高二病抜け切らなかった人が中途半端な力で   作:mahiro

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今回の9話は、合間にプロローグの話が入る形になっています。
(◇が縦に連続している部分)


第9話 「街は本気で危険がいっぱいなの?」

 日曜日の午後。とあるサッカークラブの少年とマネージャーは、珍しく二人っきりになって歩いていた――

 

「今日も相手を無得点で抑えて勝っちゃうなんて、すごいね?」

「うん、ウチのチームはディフェンスがいいから」

「そうだね……えと、健人君もしっかり守ってたし、とってもカッコ良かったよ?」

「ホント!? あはは、ありがとう!」

(やった! ちゃんと見ていてくれたんだ……ソレにカッコ良いって言ってくれた!)

(大丈夫……みたい。うん、喜んでくれてる――『とりあえず、よさ気なことがあったら褒めとけ。やりすぎるとウザがられるかもしれんけど……』だっけ? どのラインから褒めたら正解なのか難しい……笑ってる顔もカッコ良いな……)

 

 初々しく甘い空気の中、少年はあるモノを取り出しプレゼントしようとする――

 

「あ、そうだ。コレ上げるよ」

「え……わぁ、綺麗だねー! 青い宝石(・・・・)?」

「ただの石かもしれないんだけど、綺麗だったからさ……」

「ありがとう! すっごい嬉しいよ!」

(よし! 予想以上に喜んでくれた! 『アクセサリーでも何でもいいからプレゼントすれば?』だったか? 成功だぞタカ!)

(わー! わー! プレゼント貰っちゃった! 『あいつ女子にプレゼントなんて、大人数の誕生日会でしか渡したこと無いはずだから、美希ちゃん個人にプレゼントされたら脈アリだと思われ』って言ってたもんね!)

 

 『いい加減くっつけよ、オラ』という考えを持つ共通の友人の仕業により、親密度がアップする二人――

 

(もう少し仲良く出来るかな? もう少し一緒にいられる(・・・・・・・)かな?)

(もう一歩ぐらい踏み込んでも良いんだよね? もう少し一緒にいても良い(・・・・・・・・)んだよね?)

 

 そうして少女の手が少年の手にある宝石に触れる瞬間、二人は考えて(願って)しまった――

 

 

一緒にいたい(・・・・・・)……あ、この後何話そう? 折角喜んでくれてるみたいだし、もう少しなんか……ああもう、タカがいれば(・・・・・・)! 適当に話繋いでくれるのに!)

一緒にいたい(・・・・・・)……この後どうしよう? 折角少しは脈ありって分かったんだし、もう少しお話を……ああ、貴裕くん来てくれ(・・・・・・・・)ないかな? そうすれば話が続く――いや、でも二人きりっていうのも邪魔されたくない(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)し……)

 

 青い宝石に触れながら、好きな人のことと――

 

 

 

「かっ飛ばせー!」『やーまぎしっ!』「一発か、ま、せーっよ!」『燃えろっ!!』

 

 そんなことになってるとは知らずに、野球チームの皆とノリノリで応援歌を歌っている少年のことを――

 

 

 

 

 

 

第9話 「街は本気で危険がいっぱいなの?」

 

 

 

 

 

 日曜日、よく晴れたスポーツ日和の今日。

 なのはちゃんはお疲れ気味&友達とサッカー観戦の約束、俺も野球の試合があるので、今日のジュエルシードの捜索はお休みである――――いや、もちろん今回起こるはずの『人が発動させたジュエルシードによる樹木暴走』のことは忘れちゃいない。

 

 最初は野球なんぞ休んで参加しようと考えていたんだけど……

 今回の暴走事件。よくよく考えれば、流れを乱さないように上手いこと介入できる場面ってないよねアレ?

 

 

 原作の流れを大雑把にまとめると、『カップルが発動させる→木が生えてくる→なのはちゃん失敗悔む→長距離砲撃発射!→封印終了→反省・決意を新たに』みたいな感じだったはず…………介入できるのドコー?

