高二病抜け切らなかった人が中途半端な力で   作:mahiro

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 今回はユーノ視点から書いたものが冒頭にあります。

 ◇

 ※独自解釈・設定

・変身魔法は超便利
・アニメ5話にて、アルフがなのはを特定できたのは、バルディッシュの映像記録を見たorフェイトから外見を聞いたから



第11話 「美少年とモブ……その差って大きいよ?」

 

 僕には、ユーノスクライアには、この世界に友人と呼べる存在が2人いる。

 

 

 

「むー……今日もジュエルシード見つからなかったねー……」

 

 一人は『高町なのは』という同い年の女の子だ。

 

 とても優しい子で、悲しい出来事や困っている人がいれば放っておけないらしい。

 なんでも美智子おばさんの受け売りとかなんとか。

 その美智子おばさんの事になると、テンションが上がりすぎて暴走気味になる事もあったけど……とにかく、とても純粋な女の子だと思う。うん。

 

 魔法の才能に関しては――天才、としか言い様がない。

 魔法文明のない世界にいながら、莫大な魔力を持つだけでなく、魔法を扱う才能も高い。

 具体的に言うなら、起動パスワードの省略、暴走体の攻撃をノーダメージで防ぐ、魔法に触れて2週間も経たない内に飛行魔法・長距離魔法を使いこなす、といったものなどなど……

 レイジングハートとの相性もいいみたいだし、このまま行けば――いや、もう既に僕なんかよりもずっと凄い魔導師になっている思う。

 

 

「発動する前に見つけたいんだけどなー……まあ、あのサイズの宝石見つけるとか無理ですよネー」

「もー、そんなこと言わないの。やる前からあきらめちゃ駄目だよ?」

「うぃ。あ、二人ともクッキーあるけど食う?」

「あ、私の好きなヤツだ! 食べる食べる!」

「僕にもくれる?」

「はいはーい」

 

 ん、このクッキー美味しい……あ、もう一人は今クッキーをくれた『田中貴裕』という2歳上の男の子だ。

 

 貴裕の魔法の才能は――なのは程ではないけど、充分持っていると思う。

 そこそこ魔力量もあるし、覚えも早い。特にバインドが得意――でいいんだろうか?

 まだ慣れていなかったからか犬の暴走体の首を縛って宙づりにしたり、人体模型を――――とりあえず一人でジュエルシードの暴走体も止めた事もあった。ウン、ソレダケ。

 シンシアハートとの相性も良く、このまま行けば僕よりも魔法の扱いは上に……いや、同じぐらいまでかな?

 

 人柄は……どう表現しよう?

 何て言うか……部族にいた『年の離れたダメなお兄さん』を思い出させるような……

 いや、情けないところを見せることも多いけど、ちゃんとフォローとかしてくれるし、半歩後ろから見守ってくれているような……やっぱり『ダメなお兄さん』みたい……

 

 や、とても良い人だと思う。うん、頼りになる……たまに何考えてるか分からない事もあるけど……

 

 

 

「クッキーうまうま……あ、そうだ。ユーノ、ちょっとやってもらいたい事があるんだけど」

「ん、なに?」

「少しの間で良いから、人間状態に戻ってみてくれない?」

「『人間状態に戻る』? 貴裕くん、何を言って……あ、そういえばユーノ君って、人間だって言ってたような?」

「覚えてなかったの!? あ、だから今まで……」

 

 人扱いされてない様な気がして、何かおかしいとは思っていたんだ……

 まあ、それを言った時の状況も状況だったし、仕方ないと言えば仕方ないけど……

 

「で、戻れそう?」

「あ、大丈夫。ちょっと待って」

 

 

 貴裕は何だろう突然? そういえば人間状態に戻るのも久しぶりな気がするな――――っと。

 

「あ、なのはと貴裕にこの姿を見せるのは初めてだっけ?」

「わっ、わっ、うわー…………あ! ふやあああああっ!?」

「想像してたよりレベル高っ!? これが順調に成長すれば……ユーノ、恐ろしい子!!」

「二人ともどうかしたの? なのはなんて顔真っ赤だけど……?」

 

 顔の前に手をやって、僕の事を見ないようにして――いや、ちらちらと指の隙間から見てる?

