと思う?』

「ん? 何時って、19時10分ちょっと――――あ……」

 

 忘れとった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『昨日怒られたばっかりなのに、これといった連絡もなく夜の7時過ぎても帰ってないのはどうなのかなー? 何処で誰と何やってるの? ゲーム? ゲーム? しばらくゲーム機預かっておこうか?』

「やめてあげて!? ゲームじゃないから!! 友達ん家で、家の人の迷惑も考えず遊んでるとかじゃないから!!」

 

 家によっては晩飯の時間だし、良い子はもう帰ってなきゃいけない時間でしたね!? 

 あと、遊んでた訳じゃないの!! あなたの大好きななのはちゃんも含めてお話し合いをしてただけなの!!

 

『本当? 怪しいけど……あ、そうだ。何で携帯の電源切ってたの? 6時半過ぎから2・3回は電話したんだけど、繋がらなかったわよ?』

「へ? 電源入れっぱにしてたはずだけ――あ、電波たまたま悪かったんじゃね?」

 

 丁度、アースラに乗ってた頃だな……『そろそろ帰ってこいや』って電話しようとしてたのかね?

 流石の携帯会社も異次元に電波届かせるのは想定してなかったんだよ。

 

『そうだったのかしら……それは良いとして、今何処で何してたの?』

「あー……なのはちゃんと一緒に臨海公園でダべっておりました」

『はぁ? なのはちゃんと? こんな時間まで外で?』

「うぃ」

 

 嘘は付いてないヨ? 数分前まで異次元にある船にいたり、なのはちゃんだけじゃなくユーノ君とも喋ってたけど、全部説明してないだけで嘘ではないですヨ?

 

『へー……じゃあ、なのはちゃんと代わってくれる?』

「アレ? 疑われてる?」

『昨日怒られたばかりなのに、今日も遅くまで帰って来ないのは誰かなー?』

「俺ですねー……なのはちゃーん? ちょっと、証人になっておくれ」

「えっと……『帰りが遅い、今何やってるのーっ』って怒られたの?」

「うん。昨日帰りが遅い事で怒られたばっかだから、なのはちゃんと外でダベってたって言っても信用してくれないのよ」

「あ、あはは……うん、分かったよ。もしもし美智子おばさん? 今晩は、なのはです――」

 

 なのはちゃんと別れる前で良かった……よくよく考えれば、このタイミングで電話掛けて来たくれたのは逆にありがたいかも。

 誰かの家の人に迷惑かけてなかったってのも信じて貰えるだけじゃなく、なのはちゃんセラピー(との電話)で母の機嫌は良くなるんじゃないかね?

 

 機嫌の悪い母&父に、『何日かかるか分からないけど、学校休んで家も離れる予定だから。笑顔で許してねネ?』なんて説得するのはハードモード過ぎる……

 母の機嫌がよろしくなるだけでもいくらかマシに――

 

 

 

 

「――うん、本当に公園でお喋りしてたよ――――あー……最近帰りが遅いのはその、貴裕くんにも理由があるんじゃないかなーって。別に悪い事をしているわけでは――――え!? あ、その、知っていると言いますか、一緒にいたと言いますか――――いやいや、無理矢理付きあわされたりはしてないよ!? 大丈夫だから!」

「あれ? 雲行きが怪しい?」

「なのはって真っすぐな分、誤魔化しとかは苦手なのかな……」

 

 ヤダこの子、ボロ出し過ぎ……

 

 おかげで母からあらぬ疑いを掛けられてるんですが……セラピーはどうした?

 なのはちゃんって夜遊びしそうなタイプじゃないから、俺がなのはちゃんを非行に引きずり込んだと誤解されてる? いや、直ぐに誤解だって分かってくれるとは思うけど……

 

 

「――あ、あはは……はい、気をつけます――――うん、もう遅いし晩御飯は遠慮します。今日はお母さんに大事なお話をしないといけな……あ! おばさんごめんなさい! やっぱり晩御飯ご馳走になっても良い?」

 

 あら、ここで解散しないの?

 晩御飯食べに来るのは一向に構わないけど……誘いも一回は断って、『大事なお話』のワードが出た途端に『やっぱり参加したい』ってなったんだから、母の飯が食いたいからってだけじゃないよね?

 

 家に帰るのを延ばして、『大事なお話』の内容を考える時間が欲しいのか? 