 

 生えてくる木だって襲ってくるわけでもない、出てきたらそこで終了。

 使用する魔法なんて、なのはちゃんのサーチ&デストロイ(桜色ビーム)だけで十分。

 

 そんな中で俺がやれることといったら、ボーっと横で突っ立ってる・励ましの言葉を掛けるだけという素晴らしいまでのいらない子状態……

 いても空気で終わるなら、最初っからいなくても……ぶっちゃけサーチャー飛ばすだけで良くね?

 

 まあ、余分なモノ(俺の活動)が入ってない絵も一つは欲しいなっていうのもあるんだけどネ……

 

 

 ――そんなわけで、ユーノ君に『サッカーどうだったー?』とか念話で探りを入れて、タイミングを見計らい監督に『体調悪くなったんで休まして下さい』と嘘吐いて交代させてもらいベンチに引っ込んだ。

 それからは、飲み物飲みに行くふりして、バットケースの中に仕込んであるデバイス(いつもよりミニサイズで展開しようとしたら意外と簡単にできた)を使ってステルスサーチャーを出し、定期的に魔力も注いでいる。

 

 ちなみにサーチャーを設置した場所は、アニメでなのはちゃん・ユーノ君が高い建物で封印の作業を行ってたからそこに――と思ってたんだけど、どの建物か判別つかなかったので結局は高町家の門の前に待機させておいて、なのはちゃんが出てきたら追跡するように設定した…………多少の犯罪臭はするけど、エロ目的じゃないならイイヨネ? ウン。

 

 

「貴裕。さっきから大声出して応援してたけど大丈夫なの?」

「そうだぞ。具合悪いんだったら大人しくしてろ」

 

 あら、父さん母さん。せっかく応援来てもらったのにスンマセンね……

 や、引っ込むまではそこそこ活躍したんですし勘弁して下さ――あ、ダメだ。

 親の期待を裏切って何してるかっていうと、小学生の盗撮の準備とか罪悪感ガガガ――

 

 

 ◇

 

 罪悪感に押しつぶされそうになってから数分。

 懲りずにサーチャーに魔力を補充にしている時、いつものジュエルシードが発動した時の感覚があった――

 

<貴裕! ジュエルシードが発動したみたいだ! そっちからは何か見える!?>

 

 ユーノ君から早速念話が……対応ホント早いのね?

 まあ、今いる場所は海鳴市の端の方で中心街から外れてるから、見えないのは分かり切ってんだけど。

 

<いや、こっちには特に変化見えない。多分だけどユーノ達の方が近いんじゃない?>

<分かった、確認してみる!>

<貴裕くんは直ぐこっちに来れそうなの?>

<ちょっとこっからだと遠そうだし、試合やってる(・・・・・・)から難しいかも……抜け出せるか微妙……>

<うっ、そっか……>

 

 嘘はついてないヨ? 試合は確かにやっている(行われている)。俺はもう応援しかしてないけどネー。

 

<――分かった。それじゃあ今回は私とユーノ君だけでやってみる!>

<了解。二人とも頑張って! 無理はしないように!>

<うん!><分かった!>

<何かあったら念話してね? じゃ!>

 

 ふぅ、誤魔化し完了……我ながらクズっぷりが酷いけど、どっかでバチあたるんじゃなかろうか……

 

 

 

 ――サーチャー飛ばして元がどこかぐらいは探しておこう。

 いざ何もしないとなるとチキンハートに罪悪感湧いて来る……

 

「シンシアハート、撮影用のサーチャーの3分の1を発動したジュエルシードの探索用に切り替えて」

《All right》

 

 まあ、何もしないよりはマシって程度だけど……

 

 

 さて、いい加減ベンチに戻りますか。

 いつまでもバットケースに手を突っ込んでるのも怪しまれるし――――ん?

