魔法少女リリカルなのは~ご近所の魔法使い~   作:イッツウ

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このさきには 

暴力的で

鬼のような

キャラ崩壊が

あなたをまってます。

それでも読みますか?

恐悦至極/それなくね?



閑話・まさか…暴走!?

 さてみなさん、突然ですがみなさんは酒をどう思いますか?

 

 適度に楽しむ人、無くてはならない人、酒による弊害で辟易している人も居るでしょう。

 ちなみに作者は酒を飲める年ではありますが全く飲めないので『酒は滅びろ』と常日頃から言ってます。どうでもいいですね。

 

 さて、酒による弊害とありますがそれは様々です。

 飲んだ途端に人が変わったように饒舌になったり、寡黙になったり、体調に異変をきたしたり、人に絡んだり様々です。

 

 これは酒に振り回された、ご近所さんのお話。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 パーティー会場の一部では何とも言えない妙な空間が出来あがっていた。

 

「ん~♪ なのはの肌は柔らかいなぁ~」

「あぅ、あぅ…あぅ…」

 

 ソファーに腰掛けた鈴。その膝には鈴に後ろから抱きかかえられ、頬ずりされているなのはの姿。この妙な空間に名前をつけるとすればさしずめ砂糖空間(シュガーゾーン)か。

 

 

 

 

 

 この状況の説明は簡単。

 

 鈴が酒に酔った。

 

 ただそれだけ。

 未成年の鈴が何で酒を飲んでるのかという疑問もあるだろう。その点に関しては、目撃者の証言からとある保護者の犯行であると裏付けが取れた。

 事情聴取の際、犯人からの供述を述べよう。

 

『おもしろいからやった。悪い事をしたつもりはないから後悔も反省もしていない』

 

 犯人は女性艦長や元弟子の女性から説教を受けているが馬耳東風である。

 

 

 

 まぁそんな事より、酒の弊害にはこんなものもある。

 

『抑圧された鬱憤だの欲望だのの開放』

 

 つまり……これは…面倒な事に、なっ…た…

 

 

 

 

 

「鈴君、その…ちょっと、恥ずかしいよ…」

「気にすんな。俺は気にしない」

 

 多くの観衆の眼を気にするなのはを切って捨てる。

 受ける視線に込められる感情は嫉妬、羨望、楽観、憤怒と様々である。

 そして観衆の中には、今にも鈴を撲殺せんとばかりに木刀を振るう兄の姿があったり、そんな彼を必死に羽交い絞めにするその妹の姿があったり。

 しかし鈴は気にも止めない。すごいね、酒の力。

 普段だったらこの状況バッチコイのなのはだが、普段からは考えられない鈴からのストレートな愛情表現に思考回路がショート寸前。鈴に対してイケイケのなのはは突発的な受身に弱いのだった。

 暫くなのはの柔肌を堪能していた鈴は、突然なのはの右手をとる。

 

「あ…」

 

 なのはの消え入るような吐息が漏れる。

 鈴はなのはの右手――正確にはそこに刻まれた傷を見つめる。

 鈴となのはにとっての過ちによる傷。ある意味において鈴となのはとを繋ぐ証でもあるのだ。

 

「え、えっと…」

「ごめんな、なのは」

「ふぇ?」

「けど俺だって女の子を傷物にしておいて『はい、さよなら』をする気は無い。いざとなったら…」

「なったら?」

 

「男らしく、なのはを――いただいていく!」

 

 周りから歓声が上がる。

 小学生――さらには酔っ払いの発言とはいえ、今のは完全にプロポーズのソレである。

 歓声に混じって『良かったわね、なのは』だの『彼ならばウチのなのはを…』だのと、さりげにご両親も同意も得ていたりする。

 ちなみに兄の方はうるさくしすぎたのか頭から血を流しながら昏倒している。誰の犯行なのかは不明だが、その妹の手に握られている赤く染まった酒瓶が全てを物語っていて迷宮入りなど無さそうだ。

 

 さて、突然の爆弾発言を受けた当のなのはも最初はその言葉の意味に思考が追いつかなかった。

 だが暫く熟考して、その意味を理解した途端――

 

「きゅぅ~…」

 

 思考回路がショートした。

 

「ありゃ、にゃのは? を~い」

 

 急に動かなくなったなのはに呼びかける鈴。

 だけど全く反応が無いので酔っ払いはすぐに興味を無くした。酔っ払いにとって反応の無い物ほどつまらない物もないだろう。

 そんななのはに駆け寄る1人の少女。

 

「な、なのはちゃん! しっかりして!」

「ん~? あ~、すずかぁ~」

 

 鈴の視界に映った月村すずか。

 目標捕捉!

 捕縛開始!

 

「ほら、すずかも~、一緒に飲もう~」

「ひゃあっ!」

 

 すずかを一気に引き寄せ、さっきのなのはと同じように後ろから抱きかかえる。

 

「あ、あの鈴君。ちょっと落ち着いて、ね?」

「らいじょ~ぶ、酔ってまへ~ん♪」

 

 応答がどう聞いても酔っ払いのソレです。本当にありがとうございました。

 

「す~ず~か~♪」

「きゃあ! ちょ、鈴君! や…そんな…とこ、ひゃん! …あっ」

 

 文面にするとR-18っぽくなってますが、決して【ピー】な事はしてません。

 当然です。2人はまだ小学生なのですから道徳は弁えてるでしょう……多分。

 ちなみに彼女の姉は妹を応援すべく、R-18を推奨していましたが突如現れたメイドさんに引き摺られてどこかに行っちゃいました。

 多分、OHANASHIですね。ムチャシヤガッテ。

 

