またお話が進んでないです。次からは本当に進む予定ですよ。
あと、後半はR-15以内に収められた…はずです。
内容が露骨だったかもしれないので、閲覧の際は注意です。
『鈴』
幼女ことヴィヴィオを保護してからまた幾日かの時が過ぎた。
聖王教会での精密検査やらその他諸々を済ませると、ヴィヴィオは特に危険性も見られない健康優良児として認定される。
だがそれでも尚、ヴィヴィオの扱いについて議論を重ねなければならない。
ママ、ママと本人は言っているが、出生が出生なだけに当然引き取る親などは存在しない。さらにはレリックに関係していただけに施設に預けるわけにもいかない。聖王教会にも甘えすぎるのもどうかという事で、結局は機動六課での預かりとなった。
そのヴィヴィオだが、予想以上に素直でいい子で過ごしている。
「すずかママ。できた~」
「あら、上手にできたね」
「うん!」
俺が部屋の清掃をしている横でヴィヴィオが粘土でお遊戯中。そしてヴィヴィオの相手をしているのはすずか。
母親を探し求めていたヴィヴィオだが、実際にはいない人物についてはどうしようもないので、俺がそれとなく諭すと一部の人たちをママと認識し始めた。
当初は『なのはママ』だの『アリサママ』だのと呼ばれ、慣れない呼称にひどく狼狽していた女性陣ではあるが、慣れるとヴィヴィオを猫かわいがりし始めた。
ここまでならば普通に微笑ましいエピソードとして語られるのだが、俺はこの時の出来事を胸中で喜ぶことができないのである。
みんながママという呼ばれ方に慣れ始めた頃、誰が言ったのかは最早定かではないのだが、確かに誰かが言ったのだ。
『子ども、欲しいね』
この時、注がれた焼きつくような熱い視線を俺は一生忘れない。
アリサとヴィータはまだいいさ。
アリサは機動六課の今の現状をよくわかっているからそんなに強く言わない。だけどそれだけだと何なので、俺が『いつかちゃんとつくろうな?』と言ったら顔を真っ赤にして小さく頷いてた。なにこれカワイイ。
ヴィータは今までの騎士としての人生やら使い魔としての立ち位置やらで自分が子どもを産むというのにピンと来ないっていうのが本人の談である。そもそもヴィータの体は子を産む体として機能するのかという疑問もある。その辺りはプレシアさんと要相談だな。
問題はなのはとすずかだ。この二人に関してが、俺が喜べないエピソードである。
いつだったか、俺は忘れ物を取りに自室に戻ると部屋の中から人の気配を感じたのだ。
すわ盗人か? と警戒して部屋に突入すると、そこには俺に驚いて硬直したなのはがいた。それだけならまだしも、なのはの左手には男の必需品――まぁ、男の避妊具であるゴム(未開封)右手には縫い針が握られていたのだ。
つまり、なのはのやろうとしていた事はそういう事だ。
その後はそれらの品々を後ろに隠して誤魔化す様にしていたが当然ながら誤魔化しきれない。
やってる事は本当にシャレになってなかったからか、ちょっとだけ頭に血の上った俺はなのはにお仕置きを敢行。身動きできないように物理的な意味で拘束し、その後は性的な意味でなのはを弄った。ただし本番は無し。
優しく、時折荒くといった感じで手だけでなのはを弄んだ。たとえなのはの体が疼いて求めてこようが、泣いて許しを請おうが無視。俺の持ちうるテクを駆使し続けた。
その結果、詳しい描写ができないほどの惨状ができあがる。なのはも起き上がることすらままならないほどに腰砕け、意識もマトモに働かないままその日が終わった。
すずかに至っては完全にハンターの手法だった。
普段はいつもどおりを装っていた。あまりにいつもどおりだったから、俺も知らず知らずの内に警戒心を緩めて、ガードを下げた状態になってしまっていた。
そしてある日の星がよく見える夜。
え~と、その…すずかと【にゃ~ん】する前に血を飲ませてほしいとねだられた。俺も深く考えずにOKの返事を返し、すずかに血を飲まれる。その際、唇を切っての口移し――つまりキスで。
その時のすずかの紅い瞳が妖しく映った気がした。
突如として脳内に警鐘が響いたのだが、すでに遅かった。すずかはその魔眼を以ってして俺に
『できるまでヤレ』
そこからは別の意味で地獄だった。
掛かった
いや、まぁ危機は回避できたんだけどね。後日、調べてみたらすずかはこの日は俗に言う危ない日だったらしい。狙いすぎだ。
あ、お仕置きはしっかりとやっておきました。なのはと同様のを。
『『ごめんなさい』』
後日、二人ともちゃんと反省して謝ってきた。
『あ~、ちゃんと反省したんならいいよ。むしろこっちも悪かったよ。頭に血が上ってたとはいえ、あんな事してしまってさ。もうしないから許してくれよな』
『えっと、それなんだけど…///』
『その…ね///』
『時々でいいから///』
『またお仕置きをしてほしいな~なんて///』
それはもう『お仕置き』ではなく『ご褒美』なのでは?
