高二病抜け切らなかった人が中途半端な力で   作:mahiro

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第10話 「二次小説では、餌付けホイホイされてしまう頭の弱い子になる率が高い子」

 ジュエルシードによる樹木暴走があった翌日。

 とある少女は、異世界から来た少年へ新たに決意を語る――

 

「自分のせいで、誰かに迷惑がかかるのはとても辛いと思う。そう思ったから、私はユーノ君のお手伝いをしていたんだ……でも、これからはユーノ君のお手伝いじゃなくて、自分の意思でジュエルシード集めをしようと思う! 自分なりの精一杯じゃなく、本当の全力で!」

「ありがとうなのは……僕の力も大分回復してきているし、こらからはもっと力を入れてジュエルシードの封印をやっていこう!」

「うん! これからもよろしくね!」

「こちらこそ!」

 

 互いに意思を固める二人。そこで、もう一人の仲間の事が思い浮かんだ――

 

「貴裕とも話さなくっちゃね。今念話しても大丈夫かな? 明後日まで入院してるんだっけ?」

「『健康なのにベットに拘束されるとか暇すぎる』って言ってたぐらいだから大丈夫じゃ……ううん、こういうのはやっぱり直接言わないと駄目だと思う。退院してからにしておこっか?」

「うん、分かった」

 

 件の少年は今――

 

 

 

「――あの木のせいで怪我をした人は他にもいるけれど、捲きつかれて引っ張られたのは君だけなんだ。被害が集中していた場所から君の所にだけ木が伸びていたっていうのも気になるけど……正直、不思議な事だらけで捜査も難航していてね? 少しでも情報が欲しいんだが、例の木について何か心当たりはないかい?」

 

(今こそ真価を発揮せよ、演技力UPの特典よ!!)

 

「俺、何も知らなッ、ズッ、怖くて、木が俺を引っ張って、グスッ!」

「辛いことを思い出させてゴメン。ゆっくりでいいんだ、何か知らないかい?」

 

 警察の事情聴取を、全力で誤魔化そうとしていた――

 

 

 

 

第10話 「二次小説では、餌付けホイホイされてしまう頭の弱い子になる率が高い子」

 

 

 

 暴走樹木事件が終わってからというもの、検査入院、警察からの事情聴取モドキ、なのはちゃん・ユーノ君が負い目感じないよう念話でフォローなどなど、とにかく大変でした……

 

 中でもキツかったのが、まさかの警察登場――どうも父母が通報&詳しい事情を話したらしい。

 木について通報したのは父母だけじゃなく色んなところからあったらしいのだが、『いきなり巨大な木が出て来た』『被害を加えたはずの木が光と共に消えた』『子供が空を飛んでいた』など、どれも現実味のないものばかりで警察の捜査は混乱状態だとか。

 そんな中に直接被害にあった人間がいれば、何か少しでも情報を得るために事情聴取に来るのも仕方ないっちゃ仕方ないけど、こっちは警察が出て来る(物語の裏側の話)なんて考えていなかったから焦りまくった……

 

 まあ、最終的には子供の涙(嘘泣き)も使って誤魔化し切りましたけどネ。

 

 

 その2日後には無事退院。

 出迎えてくれたなのはちゃん達が決意表明的な事してきたので、ついうっかり、入院中練習して出来るようになったスタンバイモードでステルスサーチャーを出すという無駄に高度な技をしつつ、『俺も一緒に頑張るよ』的な事を言っておいた。

 

 その次の日には、何日かぶりの学校へ。

 入院したことを先生から聞いていたらしく、皆心配してくれていたのだが、警察に事情聴取されたことを話すと――

 

「兄貴、お勤めご苦労様でした!」

 

 ――と、『健人』ってサッカー少年が笑顔でほざきやがったので、涙目で謝るまで関節技を掛けておいた。

 途中で止めに入ろうとした『美希』って女の子にも、涙目になるまでウメボシ(体罰)をし続けた。

 

 

 他意ナンテ無イデスヨ? 決シテ前回ノ事件ノ腹イセ何カジャ無イデス。

 

 

 

 

 そんな風に特定の子に気持ち暴力度多めで接しながら過ごしていた時、すずかちゃんから『次の休日、家に遊びに来ませんか?』という内容のメールが届いたのだった――

 

