~003~
遊園地の名前は『エンジェルランド』。アミューズメント型のテーマパークである。
2年程前に大幅全面改装を行い、リニューアルオープンに伴って『エンジェルランド』に改称したらしいのだが、元々の名前は『ランドセルランド』と言ったそうだ。
その頃――まだランドセルランドと呼ばれていた頃は、その前衛的かつユニークで可愛らしい名前からは想像もつかない、過激なアトラクションで埋め尽くされていたらしい。
一言で言い表せば、“阿鼻叫喚”。
情報雑誌などには、『天国に一番近い遊園地』と紹介・揶揄されていた程だ。
この場合の『天国』とは、あの世……地獄と言い換えても差し支えない。別に事故が起こって死人が出たという訳ではなく、それ程までにスリリングな体験が約束されていると言うことなのだけど。
恋人同士で行くと、その半数は別れる結果になると言う都市伝説まで存在する。その為、カップルで訪れる者は殆どいなかったようだ。
そんな、型破りな遊園地ではあるが、どう罷り間違ったのか、それなりの盛況を博し、順調に時代の波に乗っていたらしい。
だがしかし、不況の影響で徐々に業績が悪化し、このままでは閉園も免れないという状況になり、起死回生をかけ一念発起し、リニューアルに踏み切ったそうだ。
エンジェルランドという名前は、『天国に一番近い遊園地』からの連想なのだろう。
今では、恋人や家族連れ、県外からの学生団体、老若男女、誰でも楽しめる万人受けする遊園地へと変貌するに至ったとのことだ。
電車に揺られること一時間半と少し。3回の乗り換えと、バスの経由を経て、目的地である遊園地、エンジェルランドに到着した。今は丁度10時なったぐらい。開園は9時なので、既に入場口は人で賑わっていた。
まずはチケット売り場に向かい、二人分の入場料を支払う。
入場チケット自体がそのまま園内パスポートになっているので、中のアトラクションは全て乗り放題だ。
となれば、乗れば乗るほど元手が取れる――なんて、せせこましい考えはなしにして、千石のペースにあわせて、ゆっくり楽しめばいいだろう。
勿論、今日は千石へのご褒美で来ているのだから、彼女にお金を出させるなんて真似はしない。
「……暦お兄ちゃん、本当にいいの?」
予想はしていたが、僕が全額負担するのを気に病んでくれ、千石の全身から申し訳ないオーラが漂っていた。
「当たり前だろ。今日はお前へのご褒美で来てるんだから、これぐらいさせてくれ」
「…………うん。暦お兄ちゃん」
「さ。今日は楽しもうぜ、千石」
「暦お兄ちゃん。本当にありがとう」
律儀に頭を下げてお礼してくれる千石だった。折角の遊園地なのだから、気兼ねなく、心の底から楽しんで貰えたらなと思う。
とにもかくにも、逸る気持ちを抑え、入場ゲートに向かう。これでいて僕も、年甲斐もなく遊園地に来て、浮かれているのかもしれない。
入園する際に、チケットと引き換えで、園内の地図や概要が書かれたパンフレットを受け取った。
園内には、もう人の姿が結構あり、楽しそうな笑顔で溢れかえっている。家族連れや、友達同士、カップルの姿など客層は満遍なくといった感じ。
あとよく目に付くのが、この遊園地のトレンドなのか、天使の輪を頭に乗っけている人がちらほらといた。黄色い輪っかが宙吊りになって浮いている。
要はネズミの国でも見かけられる、ネズミ耳のカチューシャみたいなものだ。
一番近い表現は『灰羽連盟』の光輪を固定する器具のような感じなのだが、多分伝わらないだろうな。
何にしても、僕が装着するのは、少し恥ずかしいかもしれない。
また、旧遊園地のキャッチフレーズ――『天国に一番近い遊園地』は今現在でも有効のようで、園内のアトラクションの高度には、かなりこだわりがあるようだ。
ジェットコースターやフリーフォール、観覧車などは世界有数の高さを誇るらしい。中でも、観覧車の大きさは、離れたこの場所から見ても圧倒されるものがある。その偉観は圧巻だった。
「ふ~ん。なかなか施設も充実してるんだな。結構いろんなアトラクションがあるようだし……千石は何に乗りたいんだ?」