ともかく、以上が本当にいろんな意味で肝の冷えたエピソードの全容である。
「…ん! りんりん!」
「ん? お、おお。どうした?」
ヴィヴィオの声で我に返る。
「アレやって! アレ!」
「アレ? あぁ、アレね」
ヴィヴィオが粘土の塊を手のひらに乗っけての催促。最初はわからなかったが、このポーズで合点がいった。
前に見せた魔法の芸を見せてほしいって事ね。
「んじゃ、何がいい?」
「ん~、え~と、犬さん!」
「犬ね。了解」
ヴィヴィオのポーズと同じように、手のひらに意識を集中させる。
「【水】」
お馴染みの六角形魔法陣から球状の水が生み出される。その水を俺の緻密な魔力操作で形を変えていく。
ある程度、形の整ったところで――
「【凍結】」
凍らせてお手軽な氷像の出来上がり。
「ほれ。犬さんだよ~」
「……これ何?」
「犬」
「お名前は~?」
「スコープドッグ」
犬と聞いて真っ先にに思いついたんで、その感性に身を任せた結果がコレだよ。
ちゃんとターレットスコープも回るよ。ラビドリーとかバーグラリーでも良かったけど、やっぱりコイツが一番かわいいと思うんだ。
「我ながら渾身の一品」
「 な に を や っ て る の か な ? 」
「があぁっ!!」
夜の一族のアイアンクローは死ねる!
「…かわいい」
「ヴィヴィオ、寝ちゃったね」
「そうだな」
日の光に当てられたのか、ソファーで可愛らしい寝息を立てるヴィヴィオ。すずかは大きめのタオルケットをヴィヴィオにかけて優しくその髪の毛を撫でる。
どうでもいいけどゴミ箱の放られた氷像を見ると涙が出そうだ。
「鈴くんも一息ついたら?」
「そうだな。必要な分はやったし、少しなら」
「それじゃ、ここをどうぞ」
「ありがと」
横になって眠るヴィヴィオを撫でるすずか。その隣にお邪魔する。
「クスッ、寝てるヴィヴィオって本当に可愛いね」
「容姿はちょっと中二くさいけど、それには同意」
「もう、そういう事は言わないの。でも…こうやって子守をしてると、やっぱり子どもっていいなぁって思っちゃって」
「ま、否定はしないさ」
「今の私たちって親子に見えるかな?」
「遺伝を別とすれば、見えるだろうな」
すずかと子をもうければ金髪オッドアイは生まれない。
「鈴くん」
「ん?」
「鈴くんとの子どもが欲しいっていうのは本当だから」
「…………おう」
赤くなったと自覚した俺はそっぽを向いての返事になってしまう。
「子どもができたら管理局を辞めて、みんなで小さな飲食店をやるのも悪くないかな」
経営はアリサ。厨房が俺。ホールスタッフになのはにすずかにヴィータか。何気に布陣が揃ってるし、元管理局のエース陣が経営する店って事で話題性は抜群。資金だって先生の遺産や生前の俺の蓄えもあるし問題無し。
俺たちもまだ若いんだし、たしかに未来予想図の一つとしては悪くない。悪くないが――
「今はレリック事件の方が先決だな」
「ですね」
輝かしい未来予想図はもうちょい先だな。
決して照れくさくなって問題を先送りにした訳ではない。
◆ ◆ ◆
「そんじゃ、ヴィヴィオ。存分に遊んでこい」
「うん!」
「エリオ、キャロちゃん、ヴィヴィオを頼んだぞ」
「「はい!」」
今日も今日とてヴィヴィオのお守り。
隊舎管理が主な仕事だったはずなのに、最近はヴィヴィオのお守りに比重が置かれている気がしてきた。一応、やる事はきちんとやってはいるが、アイナさんに負担が掛かってるだろうから今度お手製スイーツでも持って行ってあげよう。