 

 ◇

 

 今日は月村家へ遊びに行く日――例のあの子の初登場の日でもあると思われる。

 バス停でなのはちゃん達と合流し、今は月村家の玄関前――

 

「恭也様、なのはお嬢様、貴裕様、いらっしゃいませ」

「あぁ、お招きにあずかったよ」

『こんにちは、お邪魔しまーす』

「こんにちは、どうぞこちらへ」

 

 迎えてくれたのは、薄い青紫色というワケの分からない髪色をしたメイドのノエルさんだ。

 

 月村家メンバーは相変わらずの違和感バリバリの髪色をしてらっしゃる……

 まあ、その違和感があるおかげで、メイド姿だろうと胸・尻強調されん限りはエロ目線で見なくて済むんだけどさ……

 

 

 ――にしてもこの屋敷は……

 

「やっぱり大きすぎるし、綺麗すぎる……未だに慣れん……」

「そうか? 別に大したことないと思うんだが?」

「恭也さん、目を覚ましてー? こんなに大きい屋敷も、本物のメイドさんのお迎えも普通はないですよー?」

「あはは。私もお兄ちゃんも、貴裕くんよりここに来てる回数多いからもう慣れちゃってるんだと思うよ?」

「そういうもの?」

 

 だって玄関開けたら廊下じゃないんだよ? 高そうな装飾のある広間なんだよ?

 実際住んでる人数なんて少ないんだよ? それなのに滅茶苦茶部屋数があるんだよ?

 

 まあ、確かになのはちゃんは月村家だけじゃなく、バニングス家の屋敷にも頻繁に行ってるから慣れてるんだろうけど……

 

 

 俺も同じ学校、同じ学年なら今頃慣れてたのかな…………へへっ、俺の馬鹿め……

 

「お嬢様、三人をお連れしました」

「あら、いらっしゃい」

「なのはちゃん、恭也さん、貴裕君、いらっしゃい! 貴裕君は2カ月ぶりかな?」

「ファリンさん、お邪魔してまーす。エエ、多分ソレグライデスネ……」

 

 どーせ、なのはちゃんと違ってそんなに頻繁に来てないですよ……

 

 あと、この場にいる人、俺以外が美人・美少女・美形って……何コレ、新手のイジメ?

 ある意味俺の存在感が出過ぎてるんですが……

 

「お茶をご用意いたしましょう。何がよろしいですか?」

「任せるよ」

『お任せしまーす』

「じゃあ私と恭也は部屋にいるから」

「かしこまりました。ファリン?」

「はい!」

 

 15歳以上は一旦退場ね……さて、しばらくは美少女達+異物で過ごしましょうか。

 

 

 あ、お気に入りのマダム(デブ猫)発見。回収して膝の上に――また体重増えてない君?

 

「なのは、貴裕、おはよー」

「二人とも、おはよう」

『おはよー』

「――なのはと貴裕って、意外と息が合う事が多いのよね……」

『付き合い長いからかな?』

「あ、また被さった」

『ふええ……』

「今のはワザとでしょ……アンタ(モブ顔男子)が言うと気持ち悪いわよ……」

「うん、自分でもどうかと思った」

「じゃあ、何でやったんですか!?」

「何か自分の口癖マネされると恥ずかしい……っていうか私ってそんなに分かりやすいのかな……」

 

 反応見るの楽しいから意図的に被せる事もあるけど、素でもたまにあるのよね。

 

 まあ、息が合おうとフラグは立たないんですけどネー……

 

 

「そういえば、今日は誘ってくれてありがとね」

「あ、俺も。誘ってくれてありがとう」

「こっちこそ。来てくれてありがとう」

「今日は……元気そうね」

「え?」

「なのはちゃん、最近少し元気なかったから……何か心配事があるなら話してくれないかなって、二人で話してたんだ……」

「すずかちゃん……アリサちゃん……」

 

 ええ子達や……

 ああ、なのはちゃんも涙目になってるし……微笑ましいのー……

 

「貴裕、その子供を見るお父さんみたいな目は止めて……そうだ、アンタも大丈夫なの? 入院して警察も来たってメールにあったけど?」

「一週間前の事件に巻き込まれたんですよね? 木に引きずられたとか……」

 

 あら意外、俺の事も心配してくれたのかしら?

