魔法少女リリカルなのは~ご近所の魔法使い~   作:イッツウ

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戦闘描写って難しいですね。




13・楽しめない!

 

『鈴』

 

 

 その日の深夜、俺たちは森の中であの少女と対峙していた。池に架かった橋のその中央にあるのはジュエルシード。まだ封印はしていない状態で置いてある。

 緊迫感が漂う空気の中、なのはが一歩前に踏み出す。

 

「えぇと…久しぶりだね」

「……」

「私の名前は高町なのは。よかったら名前を教えてくれないかな?」

「…フェイト・テスタロッサ」

「アルフだよ」

 

 フェイトね。今更だけど、俺たち名前を知らなかったんだな。

 それと夕方にみんなから聞いたんだがフェイトの横にいる女性――アルフは以前に俺が撃退したあの狼のようだ。さっきから俺をずっと睨みつけてるのはその時の恨みからか?

 

「アリサ・バニングスよ」

「月村すずかです」

「ユーノ・スクライア」

「秋月鈴だ」

「以上が私の友達。それでさ、私たちはジュエルシードによる被害を抑えるために集めてるんだけど…フェイトちゃんとは戦うしかないのかな?」

「……」

「ほら、フェイトちゃんが集める理由も知らないし、私たち話し合えば協力できるかもしれないし」

 

 なのはは懸命に話し合おうとするもフェイトには届かない。

 それはそうだ。それは言ってみればなのはによるわがままな一方的な要求だ。それだけでどうにかなるほど世界は甘くもないし優しくない。

 やがてフェイトはデバイスを構え、戦闘態勢に入る。

 

「言葉だけじゃ、何も伝わらない…」

「フェイトちゃん……」

「覚悟を示して。このジュエルシードを賭けて」

「…いいよ。私たちが勝ったらいろいろ話してくれる?」

「…いいわ」

 

 あれ?

 なのは意外と乗り気? 

 最後まで躊躇するものとばかり思ってたんだけど。

 

『なあ、なのはの奴なんで乗り気なの? もっと渋るかと思ったんだけど…』

『昼間に蓮さんから喝を入れられたのよ』

 

 なんだ。フェイトに頼まなくてもよかったのか。まぁいいや。

 フェイトの言葉を身に受け、なのは達はそれぞれのデバイスを構える。ユーノもバリアジャケットを纏う。俺はとっくに準備完了。

 

 さぁて、長い夜になりそうだな。

 

 

 

 

 

「このっ!」

「この前の借りを返させてもらうよ!」

 

 戦いが始まって俺たちは2チームに分かれた。なのは達3人娘はフェイトに、俺とユーノはアルフへ。

 以前は敗北で終わってしまったけど、今回は3人が以前とは違う。絶対勝てるとは言わないけど、前回のように簡単に負けるという事は無いだろう。ならば俺はあいつらを信用して自分の相手に集中するのみ。

 

「くたばりな!」

「【盾】!」

 

 アルフの拳を【盾】で受け止める。拳と【盾】の接触により、強烈な魔力の奔流が巻きおこる。

 

「くっ!? 何で壊せないんだい!?」

 

 そりゃ対応してる術式が違うからだろう。それよりもさり気に【盾】を壊す気でいたのか。油断も隙もあったもんじゃないな。

 やがて俺の【盾】を壊せないとわかるとアルフはそのまま跳んで後退する。だが逃がさないとばかりに俺の背後からユーノのチェーンバインドがアルフに向かっていく。まるで獲物を襲う蛇のような魔力の鎖だがアルフは持ち前の身体能力で次々とかわしていく。

 

「ハッ! そんなもんに捕まるほど、トロくはないよ!」

「いいや、捕まってるよ」

「!?」

 

 アルフの上空から奇襲気味に跳んだ俺はそのまま踵を振り下ろす。ガッと足に衝撃が伝わる。しかし捉えたと思ったそれもアルフの反射神経による賜物か、ガードされる。そして距離をとって再びお互いが対峙する。

 