今日は近場の公園に連れてきた。俺だけだとちょい問題ありだから、エリオとキャロを護衛の名目で同行させている。実際には低年齢同士、ヴィヴィオの遊び相手をまかせただけなのだが。
「おままごとやりたい」
「いいよ。エリオくんは?」
「僕もいいよ」
どうやらガキンチョ共はままごとを始めるらしい。子どもの遊びの定番みたいなものだ。
俺は少し大きめのベンチに座ってぼ~っと空を眺める。
広がる青空はどこまでも。流るる雲は果てまでも。注ぐ日差しはいつまでも。
「いい天気だな~」
「そうね~」
俺の独り言に反応を返された。驚いて見ると、いつの間にか隣に三人のご老体が座っているじゃないですか。爺が二。婆が一。
「こんにちは」
「あ、はい。こんにちはです」
私服姿のご老人方はニコニコと柔らかい笑みを浮かべながら俺の方を見ている。
(どっかで見たような…無いような…)
「あの子達はアナタのお子さん?」
「えっ? 俺って子持ちに見えるほど老けてます?」
「いやいや、そういうわけでは。すると兄妹かな?」
「違いますよ。あの金髪の子の面倒見てるだけですよ。そしてあの二人は付き添いです」
「そうだったのかい」
「そうだったのです。ところで、あなた方は?」
「ん? そうじゃのう、ただの散歩好きな年寄り連中じゃよ」
そう言うご老体方は微笑ましくガキンチョ共を見ている。ガキンチョ共も微笑ましいママゴトを繰り広げていた。
『ほら、ヴィヴィオ。挨拶しなさい』
『私はキャロ。アナタの新しいママよ。よろしくね、ヴィヴィオ』
『…ママ?』
ママゴトでありながら、義理の娘という設定でいくのか。妙にリアルでなんかヤダ。
「それにしても仲良しね」
「そうじゃのう。仲良しだからこそ、君とあの子達が親子にも兄妹にも見えたのじゃが」
「ハハハッ、俺はずっと一人っ子ですよ」
「君のご家族は?」
「色々とありまして血の繋がった家族はもう…」
「…悪い事を聞いてしまったようじゃの」
「大丈夫ですよ。接してくれた人はみんな良い人でしたし、それに親代わりの人もいましたし」
脳裏に浮かぶは今も俺なんかと共に居てくれる優しいみんなの姿。
そして『秋月鈴』の名をくれた人。
「親は居なくとも、みんなのおかげで相当恵まれてましたよ。特にその親代わりの人には返しても返しきれない恩を感じたほどです」
「…とっても立派な人なのじゃろうな」
「いや、そんな事はないですよ」
どこかシミジミとしたご老体方の言葉をスッパリと切り捨てる。途端に一様、呆気に取られた顔をする。
「夜更かしばっかりで寝起きは悪いし、家事を頼んだら大雑把だし、ゲームばっかりやってるし、イタズラ好きだし、未成年に酒を飲ますし――」
一度、吐き出した台詞が止まりません。ほら、ご老体方もちょっ退いてるじゃありませんか
「とまあ、社会を生きる者としてはどうなのって感じの人でしたが、それでも俺の周りで彼女を嫌う人は皆無でした」
「そう」
「憎めない人っていうんでしょうね。そして彼女に教えられた事の一つ一つが今の自分を形成してるんです。決して後悔してません。彼女の前で『どうよ!』って胸を張れる人でありたいです」
無意識の内に首にぶら下げたペンダントを握り締めていた。『どうよ!』って言い聞かせるように。