 

 

 

 

――――ズズズズズ――――

 

 

「ねえ、さっきから何か変な音しない?」

「ああ、する……ってか地味に揺れてないかコレ?」

「タイム! 皆さん、地震が起きた様なので、揺れが収まるまで建造物から離れて待機して下さーい!」

 

 

 

 

 

 ――いや、タイミング的に地震じゃ無くて、ジュエルシード暴走した木が来てるんじゃねコレ!?

 

 え、マジで? わざわざこんな町はずれの所まで?

 ってかあれって海鳴市全域まで届いてったけ? 町の中心だけだったような……

 

 揺れが終わるまでは、一応バットケース(デバイス)持っとくか……なんか怖いし……

 

「田中ー! さっさとベンチ戻れー!」

「あ、はーい! 今行きま――ずえあっ!?」

 

 痛ッ! 何か足に引っかかってこけたし……一体何が――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ヤダ何このぶっとい木の根?

 

 え、ヤダ何コレ。近くに木なんて生えてないよ、何で地中から生えてんの? 

 

「え? や、ぶっちゃけ何かは予想付くけど何でおれの足に捲きついてんの? あ、今何か動い、え、体全体に捲きつい、ちょ痛、いだだだだだあっ!?」

 

 根っこが滅茶苦茶締めつけて来るんですが!? ちょっ、呼吸するのもキツッ……

 

 

 

――――ボコボコボコ――――

 

 

 

 長い根が地中からぶち上がって来て――いやどっから伸びてんだコレ!? 

 

 明らかジュエルシードのやつだよなコレ!? 何でこんな遠くまで俺のとこピンポイントで来たし!?

 あれ、まさか現場からここまでずっと伸びて――え、まさかの原作よりも被害拡大?

 

「こんのっ!? 離せコラ! 離せ――あ、待てまだ離すなもう上に伸びなくて良いからってか止まれ止まって止まって下さいって言ってるじゃないですか!?」

 

 お願い待って高い高い高い高いって!! 落ちたら骨折レベルじゃすまな――そうだ魔法使えば!

 

 デバイスは手元にあるんだ、とりあえずバリアジャケットを装備してから封印を――

 

「シンシアハート! バリアジャケット形「た、貴裕?」――せい?」

 

 あれ、何か凄い大事な事忘れてたような――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、何が、木の根、あ? えっと?」

「え? 何が……え? 貴裕が持ち上げられ、え、どうして?」

 

 

 ――あらやだ、混乱状態のマイペアレンツが俺をガン見してる……

 

 ああ、そういえば周りに人いましたね。両親どころかここにいる全員が呆然とした顔で俺を見てる……

 

 

 

 

 

 

 

 ――え、この状況で魔法使えなくね?

 

「えーっと……どうすれバゥッ!?」

『貴裕!?』

 

 急激に強いGを掛けるのはいかがなものかと思います!!

 俺を捕まえたまま、いきなり根が高速で――市の中心の方に引っ張てんのか!? 

 ちょ、ホントに速いって! もうグランドから離れてるってどんだけ――いや、でももう父母や野球チームの皆(俺の顔知ってる人)からは離れられたし、この速さなら他人に見られても個人の特定はされないだろうから魔法が使える!

 

 締めつけもアレだけど、身動きできない状態なのにこの速さでどっかに叩きつけられる方がヤバい! 

 とりあえずバリアジャケットを装備すればどうにか――

 

「シンシアハート! 今度こそバリアジャケットの形成を!」

《――Sorry, it is impossible……it was the public, but I was going to try it since the dangerous situation included you……I couldn't do that(申し訳ありません、不可能です……人前ではありましたが、あなたが危険な状態になった時からすでに試してはいたのですが……出来ませんでした)》

「――は? 何でイダダダダダッ!?」

 

 本物の木に俺ごと突っ込みやがっ――ちょ、枝痛い、葉が痛い、皮膚が! 皮膚が切られる!?

