シグナム達はアンリ・マユに呑まれた――
とでも思ってもらえればわかりやすい……かな?
夜の闇に包まれる街のとあるビルの屋上に彼女――ジーン・マクスウェルは居た。
屋上の強い風が打ちつけようとも、彼女は眼を閉じたまま微動だにすることも無い。
ふと彼女は空気の流れを悟り、その閉じた眼を開く。
「……ようやく来たか」
彼女は背後からの気配に振り返る。その声に応えるように、ジーンの背後数メートルの所から一人の女性がゆっくりと歩み出た。
白い髪を靡かせながら現れたのは秋月蓮。
蓮は煙草の紫煙を吐きながらただ静かにジーンを見据える。睨むわけでもなく、ただ見ているだけなのに威圧感さえ感じる。
だがそれにも動じる事なくジーンは初対面である女性に対し、芝居がかったように恭しく一礼をしてみる。
「お主とは初めましてじゃな。ジーン・マクスウェル、闇の書の主じゃ」
「秋月蓮。ただの魔導師だ」
「ただの…ね」
クツクツと嗤いを堪えるジーン。嗤われてる蓮は特に気を悪くする事もなく、ただ黙ってジーンを見据えたまま。
「少なくともワシと同等か、それ以上の力を持ってるじゃろう? それでよく『ただの』と言えたもんじゃな」
「何とでも言えばいいさ」
一区切りするように吸い終わった煙草をそのまま魔法の炎で燃やしつくす。灰も残さぬ炎が夜の闇を照らす。
「はやて嬢はどうした?」
「ワシの新たな糧となってもろうたわ。この体は素晴らしいぞ。生前のワシの体と遜色の無い程に適合しておるわ」
「そうか、大した死に損ないだな」
「ククッ…死に損ない。それはお主に言えた事か?」
「……」
「一目でわかったぞ。お主、一体いくつの時を生きておる?」
「さぁ?」
「あのパーティーの時、この八神はやてを通してお主を見た瞬間にワシは言いようのない歓喜に震えたものじゃ。お主はワシと同類…いや、ワシなどよりも遥かに完成された探求者だと」
「やれやれ…厄介な奴に見初められたものだな」
「どういう魔法を以ってしてその命を永らえているのかわからぬが、必ずもろうてみせるぞ」
「できるかな?」
「どの道、お主から奪うつもりじゃった。本来ならあの小僧からお主の魔法を奪い、その知識で勝算を高めるつもりじゃったがの」
「…フン」
蓮は腕を突き出す。
一瞬で展開された円環状の魔法陣を腕に纏わせ、指をピストルのように見立てて狙いを定める。
「ディバインバスター」
薄い翠色の魔力砲がジーンを飲み込む。
砲撃の余波でビルの屋上一部分が大きく削られ、さらにはビルそのものを大きく揺るがす。
ディバインバスター。
蓮がなのはに教えたミッド式の砲撃魔法の一つ。だがさすがは師匠とでもいうべきか、なのはのモノとは比べ物にならない程の威力である。なのはの欠点だったチャージ時間など無い完成された魔法だ。
さて、あわやジーンは討ち取られてしまったのか?