僕は、手元のパンフレットを見据えつつ、千石に問いかける。
「う~ん……何がいいかな」
僕がパンフレットを開いて確認していると、横合いから千石が覗き込んでくる。
千石にも同様のパンフレットが配られたはずなのだが…………まあこっちの方が、指差し確認なんかも出来て一緒に相談しやすいし、都合がいいか。
二人で顔を寄せ合っている姿は、周りから見ればきっと仲のいい兄妹みたい見えるんだろうな。
そうして、しばらく悩んだ末に千石が出した答は意外なものだった。
「やっぱり……ジェットコースターがいいかな」
「千石……大丈夫なのか? ……此処のは特に怖いらしいぞ」
「うん。大丈夫」
「へぇ、そっか……」
本心として、僕が大丈夫じゃない。嫌いとは言わないまでも、あまり好き好んで乗りたくはないのが正直な所である。
「寧ろ大好きだよ」
「…………そうなんだ」
思いの他と言うべきか、意外や意外、千石は絶叫マシーンなどの過激なアトラクションを苦手としている訳ではないようだ。あんなに自転車を怖がっていたのは何だったんだろうか…………。
「うん。これ乗ってみたかったの。これだけは外せない」
有無を言わせぬ、確固たる決意を感じさせる声。こんな意思の強い千石はなかなか見れたものではないな。
そもそも遊園地に行きたいというのは千石たっての希望だったのだから、不思議でも何でもないか。
遊園地の乗り物の大半は、スリルを味わうもので占めてるわけだし。
今日は千石に付き合うと決めた以上、ここで引き下がるわけにはいかないよな。
腹を括り、ジェットコースター乗り場に向かう僕達だった。
~004~
人は見かけによらないとは、よく言ったものだ。
好きと言っても、それなりに怖がりはするだろうと思っていたのだが……千石の絶叫マシーンへの恐怖心は皆無だった。
僕が悲鳴に近い叫び声を上げているのに比べ、千石は叫ぶと言っても歓声なのだ。ジェットコースターで両手を上げるぐらい朝飯前といった感じ。
まあ内気少女の照れ屋ちゃんである千石が、そんな事するわけないけど。
千石の要望通り、ジェットコースターに乗った後も、バイキング(大きな船の乗り物が、振り子のように大きく揺れるアレ、ここのは一回転した)、フリーフォール(真上に上昇して垂直急降下するやつ)と、過激なアトラクションが続いて、僕は疲弊気味。千石はけろっとしたものだ。
そして次に僕と千石が訪れたのは、『迷宮ダンジョン』。
迷宮といっても、ただの迷路なのだけど、僕的にはひと息つけそうで願ったり叶ったりだ。
待ち時間もそこそこに、係員の誘導のもと、『迷宮ダンジョン』のスタート地点に案内される。
「こ、暦お兄ちゃん」
前の組が出発したら僕等もスタートと言う間際になって、僕の袖をくいくいと引っ張りながら、千石が呼びかけてきた。
「どうしたんだ千石?」
「お……お願いがあるんだけど、い、いいかな?」
伏し目がちなのに加えて、千石の顔が麦わら帽子のひさしに遮られてよく見えないが、なんだか恥ずかしそうだ。
ちらりと垣間見えた顔の色は真っ赤だった気もするし、声も少し上擦っている。
「千石のお願いなら何でも訊いてやるぞ。何でも言ってくれ」
しかしながら千石の方から僕にお願いなんて珍しい。千石の頼みなら無条件で叶えてやりたくなる。
「あ……あの…………て……てを……」
「て?」
「……手を繋いで…………欲しい……な……」
「ん? 手を? おお。何だ、そんなことか」
「いいの!?」
「何だよ、これぐらい構わないぜ」
千石は、もしかしたら暗所恐怖症なのかもしれないな。中は薄暗い迷路のようだし、もし逸れでもしたら大変だ。
千石は携帯電話も持っていないから合流するのにも一苦労しそうだし、最悪――園内放送で呼び出すなんて恥ずかしい真似を、しなくてはいけなるかもしれない。
これは、手を繋いでいた方が安全だし、得策だろう。
「ほんとにいいの?」
「なんだよ、僕と千石の仲だろ」
「な、な撫子と暦お兄ちゃんとの……仲……わ、わ、はわわわわわ」
急に千石が情緒不安定になってしまった。遊園地に来てテンションが上りきってしまったのだろうか?
