魔法少女リリカルなのは~ご近所の魔法使い~   作:イッツウ

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えらそうに説教たれるウチの主人公。

そんな彼だって普通に失敗もするし凹んだりします。

完璧超人ってわけじゃないです。


11・金髪は間に合ってます?

 

『鈴』

 

 

 どうも、主人公の鈴です。

 

 ここ数日の内に起こった様々な困難を乗り越え、かつての穏やかな日常が恋しくなり時々目頭が熱くなるときがありますが元気にやっています。

 さてはて今日のメンバーの予定ですが、みんなですずかの家に集まってのお茶会だ。俺となのはとユーノ+αが集まり、すずかの家へ。

 最近は集まる時はウチという法則ができていたのですずかの家にお邪魔するのは随分と久しぶりな気がする。すずかの家は少し離れているのでバスに乗って移動。そのバスの車内なんですが――

 

「……なのは、もうちょっと離れてくれないか?」

「……嫌」

(ピクッ!)

 

 後ろの席に座る『+α』の要素である恭也さんの殺気のせいで空気が最悪です。

 恭也さんはすずかの姉の忍さんと恋人同士だからすずかの家に行く。そこまではいいんだがバスに乗るや否や当たり前のように俺の隣に座り身を寄せてくるなのはの姿を見て、俺に殺気をぶつけてくるのだ。シスコン自重しろ。

 

 なのはもなのはでおかしい。最近は俺の近くに居ることが多くなった。そして必要以上にくっついてくるのだ。そしていつもと同じように見えるが、翳を帯びた表情を時折覗かせる。

 さすがにこれには変に思い、何かあったのかと聞いたみても『何でもない』の一点張り。

 明らかに嘘だとわかっていてもなのはの口から聞けない以上、どうしようもないのでとりあえずはこの問題は保留している。

 

 ともかくこのシスコンのせいで今の俺はひどく居心地が悪い。これがすずかの家まで続くかと思うと胃に穴が空きそうだ。

 いつか本気で殴ってやる!

 

 どうでもいいが我、関せずを貫くフェレット姿のユーノは毛繕いしてました。おまえ、人間だろ。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 街の中心部から少し離れた郊外にすずかの邸がある。西洋建築のそれはもう立派な邸だ。これを見るたびに火をつけたくなる俺は紛れもなく外道。

 

「恭也様、鈴様、なのは様。ようこそ、お越しくださいました」

 

 忍さんの専属メイドのノエルさんに迎えられて俺たちは邸の中へと。恭也さんは忍さんに引き摺られてさっさと忍さんの自室に。リア充爆発しろ。

 案内された庭ではアリサとすずかがすでに寛いでいた。こちらの姿を見ると小さく手を振ってきたのでそれに応えながら用意された席に着く。

 

「なのは様は紅茶でよろしいですか?」

「あ、はい。お願いします」

「そして鈴様はいつも通り――」

「緑茶で」

「かしこまりました」

 

 俺の明らかに場違いで空気を読まない注文にも微笑みながら承るメイドの鑑であるノエルさんは邸の中へと去って行く。紅茶は苦手なんですよ。

 

「渋いわねぇ」

 

 日本人ですもの。

 

 

 

 その後、ノエルとその妹であるファリンが持ってきた茶や菓子に舌鼓をうちながらのんびりとした時間を過ごす。

 

「おまえら、俺がいつもハイハイと従うイエスマンだと思うなよ?」

(じぃぃぃぃぃぃ)

「…なんだその眼は! 気に入らないんだよ!」

(じぃぃぃぃぃぃ。)

「くっ、落ち着け! あんな安っぽい挑発に乗るな!」

『にゃあぁぁん♪』

「…うおおぉぉっ! ごめんよーっ、お前たち! さあ、思う存分食ってくれ!」

 

 猫たち(アクマ)の魅了に負け、鞄からにぼしを取り出して大盤振る舞いとばかりに手に乗っける。途端に我先にとにぼしに群がる猫たちに心が癒される。猫はいい。正に神が生んだ最高の癒し動物だ。