「これは…想像以上じゃな」
そこには防御魔法を展開させて立っているジーンの姿があった。
「かなりの手加減を加えてこの威力。普通なら脅威となり得るが…」
「……」
「この身が八神はやてのものである以上、お主は本気を出せんな?」
「…チッ」
ジーンの言うとおりである。
内面ではやての自我が生きているという可能性が捨てきれない以上、蓮はジーンに対して本気を出せないというジレンマを抱えている。
蓮の甘さがここに来て仇となってしまっているのだ。
どういう意図があるのかわからないが、彼女は決して鬼になりきれない側面が存在する。だからこそプレシアを助けたりする事ができたのが、ジーンのように冷酷である敵に対してその甘さは足枷になりかねなかった。
さらに手加減していたとはいえ、先程のディバインバスターは仮に受けたのがなのはやアリサだった場合、防御を貫かれるほどの威力が込められていた。そしてそれをジーンは難なく防いでみせた。
つまり蓮が魔導師として規格外であるように、ジーンもまた規格外の存在という事が証明されてしまったのだ。
「やはりお主の可能性、奪うに値するな」
「それは不死の法を得るためか?」
「愚問じゃな」
「不死など…決して人の許されるものじゃないぞ」
「勘違いするでないぞ? ワシは『死』が恐ろしいのではない。その『死』による知識の損失を恐れているのじゃ」
「強欲張りな奴だな」
「生きるという事は欲を常とするという事じゃ。ワシの場合、それが顕著に表れておるだけじゃ」
「だからその欲を満たすための転生機能…いわば擬似的な不死か」
「そのとおり。だがあくまで転生であって不死ではない。あれは欠陥だらけでな。適合者が現れなければワシはそのままずっと闇の書で眠ったまま。おまけに闇の書が消失すればワシも無へと帰す。まぁ、だからこそ組み込んだ無限再生機能なんじゃがな」
「なぜ私にその不死の可能性を見た?」
「言ったじゃろう? 一目見てわかったと。同類同士のシンパシーを感じたとでも言おうかの」
「…そうかい」
「長年、気の遠くなるような時間の中でようやく見つけた可能性じゃ。お主は手を抜かねばならないようじゃが、ワシは手は抜かぬぞ」
ジーンは闇の書を開く。すると彼女の周囲にミッド・ベルカの魔法陣が蓮へ向けて展開される。
蓮はその光景に小さく舌打ちをうちながら、ズボンのポケットをそっと撫でた。
(チャンスは少ないだろうがやるしかないか)
彼女のポケットの中。
それはとある者から受けた依頼を果たす上で必要と判断し、かなり無茶をして手に入れた――
――闇の書という存在においての最大最強の切り札。
◆ ◆ ◆
『鈴』
「ヴィータ…」
見上げた視線の先でアイツが戦っている。
それも元仲間であるシグナム達と。
一対三という圧倒的なまでの劣勢。おまけに連中は全員が強化されている。対してヴィータは俺と魔力のラインを繋げはしたが、まだ馴染んではいないために本当の実力が発揮できていない。
ほら、また一つ傷をつくった。
ほら、また一撃をもらった。
本音をいうと俺に構わず逃げてほしい。
けどオマエは絶対に退かないだろうな。そういう奴だもんな、ヴィータは。使い魔へと変わっても騎士としてのソレは変わらないもんな。
なら俺はどうする?
このまま蹲ってるか?
ありえん(笑)
連中はヴィータに掛かりっきりだ。俺をバインドで拘束しただけで無力化したと思い込んでるのか?
(舐めるなよ)
シャマルのバインドは前回の時に既に解析済みだ。
連中の眼がコチラに向かわない内にバインドを解除する。体に負ったダメージを【治癒】で幾らかマシにする。
今一度、体に【強化】を施し立ち上がる。
「ゥォォオオオオオオオオッ!!」
体に溜めた力を一気に爆発させる。駆け出した俺に漸く気付いた連中。
だがもう遅い。
狙うは今まさにヴィータにバインドをかけようとしたシャマル。こういう多人数での勝負では後方支援役を早々と潰すに限る。
「【衝撃】!!」
普段は拳で殴りかかるんだが今回は掌底。
