高二病抜け切らなかった人が中途半端な力で   作:mahiro

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戦闘描写って何ですか?
いや、どのみちコメディ色にしたり、ネタ混ぜたりするんで誤魔化せるんですが……私には書けません……



第12話 「オリ主の存在によって変わるのは展開だけでなく……」

 連休の夜。

 海鳴市の山奥にある温泉旅館の一室にて、皆は思い思いに時を過ごしていた――

 

 

「あら、ファリンちゃん。女の子達はもう寝ちゃった?」

「ええ、もうぐっすり。じゃあ、私はお嬢様達と飲んでまーす」

「お疲れ様――って、美智子さん?」

「どんな寝顔をしてるのか見るだけ……はー、ホント可愛い。私女の子も欲しかったのよねー……」

「二人目を作る予定はないんですか?」

「もう40近いし、ちょっと……桃子さんの方は?」

「子供は3人もいますし。でも、あの人が望むなら……」

「あらあら、いいわねー」

 

 ある一角では奥さん方が談話をし――

 

 

「はーい、追加のお酒持ってきましたー」

「ありがとうファリン。さ、恭也もどんどん飲みなさい!」

「保護者公認とは言え俺達はまだ未成年なんだ。程々にした方が「恭也様グラスを。お注ぎいたします」――ノエルまで……」

「まあまあ恭ちゃん。たまにはいいじゃないこういうのも?」

「全く……」

 

 ある一角ではハーレムが作られ――

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐごー……かー……」

「いやな、俺も分かってはいるんだ。俺が倒れている間に家族を安心させたのは美智子さんだってことは……でもな、なのはの懐きようがな、下手すればれば実の親である俺よりもって……」

「はいはい、大丈夫ですよ。なのはちゃん士郎さんの事大好きですって」

「そうかな、本当にそうかな貴裕君?」

「ええ、自信持って下さい。士郎さんはカッコ良いお父さんデスヨー?」

「そうかぁ……そうなのかなぁ……」

 

 ある一角では少年が酔っ払ったパパ達に絡まれていた――

 

 

 

 

 

 

第12話 「オリ主の存在によって変わるのは展開だけでなく……」

 

 

 

 

 

 あの後、念話でなのはちゃんに何があったか説明したり、旅館内を探索してダラダラ過ごしたり、割と美味しい夕食を食べたり、もう一度温泉に入ったりして、すっかりと暗くなった夜――

 

 

 私は酔っ払った中年に絡まれております……

 

「かー……んごっ、んー……」

「それでな、なのはがな、事あるごとに『美智子おばさんがね?』って俺に――貴裕君聞いてる?」

「はいはい、それはもう3回も聞きましたヨー?」

 

 小学生女子はご就寝。

 恭也さんの所には若い娘が集まりハーレム状態。

 桃子さんは母と軽く飲みながらニコニコと談話中。

 俺の所には絡んで来るイケメンだった何か(酒臭い中年)と、俺の膝を枕にして寝てる実の父親(酒臭い中年)が……誰か助けて……

 

 父にはいつもの労いをこめて。

 士郎さんは心労の原因がアレだから付き合ってたけど、ずっとこれはキツイぞチクショウめ……

 

 

 何でこんな状況になったんだっけか……

 

 二時間位前は、夫婦ズはゆっくりなペースで飲みながら談話していて、俺含む小学生ズはその近くで菓子摘まみながら話していて……そうだ、酒の話題になった時に「そういや父さんって普段酒飲まないんだよな」って俺が言ったら、なのはちゃんが「お酒弱いんですかー?」って父に聞いたんだっけ?

 

 そしたら少し酒が入ってて気分が高揚してたせいか、「そんなことないよー? よーし、おじさんお酒強い所みせちゃうぞー!」って張り切って飲み始めたんで、子供達&奥さんズで「すごーい!」「かっこいいー!」とか言って盛り上げたんだ。

 ソレを見て士郎さんが――同じく少し酒が入っていたせいか変に対抗心でも燃やしたのか、「なのは! お父さんだって強いんだぞー!」って言って飲むペース上げ始めて、そこでもまた盛り上げた結果、オッサン同時の飲み比べに発展したんだっけか……

 

 

 ある程度時間が経つと女性陣は飽きたのか各自離れようとしてたんで、俺も一緒に逃げようかと思った時に父に補縛・士郎さんに絡まれて今に至ると……

 

 

 ――あれ? もしかして俺の一言が発端?