 ああ、無事を直接確認するために呼んでくれたのかね? ホントにええ子達やのー……

 

 

「怪我は擦り傷程度で済んだんだわ。痕も残ってないし大丈夫。むしろ警察の方が『何か知らないか?』ってしつこくてしつこくて……何も知らない(・・・・・・)ってのにさ」

「あー、あんな不思議な事件なんだから、しつこいのも仕方ないんじゃない?」

<――息を吐くように嘘吐いたね。表情も声色も微塵も変わってないし……>

<貴裕くん、演技するの上手いから……もうちょっと別の所に使えばいいのに>

<そこ、黙らっしゃい>

 

 社会人――いや、学生時代には自然に身につく基本スキルだっつの!

 別に俺だけヨゴれてる訳じゃないもん…………年は取りたくないなぁ……

 

 

<いや、だって――あ、マズ、うわッ!?>

「キューッ!?」

 

 お? ユーノ君がいきなり走って――ああ、猫に追っかけられるシーンとかあったもんねそういえば。

 

 チーレム物だと、猫とユーノ君のせいでファリンさんが倒れそうになるのをオリ主が合法的に抱きしめて防ぐと。

 例えやりたかったとしても、今はマダム(デブ猫)膝に載せてるから動けないけど――

 

 

 

 

「あ、ユーノ君!?」

「アイン駄目だよ!」

「はーい、お待た「ファリンさん、子猫とユーノ走り回ってるから気を付けて!」――え? わっ!? っとと……危なかったー……貴裕くん、ありがとうございますー」

「いえいえ」

 

 ――まあ、一言掛けるだけで解決できちゃうものだしなコレ。

 

「ユーノ君、私の肩においで!」

「キュー!」

「こら、アイン! めっ!」

「ナー……」

 

 にしても若いメイドさんへの合法的ボディタッチか…………イイナァ、チーレムオリ主ハ……

 

「ッ! なんでしょう、寒気が……」

 

 あ、やべっ、エロ視線が漏れてた……

 

 

 ◇

 

 所変わって庭――と言って良いのか分からない広さの場所に移動してから、お菓子を食べたり、猫と触れ合ったりしながら談笑中である――

 

「しっかし、相変わらずすずかの家は猫天国ねー」

 

 種類も年代もバラバラの猫達がそこら中に放し飼いされている。

 基本人間慣れしてるから、警戒されたり引っ掻かれるってことはないけど、たっぷり触らせてくれる子もいれば少し触っただけで離れてしまう子も……動物に好かれる特典とか貰っておけばよかったかしら?

 

「子猫達は特に可愛いよねー」

「うん。里親が決まってお別れもしなきゃいけない子もいるけど……子猫達が成長していくのは嬉しいよ」

「そっか……」

 

 流石に全部を買う訳にもいかないものね――っと? いきなり膝に中々の重量感が……

 

「ナ゛ーオ」

 

 あ、マダム。重い体を引きずってまでこっち来たの? よしよし、相変わらずだらしない腹ですねー?

 

「来る度特に可愛がってる分、その子には良く懐かれてるわねアンタ……何でその子なの?」

「や、デブ猫って可愛いじゃん?」

「別に可愛くないとは言わないけど、他の子に比べれば……ねぇ?」

「うん……」

「私は好きだけど……どちらか選ぶなら普通の子の方が好きかな? あとその子オスですよ?」

「あら、意外と不評……別にオスだろうと呼び方はマダムで良いよねーマダム?」

「ナ゛ーオ」

「というより、なんでマダム?」

「え? 太ってるから」

『えー……』

 

 まだ幼いとはいえ、女の子全員に自分の趣向否定され気味になると、こう心にクるものがある……

 

 

 

 ――――っと、ジュエルシード来たか!