 まさかとは思うけど、母にまで決意表明する為じゃないよね……

 

「――大丈夫、お母さんには私から言っておくから――――うん、また後で。じゃあ、貴裕くんに戻すから――はい、貴裕くん」

「ん、証言ありがとね。もしもーし?」

『あ、貴裕? 聞こえてたと思うけど、なのはちゃんと晩御飯一緒にする事になったからね』

「はいはい、全然OKよー」

『じゃあ、寄り道しないで帰ってくるのよ。お父さんだってもう少しで帰ってくるんだから』

「了解。んじゃ、切るね」

 

 父より帰りが遅くなるのは流石に避けないとなぁ……急ぎ目で帰ろう。

 なのはちゃんが何で晩飯参加しようと思ったのかは、帰り道にでも聞きますか。

 

「待たせてスマンね。そろそろ帰ろうと思うんだけど……あと何か話さなきゃいけない事ってあった?」

「うーん……あ、僕が向こうに通信するのは何時にする? 『時間を置いてから』って事しか決めてなかったと思うんだけど」

「あ、それがあったか」

 

 まあ、そこまで厳密に考え込む内容でもないけど……

 あんまりにも早いと『本当にじっくり話し合った?』って突っ込まれるから、今から2・3時間経った辺り――21・22時が妥当かね?

 

 

「あの、その向こうとの通信なんだけど……貴裕くんの家で晩御飯食べ終わる位の時――20時位じゃ駄目かな?」

「え? なのはちゃんが家に帰ってから位の方が良くない?」

「まあ、駄目って言いきる程では無いと思うけど……ちょっと早くない?」

 

 男子組が想定していた時間よりも、大分早い時間を提案してきたけど……何か理由が有るのかしら?

 

「うん、ちょっと早いのは分かるんだけど……でも、学校休んだり家を開けなきゃいけないのかは、出来るだけ早く知りたいし」

「あー、確かにね」

 

 それによっては説得の内容も変わるものね。

 ありえないけど、仮に今まで通りの生活サイクルで良いなら説得そのものがいらなくなるんだし……

 

「それで、やっぱり親への説得が必要だってなったら、貴裕くんにお願いしたい事もあるから……あんまり遅くなるのも迷惑だろうし……」

「あら、そうなの? どう話せばいいかとかの相談?」

 

 いや、でも相談の方は念話とか携帯電話で話せば良くない?

 俺の家でやる必要はないんじゃ――

 

 

 

 

 

 

 

 

「相談にも乗って欲しいけど……それよりも、貴裕くんがおじさんおばさんを説得する時に同席させて欲しいんだ」

「ゴメン、意味が分からないというか何でじゃ!?」

 

 いや、確かにそれは俺の家にいないと出来ない事だろうけどさ!?

 え、何? 本気で『大好きな美智子おばさんにも決意表明しなきゃ!』的なアレなの?

 

「え、えっと、もし説得するってなったら、正直な気持ちをぶつけるのが大事ってのは分かるんだけど、具体的にどう話せばいいか分からなくって……貴裕くんのを参考にしようかなと…………あと、おじさんおばさんと貴裕君のやり取りを見ておけば、私がお母さんに何か言われた時に生かせるんじゃないかな―って……」

「ああ、貴裕は『なんとなくの形は思いつくし、多少突っ込まれてもどうにか出来る』って言ってたもんね」

「あ、そっちか……いや、どっちにしろ遠慮して貰いたいんですけど」

 

 まあ、フェイトちゃんとの対話の機会&ジュエルシード回収がアースラ側に許可されても、親を説得できなければ参加出来なくなるかもだし、不安な気持ちになるのは分からんでもないけど……

 

 

 原作だと一人で考えたモノを話していたでしょうに何で…………あ、原作のなのはちゃんは少なからず『良い子』状態が残っていたから、一人で話を考えることが出来たとか?

 

 

 原作のなのはちゃんは、誰かに迷惑を掛けない、頼らない、弱音なんて吐かない『良い子』であろうっていう考えがまだ割と残っていたから――ある意味、自分を追い込んでいたから(・・・・・・・・・・・・)こそ、誰かに頼らず自分一人で考える能力が高くなっていて、話を考え付いたとか……ありえそうで怖いな……

 

「どうしても駄目かな?」

「いや、どうしてもって程ではないけど……」

「どうしてもじゃないならお願い!」

「ヤダこの子、はっきり『NO』と言わない日本人性質を利用して……!」

 

 それ(原作)に対して、うちのなのはちゃんは確実に『良い子』じゃなくなって来てるからなぁ……

 

 積極性や、何かを全力でやり遂げようとする気持ちだったり、正義感は変わらず持ってる。

 でも、一人で物事をやりとげる・考える・人に頼らない・弱音は吐かないっていう『良い子』の面は、残ってはいるものの大分改善(・・)されちゃってますよね? 