 

 

 

<貴裕くん、ユーノ君、起きてる?>

<うん、大丈夫>

 

 お、なのはちゃんから念話――

 ちょっとお宅のお父さんどうにかして下さいよ。

 

<起きてるよ。現在進行形で士郎さんが『なのはが俺に対してそっけない』って愚痴りながら絡んできてるし……もっと士郎さんの相手してやれよ……>

<ふえっ、まだ飲んでるの!? あと、そんな蔑ろにしてはないと思うんだけど……>

<あー……ワザとじゃないとは思うけど、なのはが家で一番会話してないのってお父さんだよね?>

<え? 私お父さんともちゃんとお話してるよ? ご飯の時とか>

<ん? ご飯の時以外には?>

<えっと…………あれ?>

<うわぁ……それに加えて、母さんと会った日はその話onlyだとすると……>

<なのは……>

<え!? ちょっと待って、そんなはずは……あれ?>

 

 そりゃあアナタ、パパさん涙目になってもしょうがないですよ……

 仕方ない、もう少しだけ相手は続けますか……

 

<まあ士郎さんの話は置いといて、なのはちゃんは何の話だったの?>

<え、置いといちゃっていいのかな…………えと、貴裕くんやユーノ君が会ったっていう女の人のことなんだけど>

<ああ、昼間の……貴裕は乱暴されてたど、大丈夫だった?>

 

 全然大丈夫じゃなかったヨ? 肩ガ砕カレルカト思ウグライ痛カッタヨ?

 ってか、使い魔ヤバい、狼の素体ヤバい、身体能力ヤバい、勝てる気がしない……

 

今は(・・)大丈夫。アレは多分、この間の子の関係者でしょ>

<また、この間みたいな事になっちゃうのかな……>

<多分…………暴走体だけじゃなく、敵対する魔導師まで出て来たんだ。二人はジュエルシード集めを『手伝いじゃなくて、自分の意志でする』って言ってくれたけど、やっぱり僕が一人で<ストップ! そこから先言ったら怒るからね?>――でも……>

<自分でよく考えて決め事だもの、最後までやり通すよ。貴裕くんは?>

<もちろん続ける。途中退場ナンテ絶対認メナイ……>

<な、何だろ寒気が……とにかく私達は止めないよ! だから、『一人でやる』なんて言わないで>

<二人とも…………うん、分かった……>

 

 やべ、念話越しにでも感じられるほど何か漏れたか……

 

 にしても、なのはちゃんは相変わらず責任感が強いと言うか、意志が固いと言うか――

 

 

 

 

 

「うえっ、なのはぁ……」

「ずー……すー……」

 

 ――今の士郎さん見てると、その娘さんとは思えないほど良い子やね。

 

「っと、士郎さん浴衣肌蹴てますよ? ちゃんと整えないと――おお、胸板厚いな。エロいエロい」

「ん、桃子も夜はいっぱい喜んでくれる」

「おっとあぶないぞ士郎さん!? 夫婦の夜の営みとか話しちゃ駄目よ!?」

「桃子……ぐへへへ……」

 

 もうヤダこの酔っ払い……やっぱり相手するのは適当に切り上げて俺も寝てしまおう。

 

 父はもう起こしてしまえ。その後は自分で布団に直行してくれるでしょ。

 士郎さんの方は――

 

 

<少し眠っておこう? あの子達がいるってことは、何かあるのかも知れないし>

<あ、なのはちゃん、寝る前に酔っ払ってる士朗さんをどうにかしてくれない?>

<え!?>

 

 ――良い子で責任感のあるなのはちゃんに任せればイイヨネ?

 

 ほら、士郎さんはなのはちゃんとお話出来たら喜ぶだろうし、そのなのはちゃんの言う事なら素直に聞くだろうし、一石二鳥じゃない?

