魔法少女リリカルなのは~ご近所の魔法使い~   作:イッツウ

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ビクビクと震えながらの投稿、二つ目です。

それにしてもやっとこの最新話。お待たせして本当に申し訳ありませんでした。その最新話がこんな話ですが、これからも『ご近所の~』をよろしくです。

その三と四ですけど、どれも話としては似たような流れになってます。



閑話の二・アリサ=バニングス

 

 アリサの部屋はシンプルなものだった。テーブルやベッドといった家具を最低限に抑え、そこに少々の小物を配置としているせいか、一層部屋が広く思える。

 そんな部屋のベッドに背を預け、床に座っている鈴は手に持ったアルバムを見ていた。部屋の主であるアリサはシャワーを浴びているので、出てくるまでの暇つぶしのようだ。

 

「……楽しそうだな」

 

 現在捲っているページは体育祭の時の写真。

 なのはやアリサといったメンバーが運動着に身を包み、カメラに向かって満面の笑みでVサイン。いかにも私たち勝ちましたという感じの写真だ。

 

「こっちは文化祭か…」

 

 次のページにはメイド服を着込んだ少女たちの姿。

 鈴はなんとなくこのメイド服に見覚えがあるなと思い返してみると、これは月村邸のノエルさんやファリンさんの着ていた物と同じデザインだと気付く。

 

 次のページにはクリスマスパーティー。

 

 次のページは正月の晴れ着姿。

 

 次の……

 

 次…

 

 写真という記録を見ると感じずにはいられない自身のいない月日の流れに、鈴はガラにもなくナイーヴな気持ちになる……ところで、背後から声がかかる。

 

「何を見てんのよ?」

「アルバムだよ。こうしてみるとオマエら…も…」

 

 背後からの声に振り向いた鈴は、その声の主――アリサの姿をみて体が固まる。

 

「ん? どうしたのよ?」

「お…おぉ…」

「お?」

「おまえ何つーカッコしてんだあぁぁぁぁぁっ!!」

 

 風呂上りのアリサの格好、黒のスポーツブラにホットパンツという過剰なまでにラフな……というより露出過多な格好だったからだ。

 未だ水気の残る髪をワシワシとタオルで拭くアリサ。グローリーを振るうおかげか、彼女は他の女性が羨むほどのスレンダー体型。痩せすぎというわけでなく、程よい筋肉で引き締まっている。胸の発育は他の女性陣に比べると慎ましやかだが、彼女の体型とのバランスを考えると逆にそれが映える。

 そんな彼女は鈴の言葉にキョトンとした様子で尋ねる。

 

「何かおかしい?」

「いや、そうでなくて……その…露出がね」

「……あぁ、そういう事ね。別に大丈夫よ。このぐらい」

 

 鈴の指摘もアリサは気にした様子もない。

 彼女はタオルをその辺りに放り投げると、リモコンを手に取り空間モニターのテレビをつける。映し出されたのは『ムダヅモ無き恋愛改革』という週一で放送されている最近ミッドで流行の恋愛ドラマだ。

 

「おい、話を聞いて…」

「はいはい、わかってるわよ」

 

 何を言っても適当にあしらうアリサは驚くべき行動へと出る。

 

 アリサは鈴の前へと座り、彼にもたれる形で寛ぎ始めた。

 

 パクパクとうまく言葉を発せない鈴の顔が赤くなる。彼女の素肌から伝わる体温、女性特有の匂いに脳がクラクラする錯覚に陥りそうになるのを理性で以って耐える。自身の早鐘を打つ心臓の音がアリサに悟られまいかと鈴は気が気でなかった。

 対してこのような大胆な行動に出たアリサは涼しげな顔でドラマを視聴し始める。

 

「お、おま…おまえ…」

「うるさいわね。これからドラマが始まるんだからちょっと静かになさい」

 

 それを最後に本格的にアリサがドラマに夢中になりはじめる。

 一方で鈴はアリサとの密着に恥やら照れやらの入り混じった一人百面相を繰り広げていた。

 

 

 

 

 

 幼き頃の鈴とアリサの関係は誰よりも気心の知れた付き合いであった。

 その影響は成長した今でも鈴の中で残っていたのか、ドラマを見ている内に照れや恥じらい等は消え失せ、終わる頃には密着状態にも慣れて普通に話を交わすようになっていた。

 

「へぇ~、聖王教会にね。またなんで?」

「ほら、あたしって一応はベルカ式を扱うでしょ? さらに昔、公式演習でシグナムに勝っちゃったもんだから向こうからのスカウトが増えちゃってさ。あなたのような優秀な騎士を是非って。まぁ、あたしも聖王教会ならアンタを助けられるロストロギアの情報も入るかなと思って承諾したのよ」

「はぁ~、成程ね」

「ただそれ以来、シグナムが何かとあたしと戦いたがってるのよね。たまに辟易するわ」

「ちなみに戦績は?」

「あたしの勝ち越し」

 

 アリサは大きく溜息を吐く。疲れているという意思表示を感じ取った鈴もそれに苦笑しながら後ろからよしよしと頭を撫でてやる。 

 

「髪、切ったんだな?」

「うん。やっぱりグローリーを振り回してるとね、どうしても邪魔に感じちゃって。やっぱり長い方が好きだった?」

「どっちも似合ってるから好きだぞ」

「当たり障りのない答えをありがと」

「本心だっての」

 

 軽口の叩き合いは二人にとって日常茶飯事だったもの。気心知れた遠慮の無い関係の在り方に鈴の心は完全に昔のノリへと戻っている。

 だからアリサの言葉に不意をつかれるのだった。

 