 

「やっぱり猫はいいなぁ」

「ええ、この子達には私も癒されますし」

「まぁ、悪くはないけど犬もいいものよ?」

「犬も好きだぞ? 俺は」

 

 主にでかいの。

 

「ウチでは動物は飼えないからなぁ…」

「私の家でも飼えないから羨ましいなぁ…」

 

 ウチは面倒を見れる人が居ない。なのはの家は飲食店営業の関係から。だから動物を飼いたいという欲求があってもどうしようもないのだ。

 何かいい案が無いものかと考えていると思考が俺の口から無意識のうちに洩れていた。

 

「すずかちゃんの家に婿入りすればいいのかなぁ?」

「え? ええっ!?」

「「!?」」

「そうしたらこいつらといつも一緒にいられ――グハァ!?」

 

 突然殴られたような衝撃が走り、思わず地面に倒れこむ。何事かと思い顔を上げると、カップを持ったまま固まり顔を真っ赤にしているすずかの姿。

 

「「……」」

「あの…なのはさん? アリサさん?」

 

 そしてグローリーとレイハさんを起動させ、こちらに切っ先を向ける二人の姿。見下ろすアリサの表情は怒りが窺える。

 なのはは……見なけりゃ良かった。能面貼り付けたような無表情が超怖い。眼もハイライトが無い。

 

「あの…よくわからないけどごめんなさい」

「「よくわからない?」」

「何か悪いことを言ったのなら謝る! だから…」

「「…頭、冷やそうか?」」

「えっ? ぬわあぁぁぁぁぁ!?」

 

 ピチューン!とね。

 

 

 

 

 

「いたた…」

 

 やられたことに理不尽を感じながらも俺はトイレで用を足し、邸内の廊下を歩くと曲がり角を曲がったところで忍さんとエンカウントした。

 

「やっほ鈴君、楽しんでる?」

「ええ、ハプニングはあったものの楽しんでますよ」

「そっかそっか……鈴君、ちょっとだけ時間をもらえないかな? 少し話がしたいんだ」

「…かまいませんよ」

 

 俺が了承を示すと、忍さんは傍の部屋のドアを開け中に入って行く。俺もそれに続き中へ。

 そこは普段は使われない来客用の客室なんだろうが、手が行き届いてるのか清潔感が溢れる内装だった。

 

「さてと……話ってのは他でもないけどすずかの事よ。聞いたんでしょ? 私たちの事」

「はい、本人から」

「私最初びっくりしたんだよ。帰ってきたあの子の瞳が紅くなってるんだから」

 

 そうなのだ。結局、すずかのあの眼は一時的なものじゃなく永続的なものだったのだ。元に戻る事無く、紅い瞳のまま。

 

「私たち一族は世間に知られないように生きてるの。もし知られた場合はその者の記憶を消すか、最悪この世から抹消される。例外としては契約ってのがあるんだけど今は割愛するわ」

 

 ありきたりな掟ですね。

 

「最初すずかに話したの。君たちの記憶を消すことを。だって君たちはまだ小学生、いくら頭が良くても何かの拍子で喋ってしまうときがあるかもしれない」

「……」

「そしたら、すずかったらね」

 

『私はみんなを信頼した上で話したの。もしそれでも記憶を消すというのなら私は月村を捨てる! そして月村と戦います!』

 

「だって。子供の戯言だけどあの時のすずかの覚悟に本物を感じたわ。だから君たちを私も信用してみる」

「それでいいんですか?」

「本当は記憶を消すのが最善なのかもしれないけど、私だってすずかと対立するのは嫌だからね」

「そうですか」

「そしてこれが言いたかった事なんだけど…」

 

 そう言って忍さんはこちらの眼を見据え、頭を下げてきた。

 

「ありがとう。すずかと友達になってくれて」

「…それって礼を言うことじゃないですよ?」

「ううん、昔の悲観したすずかとは違う、あんなに前を向いて生きるすずかになったのは君たちのおかげ。私はあの姿がうれしいの」

 