 

 

 さて、俺は父さんを起こして――

 

 

 

 

 

 

 

 

<あ……えっと…………お休みっ!>

<あれ、なのはちゃん? おーい、なのはちゃーん!?>

<あ、アイアムスリーピング!>

<Don't lie!>

<ふ、二人とも……>

 

 ――逃げやがったよこの悪い子め! 人に仕事なすりつけるとか最低な人間のやることだよ!!

 

 全く誰に似たんだか…………いいや、士郎さんは桃子さんに丸投げするか……

 

 

 

 

 ――――ん?

 

 

 ◇

 

 皆が寝静まった真夜中、ジュエルシードの発動した感覚によって目が覚めた。

 いつのまにか俺のことを抱き枕にしていた隣の布団で寝てたはずの父のロックから抜けだし、手早く着替た後は酒の匂いを漂わせて寝ている中年を軽く踏み越えて――「グエッ」とか聞こえたのは気にしない――部屋の外に出た。

 それからなのはちゃん達と合流し、途中でデバイスを起動させつつ山中へと走ること数分。

 

 木々の開けた場所に出ると、大きな橋の上にフェイト組が立っているのを見つけた――

 

「あ、この前の子……隣にいるのって貴裕くんとユーノ君が会ったていう女の人?」

「うん、そうだよ。あ、あの子ジュエルシードを……!」

 

 ちょうど封印を終えたところなのか、フェイトちゃんがジュエルシードを持って「二つ目……」とか呟いてる。

 

 

 この後は戦闘になるんだろうけど、やっぱり俺も強制参加かね……

 アルフさんに『オマエ、次会ッタラマルカジリ』宣言されてるからスルーは無理なんだろうけど――

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん? あーらあらあらー……なーんでアンタ達がここにいるのかナー? 子供は良い子でって……言ったよネ?」

『ひゃいっ!?』

「ジ、ジュエルシードをどうする気だ! それは危険な物なんだ!」

 

 ――まだアルフさんの機嫌が明らか悪いから、ホントにご遠慮したい!!

 

 なのはちゃんとシンクロして悲鳴上げちゃう位怖いんだけどこの人……

 ユーノ君はアレに話しかけられるとか度胸ある――――訳でもないのか、足プルプル震えてる……

 

「さあね? 答える義理はないよ。それよりさぁ、私が親切に忠告したのに来たってことは、噛み千切られてもいいってことだよね!!」

 

 メキメキというヤバ気な音を鳴らしながら――変身魔法って『光に覆われていつのまにか』ってヤツだけじゃないのかい――オレンジの毛並みをした獣の姿に変わっていくアルフさん。

 

 

『オオオオオォォォン!』

 

 

 遠吠えとかメッチャ様になって迫力あるんですが……

 前の犬の暴走体なんぞよりよっぽど迫力があるってどういうこっちゃ……

 

 

「やっぱり、アイツあの子の使い魔だ!」

「使い魔?」

「そうさ、私はこの子に作ってもらった魔法生命体。私はこの子を命と力の全て賭けて守り、この子の敵をブッ潰す!」

 

 何か原作にはない攻撃的なセリフが追加された上、視線の先には俺が居るんですが……

 純粋な目も、感情のこもって無い目も苦手だけど、その獲物を見る目は凄い危険性を感じるんですが!?

 

「フェイトは先に帰ってて。すぐ終わらせるから」

「無茶しないでね……というよりどうしたの? 何か今日機嫌悪いよ?」

 

 あ、フェイトちゃんにもツッコまれてる……いや、でもホントにどうして?

 いくら人違いが多かったからって、そこまで怒る理由が分からないんですが、何か俺やった――

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこのガキ――っていうより、男共全員が気に入らないんだよ」

 

 ――ワオ、性別男ってだけでアウト!? 流石にそれはどうしようもないんですが!?

 

 

 ナンパに合ったり、谷間ガン見られたにしたって余りにも――――あ、もしかして本来(原作)なら速攻でなのはちゃん見つけることが出来て、そういう視線に合わないで済んでたのか……?