「君のその育ての親はやっぱり立派な人じゃったのだな」
「まぁ、結果的にはそうなのかもしれません」
「フォッフォッフォッ、中々におもしろい話が聞けたわい」
「フフフッ、そうですね」
ご老体方は立ち上がる。
「さてと、それではワシらはお暇するとしようかの」
「では若者、良い日を」
「さようなら。縁があればまた」
「ええ、では」
手を振ってご老体方を見送る。
不思議な人たちだったっていうのが感想。あそこまで身の上を話す必要もなかったのに、ついつい話し込んでしまった。それに本人たちは妙なカリスマを滲ませていた。ただの老人が持つにしては大きかったような。
「気のせいか…」
ま、次に会うかどうかもわからない人を考えすぎてもしょうがない。今の俺はガキンチョ共の世話に専念しますか。
『そんな…どうしてなんだキャロ! ヴィヴィオはこんなにも君を――』
『ダメなの、アナタ! 私もヴィヴィオを愛そうと努力したわ。けど…やっぱりヴィヴィオはあの女の子ども。日に日にあの女に似ていくヴィヴィオを見ていると…私の心が耐えられないの! どうしてもアナタを奪ったあの女への憎しみは消えないの!』
『ママ…』
『ごめんね、ヴィヴィオ。私はもう…あなたのママにはなれないの』
『ママッ! 行っちゃヤダ!』
『バイバイ、ヴィヴィオ。そしてエリオ――私の唯一愛した人……さようなら』
『キャロォォォォッ!!』
『ママーーッ!!』
……ちょっと眼を離した隙にクッソ重たい展開になってた。もうそれママゴトで起用すべき設定でも展開でもね~よ。ドロッドロの昼ドラシリーズだよ。
◆ ◆ ◆
「どう思った? 『魔女の後継者』は?」
「彼なら大丈夫。そう感じたわ」
「同じくじゃ」
「カレン殿…ワシらも結局は彼女に恩を返せぬままじゃったな」
「えぇ…しかしそれすらも彼女の望んだ事。互いに不干渉が契約だったから」
「だが結局はワシらの力不足のせいで彼女はこの世界から去ってしまった」
「ならばせめてもの恩返しとして彼女の後継者、そしてその縁の者たちを密かに助力しようかの」
「『魔女』の力。放っておくには危険すぎるかもしれないけど、彼なら大丈夫でしょ」
「実際、プレシア・テスタロッサもカレン殿に触れて善へと傾いたわけじゃしの」
「さて、若者よ。『魔女の後継者』としての看板は重いかもしれんが…がんばるんじゃぞ」
◆ ◆ ◆
――後日
「あぁっ!!」
「な、何!?」
「どうしたの、鈴!?」
「あ、あぁ、いや、すまん。間違いだ。ハハッ」
鈴の手には時空管理局の資料が握られていた。そして彼の視線の先にはある提督の写真。
(あの爺さんたち、礼の三提督かよ!!)
◆ ◆ ◆
「はぁぁ、しんど~。やっと終わったわ~」
窓の外は宵闇。明かりの点いた静かな隊長室で一人、はやては体を伸ばす。
漸く書類の処理を終わらせたはやて。日付も変わって、このままでは翌日――というより今日に響くだろうが幸いにして今日のはやては午後からの勤務。多少、遅くなったところで問題は無い。
手早く、帰り支度を済ませたはやては隊長室を出る。
「さ~て、どないしよう」
長くはないが、せっかくできた自由な時間。はやての脳内に戻ってすぐ寝るという選択肢は存在しなかった。
「……あけよか」
ボソリと呟く彼女の脳内に秘蔵の酒が浮かび上がる。仕事に疲れて自室に戻り、午後からの勤務だからと酒を吞む。彼女は実にオヤジ思考。
二十歳未満?