 

<なのは! 貴裕!>

<うん、すぐに――あ、アリサちゃんとすずかちゃんに何て言おう……>

<うーん……そうだ! 僕の事を追っかけたって事に!>

 

 そう伝えると即座に木々の中へと駆けて行くユーノ君――行動力のある男の子って素敵……

 や、なけりゃジュエルシード回収しに異世界まで来ないか。

 

「あらら、ユーノどうかしたの?」

「何か見つけたのかも。ちょ、ちょっと探してくるね」

「一緒に行こうか?」

「大丈夫――ううん、やっぱり一人は来て欲しいかも。貴裕くんお願いできる?」

「了解。アリサちゃん、俺の代わりにマダム持つ?」

「結構よ! ……何kgあるのその子」

「もった感じ少なくとも5kgじゃ収まらん。10kgには届かないぐらい?」

「ダイエットさせてはいるんだけど……どこかで食べて来てるみたいで効果なくて……」

「地面に下ろして行きなさい……」

「うぃ。マダム、また後でねー」

「ナ゛ー?」

 

 首かしげて可愛いことで。あ、首元にもお肉が……

 

「じゃあ、直ぐ戻ってくるから待っててねー」

「行ってきまーす」

『行ってらっしゃーい』

 

 

 良し、特に不振がられてはないな……マダム効果?

 

 

 ――さて、いよいよあの子が出て来ますよー? 

 無印でなのはちゃんのライバルポジションのあの子が……サーチャー多めに出そっかなーグヘヘヘ……

 

 

 ◇

 

 月村家の庭にある木々――もう森って言ってもおかしくない所を2分ほど走っていると、またいつもの気持ち悪くなる感覚が来た――

 

「発動した!?」

「人目を引くとマズイ……結界を作らなきゃ!」

「結構広いけど大丈夫?」

「一応得意な魔法だし、大分魔力にも余裕もあるし……あまり広すぎる空間は切り取れないけど、この家の付近なら、なんとか!」

 

 地面に魔方陣が展開され、回りの景色が色あせた物に変わって行く――

 この家の付近を覆えるレベルなら充分広いと思うんだけどね?

 本当に大したことないレベルなのか、ユーノ君の能力が高すぎるのか……

 

 

 ん、奥の方で光が――――おおう、想像以上にデカい猫!? 高さだけでも10m近く?

 

 

『ニャーオ』

 

 あらやだ、可愛らしい声に野太い声が混じってる……

 見た目そのままでも、ここまでデカイと恐怖心も出て来るわ。

 

「歩く度に地面揺れるってどういうこっちゃねん……」

「お、大きくなりたいって願いだった……のかな?」

「いつもみたいなのとは違うけどこれは……と、とにかく、このままじゃ危険だから元に戻さないと」

「そ、そうだね。流石にあのサイズだとすずかちゃんも困るだろうし」

「困るってか、餌やりの度に命がけ? ネコパンチだけでも死ねるんじゃね?」

 

 あれで叩かれたらブチュってなるよブチュって。

 

 

「怖いこと言わないでよ!? ……襲ってくる様子はなさそうだし、ささっと封印を。レイジングハ――え?」

 

 あら、上を黄色い魔力弾が通り過ぎて――ってことは!!

 

『ニャッ!?』

「今のは!?」

 

 

 

 

 やっと来たんですねフェイトちゃ――――って、こっからだと木が邪魔で見えないのか。

 何この生殺し……

 

 あ、二射目が間を開けずに猫さんに直撃――

 

『ニャアア!?』

「魔力弾!? なんで!?」

「とりあえず猫の所に行かないと(フェイトちゃんが見れない)! シンシアハート、セットアップ!」

「うん! レイジングハート、お願い!」

《《Stand by ready, Set up》》

 

 デバイスを起動させてと。もう茶色に包まれんのも慣れましたよ……

 

「このままだと猫が怪我を……攻撃を防がなきゃ!」

「あいさ了解!」

《《Flier fin》》

 

 飛行魔法使って猫の背へ――

 うわ、なんか足場が柔らかくてあったかいって新鮮……あ、三射目来た!

 

「私が!」

《Wide Area Protection》

 

――――ガンガンガンガンガン!――――

 

 

 こんなに連射する意味あんのって位の射撃魔法が……まあ、なのはちゃんが防ぎきってるけど。

 

 さて、肝心のフェイトちゃんは――――微妙に距離があるせいで、金髪の長いツインテールでマント羽織ってることしか確認できん! 

 いや、フェイトちゃんで間違いは無いんだろうけど、顔が見れないと意味が――ってまた撃って来た! 