 

 なのに、俺の捜索に時間かかったもんだから、タップリネップリとそういった視線を浴びる羽目になったとか……?

 

 

 あれ? そもそもアルフ・フェイトって、ほぼずっと時の庭園にいたんじゃなかったっけ?

 男性と接っした経験ってあるの? そんな設定は見聞きしたこと無い様な……まさかエロい(不快な)視線初体験?

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――あれ? この仮説当たってたら、不機嫌度MAXになるには十分な理由じゃね!?

 

 

「そういう訳だから、さっさと潰れな!」

 

 

 ――や、ほら男としては魅力的な女性が居たらそりゃ反応しちゃうのも仕方ない訳ですし無防備に谷間を見せつけるあなたも悪い気がしないでもないので空高く跳び上がってちょっと飛びすぎじゃねどんだけ威力つけて襲い掛かってくるとか本当に勘弁していただきたいワケで絶対俺だけのせいじゃないって言うか――

 

 

 

 

「ガアアアアッ!」

 

 ――あ、弁解の余地なしですか!? 下半身直結思考型の多い男は死ねと!?

 

「男ですいませんでした!! シンシアハート、全力防御!!」

《All right. Protection》

「ちぃ……っふ!」

「ぬぅ!? なんでプロテクションの上で粘れるし!? さっさと離れて!!」

「ハッ、お断りだよッ!!」

 

 『プロテクション』って、防御だけじゃなくて弾き飛ばす性質も持ってなかったけか!?

 魔力思いっきり籠めたからそうそう破れはしないはずだけど、表面になんか雷みたいなのが走ってるけど大丈夫なのコレ!? 

 

「なのは! 僕は貴裕のサポートに着くからあの子をお願い!」

「あ、うん、分かった!」

「させるとでも……思ってんの!!」

「させてみせるさ!!」

 

 ヤダ、なんか表面の雷が心なしか激しくなってるんだけど、これ押されてんの!?

 ユーノ君転移はよ――――と思ったら、もう薄緑色の魔法陣が! もう何この子、有能過ぎて惚れそう!

 

「移動魔法……マズい!!」

「ふっ!」

 

 うおっ、光り眩し――――そういえば転移するってどんな感じなんだろ?

 

 

 ◇

 

 光が収まり辺りを見回すと、さっきいた橋の上ではなく、川がすぐ傍にある木々で囲まれた平地に立っていた。

 転移は無事成功したっぽい――――うぇっ……

 

「よし、成功! 貴裕は――顔色悪いけど大丈夫?」

「何か体が少しフワッとするけど大丈夫……サポート本当にありがとね?」

「ううん、気にしないで」

 

 そこまで酷く気持ち悪くはないけど、何か古いエレベーターで昇る時に感じる感覚を味わいました……

 まあ、あのまま押し切られてガブっと喰われるよりは全然マシだけど……

 

 

「場所変わってるけど、ユーノが魔法で移動させたんだよね? ここってどこぞ?」

「うん。時間がなかったし人数も多かったから(・・・・・・・・・)、さっきいた所からそこまで遠くには「ユーノ君は使い魔じゃないよ! 人間の友達! 人間だったの! フェレットじゃ無かったんだよ!!」――移動してなくて…………向こうは何を話してるんだろう……」

「思ったより近かった……あ、川向こうにギリギリなのはちゃん見えるし」

 

 『人数も多かったから』って、それ明らか俺のせいだよね? 元の場所から100mすら離れてない?

 

 そしてなのはちゃん、心の叫びがここまで届いてますヨー?

 ユーノ君が人間だった事にどんだけショック受けてるの……

 

「ってか、ここまで近いと流れ砲撃来そうで怖いな……」

「まさか。近いと言ってもあそこからここまでは流石に届かない――あれ? なのはの砲撃なら届いちゃう?」

 

 今でも100mは余裕で射程距離だと思うんだ。

 木とか障害物消し飛ばしながら目標撃破するんじゃないかね?