彼女の腹に押し当てるように放った魔法がシャマルの体内に響いたのがわかる。崩れ落ちる彼女に振り返らない。その勢いのままヴィータに肉迫していたシグナムとザフィーラに【射撃】を放つ。放たれた光の矢はザフィーラの防御魔法で防がれたけど俺の狙いはそこじゃない。
「ヴィータ!!」
「おう、アイゼンッ!」
《Jawohl》
ヴィ-タのカートリッジ込みの一撃がシグナムへと打ち込まれる。
さすがに強化されたシグナムも、この一撃は強力だったようで防ぎはしたが大きく吹っ飛んだ。さらに一人残ったザフィーラが気をとられている内に【衝撃】で吹っ飛ばす。
猛撃を凌いだ俺とヴィータ。
仕切り直しとなったこの状況の内に契約の事をヴィータに言っておかなければと思いはしたが、いざ落ち着いて並ぶと何を話していいものかわからなくなる。
「リン…」
「【治癒】」
まるで俺は自分の後ろめたさを誤魔化すように、ヴィータの言葉を遮り魔法をかける。ボンヤリとした光がヴィータの傷口を癒していく。
「……ごめん、勝手な事をしちまった」
言葉を探していた俺は結局それだけしか口にできなかった。
ヴィータの傷口の治療に集中しているように見えるけど、本当はただヴィータから眼を逸らしているという卑怯者っぷり。
怒ってくれてもいい。
罵倒してくれてもいい。
殴ってくれてもいい。
それでも、ヴィータには消えてほしくなかった。
たとえヴィータが誇りにしていた『守護騎士』の肩書きを犠牲にしてでも。
「リン、おまえには言わなくちゃならねぇ事がある」
ついに来たかと思う。どんな罵倒、怒りを受けようとも、俺はそれを受けなければならない。わかってはいるが、その覚悟が固まらない。
それでもヴィータは待ってくれなかった。
「ありがとな、アタシを助けてくれて」
だがヴィータの言葉はそれとは真逆で、不思議なほどに澄んでいた。
肩透かしをくらった形になった自分の顔が戸惑ったような表情を浮かべているのがわかる。その顔を隠そうともせず、俺は逸らしていた視線を合わせた。
「リン、アタシが怒ってると思ってたんだろ? そりゃあアタシだってまだ完全には割り切れていない部分もあるさ。守護騎士である事はアタシの全てだったんだからよ」
「……」
「けど…何でだろうな。リンと在るのも悪くないって思ってしまうんだ。だからそんなに強く自分を責めないでくれ」
俺をしっかりと見据えながら、こいつはその意思をハッキリと込めて言い放つ。
「この契約が一時的なものか半永久的なものかわからないけどな、アタシはリンを恨んだりしない」
「ヴィータ…」
この契約は破棄したとしても守護騎士に戻れる保障は無い。
そういう可能性だってある。
ヴィータの今後を左右してしまうような一方的な契約だったのに、コイツは恨んだりしていない、そう言ってくれた。
「だから胸を張ってくれ。
ここまで言ってくれたヴィータの言葉に、俺は情けない顔ができないなと思った。だから言われたとおり、胸を張ってヴィータを見据える。
ヴィータもそんな俺に満足してくれたようで顔を綻ばせた。
ここに新たな絆の契約は成ったのである。
重たかったシグナム達のダメージも抜けてきたようで、再び構えをとる。
三人が恐ろしいくらい睨んでくるけど俺もヴィータも怯んだりはしない。そんなヤワなタマじゃないぞ。
「実際どうなんだヴィータ? アレは洗脳の類じゃないのか?」
「最初に施されたのはそうだった。だからリンの魔法で洗脳は解けたんだ。けど今のシグナム達は違う。さっき戦ってみてわかった。みんなは書き換えられたんだ」
「それはつまりあいつらは姿こそ変わらないけど、中身が別になっているって事か?」
「ああ、そういう認識で構わない」
長年共にしてきたシグナム達を弄られたという事実。
それはヴィータに怒りを抱かせるには十分すぎるものである。実際、ヴィータの言葉の端々にその感情を読み取れる。
…なるほどね。
なら【覚醒】が効かなかった理由もわかるわ。洗脳されて俺たちを敵と認識してるんじゃなく、最初から俺たちを敵と認識しているというわけか。
「でだ、コイツらを傷つけずに無力化するのが理想的なんだが…」
「アタシら二人だけでそれは無理だ」
「ですよねぇ~」
あんだけ派手な狼煙を上げたのにみんなの救援はまだなのか?