 そう言って頭を上げる忍さん。その顔は本当にうれしいのだろうか、とてもいい笑顔だった。

 

「このまますずかと契約してくれるともっとうれしいんだけどね」

「契約?」

「特別な人になるって事。ぶっちゃけ伴侶」

「それは忍さんが恭也さんに求めてくださいね」

「それは、え~と……あはは」

 

 照れくさいのだろう、真っ赤になってやがる。若いねぇ、青春だねぇ。

 

「恭也さんめ。リア充爆発しろ」

「それは君が言っていい言葉じゃないよ?」

「何でですか? 事実じゃないですか」

「…ねぇ鈴君。スクールデイズって知ってる?」

「いや、知らないです」

 

 俺が否定した途端、忍さんはガクッと頭を垂れため息を吐きながら首を横に振った。その際にボソッと聞こえた「nice boat」っていう呟きが気になったが無視しろと俺のゴーストが囁いてるので全力で無視した。

 そんな風に忍さんと話してる最中だ。

 

(っ!?)

 

 庭の方から強力な魔力の反応を感じた途端に念話が届いた。

 

『鈴!』

『ユーノか?』

『うん、ジュエルシード反応! すぐに来て!』

『わかった!』

 

 念話を打ち切り、忍さんに退出を告げる。

 

「それじゃあ忍さん。これ以上みんなを待たすのもアレなんで俺はこれで」

「うん。ごめんね、引き止めちゃって」

「いえいえ、それでは」

 

 一刻も早く駆けつけるために、挨拶もそこそこにして駆ける。こんな日に出てくんなよと愚痴ってしまうのもしょうがないよな?

 

 

 

 

 

 駆けつけると辺りにはすでにユーノの結界が張られていて俺はそれを抜ける。抜けた先に俺の眼に飛び込んできた光景は戦いの場だった。

 

「ディバインシューター、シュート!」

「ソードシューター、シュート!」

 

 なのは、すずかがそれぞれ用いる射撃魔法を行使する。なのはの魔力弾が、すずかの魔力剣が周囲に生み出され、射出される。その向かう標的側は。

 

 

「バルディッシュ…」

《Photon lancer Full auto fire》

 

 

 漆黒のマントを身に纏い輝くような金髪を流し、その手には黒く無骨な斧(?)を握る、見たことの無い少女だ。

 少女はすずかの無誘導の魔力剣を上空に飛ぶことによって回避。迫る誘導性のあるなのはの魔力弾を同じく魔力弾をぶつけることによって相殺する。

 さっきのバルディッシュと呼んだあの武器は見るからにデバイス。そしてさっきの魔力弾から見るに彼女も魔導師。何者なんだ?

 

「鈴!」

 

 思考は俺を呼ぶ声に遮られた。いつの間にかユーノが傍まで寄ってきていたようだ。

 

「ユーノ、これはいったいどういう事だ?」

「発動したジュエルシードをあの子に奪われたんだ。みんなはそれを取り返そうと…」

 

 奪われた? 

 あの少女も何らかの目的でジュエルシードを集めているのか? 

 

「それを返しなさい!」

「…それはできない」

 

 アリサと少女はお互いのデバイスで切り結び、鍔迫り合いをおこす。アリサは必死に少女に喰らい付くが、少女は冷静にアリサの剣筋を見切り、かわし、受け止め、受け流す。

 アリサの怒涛の連撃からアリサが有利に見えるけど、俺の眼から見るとその逆。アリサの方が不利だ。アリサは連撃を繰り出しているがまだ素人の域を出ない。対する少女の方はそれらを簡単に冷静にいなしている。

 あの少女は本物の戦闘経験者だ。しかしアリサ含めた三人娘は魔法を使えるだけという素人。戦闘などの訓練もしていないので、あの少女に勝てる確率はかなり低い。

 そして、アリサはそんな少女に業を煮やしたのか、大振りの一撃を繰り出そうとする。

 あのバカ!