「アタシのバリアブレイクでも壊せないあんたのその魔法はなんなんだい?」

「ひ・み・つ♪」

「…むかつくねぇ」

 

 とりあえず挑発。それにしても2対1だからもうちょっとすんなりいけると思ったけど、なかなかどうして。こいつ本当に強いな。

 となると、こいつの主であるフェイトはもっと強いという事になる。

 …なのは達、勝てるよな? 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

『アリサ』

 

 

 たいした時間も経っていないのにもう何合打ち合ったのかわからない。お互いの一撃一撃をかわし、受け、いなす。あたしは近接戦闘を主軸としてるからこうなるのはわかってたけど、神経の削れ具合が半端じゃない。

 対するフェイトはすごいとしか言いようがない。あたしの攻撃だけじゃなく、なのはの援護やすずかのバインドも持ち前の機動性ですべてかわす。どれほどの戦闘能力を有しているのか、あたしには理解できなかった。

 

「このっ!」

「フッ!」

 

 ギィン!と甲高い音が響く。

 

「バルディッシュ!」

《Blitz Action》

「!?」

 

 突然フェイトが視界から消える。高速移動魔法だと気付いたのはフェイトの一撃を受けてから。

 

「あうっ!」

 

 背後からの強い衝撃を受け、一瞬意識がとびそうになるけど歯を食いしばって堪える。以前と違って何とか耐えたけど、空中から落下してしまう。だけどやられっぱなしではいられない。

 落ちる寸前に左手の手甲に仕込まれている、ワイヤーガンをフェイトに放つ。

 あたしの肘まで覆うこの巨大な手甲はそれ自体が頑丈で盾のように使えるし、これ一つで防御の魔法陣を展開することもできる。

 そして最後のギミックがこのワイヤーガン。

 機動性が決して高いとは言えないあたしが相手を絡めとり引き寄せたりと、相手との距離を詰めるのにとれる手段の1つとして蓮さんから託されたもの。

 さすがのフェイトもこの攻撃は予測不可能だったみたいね。対処できずにワイヤーはうまく左腕に巻きついてくれた。それによって何とか墜落は免れる。

 フェイトはワイヤーを切断しようとするけどそうはいかないわ!

 

「クロス、(バンカー)を!」

《承知》

 

 すずかが絶妙なタイミングでバインドを打ち込む。すずか特有のこのバインドは魔力の杭を打ち込むようにして相手を拘束。すずかが吸血鬼なだけあって皮肉の利いたバインドね。

 両手足を拘束されたフェイトはこの状況から逃げられない。あたしもワイヤーを切り離しフェイトから距離をとる。

 

 今が絶好のチャンス!

 

「なのは!」

「うん! ディバイィィンバスタァァ!」

 

 なのはの十八番の砲撃魔法がフェイトに襲い掛かる。身動きの取れないフェイトはせめてもの抵抗とばかりに防御魔法を展開したけど、なのはの極悪なまでの砲撃は防御など意味はないとばかりに容易く貫通してフェイトは魔力の奔流に飲み込まれた。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

『アルフ』

 

 

 上空から高魔力を感じ、見上げると桜色の砲撃がフェイトを貫いていた。

 

「フェイト!?」

 

 思わず叫んでしまってから、自身の失態に気付いた。

 今が戦闘中であることに。

 しまった!と気付いた時にはもう遅かった。さっきまで相手をしていた黒髪のガキはこちらの懐に飛び込んでいて、構えた右手には魔力を感じる。ここまで接近されたアタシにはそれを防ぐ手立てがない。

 

「手加減はする…【衝撃】!」

「ガハァ!?」

 

 腹部に物凄い衝撃を受け、そのまま吹っ飛ばされる。地面を一回バウンドして橋の上を転がり漸く動きが止まる。

 

(迂闊だった。このガキはあの3人と違って戦えるガキだ。それをフェイトに気をとられたからと言って隙を晒すとはね…)

 

 意識が朦朧とする。体を動かそうとしても思うように動かない。腹部には激痛がはしる。まったくあのガキは……女の腹を痛めつけるなんて最低だね。

 うつ伏せの状態から仰向けになって上空を見ると、アタシのご主人はあの金髪のガキに抱えられている状態だった。意識がないのかぐったりとして動かない。

 まるで命を失くしたかのように。

 

 その光景を見てアタシの意識は急激に覚醒する。

 

 負けるとどうなる? 