 

 母さんへの甘えっぷり、酔っ払ったオッサン(父親)の回収拒否、昨日の『お悩み相談は自分から事件』などなど――

 誰かに迷惑掛けるのを良しとしない、色々溜め込み我慢する『良い子』なら絶対やらんだろ。

 いや、『人として当り前な有り様』に近づいてるってだけで、決して悪い事じゃないんだけど……

 

 自分一人で考え付く能力が劣ったのを嘆くべきか、『良い子』じゃなくなったのを喜ぶべきか――

 

 

 

 

 

 

 

「いや、相談にならいくらでも乗るからさ。自分で頑張りなさいって、ね?」

「相談に乗ってくれるのは嬉しいけど……でも、それだけじゃ上手くいくか不安なんだもん! 私が貴裕くんの説得の時にいるのが駄目なら、貴裕くんが私の家に来てお母さんを説得する時にフォロー(口添え)してよぉ!」

「そっちの方がもっと嫌だわ!?」

 

 ――いや、こんなとんでもないお願いをしてくるなら素直に喜べないッ!!

 

 なのはちゃんが帰るタイミングによっては、桃子さんどころか高町家全員相手にお話しする可能性だってあるんだよ? 誰がそんな圧迫面接モドキ受けたいと思いますか!!

 

 というか仮に俺が行った所でどうしろと……詰まった時に続きを促すか、今までの事情説明を一緒にするぐらいしか出来んぞ?

 それともあれか? オリ主らしく『なのはちゃんは俺が必ず守るから安心して下さい』とか言えばいいの?

 高町家と仲は良いけど、全面的に信頼されてる程でもないのよ? そんな11歳児が言っても何の説得力もないわ!

 

「うぅ……流石に私の家まで来てもらって説得の手伝いをしてもらう、っていうのは迷惑かけ過ぎだと思うけど……貴裕くんの説得に同席させてもらう方はどうにかならない……?」

「あー……貴裕、お願い聞いてあげたら? なのはの説得が上手くいかないのは困る訳だし……」

「そりゃそうだけど……こう、一身上の都合がありまして……」

「何その言い訳の常套句!?」

 

 いや、君らが同席すると、説得の時に『魔法バレ&嘘・誤魔化し』が使えなくなるんだもの。考えてた話が殆ど白紙になっちゃう……

 魔法バレは言わずもがなOUTでしょ? 嘘・誤魔化しもなのはちゃん辺りが反応して、嘘だとバレる可能性大だし。

 

 

『詳しくは話せないけど、危険なんて微塵もない(・・・・・)から心配ないよ! ただ作業が多いし、時間が経つほど複雑になるから人海戦術で一気にやろうって方針なだけだから。大丈夫! 俺は凄い(・・)魔法使いだから!』

 

 ――ってな感じの話を難しくして膨らませて、なんちゃって決意表明とかして説得するつもりだったのに……

 この子らがいたら、『えっ、何それ初耳だよ!?』とか突っ込んで来て台無しになりかねん。

 

 

 かと言って、高町家からの強烈なプレッシャー受けるかもしれない上、ダメっ子化してるなのはちゃんのフォローするのも嫌だし……

 

 どっちも断らせて欲しいんだけど――

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴裕くんお願い! この通りだから!」

「貴裕……」

「頭下げた上に拝まないで!? 分かったから!! 俺の説得に同席する方ならOKだから!」

 

 ここまでされて断ったら、二人からの信頼度ダダ下がりになりそうなんだもの!! 

 事情を知るはずのないユーノ君からの、『意地悪しないで、さっさとお願い聞いてあげなよ……』って言いたげな呆れの混じった視線が痛い!!