 

 そんな見え見えの一撃は当然ながら簡単に避けられ、アリサは逆に強烈な一撃を叩き込まれ地表に落下していく。

 

「きゃあっ!!」

「「アリサちゃん!?」」

 

 あわや地表に叩きつけられるかと思ったがユーノが咄嗟に魔法を発動させ、アリサを落下から守った。ナイスだユーノ!

 アリサはダメージが大きかったのか気絶している。そして少女の方はその様子を一瞥すると身を翻しこの場から逃げようとする。

 

「待て! ユーノ、すずか、アリサを頼む! なのは、追いかけるぞ!」

「うん!」

 

 なのはを連れ立って逃げた少女を――正確にはジュエルシードを追っかける。可能なら少女を捕縛して何者か吐かせればいいのだが、そこまでは期待していない。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

『???』

 

 

 目標のジュエルシードも回収を終え、私は追っ手から逃げている。

 ジュエルシードの反応を感じたから来てみれば、そこにいたのはジュエルシードの発動体だけでなく、三人の女の子。しかも3人ともが魔導師。

 状況としては最悪だけど、母さんのためにここは引くわけにはいかない。

 幸運だったのは3人ともが魔導師としての練度が低かった事。使う魔法はそれなりだったけどそれぞれの連携もほとんど無く、あの鎧姿の少女もベルカ式でありながら接近戦もどうにかなる程度だった。

 目的も果たし、帰還しようとすればさっきの3人の内の1人と、見たことの無い男の子が追いかけてきた。

 男の子は見た限りではバリアジャケットも纏っていないしデバイスも持っていない一般人。なのに高速で逃げる私を追跡できるということはあの少年も魔導師?

 とにかく追っ手を撒きたい。2人には悪いけどここで落ちてもらう。

 

「バルディッシュ」

《Photon lancer》

 

 生み出された幾本かの魔力弾が高速で男の子と女の子に襲い掛かる。女の子の方はその攻撃に驚いて足を止め、デバイスを突き出し防御魔法を展開させる。

 

「【盾】!」

 

 対する男の子の方は足を止めることなく手を突き出し、見たことの無い白い六角形の陣で全弾を防いでみせた。

 

「【射撃】!」

 

 さらには魔力弾の魔法で私に反撃を仕掛けてくる。

 デバイスによる補助も無し、詠唱もチャージも無しに魔法を連続で行使する。こんな見たことも聞いたことも無い魔法を使う男の子の存在に警戒レベルを一段上げておく。

 展開した防御壁で防いだけど、思いのほか威力があり思わず足が止まってしまう。そしてその瞬間を男の子は見逃さず、再び魔力弾を打ち込もうとしたところで――

 

『ここはアタシにまかせて!』

『アルフ!?』

 

 少年の横から飛び出した狼――私の使い魔であるアルフが男の子の攻撃を阻む。驚く男の子はアルフの突進をモロに受けて地面を転がる。そんな男の子にアルフはさらに追撃をかける。

 

『こいつはアタシが抑えるから今のうちに逃げて!』

『…お願いね、アルフ』

 

 本当は任せるのも忍びないけどをアルフの行動を無駄にしないため、私はこの場から離脱しようとする。

 

「待って!」

 

 今度はさっきの少女が追いついてきた。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

『なのは』

 

 

 この子の突然の攻撃で少し引き離されちゃったけどやっと追いついた。途中で狼に組み付かれていた鈴君も気がかりだったけどこの子を追う事にした。

 鈴君は『私じゃ勝てない』とか『引き返せ』とか言ってたけどそんなことない。

 私だって戦える。

 

 アリサちゃんよりも……私の方が戦える!