「り、鈴君! いい加減に――」

「すずか」

 

 締まらない顔から一転、真剣な顔をした鈴にすずかも出そうとした言葉が詰まります。

 そんな事は露知らず、鈴は吐息がかかりそうな程にすずかの耳元に口を寄せ、彼女だけに聞こえるよう静かに呟く。

 

「すずかが何者であろうと関係ない。必ずおまえと契約してみせるからな」

 

 すずかは一瞬にして悟った。

 夜の一族における契約とはただの契約ではない。鈴が言ってるのも、その契約だろう。もちろんそれを知らないすずかではない。そしてそんな言葉を聞かされたすずかは――

 

「~~~~っ!!」

 

 逃げた。

 顔を真っ赤にし、恥ずかしさのあまり紅潮した顔を両の手で覆い隠しながら猛ダッシュ。夜の一族の身体能力をフル活用しているのでかなり速い。

 

「んぇ? すずか~、何処行った~?」

 

 取り残された酔っ払いはまだ現状を把握出来てないっぽい。

 急に居なくなったすずかを探すべく、キョロキョロと周囲を見渡す。見えるのはこの遣り取りをすっかり酒の肴にしている野次馬連中ばかり。彼のお目当てであるすずかは居ません……が――

 

「おっ?」

「あ」

 

 代わりの人(いけにえ)を見つけたようです。

 その代わりの人(いけにえ)、アリサ・バニングスは目と目が合う瞬間、逃げるべきだと気付いた。

 そして逃げました。当然、追いかけられました。

 

 

 

「アリサ・バニングス、確保ぉぉぉ!!」

「わぁっ! なんであんたそんなに速いのよ!」

「ふっ、これも秋月式魔法システムのちょっとした応用よ」

 

 嘘です。ただの【強化】によるダッシュです。

 

「つ~か何で逃げんだよぉ?」

「酔っ払いの相手なんてゴメンよ!」

「ちょっと羨ましそうにしてたくせにぃ~」

「だ、誰がっ!?」

「何だ? 2人に妬いたのか?」

「だから妬いてなんかっ!」

 

 突如として鈴はアリサを力一杯抱きしめる。

 酔っ払いのやることとはいえ、あまりの唐突さにアリサは戸惑った。

 自分が好意を寄せる人の抱擁だが、その当人は酔っているのだ。彼女の胸中では『放せ』と『このままで』という二律相反の思いが鬩ぎ合い動けないでいた。

 

「すまんな。けどあの2人も俺にとってかけがえのない大事な人なんだ」

「あ…う…」

「けど勘違いするなよ? アリサだって俺にとっても大事な人であり、大好きな人だ」

 

 Q・こいつ実は酔い覚めてるだろ?

 A・酔ってます。

 

「よ、酔っ払いの言う事なんかに惑わされないわよ!」

「じゃあ、証明してやる」

 

 疑問を思う暇も無かった。

 アリサが自分の唇に感じた感触と熱。1秒にも満たないが、彼女は確かに感じた。

 鈴の唇を。

 

「これで証明されたか?」

「……」

「アリサ?」

「き…」

「き?」

「きゃあああああぁぁぁあぁぁ!!」

 

 アリサは一瞬にして相棒(デバイス)を展開、そのままフルスイング!

 

「ウボァー!!」

 

 モロにくらった鈴はそのまま吹っ飛び、廊下を2回ほどバウンドして動きを止める――というか動かなくなった。手足が変な方向に曲がってるのは気のせいだと信じたいところだ。

 

「もっとマシなシチュエーションでやってよ! このバカァ!」

 

 さり気に自分の欲望を吐露しながらその場を駆け出すアリサ。動かなくなった鈴は当然のように放置。

 自業自得だから仕方ないね。

 

 

 

 

 

 さて、そんな風に転がっている鈴に近づく1人の姿。

 

「……」

 

 彼の傍にしゃがみ、じっと見つめたかと思うと、おもむろに動かない彼を殴った。

 

「アイツらと戯れるおまえを見たら…なんかムカついた。だからこれはアタシにとって正当な権利で行為だからな、うん」

 

 誰もいないこの廊下で、聞いてもいない自己弁護をしながら死体殴りを続ける少女。

 ひとしきり殴って溜飲を下げた彼女は、その紅い髪を揺らしながらその場を立ち去る。後に残ったのはさらに損傷の酷くなった死体(仮)のみ。

 犯人は誰なのか…当然、死体(仮)は語らない。

 

 

 結局、鈴はOHANASHIを終えたメイドさんに発見されるまでそのままでしたとさ。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 翌日である。

 

「鈴君、その…昨日言ってた事って本当?」

「あ、あの、今は無理でも…お互いが大人になったら……ね?」

「あのね、い…嫌ってわけじゃないのよ。ただ…もっとこう、ムードとかをね…」

「…おまえら何言ってんの?」

 

 酒の弊害の1つ、記憶の忘却。

 

「「「……」」」

「おい、何でデバイスを構える?」

 

 

「オモイッキリ……アタマ、ヒヤソウカ…」

「眼前の敵の完全沈黙までの間…能力使用限定解除、開始…」

「一発で沈めてあげるわ。覚悟はできたかしら?」

 

 XXXX年、海鳴市は魔法の炎に包まれた。

 

 




時折、こういうコメディ調の物が書きたくなります。

というよりこの作品だってジャンルはコメディの予定だったのに…

コソッと加筆したり。

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