 

「きっと、カッコ良い男の子が突然現れて緊張してるんだヨ(今まで全く意識せず、着替えとか普通にやってたのを思い出してるんだろうな……)」

「や、だって! だってだって!!」

「落ち着きなさいな……ん、身長はなのはちゃんより上か、130ちょい? 横は――ほっそいなオイ」

「結局何のために人間状態にさせたの?」

「あー……単純に元の姿見てみたかったってのもあるけど、ちょっと体つきも確認したかったから」

 

 なんで体つき? 

 やっぱり貴裕の考える事はいまいち分からない事が多いな……

 

「あ、もう戻ってもらっても大丈夫。わざわざありがとね?」

「ううん、大したことじゃないから別に良いよ――――ふう」

「ああああユーノ君がユーノ君に……あれ? ユーノ君ってなんだっけ?」

「なのはちゃーん? そろそろ帰って来てー?」

 

 まあ、少なくとも悪い人には思えないし……うん、それだけ分かっていれば充分――

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、後もう一つ。ユーノっていつもはどんなパンツ穿いてる?」

「いきなり何を聞くのさ!?」

 

 ――本当に何を考えてるのか分からないよ!?

 

 

 結局、パンツの事を聞いた理由もはぐらかして話してくれなかったし……

 そういえば体つきがどうとか言ってたけど……まさか貴裕って同性あ――――いやいやいやいや!

 だから悪い人じゃないって! いい所だってあるもの! 

 

 例えば、えーっと…………あ、演技力があって嘘をつくのが得意とか!

 

 

 ――あれ?

 

 

 

 

 

第11話 「美少年とモブ……その差って大きいよ?」

 

 

 

 

 月村邸でのジュエルシード騒動から約一週間経った、連休の日――

 今俺がいるのは、海鳴にある温泉旅館の玄関前である。

 

 メンバーは、高町家+ユーノ君、月村家+メイド、田中家、アリサちゃん、の計14名。

 俺と母だけではなく、父も頻繁に母に連れられて翠屋に通ったため高町家の面々とは関わりがあり、特に士郎さんとはそこそこ話すらしく、田中家は全員参加となっている。

 

 

 旅館の温泉も楽しみだけど、フェイトちゃん再登場&犬耳のお姉さん(アルフ)の初登場もあるだろうからワクワクが止まらんなぁ……グヘヘヘ……

 

 まあ、それまでは温泉でも普通に楽しんで――

 

 

 

 

 

 

「美智子さんお久しぶりです。この前なのはがお家にお邪魔したばかりか夕飯までご馳走になったみたいで……」

「あら、桃子さん! いーのよー別に、私の方から誘ったんだから!」

「美智子おばさん! 今日は一緒にお風呂入ろうよ!」

「あらあら、なのはちゃん! うーん、どうしよっかなー?」

「えー、ダメなのー?」

「全然オッケーよ!! うりうりうりうりー!!」

「えへへへへ……」

 

 ――なんだあそこの桃色結界、爆ぜればいいのに……

 

 あ、爆ぜたらダメだ。よく見ればアレを作りだしてるの、なのはちゃんとウチの母だった……

 

 

「もう、なのはったら。うふふ……私も一緒に入ろうかしら?」

「あらやだ、桃子さんみたいな美人さんに、なのはちゃんみたいな可愛い子と一緒にいると、こんなおばさんじゃ浮いちゃうんじゃないかしら?」

「ふふ、ありがとうございます。でも、私もそこまで若くはありませんし、美智子さんも充分お綺麗ですよ?」

「うん! 私、美智子おばさんの笑顔大好きだよ!」

「――もう、二人とも大好き!!」

「うにゃ!? えへへへ……私も二人とも大好きー! ぎゅーっ!」

「あらあら……じゃあ私もぎゅーっ」

 

 ――なんだあそこのお花畑結界、爆ぜればいいのに……

 

 ってか、なのはちゃんを抱きしめるどころか桃子さんごとって行くってアンタ……

 しかも、しっかりと抱きしめ返されて幸せ空間出来ちゃってるし……そこら辺にいそうなおばさんがチーレムオリ主さえ超えるってどういうこっちゃねん!?