 

 

 

「へえ、あの子は砲撃魔法撃てるのかい」

「や、『撃てる』ってより、『得意』って言う方が合ってるんじゃ――――ん?」

 

 今何か隣にいるユーノ君からじゃなくて、少し離れた後側からした声と会話した様な――

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん、ま、フェイトなら大丈夫か。それに距離が近いってのは私にとっちゃ好都合だ。アンタ達を倒したらすぐそっちに向かう事が出来るし」

「いや、出来ればお話し合いで済ませたいなー? なんて……」

 

 ――いつのまにかフェレット君ではなく狼さんと会話をしておりました……

 うん、場所を移しただけで別にアルフさんがいなくなった訳ではないんですものネ……

 

 

 まあ、昼間よりは落ち着いているみたいだし、オーバーキルされるってことは無いだろうけど――

 

「使い魔を造れる程の魔導師がなんでこの世界に……ジュエルシードについて何を知っている!」

「素直に答えると思うのかい?」

「あー……話し合いで終わらせる気は無いんでしょか?」

「ジュエルシードをこっちに渡せば考えなくもないけど? でなけりゃここで潰れな」

「デスヨネー……」

 

 やっぱり対応が気持ちそっけない……え、本格的に男嫌いになってません? 

 これからアルフさんとの戦闘は2、3回あるだろうけど、全部強制ハードモード?

 

 

<貴裕、とりあえずなのはが居る方から離れるように動こう。向こうは話し合いで済ます気はないみたいだし、魔法でアイツの動きを止められればいいけど……まずは走って距離を取ろう>

<うん、近距離戦とか無理だから賛成>

 

 近距離戦ってか、戦闘そのものを出来れば避けたいんだけどネ?

 

 

 こっちはアームドデバイスなんて持ってないし、武術もやってない、射撃魔法も近接用の魔法も使えはしてもしょっぱいレベル――ってか攻撃する事自体が精神的にキツイ。

 バインドだって、近距離で動きまわる相手に瞬時に掛ける自信はない。

 

 対して、向こうは近距離戦だーい好き! 当然動きも早いよネ?

 獣形態なら、巨体・獣の牙・爪という天然の武器持ち。人間形態なら、格闘術でフルボッコ。

 

 

 

 

 ――うん、距離とって走り回らない限り、防御魔法耐久レースになるぞコレ……

 

 

<怪我しない事を最優先にね。じゃあ行くよ…………今ッ!>

<了解!>

「あ!? 逃げんじゃないよ! 待て!!」

 

 とにかく今はユーノ君の言う通り走って距離を取る!

 向こうの戦闘が終わって、フェイトちゃんがジュエルシードを手に入れればこっちの戦闘も終了だろうし、短時間なら逃げつつバインドも使えばどうにか粘れる……と、思いたい……

 

 

「バインド掛ける隙があれば良いんだけ《Warning! An enemy comes close rapidly from the rear!(敵、後方より急速接近!)》――え?」

 

 いや、走り始める前の時点で10mは離れていたんだから、そんなに早く追いつかれる訳が――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グルアアアアッ!!」

 

 ――大口開けちゃってまあ……アルフさんの真っ白い歯が良く見えるナー?

 

 

「って、マルカジリ嫌ああっ!!?」

「チッ、外した……!」

 

 避けれたから良いものの、噛みつきタックルは危険が過ぎると思います!!

 シンシアさんが知らせてくれなかったら絶対喰らってたぞ!?

 

「貴裕、大丈夫!?」

「どうにか! ってか何でこんな早く追いつかれたし!?」

 

 数秒で追いつかれるってどゆこと!? そこそこ距離も開いてたし、向こうは出足遅れてたよな?

 これでも足に自信はある方なんですが――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――アンタ達、人間が()に足の速さで勝てると思ってんの?」

『あ……』

 

 ――どう考えても無理ですね、失念してました……そんな可愛そうなモノを見る様な目で見ないで!?

 さっきまでの敵意むき出しな目の方がまだマシ!

 

 え、でもどうしよう? 走るのがダメならどうやって距離を……あ、そうだ飛行魔法! 