 今度は下の方か!

 

「貴裕くん!」

「了解!」

 

 少し下の方に身を乗り出せば――

 

「シンシアハート!」

《All right. Wide area Protection》

 

――――ガンガンガン!――――

 

 

 うっし、届い――あれ? これ防ぎきって良かったんだっけか?

 原作じゃ、猫が倒れてなのはちゃんも地面に降りてたような……まあ、細かいのはいいや。

 

 

 

「同系の魔導師が二人……ロストロギアの探索者か?」

 

 あら、フェイトちゃんの肉声がはっきりお耳に! もう、すぐ傍まで来てるんですね! 

 

 

 顔を上げれば生フェイトちゃん顔がやっと見れ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ヤダ何この子、無表情&感情の見えない目の子供とか不気味を通り越して怖いんですけど……

 え、何アレ、ホントにヒロイン?

 

 や、西洋美人ってか美少女って言えばいいのか? 凄い綺麗な顔立ちなんですよ? 

 サラサラ艶やかな金髪も合わさって、将来有望な子ってのは十二分に感じられるんですよ? 

 

 

 ただ、俺らを『路傍の石』を見るかのような目で見てらっしゃるのがちょっと……うん、チビリそう。

 

<間違いない、僕と同じ世界の住人……それにこの子、ジュエルシードのことを知ってる?>

<えっと、ユーノ君の知り合いじゃないの?>

<ううん、違う。管理局員でもないと思うけど……なんでこの世界に僕以外の魔導師が……>

 

 ジュエルシードを奪いに来たんだヨ? ってかもうここで管理局の名前が出るとは……

 

「バルディッシュと同系のインテリジェントデバイス……」

「え? バル、ディッシュ?」

「――ロストロギア、ジュエルシード」

《Scythe Form Set up》

「うっ!?」

 

 あら、なのはちゃんから怯んだ様な声が……

 本物じゃ無く魔力で出来たものでも、目の前に刃物構えた人がいるのって怖いもんね……

 

 

「申し訳ないないけど、頂いて行きます」

 

 おお、ついになのはちゃんとフェイトの初戦闘か!!

 

 サーチャーはもうばら撒いてあるけど、生でも見ておかないと――――ってあれ? 俺も傍にいるんだけどどういう扱いに――

 

 

 

 

 

 

 

 え、こっちに突っ込んで来――もしかしなくても俺も戦闘の対象ですか!?

 

《《Evasion, Flier fin》》

「わっ!?」

「危なひっ!?」

 

 デバイスのおかげで何とか回避できたから良いものの、容赦なく足狩りに来たよこの子!? 

 普通足なんて最初に狙うもんなのか!? えげつな!!

 

「素人相手に足払いなんて使っちゃらめでしょうが!! 泣くぞコラ!?」

「そんなことを大声で言ってどうするの!? 確かに怖かったけど!」 

 

 こちとら前世含めて殴り合いの喧嘩すらしたことないんじゃ!! 対人戦って何ソレおいしいの!?

 

 ――いや、ホントどうしよう? 今回は『フェイトちゃん初登場』ってことで頭一杯で、他に何も考えてなかったけど、どんな風にフェードアウトすれば自然なのか……

 最後ら辺でなのはちゃんと一緒に撃たれればいいのか――ってあれ?

 

 

 

 

「あの子何処に行った《Scythe Slash(ごめんなさい)》――ヅアッ!?」

「貴裕くん!?」「貴裕!?」

 

 背中がクソ痛いっ……『ブリッツアクション』か!? 

 背後取られてザックリいかれた――あ、飛行するのも辛い……猫、ちょっとクッションになれ…… 

 

「あ゛ー……ヅッ!? 勢い殺した上で柔らかい場所(猫の背中)に着地したのに響くってどんだけ……」

《The back serious damage of the Barrier Jacket! The further battle is dangerous!(バリアジャケットの背面大破! これ以上の戦闘は危険です!)》

『ニャー?』

 

 やたら痛いと思ったら一撃で壊れてたの!? 

 この鬼畜! 殺気とか気配とか分からん素人相手に高速移動で背後から全力で斬りかかるとかバカですか!? 