 なんか『アハハ、ウフフ』とか幻聴が聞こえてきそうな勢いなんですけど……

 

 

「は、はははは……いやー、美智子さんに我が家の女性陣をとられてしまいましたね……いや、まだ美由希が――恭也の所か……ハハッ、恭也の周りは花がいっぱいでいいなぁ……」

「何かウチのがホント申し訳ない……や、大丈夫ですって、直ぐ終わりますよ! 多分!」

「いえいえ、仲が良いのは結構な事ですよ……ハハッ……」

 

 こっちはこっちでイケメンパパが普通のオッサン(マイファザー)に慰さめられてるし……見なかった事にしよ……

 

「キュー……」

<旅行中ぐらい、リラックスして欲しいとは思ったけど……これはなぁ……>

「貴裕。アンタはアレどうにか出来ない?」

「貴裕さんはなのはちゃんと幼馴染だし、美智子さんの息子だし、桃子さんとも「ゴメン無理」――返答するのが早い!?」

 

 アレはほっとくに限ります…………普通に楽しむことはできるのカナー?

 

 

 ◇

 

 あれから5分程経って、ようやく結界が解かれ旅館に入る事が出来た。

 

 部屋に荷物を置いて一段落した所で、小学生(フェレット込み)と姉ズは人の少ない内に一度温泉に入ろうという事になり、着替え持って風呂場に。

 夫婦組は久しぶりに夫婦水入らずでゆっくり過ごすらしく、そこら辺を散策に。

 恭也さんはメイド二人とご休憩――3時間ぐらい空けた方が良いのかしら……妬ましい……

 

「温泉楽しみー! どんなのかな?」

「確か『緑あふれる景色』って売りだったかな?」

「効用は何なのかね? 肩こり腰痛?」

「どうだろ? お姉ちゃんは知ってる?」

「いや、私も知らないなー」

「まあ、そこも行ってからのお楽しみにしておきましょう?」

『はーい!』

 

 ――まあ、周りが女の子で囲まれてるが素晴らしいのは分かるけどネ?

 

 や、今は俺以外男居ないから、両手に花って言うより周りに花畑状態ですよ!

 しかも全部綺麗で可愛い花っていうね?

 

 

 

 

 すれ違う人達皆、素晴らしい花々(女子メンバー)を見て『わー……』って見惚れてから、そこに紛れ込んでる雑草()見て『ん? アレだけ景観損ねてね?』って言いたげな反応してるもの。

 

 スイマセンね異物が混じってて……

 

 

「あ、脱衣所発見! 早く行きましょ!」

「したら俺はここで――っと、ユーノこっちゃ来い」

「キュー」

 

 なのはちゃんの肩から俺の肩にユーノ君が――

 なんだろう。いつもならユーノ君はなのはちゃんの方にいるから、スゴイ新鮮に感じるんだけどコレ……

 

「えー、ユーノはこっちに入らないの? 折角隅々まで洗おうと思ってたのに……」

「だ、ダメだよアリサちゃん! ユーノ君は男の子なんだから!!」

「別に良いじゃない、オスでも」

「え、あ、そうなんだけどそうじゃなくってユーノ君は男の子でユーノ君だから……うぅぅ……」

 

 あらやだ、可愛らしく唸っちゃってもう……あれ、なんか涙目になってね?

 

 ユーノ君の正体はもう分かってるんだし、淫獣呼ばわりされる出来事を回避しようとして人間形態先出ししたら、なのはちゃんが涙目になるって何コレ……

 

「あー、俺一人ってのも寂しいから勘弁して。上がったらあっちの広間で待ってるから」

「むー、仕方ないわね……」

「それじゃあ、後でね?」

「何か納得いかない……うー、うー、うー……」

「なのはってばいつまで唸ってるのさ? ホラ行くよー?」

「こんななのはちゃん見るのは初めてね?」

 

 うん、確かに珍しいからステルスサーチャーでバッチリ記録しておきましたヨ?