 

《The barrier jacket is made with a magical power, but making is inhibited probably because a reckless driving body with vast energy adheres to a body(バリアジャケットは魔力で作られるのですが、莫大なエネルギーを持つ暴走体が体に密着しているせいか、作成が阻害されてしまうのです)》

「魔法がらみなのにそんな半端に現実味のある問題なんていらんぞ!? どうしろっちゅうんじゃ!? バインドで動き止めれるかも怪しいし、このぶっとい根を破壊できる魔法なんて使えんぞ!?」

 

 身体能力チートも、魔法以外の特殊能力持ってないんだぞ!? まさかのもみじおろしDEADEND!?

 

《There is slightly more quantity of your magical power than average. So we set up 『Protection』 only when it is really dangerous and let it go past, we will apply for help to them (あなたの魔力量は平均より少し多い程度です。なので、本当に危険な時だけプロテクションを張ってやり過ごし、彼女達に助けを求めましょう)》

「何それカッコ悪!? いや、そんなこと言ってる場合じゃないけどカッコ悪!!」

 

 せっかく二人に信頼――されてるかどうかわ分からんけど、それなりのコミュニケーション取れてるのにそれはカッコ悪いって!!

 

「他に何か方法は《Warning! There is a building fitted with glass in the predicted line!(警告! 予測される進行方向にガラス張りの建物があり!)》――いやああああ!? プロテクション!!」

 

 ああああガラスが全部割れて!? 一体いくらの損失に……

 

 え、次は街路樹かするかもって!? 連続とかマジで止め……え、プロテクション張るほどじゃない? 

 いや、あれ結構痛いイダダダダダ!? 

 

 

 ◇

 ◇

 

 

 建造物にぶつかりながら、今までを振り返って神様転成について考えてみたり、途中で見かけたなのはちゃん達にヘルプを求めたり。

 

 そんな事をしてから数分間過ぎた私は――

 

 

 

 

「もう精神・体力共に限界なんだぜ……いつまでこの状態なの俺……」

「クソッ! 攻撃が当たらない……速すぎる!」

「レイジングハート! お願い、もっと速く飛んで!」

《All right》

 

 ――未だに木に巻きつかれたままフルボッコ状態である……

 ユーノ君を肩に載せたなのはちゃんが、飛行魔法使って必死に追いかけて来て、木に攻撃とかしてくれてはいるんだけどね……

 

 

 そういえば、なのはちゃんはもう飛行魔法使いこなせるようになったんだ。すごいねー?

 でも見て見て、俺もこんなに早く空を飛んでるんだヨー? 凄イデショー? ウフフフ……

 

「どうすれば……そうだ! 貴裕、一回そっちで――また前みたいに目が虚ろに!? 貴裕ー!?」

「貴裕くん大丈夫!? 気をしっかり持って!!」

「『気』? ナノハチャン俺『気』ナンテ持ッテナイヨ? ダッテソンナノ持ッテタラ世界観壊シチャウジャナイ。コレダカラ公式チートノ言ウ事ハ……チートイイナァ……妬マシイ妬マシイ――」

「ユーノ君どうしよう、貴裕くんの様子が変だよぉ……」

「だ、大丈夫――いや、やっぱりマズイかもだけど……」

 

 妬マシイ妬マシ――イだぁっ!? 

 また、何かにぶつかって……あれ? 俺さっきまで何考えてたんだ?

 

「ん? あ、ユーノ、今何か言いかけてなかった?」

「あ、良かった正気に戻った――じゃなくて、少しで良いからバインドで根の動きを止めて欲しいんだ! なのははその時に貴裕に捲きついてる根を攻撃して!」

「うん、分かった! 貴裕くんは行ける!?」

 

 おお、やっとこさ解放の糸口が! 俺のバインドでも数秒程度なら多分止められる……はず!