 

 いや、それがなくとも、万が一にもなのはちゃんが参加できなくなるなんて事態になったら困るのはこっちもなんだし、それを解決する為のお願いなら寧ろ進んで聞かなきゃいけないのは分かるけどさ……

 

 

 

 片や、今まで考えて来たものを白紙に戻して、新しく話(制限付き)を考えなきゃいけない。

 片や、運によっては説得する人数も増える――プレッシャーが酷い事になるかもしれないという状況下にある、他所の家の人の説得に頭を突っ込まなきゃいけない。

 

 とてつもなく面倒な方か――

 面倒は多くないかもしれないけど、かなり精神的に来る可能性のある方か――

 

 

 結局は精神的に来ない方を選んだけど、どっちをとっても碌な事にならない選択肢しかないって……どうしてこうなったし……

 




 なのはちゃんが今回のお願いをした(出来た)のは、『良い子』状態が大分改善されてるからですが、貴裕が気の置けない相手っていうのも理由の一つ。

 ――美智子おばさんの身内・付き合いが長い・年が近い上、原作にスムーズに関わる為の下心&純粋になのはちゃんと仲良くなりたかった為に、幼少期のなのはちゃんのお願いを出来る限り聞き入れたり(・・・・・・・・・・・・・・・)、全力で遊んで喜ばせようとした結果、気の置けない相手になったという設定です。


 また、原作よりヘタレってる今作のなのはちゃん的にベストなお願いは、田中家高町家合同(・・)説明回。
 ただ、流石に迷惑掛かる程度が大きすぎるかなって言うのと、お母さんには自分の口で説明したい(フォローは別腹)という考えから、作中のお願いの形になったという設定です。


 ◇

>アンチ小説である様な穴だらけトンデモ理論――アンチしたいがために作られた陰謀論じゃないかね?

 今でこそこんな風に叩いていますが、アンチ全盛期の当時は作者も『なんて的を得た考えなんだ! これを考えたやつスゲェ!』なんて思っておりました。
 
 明確な描写もないのに、独自解釈・拡大解釈でアンチってのはいけないよね。穴も結構ある理論だし。
 自分がアニメ無印・劇場版・コミック・小説を見た限りでは、リンディが『利用する為に騙してやんぜグヘヘ』って企んでる・それを示唆するような明確な描写は無かったと思います。


 ◇

 >ぶっちゃけると、大変だし、危険だし、止めるのが正解なんだけどネー?

 但し、なのはを止めれば、時の庭園の駆動炉止める人がいないので次元断層防げない可能性が大に。
 ジュエルシードの分配数も変わるかもしれないし、どうなるか予測がつかない状態に。

 オリ主がなのはレベルの力でもない限り、『この世界はアニメじゃない、現実なんだ。何が起こるか分からない……俺はなのはちゃんを危険な事に巻き込みたくない! だから、例え嫌われてでも今回は引いてもらう!』って言って、なのはを引かせれば『サヨウナラ、地球END』フラグが立つやも……いや、原作知識を持ってればこんな事はしないと思うけどさ。

 その場合はクロノやリンディが限界突破して頑張ってくれるのかしら……


 ◇

 なのはと美智子おばさん(貴裕の母)の電話での会話内容

『あら、なのはちゃん! 今晩は。なのはちゃんが出たって事は、貴裕の話は本当なのね』
「うん、本当に公園でお喋りしてたよ」
『そうなの……いやね、あの子最近帰りが遅いから、何か変な事してないか巻き込まれてないか心配で……問いただしても『夜のお散歩』とか、明らかに嘘っぽい事しか言わないし……』
「あー……最近帰りが遅いのはその、貴裕くんにも理由があるんじゃないかなーって。別に悪い事をしているわけでは――」
『ん? なのはちゃんは貴裕が何してるか知ってるの?』
「え!? あ、その、知っていると言いますか、一緒にいたと言いますか……」
『――もしかして、無理矢理付き合わされてる? おばさんの方で説教して止めさせようか?』
「いやいや、無理矢理付きあわされたりはしてないよ!? 大丈夫だから!」

『ならいいけど……ん? 無理矢理付きあわされてるんじゃないなら、なのはちゃん自分から夜遅くまで外に出てるって事? 駄目でしょ、子供がそんなことしてたら』
「あ、あはは……はい、気をつけます……」
『約束よ? あ、ところでなのはちゃん。今日の家の晩御飯、なのはちゃんの好きなおかずだけど食べに――って、この時間だと桃子さんも用意してるから止めた方が良いわね』
「うん、もう遅いし晩御飯は遠慮します。今日はお母さんに大事なお話もしないといけな……あ! おばさんごめんなさい! やっぱり晩御飯ご馳走になっても良い?」

『え? 大歓迎だけど……桃子さんの方はどうするの?』
「大丈夫、お母さんには私から言っておくから」
『そう? それならいいけど……じゃあ、寄り道しないで来るのよ?』
「うん、また後で。じゃあ、貴裕くんに戻すから――」

 ――といった感じの会話内容でした。

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