 

 

 

 ――さて、俺らもさっさと入りますかね……お、脱衣所誰もいないとかチャンスじゃん。

 

<貴裕。今更だけど、ペットって旅館の温泉入ってもいいのかな?>

<ダメじゃね? 今のうちに人間に戻った方が良いと思う>

<だよねー>

 

 そう言って俺の肩から降りた瞬間光に包まれるフェレット(ユーノ君)

 光が収まると、そこにはハニーブロンドの髪をした嫉妬する気さえ起きない程のレベルの外人美少年が……うん、ここまでのモノを見ると惨めな気持ちになるな……

 

「あ、でもタオルとかどうしよう。貴裕余分に持ってたりする?」

「うん、持って来てあるよ。あと、これらもどうぞ」

「ん? 何を――――新品の下着に服?」

「安物のダサい奴で恐縮ですが……」

 

 容姿レベル高い子にはそれなりの服を着て欲しかったんだけど……小学生の小遣いで買えるの何て下着ぐらいですヨ。

 服なんてタンスにしまいこんであった俺のお下がりだからね。

 

 

 ユーノ君って、着替えとか無いんじゃないかと思って用意したけど……

 変身魔法使ってるから関係なかったり、レイハさんに収納されていて夜な夜な着替えてたりするのかしら?

 

 あ、ちなみにズボンはもちろん短パンです。そこは譲っちゃいけないと思ったんだ。

 

「パンツは綿製品ってことしか聞けなかったから、適当にボクサーパンツ買って来たけど大丈夫そう?」

「わ、ありがとう助かるよ! 変身魔法使ってるから大丈夫と言えば大丈夫なんだけど、やっぱり気分的にね…………あ、体つき確かめたりパンツについて聞いたのってこの為だったの!?」

「ちょっとサプライズ的なものにしようかと思いまして」

「本当にありがとう…………よかった、変態さんじゃなかったんだ……」

「何の話!?」

 

 俺は変態なんかじゃな――――あれ? なら俺は何で短パンにこだわったんだろう……?

 

「――まあ、いいか。とっとと脱ごう……ユーノは温泉入ったことある?」

「公衆浴場なら入った事あるよ」

「そっか……っし、じゃあ入りますか」

「うん! どんな感じなんだろう……」

「オープンっと――――おお、割と綺麗な景色!」

「うわあ! 温泉浴場ってこんな風になってるんだ!」

 

 興奮してるのか、そっちの人が舌なめずりしそうな程眩い白い肌を晒しながら、全裸で風呂場を駆け回る美少年(・・)――

 

 やったね男オリ主、メインキャラの美少年(・・)と一緒にお風呂タイムだ! ポロリもあるよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――自分でこの状況にしておいて何だけど、何だかな……

 

「ってか、いつもよりテンション高いね? どうしたのさ一体?」

「え? あー……こういう浴場初めてってのもあるんだけどさ、こっち来てからまとも(・・・)に体洗えるの初めてだから……」

「へ? 高町家でお風呂は使わなかったの?」

「変身魔法使ってるから絶対必要ってわけでもないし、そこまで迷惑掛けるのまずいと思って……」

 

 変身魔法が万能過ぎる。

 ってか生真面目な子やのぉ……あれ? でも『まとも』じゃない体洗いってどんな――

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっち来て体洗うと言えば、なのはに桶にお湯張ってもらってもみ洗いされる形だったから……遠慮がない洗い方だと思ってたけど、人間ってこと意識されてなかったからなんだね……」

「何と言う現実……!」

 

 ――そんな裏設定知りたくなかった!

 ああ、何かユーノ君の雰囲気がどんよりし始めたし!?

 

「いや、体洗えるだけありがたいし、なのはが凄い楽しそうに洗うから何も言えなかったんだ……」

 

 そこは言って良い所だから! 変に遠慮しなくて良い所だから!