 ジュエルシードを持って行かれる。アタシ達は回復に時間を要し、その間にあのガキどもは回収を続けるだろう。いや、もしかしたらアタシ達は下手したらこのまま時空管理局に身柄を引き渡されるかもしれない。

 そんな最悪のビジョンが脳裏を掠める。

 

(負けられない!)

 

 負けてたまるか!

 今動けるのはアタシだけ! 

 アタシはいい。けどフェイトを……アタシの主に不幸が降りかかるのは許容できない!

 

 動け! 

 

 動け! 

 

 動いてあのガキどもを!

 

 

 コロスンダ!!

 

 

 奇しくも鈴にやられたアルフの吹っ飛ばされ辿り着いた場所は橋の上。

 

 ジュエルシードのすぐ傍だ。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

『鈴』

 

 

 吹っ飛んだアルフがその場から動かないことを確認すると漸く息をつく。

 

「ふう。いてて…」

 

 今更になって体のあちこちが痛みだす。こちらは致命的な一撃は貰わなかったが、軽いのはいくつか貰っていた。さすがは狼か、動きが速いんだよな。まぁ勝ったからいいか。

 さすがに殺しはしたくないから手加減はした。もし本気で撃っていたら今頃アルフはモザイクかかるようなスプラッター状態になっていたかもしれない。

 

「お疲れ、鈴」

「ん、ユーノも援護ありがとな」

 

 お互いが労いの言葉を交わし、軽くハイタッチを決める。

 

「こっちも終わったわよ」

 

 その声に気付き上を見上げると、アリサがフェイトを抱えたまま下りてくる。それに続いてなのは、すずかも下りてこちらまで来る。

 抱えられたまま動くことのないフェイトの様子を見て思う。

 

「生きてるよな?」

「非殺傷設定! 縁起でもないこと言わないでほしいの!」

「なのはったらひどいわね」

「撃つように合図したのはアリサちゃんでしょ! 2人ともひどい!」

「「冗談だって」」

「~~っ!?」

 

 そしてなのははアリサに噛み付き、アリサもそれに応戦する。俺たち3人はその様子に苦笑しながらただ成り行きを見守る。最近は少なくなったとはいえ、この2人は本来こういう関係なんだよなぁと少し懐かしみながらふとジュエルシードの事を思い出した。

 

「すずか、悪いんだけどジュエルシードの封印を――っ!?」

 

 瞬間、ジュエルシードの方から今までに感じたことのない莫大な魔力を感じた。その魔力に俺はおろか、取っ組み合っていた2人もジュエルシードの方に気を取られる。その視線の先には眩い蒼の光。

 

 

「■■■■■■■■ォォォォォ!?」

 

 

 言葉じゃない。もはや獣の咆哮とでも言うべき雄叫びが衝撃を伴い、周囲に響き渡る。雄叫びでありながらそれに込められた魔力に意識せず背筋が震える。その雄叫びの声は間違える筈がない。さっきまで聞いていたアルフのもの。

 

「まさかジュエルシードを?」

 

 まさかとは思うも恐らく外れてはいないだろう。

 アルフ自身が望んだのか、ジュエルシードが勝手に反応したのかそれはわからないが、もしアルフがアレと融合し、敵意を向けてきたら相当ヤバイぞ。最悪、先生の手を借りるかもしれないな。

 

 やがて光が治まると、そこには禍々しいまでの魔力を溢れさすアルフがいた。姿は人型のソレだが全身のその肌には赤黒い奇妙な紋様がはしっており、まるで生き物のように蠢き、脈打っていた。そしてその瞳も赤黒い光を宿し、額には埋め込まれたジュエルシードがあった。

 やがて荒い息を吐きながらこちらを睨みつけるアルフ。視線だけで殺されそうだった。その視線はアリサに……正確にはその腕に抱えられているフェイト。

 