心中で悪態をついていると、守護騎士達は突如としてその動きを止め明後日の方向の空を見上げていた。戦闘中にも関わらずのその動きに俺達二人は怪訝な表情を浮かべる。
けどその理由もすぐにわかった。
彼方の空――海の方から強いどころではない強大な魔力を感じ、さらにはそれによって生じた閃光が空を照らしたからだ。
「主ッ!」
さっきまで相手にしていた俺達を余所に、守護騎士達はその魔力の反応元へと飛び立つ。
「あ、おい、待てっ!」
慌てて引きとめようとしてもすでに飛び去った後。伸ばした手が宙ぶらりん、程なく下ろす。
「リン、今のは……」
「多分、ジーンの魔法だろうな。けど何が…」
「りぃぃぃぃぃんくぅぅぅぅん!!!!」
何事!?と身を固くした俺は人間として当然の反応をしたと思う。
守護騎士達が飛び去った方向とは反対の空から降り注いだ声は聞き慣れた声だ。見上げると、思ったとおりの姿が…迫って…
「うおおぉぉっ!!」
ドーンと擬音の付きそうなダイブをかましてきたのはみなさんご存知の高町なのはその人。
ちと油断していたけど何とかキャッチ。横のヴィータもビックリしてるし。
「ちょ、ちょい、なのは。いきなり…」
「大丈夫だった? 無事だった? 怪我してない? 健康?」
一気に捲くし立てるなのは。
その台詞を確認するように体中をペタペタと触ってくる。本人は触診のつもりなんだろうけど、如何せん遠慮が無さ過ぎる。
「あっ! ここ痣ができてる!」
「あ~、直に治るって」
「…」
ちょ、そんなとこ触らないで。
「わっ! ち、血ぃ!」
「あ、やべ。治してなかった」
「……」
ヤメテ!
このケダモノ!
「ペタペタ…ぅわ~、鈴君って何気に鍛えてるよね」
「あの…なのはさん?」
「………」
遠慮のない触診。
だがそこで終始無言だったヴィータが何時の間にか起動して、なのはと俺を引き剥がす。
「おっ?」
「ぅわっ?」
そして間に割り込むようにしてなのはの前に立ち塞がるヴィータ。
「リンなら大丈夫だ。だからもう心配はいらないぞ」
「……」
何やら妙な威圧感を醸し出すヴィータ。
なのはも最初は呆気に取られていたようだけど、徐々にその顔が不機嫌になっていく。なのはが右に動けばヴィータも右に。左に動けば左に。
悉くなのはを阻むようにして、立ち塞がる。
「何で邪魔をするの? ヴィータちゃん」
「なのはこそ、心配ないって言ってるだろう?」
「それは自分で確かめるの…」
「必要ないだろ。アタシが大丈夫って言ってんだから」
あれ?
何、この空気。なんでこんな険悪な雰囲気になってんの?
「だいたい何でヴィータちゃんが鈴君の事でそんなに出しゃばるの?」
「そんなの決まってる」
あ、何か俺の本能が思いっきり警鐘を鳴らしてる。早くここから逃げろって。
けど逃げてもアウトだとも警告してるよ。
……それって俗に言う『詰み』ってやつじゃね?
脳内会議、この間一秒にも満たず。
それだけ瞬時に算出したのに無常にもヴィータの声が高らかに響き渡った。
「アタシとリン、苦楽を――生涯を共にし、身も心も添い遂げる
あ、神は死んだ。
「……事情はわかったの。色々と言いたい事もあるけど、今は急を要するからこの辺にしておいてあげる」
これだけの折檻をしておいてまだ溜飲下がらないの?
見てよコレ、俺の体。
R-18仕様になってるだぞ? スプラッター的な意味で。
明らかに守護騎士の時よりもダメージ負ってるよね? おまえ、これアニメだったら俺の立ち絵にモザイクかかるよ?
内心愚痴っても、口には出さない俺って優しいね。決して折檻中の表情が全く無いなのはが怖くて口に出せないってわけじゃないんだからね!
「そ、それで…何でなのは一人しか居ないんだ? 他のみんなは?」
どうやらさっきのなのはに恐怖を感じたのはヴィータも一緒のようだった。さっきまでの強気な態度はナリを潜め、ちょっとだけ殊勝になった。
「アリサちゃんとすずかちゃん、フェイトちゃん、それに監督役としてプレシアさんがさっきの魔力の反応がした方に。他のみんなはセーフハウスとか武装局員の救援に向かったよ」
「おまえは?」
「アリサちゃん達と一緒に行くようになってる。けどやっぱり鈴君が気になって…」
アリサ達は闇の書の仕業というのはわかっても、今のシグナム達――ジーンによる異変にはまだ気付いていないってわけか。
守護騎士達はさっきの高魔力反応があった海の方に向かったよな?