 

「良し分かった! 温泉入ろう! 温泉入ってゆっくりしよう!! あと、何だったら愚痴も聞くから!!」

「え、いいの? じゃあ、なのは関連なんだけどね? 着替えを僕の前で普通にやるのは――」

 

 あ、この子不満とか辛さとか貯め込むタイプか……

 

 

 ◇

 

 余りにも厳しいユーノ君の現実(フェレット扱い)に同情しつつ、じっくりと温泉を楽しみ、30分程過ごした。

 気持ちスッキリとした顔のユーノ君は、俺の古着に着替えてから(今まで着ていた服は、俺が預かって洗濯する事に)フェレット形態に戻って、俺の肩へ。

 

 今は広間へ向かうため、渡り廊下を歩いてる所である――

 

 

<露天風呂も結構良かったなー>

<そうだね。久々に癒されたよ……>

<いつもお疲れ様です……空いてる時間で良かったわ。夜は人で混むと思うし>

 

 連休だし、結構人気のある所だから、カップル・友人・家族といろんなタイプの人が大勢来るのよね。

 

 

 ――お、前から俺と同い年ぐらいの3人組が来てる。親戚の集まりか何かかね?

 

 

「――でさ、さっき広間で外人の巨乳なお姉さんに話しかけられたさ!」

「あ、俺も話しかけられた! めっちゃデカかったし美人だったよな!」

 

 ナニソレ羨マシイ……じゃねえや、人前でそんな話を大声でするんじゃありません!

 全く……まだ、そこらにいるかしら?

 

「それマジ――や、嘘だろ」

「ホントだって! なんか話してる途中でガッカリされたけど」

「あ、俺もそうだわ。何か意味ありげな視線送られたんだけど、しばらくしたら『え? 聞こえてないのかい?』って聞かれて、何の事だか分からなかったからとりあえず頷いたらトボトボ歩いてどっか行ったけど……」

 

 

 ――――ん?

 

「ちょっとゴメン。その巨乳の外人さんの特徴教えてくれる?」

「え? あ、フェレットだ! スゲー!」

「優しく撫でるぐらいなら許可するから教えてくれない?」

「キュッ!?」

<ちょ!? そんなこと聞くために僕の事売らないで!!>

 

 すまぬ。これでタダの一般観光客だったら土下座して謝るけど――

 

 

 

 

 

 

「全然良いよ! えっと……とりあえずオレンジ色の髪してた!」

「あとデコに宝石みたいなのついてたな」

「あれ、オレンジ髪の人なら、この先の広間のテーブルで突っ伏してたよ?」

 

 やっぱりアルフさんですよネー……突っ伏してたって何ぞ?

 

「ソウデスカ……教エテクレテアリガトウ! ハイ撫デテイイヨー?」

『わー!』

「キューッ!?」

 

 多分、俺と勘違いしてこの子達に声掛けたのかね?

 話しかけられなった子は青髪――どうしてそうなった――で、話しかけられた二人は黒髪のモブ顔か……

 

 すいませんね大して特徴ない外見で……

 

<貴裕! 助け、お願っ――>

「あ、ごめん。それ位にしてあげて」

「うん、わかった!」

「ふー、満足……」

「意外と伸びるんだなフェレットって」

「何をやったし……じゃあねー」

『おー、じゃあねー!』

 

 

 ――さて、アルフさんだと分かったのは良いけどどうするか……

 いや、こっちから何かする訳でもないし、警告されるだけだろうからそう気を張る事もないか。

 

<貴裕……あんなこと……ひどいよ……>

 

 あらやだ、ユーノ君が床でビクンビクンなってら。

 声も女の子っぽいからそのセリフは犯罪臭が感じられる……あ、そうだ――

 

 

 

 

 

 

<や、ゴメン。どうしても確かめたかったからさ。お詫びに今度家来た時風呂入っていいから>

<――――まあ、仕方ないね。貴裕も男だもんね、うん>

 

 それで許してくれる君が大好きだヨ?