「ねぇ鈴」

「ん~?」

「あたしってさ……女としての魅力無いのかしら?」

「んな事ねぇって。少なくとも俺は魅力十分だと思うぞ」

 

「じゃあ、あたしに手を出す気はおきないの?」

 

「…………はぃ?」

「あたしを女として抱く気はないかって事」

 

 半ば無意識に返事をしていた鈴はアリサの突拍子の無い言葉に理解が追いつかず、一語一句をスルメのように噛み締め、聞き間違いであってほしいと願いながら脳内処理する。

 だが現実は非情かな。いくら処理したところで導き出される答えは変わらずである。

 

「……Oh」

「で、どうなの?」

「まぁ待て、Wait。何でそういう流れになったのか今の僕には理解できない。ワケがわからないよ」

「この部屋はあたしとあんたの二人だけ」

「そうですな」

「しかも十年振りの再会」

「そのセツはとんだご迷惑を」

「こうやって大胆な格好で迫って」

「けしからんですたい」

「なのにあんたはすぐに慣れるし」

「人間は慣れる生き物ゆえ」

「察する様子も無い」

「すいません。このような人間で」

「ならもう口で言うしかないでしょ」

「だから何故そうなる?」

「一人の女としてあんたが好きだから」

「なるほど」

「……」

「……」

「………」

「………」

「…………で、返事は?」

「…………好き…なんだと思う」

「なのはとかすずかと同じくらいってオチでしょ?」

「おまえってエスパー? 覚り妖怪じゃないよね?」

「あんたの考えそうな事ね。どうせ優先順位とかつけられないんでしょ?」

「すまんな」

「本当よ……でも、それでもいいわ」

「……いいのか?」

「欲を言えばあたしだけを一番に思ってほしいけど……みんなが一番なんでしょ?」

「まぁ、うん」

「だったら今だけ…今だけはあんたの一番でいさせてちょうだい。だから……ね?」

 

 漸く鈴へと顔を向けたアリサ。

 互いに紅潮しきった顔へどちらからともなく口付ける。互いに口付けたまま鈴はアリサを抱え、ベッドへゆっくりと横たわらせる。アリサを覆い被さる形となった鈴が口をはなす。

 

「初めてね、こうしたまともなキスって」

「そうだな」

「……改めて言わせて。あたしはあんたが好きよ。昔から、そして今も」

「ありがとな」

「答えはいらないから今だけは私だけを見てちょうだい」

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 全てが終わったあたしと鈴、共に肌着一切纏わずで鈴の腕を枕にして横になるあたしはまるで映画の濡れ場シーン直後のような光景を醸し出してるでしょうね。

 

「大丈夫かって聞くのは無粋か?」

「そうね。まぁ心配ないわ、まだちょっと痛むけど」  

 

 鈴は優しくあたしを抱いてくれた。初めてだったんでどのくらいが優しいの定義なのかわからないけど、少なくともあたしはそう感じた。

 

「はぁ~」

「何よ? 溜め息なんかついて」

「昔から知ってるおまえとこういう関係になるってのに何だか変な気分だな」

「後悔してるって言うの?」

「そうじゃない」

「ならいいじゃない。それにアンタ、後日なのはやすずか、もしかしたらヴィータともするようになるんだから覚悟を決めときなさい」

 

 これはあたしの中では確信として捉えている。

 鈴があたしを抱いたからといってアイツらが退き下がるわけがない。絶対に鈴は迫られる。

 

「……アリサは本当にそれでいいのか?」

「よくないわよ」

「えっ?」

「あのね~、あたしだって女なのよ? なのはみたいに独占欲だってあるしヤキモチだって妬くわよ」

「じゃあ何で……」

「それでもね、あいつらならかまわないっていうのもあるのよ。あたし達って魔法を知ってから本当に色々あったでしょ? だから…こう運命共同体みたいな物があるのかもね」

「運命…共同体…」

「多分、なのはもすずかも同じよ。そしてこの関係は最後まで続くでしょうね」

「そうか…」

「一応、誤解の無いように言うけどあんたが誰か一人を選んだからといって恨んだりしないわ。みんな選ぶっていう選択肢も……まぁ妥協して許すんじゃないかしら。だから……」

「だから?」

「さっきも言ったけど……覚悟を固めときなさい。少なくとも、あたし達はもうあんたを逃がしたりしないんだから」

「……善処しときます」

 

 こういう曖昧な返事を返すくせにいざ覚悟を固めるのは早かったりするのよね。稀にどうかとも思ったりするけど、こいつを嫌ったりするなんて絶対にありえないわ。

 

 惚れた弱みって厄介ね、ホント。

 

 

 

 

 

「ところで……」

「ん?」

「あたしは初めてだったけど……あんた、初めてじゃないわね?」

(ビクッ!)

「なんていうか……妙に手馴れたような感じだったんだけど?」

「……………………イヤ、オレモハジメテデスヨ?」

「へぇ~?」

(うん、嘘じゃないよ。”生前”はともかく”秋月鈴”である今の俺は初めてだよ?)

「ペロッ…」

「ぬわっ!?」

「これは……嘘をついてる味ね…」

「っ!?」

「その反応……あんたやっぱり!? 正直にさっさと吐け!!」

「ギャアァァァァァァァァッ!!」

 

 さてはて、鈴はうまく誤魔化せるのやら。

 




その三と四にすずかとヴィータの話があるんですが、すずかの話はすっごいアウトっぽい出来になってるんですよね。

お待たせして悪いんですが、また後日に投稿します。

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