 

「それならいけそう! なのはちゃんの方は大丈夫なのか!?」

「うん! 攻撃魔法はさっきから使ってるおかげで大分扱いも慣れたし、止まってさえいれば出来ると思う!」

 

 おお、頼もしいお返事!

 

 

 ――さっき俺のすぐ傍をシューターが通り過ぎたりしてビビってたんだけど、安心していいんだね? 

 外したことだけに意識がいってて、俺に当たりそうになったことに気づいてなかったみたいだけど任せて良いんだね!?

 

 

「貴裕、早くバインドを! なのはは攻撃の準備!」

「うん! レイジングハート!」

《Divine Shooter》

 

 なのはちゃんの準備は万端か……

 じゃあ、こっちもバインドの準備をと。いつも使うより魔力を多く籠めるイメージで、動きを止めるために根に二つ――

 

 

「行くぞ! リングバインド!!」

 

 よし、掛かっ――

 

 

 

 

 

 

 

 ――た瞬間に根が体に食い込みッ!? 

 

「今度こそ決める! シュートッ!!」

 

 慣性の法則(人体模型殺し)……! バインドで止めた瞬間、思いっきり叩きつけられたような衝撃が……

 

「やった、成功し「オボエェ……」――あれ? 貴裕が落ちて――マズイ!?」

 

 

 あ、ヤヴァイ。根も切れて解放されたけど、飛行魔法使うどころかバインド維持する余裕すら無い……

 

 落ち――

 

 

 

 

 

 

「――っと! 危なかったー……貴裕くん大丈夫?」

 

 んあ? なんか柔らかくて暖かい……何が――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――まさかのお姫様だっこですか、そうですか。

 ヒロインをお姫様だっこするんじゃなくて、ヒロインにお姫様だっこされるんですか。

 年下(9歳)の女の子にお姫様だっこされてるんですか……

 

「もうヤダ何コレ……貴重な体験だけど恥ずかしさと情けなさで死にそう……」

「ええ!? どうしたのいきなり?」

「何でもないヨー? 僅かに残ってた男の尊厳がブチ壊れただけですヨー?」

「あ、あはは……僕にはちょっと分かるかも……」

「うーん? とりあえずそこの歩道に降りるね?」

 

 何コレ、ヒロインと密着状態なのに全然嬉しくないんですけど……

 

「んしょっ。着いたよ貴裕くん」

「ありがと……地面に足がつくって素晴らしい……あ、そうだ。シンシアハート、回復魔法を」

《All right. Physical Heal》

「うわ、傷も多いし服もボロボロだね……あれ、バリアジャケットは?」

「人前で急に来たもんだからやる暇なかったし、暴走体が捲きついてる状態だと機能しないんだって…………いや、ホント二人ともありがとうね。今回はマジでヤバかった……」

「気にしないでいいよ。困った時はお互い様だよ」

「なのはの言う通りだよ。それよりなんで貴裕はアレに捕まってたの?」

「俺もわからん。いきなり地面から出て来たと思ったら、すぐ引っ張られたから」

「そっか……とりあえず先に封印をしよう。なのは、さっきみたいに探索魔法使う事は出来そう?」

「あ、うん。貴裕くんが急に出て来た時に使ってた魔法の事だよね?」

 

 うわ、あのシーンだったんだ。もしかして中断させちゃった?

 

「二度手間かけて悪い《Master, I discovered the jewel seed which we were looking for in searchers(サーチャーで探していたジュエルシードを見つけました)》――へ?」

「え……まさかあの状況で探索魔法を使い続けていたの!? 君ってやつは……」

「貴裕くん……」

 

 え……あ、止めて!? そんな純粋な目で見ないで!? 

 違うの! 盗撮するだけじゃ罪悪感あったからちょっと手を出しただけなの! 

 

 だからそんな尊いものを見る様な眼でこっち見ないで!! 