 

 

 ◇

 

 再度、ユーノ君を肩に載せて渡り廊下を歩き、広間に移動した。

 今はアルフさん探しを始めたところである――

 

<でも額に宝石のアクセサリーなんて珍しいね。あ、もしかしてこっちでは割と普通なの?>

<や、そんな奇抜なファッションする人は海鳴市でも……>

 

 念話しつつ周りを見回すが、有名な旅館だけあって人が多い。

 広間のテーブルで突っ伏してるって言ってたけど、何処ら辺にいるのかね?

 

 

<あ、貴裕。左奥のテーブル>

<見つけたの――ってホントに突っ伏してるし。凄いダルそうだけど何があったよ……>

 

 どぎついオレンジ色の髪したアルフさんと思われる方が、テーブルで沈んでらっしゃる……

 

 あ、髪地面についてますよー? 良いんですかー? 

 女の命じゃ――あ、獣だから良いのか。

 

<あの子達の言ってた女の人ってアレ(・・)? すっごい近づき難いオーラ出てるけど……話しかけるの?>

<いやアレはちょっと――ん?>

 

 何だ? チャラい兄ちゃん二人がアルフさんに近づいて……

 

 

「お姉さんうつむいちゃってどしたのー? 何かあったー?」

「連れの人とかは? 外人さんっぽかったけど日本語分かる? 友達とかと来てんのー?」

 

 あら、ナンパ目的? 落ち込んでる所に漬け込む&女友達と来てるなら一緒に食べちゃおう的な?

 

 あ、でもちょっと気になるかも。

 フェイトちゃんに続き、二次小説で餌付けホイホイされる率の高いアルフさんはどんな対応をするのか――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっさい、話しかけんな……噛み殺すぞクソ野郎共……」

『ハヒッ!?』

 

 ――対応の仕方が思ってたよりめっちゃ怖ひ!?

 若干獣に戻ってませんかアルフさんや!? 手の爪も心なしか伸びて鋭くなってる!?

 

「さっさと失せな……」

『ハイ! 失礼シマシター!!』

 

 あ、でも体起こされて、額にある宝石も確認できたな。アルフさんで間違いなしと。

 胸元はだけてちゃってまぁ……広間にいる男性陣がチラチラ見てますヨー?

 

「全く、変な男らには声掛けられるし、気持ちの悪い視線は感じるし、どうなってんだいここは……」

 

 オゥ……やっぱりそういう視線って分かるもんなのね? 

 男性陣一斉に目を逸らしたぞオイ……

 

「肝心のヤツは見つからないし……茶髪の女の子は顔立ちも整ってたし見分けがつくだろうけど、黒髪の男の子は特徴が無いから髪色で判断しようと思ってたのに……この世界の人間黒髪が多すぎるフェイトォ……」

 

 声に出して愚痴るほど疲れてるのかい……

 

 まあ、他国の人の顔判別しようとすると、何らかの特徴が無いと難しいっていうのは分かるな。

 

 髪色に関しては調査不足? いや、『現地の住人で一番多い髪色は?』なんて調べないか普通。

 いくら海鳴市にビックリ髪色の人が多いとはいえ、それでも黒髪のほうが普通に多いんだよネー?

 

 

 ――あ、もしかして年齢層近い黒髪モブ顔男子全部に当たったとか?

 そうだとしたら何て言うかお疲れ様で――っと、目が合った。

 

 

「――あああああっ!!! フェレットもいるってことはお前だよね!? 5人目にしてお前だよね!?」

<貴裕、あの人知り合い? 何か凄い形相で睨んできて――え、跳んだ!?>

<うそん!? テーブル避けるぐらい歩いてしろよ!?>

 

 こんな事に獣の身体能力使わんでも!? 10mはあったろうに助走無しでこっち飛び掛かって来て――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――っし、捕まえたぁ!!」

「ダッハ!?」「キュー!?」

 

 ――床に思いっきり押し倒してきたぞこのワンコ!? ユーノ君も吹っ飛んだし!