「ヴィータ、すぐにシグナム達を追いかけるぞ」
「ああ、わかった」
「あっ、私も!」
手早く治療を終わらせ、三人飛び立つ。
目指すは海鳴市向こうの海。恐らくそこにジーンが居る。
にしてもさっき感じた高い魔力、まるで広範囲攻撃魔法のようなモノだったけど誰かと交戦してるのか?
アレと渡り合えるような魔導師って……まさかな。
◆ ◆ ◆
『クロノ』
街中に召喚された異形の数があまりにも多すぎて武装局員だけではセーフハウスの防衛が困難になりつつあった。局員からの救援の報せを受け、ここに戻って来たのはついさっき。
幸いにもこの異形どもは数は多いが、個々の戦闘力は通常の武装局員でもどうにかなる程度だったので僕とユーノ、アルフで事に当たる段取りにした。
けどやはり数の暴力と言うのは恐ろしいもので徐々に体力を削られて行っている。
アースラに連絡をつけて本局から救援を求めたいけどこの結界のせいでそれも叶わない。今は母さ……艦長がどうにか解除しようと手を打っているけど状況は芳しくない。
この結界を張ったであろう闇の書の方へ戦力を注ぎ、早期解決を狙った人選だったけど早まったかもしれない。
それともう一つ。
気懸かりだった鈴については、彼の能力の高さから自分で窮地を脱すると信頼してあえて放置していた。
友人として彼を信用していると言えば聞こえは良いけど、見方を変えれば見捨てたようなモノだ。
今の僕は執務官。
時として非情とも思われるような選択を選ばなければいけない。だから個人的に遺恨のある闇の書へ向かうのでなく、こちらのセーフハウス側へ戻ってきたのだ。
あちらには監督役としてプレシア・テスタロッサを編入させたからうまくやってくれる筈だ。
「ユーノ! アルフ! そっちはどうだ!?」
「何とか救出できたけど逆にこっちがピンチだよ!」
「下手を打っちまったねぇ」
チームで迎撃していた武装局員が孤立。これを救助するも今度はこちらがピンチ。
背中合わせの僕達三人の周囲には人型から獣型、不定形と選り取りみどりな多数の異形共。影のように真っ黒で顔を認識できるほどではないのが逆にこちらを嗤ってるかのように錯覚させる。
「こうなったら覚悟を決めようか」
「嫌いじゃないよ、そういうの」
「そうだね。でも…足掻けるだけ足掻くよ」
自分の四肢に力を込め、頭の中で魔法を構築。僕達の殺気に反応したのか、異形共も今にも飛びかかって来そうなほどに身を低くする。
一触即発という四文字熟語が似合うほどに空気が張り詰められる。
そしてコマンドを発動させようとする瞬間、ソレは訪れた。
「トォリャアアァァァァッ!!!」
上空からまるで隕石のように降ってきた。
ソレは目の前の異形の一体を踏み潰し消滅させる。そのまま流れるような動きで隣の異形を蹴りとばす。それだけではなく、さらには上空から降り注いだ光が多くの異形を貫いていく。
突然の訪れにユーノとアルフは呆気に取られているけど、僕は目の前で異形を打ちのめしていく人物がよく知る人物だったので動くのは早かった。
「リーゼ!」
「よっす、クロスケ!」
「私もいるわよ」
さらには傍に降り立ったのはリーゼアリア。
今も異形を相手取っているのはリーゼロッテ。
グレアム提督の双子の使い魔で僕の師匠。
「何でここに?」
「そんなの後! 先にコイツらを片付けるよ、クロスケ!」
そうだった。
疑問は多いけど先にこっちを何とかしないと。ユーノとアルフの方も既に動いている。
僕は再び、デバイスを構え直し、意識を集中する。
設定とかがゴチャゴチャとしてきました。
疑問等あれば、感想欄の方でネタバレしすぎない程度にお答えします。