ミッドだからその辺の法も違うんじゃないのかな?(適当)
「となると寂しいけど一人酒になるな~」
他のみんなは普段どおり、朝からの勤務。となれば無理に付き合わせるのは忍びない。リインやツヴァイもデバイスルームにて泊り込みのメンテ。
ならば――と、考えたところでハッと思いつく。
「…デバイスルーム?」
はやては知らずの内に『ニコッ』でも『ニヤリ』でもなく『ニタァ~』と厭らしい笑みを浮かべた。
「というわけで吞むでー!!」
ダンッ!と一升瓶を床に叩きつける。
《一体…》
《何が…》
《あったんじゃ…?》
可愛らしい薄着のパジャマを着たはやて。しかしカーペットに胡坐かいて座り込み、片手に一升瓶を掴むその姿はまごうことなきオヤジ。
そんな彼女の前に並べられたのはデバイスルームでメンテを受けていた三つのデバイス。
なのはのレイジングハート――レイハさん。
アリサのグローリー――ロウリー。
すずかのクロス――ロス爺。
はやてによって拉致され、吞み相手に選ばれた
「いや~、一人で吞んでも寂しいやん? だから誰か相手でもいないかな~って思うてたら天啓が下りたんや。アンタらやったら夜通しでも疲れ知らず。おまけに蓮さんの手も加えられてるインテリジェントデバイス(一つ除く)やからしっかりと受け答えのできる。お酌ができんのが難点やけど、愚痴を溢す相手やったらもってこいや」
少しだけ沈黙の間が訪れる。チカチカと点滅するデバイス達を見るに、相談をしているのだろう。
そして――
《ま、偶にはいいでしょう》
《問題なし》
《フォッフォ、おもしろそうじゃの》
了承の意を伝える。
初めの内ははやても、ゆっくりとしたペースで気持ち良く吞んでいた。
チビチビと吞みながら、やれ無駄に多い書類が面倒だの偶に本局で会う上司の視線がいやらしいだの、地球のOLと大して変わらない愚痴を溢す。それに対し、デバイス連中も相槌を打ちながら、インテリジェントという機械として、完全な第三者の客観的な意見を述べるなどして、理想の愚痴の溢し相手を努めていた。
だが段々と怪しくなってきた。
はやての吞むペースが早くなっていき、愚痴の内容もプライペートの方へと移行していく。やれ生活が不規則で肌が心配になってきただの、リイン達の小言が姑のように多くなってきただの、キャロが所構わずナイフをチラつかせるのが心臓に悪いだの。
そしてとうとう自身のプライベートから余所様のプライベートに。
「で、鈴くんはみんなとはどないなん?」
《どう…と言われても、普通に仲睦まじいとしか》
「そういうんやなくて、夜のおつとめはどないなんかなって事」
デバイス一同、ここで《うわぁ…オッサンだ》と思ったのは内緒である。
《申し訳ありませんが…》
《それはさすがに語れんぞ》
《…閉口》
「あ、何故かこんなトコに高性能すぎて製造中止となったデバイス用拡張領域のチップが、都合よく三つも」
《クッ、私は従うしかないのかっ!?》
《これは正当な取引じゃな》
《アリサ様には内緒》
酒気のせいで、みんなゲスいっす。
「まずはなのはちゃん! レイハさん、どうぞ!」
《そうですね~、何はともあれマスターは甘えたがりです》
「今は人前で自重しとるけど、普段やったらベッタリやもんな」
《それは情事の際でも同じです。割と素直に感情を示すのでアレをしてほしいとねだる時はねだります。特に最後の方は抱きついての行為を好みます》
「おぉ~、でもわかる気がするわ」
《このように甘い時間を過ごすのですが問題が一つだけ》
「問題?」
《回数です》
「回数?」
『な、なのは…もう…』
『っん! ぁ、だめ、もう一回♪』