 あと、謝りながら攻撃しない! それだけで俺の苦手なシリアス要素入るから!

 

 

 まあ、自然にフェードアウト出来たのはラッキーイダダダダダッ!? 背中痛すぎて真っすぐ横になれぬ……

 

「貴裕く《Arc Saber》――このっ!」

《Protection》

 

 あー、上の方から戦闘音が……

 振り返りたくてもこの土下座体勢から動けぬ。背中痛い超痛い……

 

「何で、何で急にこんな!」

「答えても……多分、意味がない」

 

 や、頑張れば体の向きぐらい変えられるか? せーのっ――バァ!? ムリムリムリ痛い痛い痛い!! 

 

 ぬぅ……サーチャーもあるけど、どうせなら生で見たかった――あ、でも今上見たらヒロインズのスカートの中身が見えるのか?

 子供の見ても虚しい気持なるだけだし、この体勢でしばらく過ごそう……

 

 そうだ、二人に大事ないって伝えておかないと……

 

<二人とも大丈夫かー? 俺背中痛すぎて泣きそうなんだけど……>

<あ、貴裕!? そっちこそ大丈夫なの!?>

<良かった! 貴裕くん、猫の上ですっとビクビクとしか動いてなかったから心配したよ……>

<や、とりあえず死にそうとかって訳じゃないから安心して。ただちょっと動けないからサポートとか出来ない……>

<無理しないで! そこで休んでいていいから!!>

<そうだよ! あとは私が何とかするよ!!>

<ありがと。じゃあ、回復に専念してるわ>

 

 いや、ホントにええ子達やね……

 とりあえず早く回復して安心させんと……ついでにサーチャーで二人の戦闘でも見ますか。

 

「シンシアハート、回復魔法……あと、画面小さくて良いからサーチャーで撮ってるヤツ目の前に出して」

《All right》

 

 あ゛ー、回復魔法独特の何か暖かい感じが体に染みわた【Device form】――ワオ、ちょっとサーチャーさん被写体(フェイト)に寄りすぎじゃね? 

 いきなりデバイス至近距離で突き出された映像出されて、冷や水をぶっかけられた気分になったよ?

 

【Shooting mode――Divine Buster,Stand by】

【Photon Lancer,Get set】

 

 ああ、互いに構えて硬直状態の場面か。 

 空気がピリピリしてる感じが上から伝わってくる……

 

 

――――ブワッ――――

 

 っておおう!? 何か猫の毛が逆立って――

 

『ニャーオ……』

「あ、バカ、お前動くな!」

 

 なんでいきなり――動物の勘か!? 

 本能的にここが危ないって察知して逃げようと――ああ、なのはちゃんよそ見しちゃったよ!?

 

【ごめんね……】

【Fire!】

【あっ……!】

 

 うわ、なのはちゃん撃たれて上にぶっ飛んで――ってあれ? 

 

 原作でのなのはちゃんは、地上で撃たれて上にぶっ飛ばされたのをユーノ君が魔法で受け止めたんだよな?

 原作と違って、上空で(・・・)戦ってたのに更に上にぶっ飛ばされるって……

 

 

 

 

 ――え、ユーノ君受け止めきれるか分かんなくね!?

 

 

「なのは!!」

「ユーノ、受け止める準備頼む! シンシアハート、飛行魔法!」

《All right》

 

 バインドで止めようとして変な所に掛かったらマズイから、一度俺が直接受け止めて勢いを抑えぃダダダダ!?

 

「まだ動くのキツッ!?」

「貴裕!? 何する気なの!?」

「なのはちゃん受け止める! 俺が受け止めれたらいいんだけど、失敗した時のために下で受け止める準備をお願い!」

「あ、うん! 分かった!」

 

 背中痛い超痛い……でも、ここで頑張らなきゃ男じゃないでしょうに!

 

 

 もう少し――

 

 もうちょうい――

 

 ――今ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャッチ――――っちゃばぁ!!?」

 

 背中ガァッ!? なのはちゃん受け止めた瞬間目の前が真っ白に!!