千石の生態はまだ謎に満ちている。
「ほら、千石」
僕はそう言って、左手を差し出す。ちなみに右手には千石から預かったバスケットを持っている。
「じゃ、じゃあ……お手を拝借します」
なんかその表現では、また違った意味に聞こえてくるな。一本締めをしなくちゃいけないような気がしてくる。
ともあれ、千石が控えめな所作で僕の手の平に、ひんやりとした冷たい指先をそっと触れさせる。
僕の手はそこまで大きくないのだけど、千石の手の小ささと比べると、相対的に大きく感じられた。
なんだこのちっこい生物は!
ま、手を繋ぐことは彼女である戦場ヶ原は当然として、なぜかあの後輩……神原ともあるし、今更恥ずかしがることでもない。
丁度、僕達の番となったので、添えられているだけだった手を、僕がしっかりと握ってやり、千石の手を引いて、ダンジョン(アトラクション的に)に突入したのだった。
~005~
「これは、凄いな」
ダンジョンに足を踏み入れた、僕の率直な感想だった。
辺りは薄暗く、等間隔に設置された松明の灯りだけが頼りとなっている。とは言っても本物の松明ではなく、偽物だと判る光源――人工灯なのだけど、それでもよく見なければ、本物と見まがう完成度だ。
松明で照らされている洞窟を模した通路も、かなり精密かつリアルに出来ている。
通路の広さは、僕が両手を広げたら両端に手をつけるぐらい。二人並んで歩くぐらいならば不自由しない広さが確保されている。
「なんだか、ドラクエの世界に迷い込んじゃったみたいだね」
「だな」
千石の言うとおり内部の構造は、RPGのダンジョンを彷彿とさせた。
作り物ではあるが、トカゲのような生物が岩壁を這い回り、頭上では蝙蝠が飛び交っている。
本当にダンジョンの中を歩いているのではと、錯覚してしまうほどの臨場感がある。
「そういえば千石ってドラクエ好きなんだよな」
千石もこれで、王道RPGはしっかりと押さえている子なのだ。
中でもドラゴンクエストのナンバリングタイトル作品は、僕の知る限りではドラクエ7まではプレイ済みだったはず。
プレステ2は所有していないようなので8は未プレイだと思われる。
「うん。ドラクエは好きだよ。中でも4が一番好きかな。暦お兄ちゃんは?」
「僕はやっぱり、5だな。3も捨てがたいけど。モンスターが仲間になるなんて衝撃的だったぜ」
「撫子も4の次は、5が好きかな」
「千石はなんかフローラってイメージだよな」
「え? なんで?」
「いや、物静かで控えめな感じが千石と似てるだろ」
私見ではあるけれど、羽川がビアンカのイメージで、戦場ヶ原はDS版に登場したフローラの姉、デボラだ(DS版のドラクエ5はやったことないけど)。神原は誰だろう? 新機軸すぎてあいつにあうキャラが見つからない。八九寺はなんか可愛いマスコット的モンスター、スライム系統だろう。
スライム八九寺に、一度くらい噛みつかれたいものだ。
「そうかな……ねぇ暦お兄ちゃん。暦お兄ちゃんは結婚する時はどっちを選んだの?」
千石が僕に訊いているのは、ドラクエ5屈指の重大イベント―――ビアンカとフローラ、この2人の美女の内から結婚相手を選ぶという究極の選択のことである。『天空の花嫁』とサブタイトルにもなっている通り避けては通れない道なのだ。
この生涯の伴侶を決めるという局面に、決断を下せず苦悩した人も多いことだろう。
関係ないが、ルドマンさん(フローラの父親)を選択して、彼を困らせたプレイヤーも数多くいるはずだ。
でも僕の答は決まっていた。
「勿論ビアンカ一筋だぜ」
「………………」
あれ? 千石の反応がない。というか繋いでいる手の力が増したような気がする……ちょっと痛い。それに空気が重くなった気も…………と、しばらく無反応だった千石だが、ようやく口を開いて反応してくれた。
無視された訳ではないようで一安心だ。
「……り、理由は……なんで……かな?」
少し声に棘があるように感じるのはどうしてだろう?