「フェイトに……触るなあぁぁぁーーー!!」

 

 大地を蹴って、こちらに向かって突進してくるアルフ。その速度はさっきまでのものとは比較にならないぐらい速い。

 

「みんな散れ! 【盾】!」

 

 フェイトを抱えてるため動けないアリサの前に立ち、【盾】を展開する。ガツン!とこちらの腕が痺れる一撃だが、なんとか防いだようだが――

 

「…マジ?」

 

 たった一発。なのはの砲撃も防いだ実績を持つ俺の【盾】がアルフの拳の一撃で半壊状態。なのはのバスター以上の威力?。

 あまりの光景に一瞬、呆然となるもアルフは知ったことかとばかりに再度拳を放つ。一撃で半壊なのだから二撃を耐えられるわけもなく。

 

「……うそぉ」

 

 呆気なく砕けた。この魔法に信頼と自信を持っていただけに信じられなかった。俺はその光景にまだ思考が追いつかなく壮大な隙を晒すこととなった。

 そしてそれは仇となる。

 

「ガッ!?」

「きゃあ!?」

「アリサちゃん!? 鈴君!?」

 

 殴られ吹っ飛ばされた。それはもう盛大にさっきの報復とばかりに。背後にいたアリサを巻き込みながら吹っ飛ばされ、アリサの腕に抱えられていたフェイトはアルフの腕の中へ。そのままフェイトを転移魔法でどこかに送る。

 アリサと共にまだダメージが抜けきらない体を何とか立たせ、アルフに負けじと睨み返す。

 

「さっきはよくもやってくれたねぇ。ここで全員潰させてもらうよ」

「それはこっちの台詞だ。5対1、勝てるとでも?」

「勝てるさ。コレのおかげで今のアタシは負ける気がしない」

「阿呆が…」

 

 アルフが俺たちを逃がさないようにと結界を張る。これで先生に救援要請が出せなくなった。外部に念話も繋がらない最悪な状況だ。

 俺は周囲に散ったみんなを見遣る。相手の強大さを受け止めながらも決して逃げようとしない。ふとなのはと目が合う。普段は怖がりなくせに、ここにきて覚悟を固めた顔をしやがった。

 なら…やりますか!

 

「いくぞ、みんな!」

「「「「うん!」」」」

 

 

 

 

 

「【衝撃】!」

「っ!? ハッ! その程度じゃアタシは倒せないよ!」

「嘘だろ!? さっきまで効いてたじゃねぇか!?」

 

 

 

「こんのぉぉ!!」

「遅いんだよ!!」

「えっ? きゃあ!?」

 

 

 

「おりゃあ!」

「ハァッ!」

 

 俺とアリサの猛攻にもアルフは退くことなく、過剰なまでに魔力をのせた拳で迎撃する。アルフの異常なまでに向上した魔力もそうだが、厄介なのは狼特有の身体能力と勘。回避率が高すぎてこちら側ばかりダメージを受けるのだ。

 

「ディバインシューター!」

「ソードシューター!」

 

 二人の援護射撃も事前に察知されて距離をとられ、回避される。一度ユーノのバインドがアルフを捕らえたのだが、一瞬で強引に引き千切られた。それにはさすがに驚き、チャンスとばかりに突貫した俺とアリサは手痛い反撃を受けたのだった。

 

(どうしよう。マジで活路が見出せない)

 

 今はみんな防御より回避に専念しているのでなんとかもっているが時間の問題だ。スタミナも魔力も無限ではない。加えて向こうはジュエルシードのせいで魔力の枯渇は期待できない。スタミナもこちら以上。攻撃は届かない。防御力も向上とかチートみたいな奴だ。

 仕方ねぇ。

 

『なのは、アリサ、すずか。大技の準備を頼む』

『えっ?』

『どうするのよ?』

『俺が動きを止める。ユーノは俺が向こうの動きを止めたら、アルフにバインドを頼む。2発目は考えなくていい。全魔力を注げ。それで暫くはどうにかなるはず』

『うん、わかった』

『みんな、最後にするぞ。魔力の温存とか考えるな。これで最後だ』

 