 何か電気走った!! 全身に電気走っ――あ、ヤバい!? 一瞬受け止めれたけど落とし――

 

 

 

「これならっ! フローターフィールド!!」

 

 ――セーフッ!! 下にいたユーノ君の魔法で受け止め切れったぽいな……っし、俺も下に降りよう。

 

 

「悪い、受け止めきれなくってイダダダダ……」

「ううん、勢い殺してくれただけでも十分だよ。まだ回復しきってないなら仕方が――貴裕、後ろ!」

 

 あ? 今度は何――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――こんにちはフェイト様。無表情でデバイス向けてどうしたのカナー?

 

 あ、俺がまだ立ってるからか潰しとこうってか?

 え、マジでしないよね? 追い打ちとかそんな――あ、ダメだ。何考えてるか分からんぞあの無表情……

 

<ユーノ。あの子明らかジュエルシード狙いなんだろうけど、少なくとも今の状態じゃ止めるの無理っぽい……降参して良い?>

<――うん。なのはは気絶してるし、貴裕もダメージが大きいんでしょ? 情けないけど、僕だけであの子を抑えられる自信もない……>

<ん、分かった……>

 

 まあ、全快状態でも勝てる気なんぞ微塵もないけど……視界から消える高速移動なんてどうしろと?

 

 

 とりあえずデバイス地面に置いて、膝をついて、両手を上げイダダダダッ!?

 

「こ、これ以上戦えないですだ……出来れば追い撃ちは勘弁して欲しいんだけど……」

 

 いや、ホント。なんだったら靴も舐めるし土下座しても良いんで、これ以上は勘弁していただきたい……

 

 

 

 

「――行こう。あの猫も遠くには移動してない」

《Yes, sir》

 

 ――よし、猫が逃げた方に飛んで行ったか……

 

「見逃された……のかな?」

「多分……正直ホッとし『ニャアアアアッ!?』――すまぬ、猫よ」

 

 向こうで轟音が――

 うわ、空に穴開いたと思ったら、そこから雷が降り注いで……生で見ると凄いな。

 

「ジュエルシードの魔力が収まった……?」

「あの子が封印したのかね……ユーノ、結界解いたら回復魔法なのはちゃんに頼むわ」

「分かった。貴裕は大丈夫なの?」

「自分で回復魔法使っとく……なのはちゃんの容態は?」

「意識は失ってるけど、どこか怪我をしてるって訳じゃないよ。回復魔法もかけるし、数時間以内には目覚めると思う」

 

 おお、なのはちゃんは原作通りの被害で済んでよかったよかった……

 

 俺は少ししたら動けるようになるし――とりあえずおぶって運ぶか。

 9歳児ならそこまで重くもないだろ……

 

 

 

 ◇

 

 大分動けるようになった俺がなのはちゃんをおぶり、ユーノ君が先導して歩くこと10(・・)分――

 ようやっとお茶会の場所が目視できるところにまでたどり着いたところである。

 

 

 そう、たどり着いたんだけど――

 

 

<貴裕頑張って! 屋敷、いや、あの二人の所まであと少しだから!!>

「死ぬる……水……」

<貴裕ー!? 分かった、今あの二人呼んで来るから!>

「キュー! キューッ!!」

 

 おー、元気だねーユーノ君。俺はこの有り様だというのに……

 

「あれ、ユーノ? あ、やっと戻って来た!! 遅いわよ! どれだけ待ったと――あれ、なのはおぶってるの?」

「本当だ。どうし――なのはちゃん寝てる?」

 

 ええ、ちょっと年上の威厳でも見せようかと思いましてね?

 気絶してるなのはちゃん運んできたんですよ。

 

 その結果がね――

 

「貴裕、何があったの――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――本当になにがあったのよ!? 汗だくじゃないアンタ!! あ、足も震えてる!?」

 

 今度は膝が笑うのを隠せませんでした――

 

 

 や、最初に背負った時にはそこまで重いとは感じなかったんだ!

 26㎏前後(小3女子平均体重)なんて大したこと無かったけど、乱暴に運ぶのもなんだしゆっくり歩いてると段々と疲れが溜まってくるんだもの!!

 

 あと、あれ一回膝着いたらもう駄目! 

 半分ぐらい歩いた地点で片膝着いて少し休んだけど、もう一回立ち上がるのスゴイ苦労した! 

 余計に重くなったように感じたもの!