 

<ユーノ、俺の肩に! 飛行魔法で距離とろう! それなら足の速さも関係ない!>

<え? 貴裕って飛行魔法使い慣れてたっけ(・・・・・・)? 多分向こうも飛行魔法使って追ってくるか、魔力弾撃って来ると思うけど……空中で対処する自信ある?>

<ゴメンナサイ、無理っす……え、どうしろと……>

 

 身体能力は向こうが上――

 魔法も上――

 戦闘技術も上――

 

 

 

 ――詰んでね?

 

「まあ、アンタ達が馬鹿だろうと何だろうと、こっちのやる事は変わら――――これは……」

 

 あら、アルフさんがこっちから気を逸らしたけど何が――――なのはちゃんの砲撃で空が桜色に染まってらっしゃる……

 砲撃魔法の撃ち合いの場面か? 夜なのにめっちゃ明るいんですけど……公式チートにも程があるよ?

 

 

 

 ――この後は確か、なのはちゃんピンチになってジュエルシードを渡さざるを得なくなって終了だっけ……

 

 あ、って事はもうそろ戦闘終わりですよね!? 

 噛みつかれなくて良いんですよね!? ボコられなくて良いんですよね!?

 

 

「なのは……凄い……」

「イエッス!! なのはちゃんマジ最高!!」

「確かにフェイトの砲撃を押し返したのは凄いけど……甘いね」

 

 あ、ゴメンナサイそっちじゃないです。これで戦闘終わりになるのが嬉しいんです。

 ってか思ったより早く決着付くのね? これならどうにか会話引きのばすだけで済んだんじゃ……

 

「ッ! なのはー!!」

「ん――って、あれ寸止め? 寸止めだよね? 刺さって無いよね!?」

 

 なのはちゃんの首元に魔力刃構えられてるという中々過激な光景が!?

 いや、原作通りなんだろうけど、遠目に見ると刺さってんのか刺さって無いのか判断できないから微妙に安心しきれないんですが……本当に大丈夫あれ?

 

 ――あ、レイハさんがジュエルシード出した。

 

 

「ふふっ、さっすが私のご主人様! んじゃねー、おチビちゃん達。また会ったら今度こそ噛み千切るから」

 

 アルフさんはフェイトちゃんの方に飛んで行ったか……去り際のセリフにも攻撃的なものが混じるって、どんだけ嫌われてんだ……

 軽い口調だったけど目は笑って無かったよアレ……

 

 

 ◇

 

 なのはちゃんの様子を見るために、ユーノ君を肩に載せて飛行魔法で飛ぶこと数十秒。

 フェイト組に帰られた直後なのか、ポツンと一人で立っているなのはちゃんを見つけ、傍に降り立った――

 

「あ、貴裕くん、ユーノ君……」

「なのは、怪我はしてない?」

「首元に魔力刃押しつけられてたけど、大丈夫?」

「あ、見てたんだ。大丈夫だけど……にゃはは、負けちゃった……」

 

 怪我は無いみたいだけど、どうも予想以上にションボリしているようである。

 無理して笑おうとしてるとことか痛々しいわ……

 

「二人は大丈夫だった? あの狼さんもすっごい怖かったけど……」

「あー、かなりヤバかったけど何とかなりました」

「え、勝ったの!?」

「いや、負けなかっただけ……うん、負けなかった。アレはセーフ。没収試合だからセーフ」

「なのはの方の戦いが終わったら、途中で帰って行ったんだ」

 

 あのまま続けられてたら危なかったんで、ホントに助か――あれ?

 

 なのはちゃん側の戦闘が終わればこっちも終了って楽観視してたけど、何でアルフさんは俺をジュエルシード出すレベルまで追い込まなかったんだろ?

 いくらフェイトちゃんに『帰ろう』って言われたとしても、それだけで素直に帰っちゃうもんか?