「レイジングハート!」 

《了解》

 

「グローリー!」

《お任せを》

 

「クロス!」

《承知》

 

 なのはのレイジングハートはその形状を変えチャージを始める。

 アリサのグローリーの刃が光を纏い、戦斧を形成する。

 すずかのクロスの先端部の十字架が淡く、輝き始める。

 

 それぞれの準備を見届け、身構える。アルフもこちらの様子に気付いて構える。

 今から挑むのは俺とアルフのタイマン。【強化】で限界近くまで自身の能力を向上させる。攻撃魔法は一切なし。肉体勝負。

 覚悟を決め、大きく深呼吸。

 そして突撃!

 

「おおおぉぉぉ!!」

 

 雄叫びをあげながらの突進。そして殴りかかる。当然、直線的なその動きは当たる筈もなく、体をずらすことによって簡単に避けられる。

 逆に向こうはすれ違いざまに拳を打ってくるが、俺も地面に飛び込むようにして回避。けどそれだけで終わらせずに不安定な態勢だが曲芸じみた動きで蹴りを放つ。

 腕でガードされたが、一瞬顔を顰めたので多少なりともダメージを与えられたようだ。どうやら残りの魔力を全部強化に注いだのは正解だったようだ。だがアルフも負けじと反撃。逆立ちしたような態勢の俺には回避できず。

 

「ガッ!?」

 

 地面に叩きつけられるが意識は根性で繋ぎとめる。ゾクッ!と嫌な予感がしたので寝そべったまま横に転がる。さっきまでいた場所を踏みつけるアルフがいた。

 

(子供に容赦なく踏みつけとか…最低だな)

 

 転がった反動で立ち上がり、止まる間もなく再び突貫。拳、蹴りと繰り出せば、回避、防御、反撃とお互いがとことん近接戦を繰り広げる中、俺はそろそろ作戦を開始する。

 

「なるほど。あのガキどもたいした魔力だ。あれなら今のアタシに通用するかもね。だけど…当たると思ってるのかい?」

「ばーか、当てるんだよ。こうやって!」

 

 俺は見え見えの大振りなパンチを繰り出す。当然避けられ、できるのは隙。ニヤリと嗤ったアルフと目が合う。

 

「ゴフッ!?」

 

 刺さった拳のせいで何かがへし折れる音を耳にした。同時に口から熱いものがこみ上げ、口の中に鉄の味が充満する。骨の何本かがイッた。覚悟してたことだけど痛ぇ。こんなことならバリアジャケットの生成法を教えてもらえばよかった。

 だけど……捕まえたぞ!

 渾身の力を込め、アルフの体を身を持って拘束する。

 

「何!?」

「やれ、ユーノ!!」

「わかった!」

 

 俺の合図にユーノはチェーンバインドを行使する。先程アルフを捉えたバインドだが、今度はユーノの持ち得る魔力全てを注ぎ込んでいるので本数も強度も違う。アルフの腕、脚、胴、首、絡められるところを余すことなく絡めていく。

 俺はそのバインドの内の1本でサルベージされ、アルフから引き離される。

 そして、もう後のない…最後の一手だ!

 

「みんな! 一斉射撃用意!! てぇぇーーーー!!」

 

 

 なのはの溜めた魔力が解き放たれる。

 

「ディバィィンバスタァーー!!」

 

 

 アリサの輝く刃が振り下ろされる。

 

「スラァァッシュ!!」

 

 

 すずかの切った十字が光となり放たれる。

 

「グランド…クロス!!」

 

 

 なのはの砲撃魔法が、アリサの魔力斬撃が、すずかの広域魔法がバインドで縛られているアルフに容赦なく放たれ、勝負は決した。

 

 

 

 

 

「アタシの…負けか…」

 

 地面に倒れたまま、アルフが呟く。さっきまで感じた膨大な魔力はすでに無く、アルフ自身は息も絶え絶えな状態。今なら止めをさす事も可能だ。するワケないがな。

 非殺傷とはいえ、アレを受けて意識があるってどんだけタフなんだよ。

 