 

「ユーノ追っかけてたら、こけて頭ぶつけて気絶……おぶってきたけど、敷地広過ぎ……あと、11歳の子供が9歳の子供を数分間背負い続けて歩くって思ったよりキッツイの……」

「え、寝てるんじゃなくて気絶!?」

「と、とりあえずゆっくり下ろして横に「ここまで地面に着けずに来たんだから、ベットまで……!」――何なのよその無駄な意地は!? さっさと降ろしなさい! 屋敷までその状態で運べると思ってるの!?」

「ぬうぅ……」

 

 せめて土の上じゃ無くて芝生にっと……

 あ、もう俺も立ってるの無理。地面で良いから座ろ……

 

「あ゛ー、しんど……足伸ばせるって素晴らしい……」

「お、お疲れ様です……なのはちゃん大丈夫かな……」

「こういう場合ってあんまり動かさない方が良いのかしら……」

「とりあえず恭也さん達呼んで「うぅ……ん……」――え、もう起きたの?」

 

 まあ、ゆっくり歩いたとはいえ幾らかは揺れただろうし、草のチクチクした感じとかもあるだろうしそれでか?

 

「あ、なのはちゃん目が覚めた!?」

「あれ? でも、こんなにあっさり目覚めるなら、俺が必死こいて運んだ努力って無駄――いやいや、なのはちゃん大丈夫? 立てる?」

「ふや? あれ、私なんで……うん立てゆよー、っとと……」

「ちょっ!? 危ないわねー、もう!」

 

 一瞬こけるかと思ったけど、アリサちゃんが無事キャッチ。

 まだ意識がはっきりしてないのかね? 呂律回ってないとことかストライクです。

 

 

「全く心配したんだから……頭打ったったらしいけど、大丈夫なの?」

 

 アリサちゃんはホントにええ子やね……なのはちゃん、こんな友達がいて良かったねえ……

 

 

 

 

 ってあら? なのはちゃん、アリサちゃんを見た瞬間に固まってどうした――

 

 左の拳をふりあげて――?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、でばいんばひゃたー!!」

「へむっ!?」

 

 ――尊い友情に対して、まさかの左ストレートでお返し!!? 

 

『えっ!?』

<ちょっ、なのは!? 何してるのさ!?>

 

 や、力も何も籠ってないへなちょこパンチだったから痛くはないだろうけど、なんで――あ、あれか? 

 意識はっきりしてない時に、金髪・外人風の顔立ちがあったもんだから、フェイトちゃんと勘違いしたのか!?

 

「――ってあれ? 魔法は? レイジングハートは「ふふふふふ……」――ふぇ? なんでアリサちゃんがここに? あれ? そういえばここは?」

「人に心配かけておいて……いきなり何すんのよこのバカチンがああああッ!!!!」

「ふやっ!? アリサちゃん何を――いひゃいいひゃいひゃい!?」

「『何を』!? どの口で言うワケ!? あああぁぁぁぁん!?」

「ふ、二人ともダメだよ! ねぇったら!」

「何だこのカオス……1話の再現? や、それより誰か水くれない? 脱水症状起こしそうなんだけど……」

「ナ゛ーオ」

「ああ、マダムさっきぶり。もうこの際猫用の水でもいいから持ってきてくれな――あ、ちょっ、待って、今はダメ。今足の上にマダム(約10kg)とか乗っかられたららめええええええええええええッ!!!」

<貴裕ーッ!?>

 

 

 

 

 アリサちゃんがなのはちゃんの頬をつねる攻撃を止めたのは、すっかり頬が赤く染まる頃――

 なのはちゃんが涙目になり、ゴメンナサイの気持ちでいっぱいになるまで続けられた……

 

 

 

 まあ、原作みたいなションボリ&シリアスモードで終わるのよりかは全然マシだと思うけどさ…………どうしてこうなったし……

 




平凡(え?)なオリ主「この程度の怪我……どうってことない! 守って見せる!」
どっかこっか折れてたり、血だらけになりながら戦闘→勝つ→へへ、勝ったぜ○○!(ニコッ→ポッ///

現実「この程度の怪我……すいません、誰か救急車呼んで……」
どっかこっか折れたり、血だらけになる→痛みで動けない→やーい、この役立たず!


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