 俺が格下なのは分かったろうし、軽くボコればもう一個ゲット出来たろうに……

 

 

「そっか……貴裕くんの持ってるジュエルシードは守れたんだね……ゴメン、私の方は一つ盗られちゃった……」

 

 ――っと、今はなのはちゃんのフォローが先か。

 あらら、今度は俯いちゃいましたよこの子……

 

「や、アレは仕方ないって。俺があの子の相手したら30秒も持たない自信があるもの」

「自信持つ所じゃないよ!? まあ、僕もあの子と一対一は避けたいけど……とにかくなのは、ジュエルシード奪われた事でそんなに落ち込まないで。なのはに怪我が無いならそれでいいから」

 

 ユーノ君、ナイスフォロー。

 ロストロギアより、なのはちゃんの事を大事にしている所とかポイント高いです。

 内面までイケメンとか惚れますよ? 主に俺が。

 

 

「でも、やっぱ、り……」

 

 ただ、肝心のなのはちゃんは未だに俯いていると……

 責任感強すぎるのもなぁ……肩も震わせて耳も赤くなって途切れ途切れの涙声になっちゃってまあ……

 

 小さい頃に、母の前でカッコつけようとしたら失敗して泣いた時のなのはちゃんを思い出す――――ん?

 

 

 『肩も震わせて耳も赤くなって途切れ途切れの涙声』ってアナタ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けっちゃった、し、ジュエルシ、シードも、うぇっ、ユーノ君の大切なもの、だのに獲られっ、貴裕くん達は守れたのに、私、っは! 獲られちゃっ、うぇぇぇぇ……」

「なのは!?」「なのはちゃーん!?」

 

 ――ションボリどころか、泣いちゃってるじゃないですかこの子!?

 

 え、なのはちゃん泣くの見るとか何年ぶり!? ってか、ココ泣くところだっけ!?

 

「いやいや泣く程の事!? 何、ホントはどっか痛いの!?」

「だっ、て、私だけ、負けた、魔法得意なのにっ! 悔しぐって、ひっぐ、今日は余所見しなっがっだもん!!」

「何の話か分からんよ!? ってか余所見せんでも負けるものは負けるでしょ」

「貴裕、くん、が負けてないのに、私、だけ負ける、ズルイよぉ!」

「何がじゃ!?」

 

 泣いてるせいで上手く言葉が出ないだけなのか、興奮して良く考えないで言ってるのか、とりあえずダメっ子化してる事しか分からん!

 あと、泣くとは思ってなかったからどう対処すればいいか分からんよ!?

 

「うぇっ、うぇぇぇぇ……」

「ああもう、泣かないの……<ユーノ、これどうしたら良いと思う?>

<と、とりあえず慰めないといけないのは分かるけど……貴裕は付き合い長いんだし、どうにか出来ないの?>

<泣いた時の対処法なんぞ知らんがな……とりあえず頭撫でてあやす? あと話を聞く位?>

<そうだね……あ、そういえば貴裕が泣いた時はそれで収まったもんね?>

<――ソウデスネ、ハイ>

 

 何気なく人の黒歴史掘り返さないで下さい、俺も泣くぞ?

 

 ――まあ、とりあえずどうにかして泣きやませねば。早く終わるといいんだけど……

 

「よーしよしよし、泣きやみなさいな。なのはちゃんは悪くないし、頑張ってるのは分かってるから」

「そうだよ。ジュエルシードの事は大丈夫だから、もう泣きやんで?」

「ひぐっ、や、だって、うぅぅぅ……」

 

 あー、長く掛かりそうかなこれは…………まあ、色々溜め込み過ぎてどっかで崩れるよりはマシかね?

 

 それに、こうやって俺らの前で泣いてつっかえながらも事情話してくれるってことは、そこそこ信頼があるって事なのかね……面倒くささ半分、嬉しさ半分?

 

 

「うぅぅ……むぅ」

「ん? なのはちゃんどしたよ?」

 

 あら、俺の胸になのはちゃんの顔面がセットされたんですが――

 

 

 

 

 ――あ、もしかして甘えてるのかコレは!?

 

 え、何ソレ可愛いんですけど抱きしめて良いのコレ!? 

 右手で俺の襟をギュッと強く掴んでるのとか破壊力高いんですが全力で撫でまわしていいのコレ!?

 目の前につむじが見えるんですが髪の匂い嗅いで良いのコレ!?