『さすがに…四回戦は…ぅあ…』
《と、まぁ、性欲旺盛な事なんです》
「四回って、鈴くんが枯れてまう!?」
《なまじ鈴殿は魔法で精力の回復もできるので余計に質が悪いという…》
「鈴くんの魔法って便利すぎ!?」
はやて、鈴が別の意味で男らしいと知る。
「つ、次はすずかちゃんや。頼むで、クロスの爺やん」
《ふむ、主は基本受け身じゃ》
「ほう?」
《鈴殿がリードして、時折、主が奉仕というのが今の基本スタイルじゃな。》
「奉仕っていうとあの憎たらしいぐらい大きな胸で?」
《さらにはその胸も感じやすいらしいぞ》
「ええでええで、すずかちゃん。武器は有効活用せんとなぁ。でも折角なんやからすずかちゃんももっとがっつけばええのに」
《がっついてるぞ》
「えっ?」
《主はがっついてる》
『ぐっ、すずか…また魔眼を…』
『ふふっ。さぁ、来て、鈴くん』
『グッ、ゥオオオッ!!』
『キャー♪』
「けだものプレイ!?」
《そうなると、鈴殿の性欲が尽きるか主が気絶するまで止まらん。どうも初めての時ので味を占めてしまったらしく…》
「腹黒どSのみならずMっ気も兼ね備えるとはサラブレッドすぎや!」
はやてはすずかの姉である忍もその資質を持つのかと邪推した。
「こ、これ以上進んだらマズイ気もするけど毒喰らわば皿までや。次、アリサちゃん」
《回数は多くない》
「いや、今までの人が多すぎのような…」
《普通に愛を囁いて行為に及ぶ》
「ぉ、おお?」
《ご存知のように胸は大きくないからできる事は少ない》
「…知っとる」
《代わりに感度は抜群。締まりも良し》
「おぉ、やっと普通のプレイ内容が――」
《ただ…》
「ただ?」
『…前々から思ってたけど』
『ぅん、な…なに、よ…』
『アリサってこっちを弄られると弱いだろ?』
『ち、ちが! あたしはそんな変態じゃ――んああぁっ!?』
「まさかの後ろぉぉぉぉぉっ!?」
《絶句もの》
「私も絶句や!」
聞かなければ良かったと思うも後の祭り。
「…み、みんな…個性的(?)で…え、ええんや…ないの?」
もはや知れば即、己の存在を消されるような重要機密事項を知ったはやては虚ろな笑みを浮かべる。手を震わせながらグラスにブランデーを注ぐ。ちなみに酒瓶三本目のチャンポン状態。その姿はアル中に見えなくもない。
「最後はヴィータ……やけど、アイゼンも無いしこれについては諦めるしか――」
《いえ、それについてもある程度は把握しています》
「そうなん?」
《えぇ。我々、デバイスネットワークで少々のう》
《雑談》
「う~ん、やったら聞こか。妹分の事を知るのも姉貴分の仕事や」
《わかりました。では》
一拍おいて語りだすデバイス連中。
《まず互いにストレートですね。悔しいですがマスター以上に甘い空気を醸し出します》
《ラブラブ空間》
《さらには使い魔の契約を交わしとるからの。体の相性も半端じゃない》
《ストレートなのも、契約で互いにその感情が伝わるから隠す必要もないのでしょう》
それから延々と語りだすは鈴とヴィータの睦言だの情事の際の弱点など、本人の預かり知らぬところで赤裸々に暴かれる。
はやての方も砂糖を吐くような話の内容に、ウィスキー(四本目突入)を無糖コーヒーで割るというワケのわからない暴挙を冒し始めた。
《大体、こんなところですかね》
《うむ、十分じゃろ》
《満足》
最初は渋ってたくせに、いざ全てを話すと満足そうなデバイス共。そんな満足さんを余所に、ただ一人はやてだけが無言で俯いている。
《どうしました?》
「……かて」
《はい?》
「私かて彼氏が欲しいぃぃぃっ!!」
ガァァッと吼えるはやて。