 

《Send coordinate information to Raising Heart. And take out the picture(レイジングハートに座標情報を送信。映像も出します)》

 

 二人の純粋な目が俺を射殺そうとしてくるぅ!! 早く封印作業終われ早く終わ――――あれ?

 

 

 

 

 シンシアさんの出した映像にジュエルシードのある場所――発動させたであろう、少年少女が見えるんだけど……

 

 おっかしいなー? どっかで見た事あるぞあの二人。

 具体的には俺のクラスで、俺の友達の――

 

 

 

 

 ――ってかどう見ても健人と美希ちゃんじゃね?

 

「この男の子……! やっぱり、あの時の子が持ってた「ハハハハ、そうかそうか、お前らが原因かこの糞ガキ共め……!」――ど、どうしたの貴裕くん? スゴイ怖い顔だけど……」

 

 アレか、俺のアドバイス通りプレゼントしたのか!? 『ジュエルシード』を!

 そんでプレゼント受けとって脈有りだと分かったから、もっと傍にいたいとかそういうこと願ったのか!? プレゼントされた『ジュエルシード』に触りながら!

 何か気恥しくなって『貴裕が居ればなー』的な事考えたりしたのか!? 『ジュエルシード』に触れながら!

 

「なのはちゃん、こっから封印出来る? 出来るよね!?」

「う、うん! すぐ封印するよ!」

「遠くからじゃ無理だよ! 近くに行かなきゃ!」

「えと、多分出来るよ! 大丈夫!」

「よし! 確実性を増すためだ、俺の魔力をあげる。くれぐれも全力で! よろしく!」

《Divide Energy》

「貴裕くん、まだ怪我直しきってないのに……目とか血走ってるけど大丈夫?」

「大丈夫。さあやろう、今すぐやろう、全力でやろう!!」

「ひゃ、ひゃいっ!! レ、レイジングハート!」

《ShootingMode, Set up》

 

 レイジングハートが変形し始める――

 そういえば、なのはちゃんの封印生でじっくり見るのってこれが初めてなんじゃなかろうか?

 

「捕まえて!」

 

 封印準備の為(?)の一射目が撃たれる――いいぞもっとやれ!

 

《Stand by ready》

「リリカルマジカル! ジュエルシードシリアルX――封印!!」

《Sealing》

 

 轟音と共に桜色のぶっといビームが――――ん、直撃したな。

 ダメージなんて無いんだろうけど、気持ち的にちょっとスッキリ。

 

 

 周りにある木も段々消えていくし……ってうわ、破壊の痕が見えて痛々しいな……

 

 

 ◇

 

 空も夕焼けに変わった頃。

 砲撃によって封印されたジュエルシードが、ようやくレイジングハートに収納された――

 

「ありがとう。レイジングハート」

「傷は粗方治せたっぽいな……シンシアハート、お疲れ様」

《《Good bye》》

 

 今回のはこれで終了っと……

 あー、体の傷は直せてもユニフォームが酷い……ボロボロだわ、土まみれだわ、血が滲んでるわで。

 

 

 まあ、それよりも――

 

「結構被害大きいな……ここら辺以外にも、俺のいたところまでずーっとって……」

「うん、いろんな人に迷惑かけちゃったね……」

 

 あ、やべ。シリアスパート残ってたのにこの発言は良くなかったか……

 

「え? そんな、なのは達はちゃんとやってくれてるよ!」

「――私、気づいてたんだ、あの子が持ってるの。でも、気のせいだって思っちゃった……そのせいで、街も、貴裕くんも、しなくてよかった怪我をいっぱいして……」

 

 おおう? まさかの俺の傷も自分のせいだと勘違いしちゃってる!?