「そうだな……子供達の髪の色が金髪じゃないと、なんか、しっくりこなくてさ」
フローラを結婚相手に選ぶと、生まれてくる子供(双子の兄妹)の髪の色が、青色になってしまうのだ。僕的にあの髪の色はない。
フローラと結婚すれば、ルドマンさんから、お金や防具の融資を受けとれるメリットが発生するけど、そこだけは譲れなかったのだ。
「千石はもしかして、フローラ派だったのか?」
なんか怒ってそうだったし、そう推測したのだけど……。
「ううん。撫子もビアンカ派だよ」
「あれ?」
では、何で空気が重くなったのだろう? う~ん、よくわかんないや。
「千石にも明確な理由があったりするのか?」
「うん、あるよ……」
千石は一拍の間を空けて、強調するように次の言葉を発した。
「だって、一度は離れ離れになっちゃった二人が、長い年月を経てから再会して、子供の頃からの想いが成就するなんて素敵だから」
なるほど。千石はビアンカの気持ちに同調しているのか。やっぱりこんな考えが出来る辺り、女の子だよな。
「まあ、確かに、幼少期のイベントがある分、ビアンカの方が有利だよな。思い入れが強くなるし」
幼少時代、一緒に冒険をしたアドバンテージは大きいだろう。
「な……なんだか……撫子と、暦お兄ちゃんみたい……だね」
「ああ、そっか。僕と千石も、数年ぶりに再会したんだもんな」
だからどうしたと言う話なのだが、なぜか満足そうな千石だった。
「にしても、結構寒いな」
外との気温差の所為もあるんだろうが、空調がガンガンに効いており、異様に肌寒かった。
それに時折、誰かに鋭い視線で見られているような気がして、背筋がゾクゾクする。嫌な予感とは別物なのだけど、身の危険を感じる、不可思議な気分だ。
「うん、そうだね。でも、暦お兄ちゃんの手は温かいな。お日様みたい」
千石の手は確かに冷たいぐらいだし、もしかしたら、冷え性なのかもしれない。
にしても、なかなか洒落た比喩表現をしてくれるな。
「きっと美味しいパンを作れるよ」
「おい千石。お前が、言葉を付け加えたことによって、綺麗な比喩表現から一転、微妙なラインのネタに変わっちまったじゃねぇか! 僕の手は『太陽の手』、パンの発酵に適した温度の手じゃねえよ!」
僕から顔を逸らして俯く千石。どうやら、身体を震わせながらも笑うのを我慢しているらしい。千石撫子の笑い上戸は健在のようだ。
あと念の為に、『太陽の手』についての説明が必要だろうか……今ひとつ知名度が判別つきにくいよな。
まあ軽く説明させて頂くと、パンを題材にした料理漫画にカテゴライズされ、『ミスター味っ子』を彷彿とさせる、食べた後の大げさでハイセンスなリアクションが売りの作品に登場する主人公が、この『太陽の手』の所有者なのである。
所有者と言っても、修行して身につけたとかではなく、元来の体質によるもので、この手で捏ねたパン生地は、発酵が進みやすくなるという利点が生まれる。その為、美味しいパンを作るのに、好ましい手だと言えるのだ。
相変わらず、千石のネタのチョイスの傾向が読めない。咄嗟の応用力が試させるツッコミ役としては、由々しき事態だ。
「ねぇ暦お兄ちゃん」
僕が今後の方針について検討していると、千石が窺うような声音で呼びかけてきた。
「ん? どうした、千石?」
「暦お兄ちゃん、寒いのかなって思って……」
「いや、寒いといっても、これぐらいなら、何ともないよ」
「そんな事ないよ、暦お兄ちゃんは寒いはずだよ!」
「……そう、なのかな」
まあ、千石がそこまで断言するならそうなのだろう。僕は自分で思っているよりも寒そうにしていたのかもしれないな。
いらぬ心配をかけてしまったようだ。
「も、もし暦お兄ちゃんが寒いんだったら、撫子が温めてあげようか?」
「千石が? それってどういうことだ?」
寒いギャグを言って、相手を凍りつかせる事はできるけど、温めるとは一体?