「何やねん、みんなして女を満喫して! 押し寄せるこの敗北感はなんや!? なのはちゃんもアリサちゃんもすずかちゃんも、そして妹分やと思うとったヴィータが実は一歩先どころか遥か先をワープ移動しとるって、私を置いて行き過ぎや! 私も彼氏が欲しい! そしてさっさと処女を卒業したいわ!!」
《お、落ち着くのじゃ!》
《そうです! それにまだフェイト殿がいるじゃないですか!》
「フェイトちゃんはプレシアさんがいれば処女でも気にしないぐらいのマザコンやから仲間意識は持てんわ! このままやったら処女のまま三十路を迎えて、そのまま仕事と添い遂げる人間になってまう! それだけは嫌やぁぁっ!!」
《ま、まぁ最近はそういう女性も珍しくないようですし…》
「見てみ! おっぱいは大きくないけど、スタイルはそれなりやで! 肌もまだ全然、張りがある!!」
はやてはパジャマの上下を脱ぎ捨て、上半身も下半身も下着一枚だけの姿になってポーズをとる。デバイスに見せ付けるようにしているが、そもそもデバイスに感性に訴える視覚が存在しないため、まともに評価のしようがない。
「なら何故彼氏ができない? 出会いが無いからや!!」
断言するはやてではあるが、デバイス共はそれとは別の理由があるのでは? と思うのだった。決して口には出さないが。
《グ、グリフィス准陸尉やヴァイス陸曹はどうでしょう?》
「仕事仲間の範疇を出えへん!」
《そ、そうですか》
《…同情》
「わ、私は不幸な女や~」
そのままえぐえぐと泣き始める。デバイスが『どうしたものか…』と思案に暮れ始めた頃、はやては突如立ち上がる。
「…作戦名、エヌティーアールや」
《えぬ、てぃーあ~る? ……え゛っ》
その作戦名を理解した途端、デバイス一同硬直する。
「こうなったら腕尽くや。最悪でも処女は卒業できる。そして相手もいい思いをできる。なんや、一石二鳥やん?」
四本の酒に脳みそを侵されたはやてにもはや常識など存在しない。
《ちなみに…それ、誰をターゲットにして言ってるんじゃ?》
「決まっとる。超優良物件の鈴くんや」
《《《地雷原に突っ込んだぁぁぁっ!!》》》
そこからはやては早かった。全てをかなぐり捨てて鈴の部屋へと駆け出した。置いていかれたデバイス一同はもはやどうする事もできないと悟り、届かないとわかりながら伝える。
《《《せめて服を着なさい!!》》》
はやて下着姿で爆走中。
「ここがあの男のルームね。さっそく突入!」
はやて(下着姿)SATの如く突入。一応、言っておくと、はやての姿は運良く誰にも見られていない。
鈴の部屋は当初与えられた客室をそのまま使っているので、隊長陣ほど広くはないが一人部屋。
「目標、捕捉やで」
薄暗い部屋のベッドにて、薄いシーツをかけ、ランニングとトランクス姿で眠る鈴を見つける。
「ぬっふっふ、覚悟しいや、鈴くん」
はやて、眼を怪しく爛々と輝かせて舌なめずり。つけていたブラすらも放り投げ、とうとうパンティー一枚の 完 全 痴 女。
そして――
「ダァァイビィィングッ!!」
さながらレスラーのボディプレスの如く、飛び掛る。
ゆっくりと、さながらスローモーションの世界。徐々に鈴の胸元へと迫るはやて。
薄っすらと眼を開け、瞼を擦りながら上体を起こそうとする鈴。
「え゛っ?」
「ぅんっ、何の音……だ?」
幾多の偶然が重なってこの結果は生まれた。
はやて、別に物音を殺す事も無く、普通に突入。
鈴、その謎の物音と気配に睡眠を阻害されて眼が覚めて上体を起こす。
…偶然じゃなく、必然でしたね。ともかく、生まれた結果は――
「「イダッ!?」」
頭と頭をゴッツンコ。そして流れるように両者気絶のダブルK.O.