 ああ、座りこんじゃったし……本格的に落ち込んじゃったよ、オイ……

 

「なのは! お願い、悲しい顔しないで……元々は僕が原因で、なのは達は手伝ってくれてるだけなんだから……」

「なのはちゃんのせいでも、ユーノのせいでもないって! ほら、顔上げなって、なのはちゃん」

「ううん、私が……」

 

 あー、予想以上にダメな感じだな。

 なのはちゃん責任感強い分抱え込みやすいのよね……

 

 

 

 ――しゃあない、一歩間違えればSEKKYOになりかねんけど、たまには年上としてお話してみますか……

 

 

「なのはちゃん。俺の話を『貴裕!』――あれ、父さん母さん?」

 

 何で俺がここにいるって分かったんだ――ああ、ここからほぼ一直線に地面めくれあがってるんだもん、簡単に分かるか……

 あ、もしかして未知の存在に連れ去られた我が子を助けに来た感じか? 

 そんなに、慌てて……ええ親や――

 

 

 

 

 ――あら、愛の抱擁ですかって、イ゛ッダアっ!?

 

「ちょ、キツイ! 個人的に木の締め付けよりキツイ!? 残った傷と服がこすれてッ……!」

「怪我は!? どこか痛い所はあるの!? ああ、もうこんなにボロボロになって!」

「待ってろ直ぐに病院連れてってやるからな! もう怖くないからな! 大丈夫だからな!」

 

 お二人とも怪我は殆ど治ってるから待って! 愛の抱擁の方が痛いんですが!? むしろ今はアンタらの方が怖い!? 

 

 や、心配かけたのは悪いけどもう大丈夫だから!

 まだイイ話もしてない――ほら、ユーノ君もなのはちゃんもポカーンとした顔でこっち見てますって!

 

 

『さあ、病院行こう!!』

 

 待ってホントに落ち着いて!? いや、そこまで心配してくれるのは嬉しいんだけどね!?

 

 ほら母さんの大好きなのはちゃんもそこにいる――まさかのアウトオブ眼中か!?

 ってうお!? いきなり持ち上げて何――わー、おんぶなんて久しぶりだなー、お父さんの背中広ーい?

 

 

 ――じゃなくて待って!?

 

 

「いや、ホントにもう大丈夫だから二人とも落ち着いて!? 分かった! 病院行くから少しだけなのはちゃん達と話を「もう大丈夫だからね!? お父さんとお母さんが居れば安心だからね!?」――いや、だから「安心しろ! 病院まで車で直ぐだからな!? 直ぐ怪我なんて治してくれるからな!?」――うん、わかった……」

 

 もう抵抗しないから……

 

 

 

 

 

 ――車に積み込まれ病院に直行し、着いた瞬間今度は父にお姫様だっこで運ばれました。

 

 そこで服のボロボロさを見た医者がとんでもない事故にあったものだと勘違いして即診療する事に――

 

 診療終わった後は念のため入院する事になり、病室に行く途中で車いすの女の子を見かけたような気がしたけど、そんなの関係ないと言わんばかりに父と母が俺の心配をしてきたので、関わることなんて出来なかった……両親の愛って偉大ダナー?

 

 結局、なのはちゃん達にフォロー(念話)したのだって夜の9時過ぎになってからだった……

 

 親子の間にある絆を再認識する事が出来た一日だったよ…………いや、どうしてこうなったし……

 




 家族愛は偉大

 ――いや、今回の話ではネタ的に扱いましたが、作者はバカにしたいわけではないのでご勘弁を。


 ◇

 クールなオリ主「こんな非道な実験を子供達に……恥を知れ(ゴゴゴ」
 怒りに震え凄い技繰り出す→ぶっコロ→悪は滅びた……もう大丈夫だよ(ニコッ→ポッ///

 ――お前それ知ってたんだし事前に防ぐ力もあったのに、今更何言っちゃってんの?


 >お前らが原因かこの糞ガキ共め……!
 
 ――残念、オリ主にも原因はあります。棚上げ・八つ当たり、ダメ、絶対。 上のと同レベル。

 2014年2月 今話のタイトルを地味に変更

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