 

 

 まさかの『お兄ちゃんポジション』復活ですか!? こんなの本当に信頼されてないと出来ないこと――

 

 

 

 

 

 

「―――うー、うー、うー……」

 

――――ボスッ、ボスッ、ボスッ――――

 

「うー、う゛うぅぅぅぅぅぅっ!!」

 

――――ボスボスボスボスボスボス――――

 

 

 

 

 

 

 

「なのはちゃん、なんであなたはさっきから俺にボディーブローを連発しているのでしょうか?」

「む゛ううううぅぅぅぅぅっ!!」

 

 ――だから、今ボディーブロー喰らわされてる俺は大して信頼されてはいなかったようです……

 

 俺の襟をギュッと強く掴んきたのは、的を固定するためだったんですネー?

 顔を胸にセットしたのは、涙と鼻水を拭うためかナー?

 

「ちょ、なのは!? 何で貴裕に攻撃――貴裕も殴られっぱなしになってないで抵抗しなよ!」

「いや、バリアジャケット着てるから痛くないし……もうなんかどうでもいいかなって……」

「えええ……」

「む゛あぁぁぁぁぁっ!」

 

――――ボスボスボスボスボスボス――――

 

 だってさー、ちょっと期待しちゃったんですよこっちは。『お兄ちゃんポジションキタコレ!』とか思っちゃったんですよ?

 それをこんな上げて落とすような真似されてさー?

 

 

 コレはアレかな? 好きな人・信頼してる人に甘えて慰めてもらう的な甘酸っぱいシーンでは無く、近場にあったもの(枕とか寝具とかぬいぐるみとか壁とか)に当たってストレスを解消してるのかな?

 

 

 

 

 

 

 ――まさかの無機物扱い? お兄ちゃんポジションどころか、人間扱いされてないってどゆこと?

 

 

「なのはやめなって! ああもう貴裕からも止める様に言って!!」

「うぇーい…………ハイ、なのはちゃんー? ボディブローストーップ」

「やー!」

「やーじゃないの。ちゃっちゃと帰りますヨー?」

「やああああっ!!」

「何だこのダメっ子……」

「やあだああああああっ!!」

 

――――ボスボスボスボスボスボス――――

 

 

 

 

 

 

 

 ――夜の山中にサンドバックを殴る様な音が響き続けること5分。

 

 腕が疲れたのか泣き疲れたのかボディへのラッシュが終わったので、うーうー言いながら鼻をすすっている子の手を引いて旅館に戻り、顔洗わせた後は無理矢理布団につっこんで寝かせることに。

 

 

 翌朝、人の多い食堂でなのはちゃんが土下座せんばかりの勢いで謝罪するのを見て、周りの人から注目されたり、母とアリサちゃんに『何をやらかしたの』と聞かれたり……

 

 

 

 

 

 

 原作通りのキャラなら絶対こんなことはなかったと思うんだけどなー…………本当にどうしてこうなったし……

 




士郎さん→性質の悪い酔っ払いに
アルフ→軽い男嫌いに
なのはちゃん→たまに軽くダメっ子(年相応)になり、普通に泣く

 ――イレギャラーが居れば展開だけでなく性格だって変わる。


 長いこと(特に人格形成に大いに影響を与える幼少期から)一緒に過ごしていれば、根幹が変わらないってならまだしも、全く違いが出ないって事はないと思うんですよ。

 まあ、その割には「お前のだって不自然なまでに原作通りの所多過ぎんだろ、何言ってだカス」って言われてもしょうがない位、自分の作品もご都合主義が多いんですけど……



平凡(え?)なオリ主「喰らえ、○○○○!」
アルフ「ぐぅ!? コイツ……私と互角……いや、それ以上!?」
平凡(え?)なオリ主「二人の戦いの邪魔はさせないぜ(キリッ」

ここのオリ主「喰らえ、○○○○!」
アルフ「遅い! 弱い! この雑魚が!」
ここのオリ主「(゚д゚)」

 向こうは戦闘経験(というか練習期間?)少なくとも1年以上。そこそこ才能だってある。身体能力高い。
 こっちもそこそこの才能はあるが、魔法始めてから一カ月ちょい。身体能力人間の子供。

 ――結果なんて分かり切ってますよネー?


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