昔、誰かが言いました。
『獲物を前に舌なめずり。三流のする事だ』
そして朝日は昇る。
「鈴く~ん、朝だよ~、今日はちょっとお寝坊さんだよ~」
いつも顔を合わせる時間帯にいない鈴を起こしになのはが部屋を訪れる。
部屋に入ってまず目にした物は――
「…ブラジャー?」
自分か誰かの忘れ物かな? と思ったが、ベッドの方へ視線を移すと何もかもが吹き飛ぶ。
パンティー一枚のはやてと同様に下着姿の鈴。
そして一つのベッドで折り重なっている二人。
誤解とはいえ、傍からこの光景を見て思い描かれる答えは?
◆ ◆ ◆
「は~い、みんな、よく聞いて。今日は訓練内容をちょっと変更して、一対他の総当たりサバイバルマッチをしま~す」
「イ、イエス、マム!!」×一同
今日も今日とて訓練。しかし隊長であるなのはの発するいつもと違う恐ろしい空気にあてられ、恐怖するフォワードメンバー。
実際、なのははずっと無表情で、その瞳にはハイライトがなかった。別名レイプ目。
「さらに今日はアリサ副隊長も参加するからね」
「イエス、マム!!」×一同
アリサはまるで、これから戦場へと挑むように真剣な表情でデバイスにカートリッジを装填している。そこには一切の油断も何も無い、ただ敵を殲滅するという意思表示しか伝わってこない。
「さらにさらにすずか隊員も参加です」
すずかはいつものようにニコニコと笑みを浮かべている――が、その実、一切眼が笑っていない。気のせいか、その瞳はいつも以上に紅く、ほのかに血の匂いもしている。
「ヴィータ隊員も勿論、参加だよ」
ヴィータは静かに腕を組んで佇んでいる。だが、何かに苛立っているのかつま先が落ち着き無く、地面を叩いている。
「そして本日のスペシャルゲスト、八神はやて部隊長で~す」
「あの、なのはちゃん。ずっと謝ってるし、本当に反省してるさかい、そろそろ許してくれないかなぁ~」
「あ゛っ?」
「…何でもないです。だ、だったらせめてデバイスの所持を許可して――」
「みんな、聞いた? たとえデバイスが無くとも私は勝利への道を切り拓いてみせるだって。その心意気に応じて私たちも『 決 し て 手 を 抜 か ず 』、『 全 力 全 開 』で応じようね」
「イ、イエス、マム!!」
「ぎゃあぁぁぁぁっ!!」
「たとえ何かの拍子で同時に一人に攻撃が集中して、その人が非殺傷設定でありながら色んな意味で戦闘不能になって最悪の事態になってもそれは訓練中の不幸な事故として処理されます。みんな、気負わずに相手をしまt――ゴホン、撃墜させましょう」
「いやあぁぁぁぁぁぁっ!!」
「みんな、準備はいい? それじゃ、五分後に戦闘開始。散開!!」
かくして、訓練をいう名を借りた
八神はやての未来に――幸有れ。
「…ワイ、完全にとばっちりやん」
ベッドに鎖で繋がれ、『景品』と書かれた札を貼られた鈴はシクシクと涙で枕を濡らすのであった。
やっぱり大人になったんだからこの辺りも書いてみたいなと思ってたんです。
けど途中で我に返ると恥ずかしくなり、掲載を見送ろうと考える。
けどやっぱり…⇒葛藤⇒意を決して――みたいな流れです。
あと、はやては別にメインヒロイン参戦はしません。
あしからず、ご了承ください。