 

「寝てんじゃないよさっさと起きな! アンタで間違いないね!? そうだろ!? そうだと言いな!!」

「や、押し倒したのお前――あ、落ち着いて、待っ、肩強く握り過ぎいいいいいいえぁっ!?」

<貴裕ー!?>

<お前魔導師だろ!? 念話が聞こえるんだろ!? 聞こえてないっていうならガブッといくよ!!!>

 

 聞こえていると言えば敵認定、聞こえていないと言えば暴力って何と言う理不尽!?

 ってか確認前から暴力振るってるよ!? 肩に爪がガッツリ食い込んでますって!!

 

<ばいワタジは魔導師デズ!! お姉様が何者かとかもうこの際どうでもいいから手の力抜いてええええええっ!!>

「そうかそうか! お前がそうかこのガキンチョめ!! パッとしない外見してこのガキンチョめ!!」

「あふんっ!?」

<貴裕大丈夫!? 今のってこの人が念話を――>

 

 やっと離された、ってか投げ飛ばされた……

 なんだろう、肩だけじゃなくて心も痛いよ……

 

「とにかく! 子供は良い子にしてお家で遊んでな! ジュエルシードにはもう関わるんじゃないよ!! もう一人にも言っときな! 次会ったら本当に噛み千切るからね!! ああ、全く……!」

<行っちゃった……あれ、今あの人ジュエルシードって!>

「何アレ怖イ……俺何モ悪イ事シテナイヨ……」

 

 広間に残ったのは何とも言えない空気と、やる事やってポイ捨てされ浴衣の乱された俺……誰得?

 

 

 それよか肩痛い超痛い……誰か慰めてくれても……出来れば女の子――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、良いお湯だった――ってあれ、貴裕? こんな所でなに倒れてるのよ?」

「なんか広間の雰囲気がおかしいような……貴裕さんのせい?」

「貴裕くん? 人前なんだからあんまり恥ずかしいことしちゃだめだよ?」

「――――ハイ、スイマセンデシタ……」

 

 

 

 

 

 ――現実って厳しいね?

 

 巨乳なお姉さんからは、本来警告だけで済まされたはずがモノが、肩が砕かんばかりの握撃と容姿全否定の罵倒に変わりました……

 弱ってれば慰められると思ってたら、9歳の女の子に叱られました……

 

 

 ――――どうしてこうなったし……

 




 海鳴温泉での話は、長くなったので2話に分けることにしました。


 ◇

 ※なんでアルフはああなったのか――


 原作のアルフさん

「ふんふん、この女の子ね? 視察ついでに少し釘を刺しておくかな?」→特徴ある子なので直ぐ発見

<――おいたが過ぎるとガブッといくわよ?>→怯える(警戒する)敵

<あー、もしもしフェイト? こちらアルフ>→カッコ良く決めれたよ、褒めて褒めてー♪




 ここのアルフさん

「ふんふん、この女の子と男の子ね? 視察ついでに少し釘を刺しておくかな?」→黒髪モブを直ぐ発見

<――おいたが過ぎるとガブッと行くわよ?>→自分の胸元ガン見して念話に反応しない

「あれ? もしかして聞こえてない?」→失敗

 カッコ良く決められなかったよ……折角ポーズまでとってたのに…………いや、私はフェイトの使い魔だ! この程度じゃへこたれない!!



 黒髪モブ少年発見→話しかける→念話→胸元ガン見して反応なし――男共の視線が鬱陶しい……

 黒髪モブ少年発見→話しかける→念話→胸元ガン見して反応なし――あれ? もしかして黒髪って多いの?

 黒髪モブ少年発見→話しかける→念話→胸元ガン見して反応なし→何か写真撮られた――フェイトォ……

 チャラ男のナンパ→ストレス限界突破→有力候補発見→ガブッといくよ!!!→「肩強く握り過ぎいいいいいいえぁっ!?」



 ――オリ主がモブ顔なのと、男のエロスのせいでした。
 多分、ああいう視線ってすごい不快感を感じると思うんですよ。

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