「はぁぁ。あんたらみたいなガキに負けるとはね…」

「いや、どちらかというと引き分けかな?」

「はぁ?」

「こっちもみんな、もうまともに戦えねぇんだわ。俺は満身創痍、他は魔力がほぼゼロ。そして何より……賞品のジュエルシードはもう無いしな」

 

 そうなのだ。またジュエルシードが砕けたのだ。アリサのときと同様、威力がありすぎて封印通り越して破壊とか。またユーノに頭を下げる作業が始まるお。

 

「まぁそんなわけだ。今回はこれで終わり。解散。はい撤収、撤収ってことで」

「…ここでアタシに止めをささなくていいのかい?」

「冗談。戦いはしても殺す気はねぇよ」

「今後あんたらとまた衝突するかもよ?」

「そん時は……また撃退するだけだ」

 

 その言葉と共にみんなを見渡す。みんなも俺の言葉に頷く。

 そして俺たちは撤収とばかりにこの場から離れる。骨がイッてるせいで痛くて歩きづらいからユーノの肩を借りる。ユーノとすずかの治癒魔法があればマシになるんだろうけど二人とも魔力は限界。よってこのまま旅館に帰還。帰ったら先生に治療してもらおう。

 くそう……波紋で痛みを和らげれたらなぁ、なんてくだらない事を考えながら帰路につく。あ、そうだ。

 

「フェイトによろしくって伝えといて」

 

 じゃあ今度こそ、シー・ユー・アゲイン!

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「…アルフ」

「フェイ…ト?」

「だ、大丈夫?」

「まだ動けないけど…大丈夫さ」

「すぐに治すから」

「助かるよ」

「……」

「……」

「…負けちゃったね」

「ああ、アタシたちの負けだね」

「……」

「それで…どうするんだい?」

「あの子たちには悪いけど、私は諦めない。母さんが望むかぎり…」

「フェイト…」

「その前に…一度、あの子たちと話をしてみたいかな」

「…そうかい」

 

 その時のアルフは小さく笑っていた。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 旅館にて。

 

「今回は本当に危なかったみたいだな」

「そう思うんなら手伝ってくださいよ」

「お前たちの決めたことだろう? 私の出る幕ではないさ」

「…それでもフォローすべきトコはする先生は甘いですね」

「鬼にはなりきれんのだ」

「そっすか」

「そういや相手の正体が判明したんだって? なのはが嬉しそうに言ってたぞ」

「名前だけですけどね。使い魔がアルフでその主がフェイト・テスタロッサです」

「そうか。フェイト……テスタ…ロッサ?」

「どうしました?」

「…いや…なんでもない」

「?」

 

 

「…テスタロッサ…まさか…嬢ちゃんか?」

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 さてはて、こうして俺たちの旅行中の事件は終わったわけだ。そんな俺だがゆっくりと羽を休める……とはいかなかった。

 

「はーーいーーるーーのーー!」

「いーーやーーだーー!」

 

 柱に必死にしがみつく俺。それを引っ張るなのは。

 

 そしてなのはの先にあるのは『家族風呂』

 

 冗談じゃねぇ。この体は子供といえど、一緒に入れるか! 

 つーかこっちは【強化】してんのに何で力負けしそうなんだよ! 

 なのはどんだけ力込めてんだ!

 そんな攻防を繰り広げていたら廊下からユーノが現れた。チャンス!

 

「ユーノ、助けてくれ!」

「ユーノ君、手伝って!」

「え、え~と…」

「ユーノ、頼む!」

「ユーノクン…テツダッテクレナイカナ?」

「ごめん! 鈴!」

 

 途端にユーノのバインドで締め付けられた。ユーノは今度、玉ねぎとヤモリのフルコースを食わせてやる!

 

「それじゃあ行こ、鈴君♪」

 

 

「アッーーーーー!!」

 

 

「ごめん、鈴。弱い僕を許して」

 

 




物書きのみなさんは1話をどのくらいの文字数にって決めてるんでしょうか?

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