心温まる談話でも聞かせてくれるのだろうか、などと考えていたら、
「こうすれば、撫子も暖かくなって一石二鳥だよ」
そう言って、僕の腕に抱きつく千石だった。
ああ、なるほど。腕を組むことによって、暖が取れるのか……千石もどうやら寒かったらしい。
至って普通、奇を衒ったわけでもなく、なんとも合理的な方法だな。
ペンギンなんかも身を寄せ合って、寒波を堪え忍ぶと言うし。
僕だけなら我慢すれば済む話だけど、千石が寒いのなら、そうするのも致し方ない。
歩きにくくはあるが、千石の好意を無下にする訳にもいかないしな。
「ま、この迷路をクリアして、外に出ればすぐに暑くなるんだろうからさ、それまで、お願いしようかな」
この迷路のクリアに要する、所要時間は約20分とパンフレットに書いてあった。
もう半分は進んだと思うし、あと10分もあればクリアできるだろう――
――そう思っていたのだけど……。
あれから、30分……ダンジョンに踏み入ってから、実に40分は経過しようとしている――――あろうことか僕達は、“まだ”迷っていた。
同じ所をぐるぐる行ったり来たりで、一向に進んだ気配はなく、さ迷い続けている。蒼い弾丸だ。
コンセプトが迷路なのだから、特におかしい訳ではない、寧ろ、本来あるべき姿なのではあるが…………まぁ、なんと言うか……正確に言うと、“僕は”迷っていないのだ。
奇しくも今の状況は、迷い牛に迷っていた、あの母の日と酷似していた。
僕が八九寺に――『迷い牛』ついていったから迷っていたように、今の僕は、千石についていくから迷っている。
そんな感じだ。
理由というかその原因は―――僕が敢えて口を挟まず、千石の意思の赴くままに進んでいるから。
今日の主役は千石なのだから、僕がしゃしゃり出る事もないと、身を引いていたのだ。
言ってしまえば、子供でも挑戦出来るアトラクションなので、其処まで難解な迷路でもない。僕からすれば、ある程度歩き回ったところで、正解となるルートは導き出せていた。
しかし千石は…………器用に正解となるその道だけを避け(神がかり的なルート選択だった)、ともすれば、わざと正解の道に入らないように――迷う事に専念しているようにも感じられるほどだ。
いやいやいやいや、そんな事をするメリットが見つからないし、地図を読むのは女性の方が苦手だって言うしね。純粋に迷っているだけなんだろうけど。
ここまで迷ってくれれば、製作者も本望だろう。
千石は終始上機嫌だし、迷路を楽しんでいるようだから別に構わないのだが……。
でもやはり相当寒いのか、千石がコアラのように抱きついて暖を取る姿を見ていると(何故か蛇が巻き付いているようにも見える不思議!)、早く脱出した方がいいのではと思えてきた。
あ。また間違ったルートに入った。この先は袋小路があるだけだ……。
…………果たして僕は、ゴールすることができるのだろうか?