 

 無意識の内に脳裏に浮かんだ鈴君とアリサちゃんのあの光景を振り払ってレイジングハートを構え、目の前の子に問いかける。

 

「その石、返してもらえないかな?」

「…できない」

「それは本当に危ないの。そんな物をどうするの?」

「答えても……意味は無い」

 

 その言葉を皮切りに女の子はデバイスから光る刃を構築し、斬りかかってくる。私もレイジングハートでそれを受け止める。

 ギリギリと鍔迫り合いになり金属同士の噛み合う嫌な音が耳に入る。押し戻そうと腕に力を込めた途端、反発する力が抜けた。

 

「あっ!?」

 

 力を込めた途端、向こうは軽く身を引く事で自然と私はバランスを崩す。その隙に襲ってきた攻撃を受けて弾き飛ばされる。意識が飛びそうになるけど何とか耐えて、距離の離れた今魔法を撃つ。

 一発、二発と撃つけど女の子はそれらを紙一重で避ける。ディバインシューターも向こうの魔法でそれぞれが相殺されていく。

 そして女の子がこちらに向かってきた。私はレイジングハートの照準を定めた瞬間、その女の子の姿が突然消える

 

「えっ? き、消え…」

 

 何をしたのかわからないけど、後頭部に物凄い衝撃を感じた。さすがにそれに耐えられず自然と視界が暗くなっていく。そんな薄れていく意識の中、なんとか力を振り絞り背後を見遣る。

 

 最後に見えたのはあの子の悲しそうな顔だった。

 

 

 

 

 

「ぅ…ぅうん…」

「お、起きたか?」

「ふぇ?…りん…君?」

「おお。鈴君だよ」

 

 眼が覚めるといつもよりも少しだけ高い視点。揺られていることからおんぶされてる?

 

「お、おんぶ? はわわっ!?」

「ちょっ!? 急に動くな!」

 

 おんぶされてることに気付くと急に恥ずかしくなってちょっと暴れちゃった。いつもならなんてことの無いスキンシップなんだけど、とにかく今は大人しくしておく。

 無言で歩く鈴君だったけど、私がこの沈黙に耐えられなくなり話しかける。

 

「鈴君は大丈夫だったの?」

「何が?」

「あの狼」

「あぁ…軽い電撃魔法流し込んだら逃げだした」

 

 鈴君はあの狼に勝ったみたい。あんな状態から勝っちゃう鈴君はやっぱりすごいと思う。それに比べて私は。

 

「負けちゃったんだね」

「だから言ったろ? 勝てないって」

「うん」

「まったく。どうしてあんな無茶をしたんだ?」

「それは……」

 

 言えるわけが無い。

 優先事項であるジュエルシードの奪回よりもアリサちゃんよりも戦えるということを証明したかったなんて。

 証明して鈴君にアリサちゃんよりも私の方が役に立つって思ってほしかったなんて。

 

「…まぁ、答えづらかったらいいや。とにかく反省しなさい」

「はぁい…」

 

 その言葉を最後にまた静かになる。本当はもう普通に歩けるけどこの温もりが心地いいのでこのまま。

 その温もりを感じている途中、あの子の事が気になったから呟く。

 

「あの子、何なんだろう?」

「さあな」

「あの子……悲しそうな顔してた」

「悲しそうなってそんなのわかるのか?」

「にゃはは……わかるよ。だって昔の私、あんな顔してたでしょ?」

「……」

「鈴君。私、あの子と話してみたいな」

「話してどうするんだ?」

「わからない」

「わからないって」

「じゃあ、何で鈴君は昔の私に話しかけたの?」

「それは…」

「気になったから…でしょ? それと一緒かも」

「…そっか」

「そうだよ」

 

 それっきり今度こそ私たちはみんなの元に合流するまで無言でいた。

 考えることは多い。しなければいけないことも多い。けど今は鈴君の心地よさに溺れていよう。負けて傷心気味の今、このぐらいの役得は傍受してほしい。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 とあるマンションの一室にて。

 

「ア、アルフ? その髪…」

「いやああぁぁぁ! 見ないどくれぇぇぇ!」

 

 少女が指差した人間形態となった自身の使い魔。

 

 

 その髪の毛は鈴の電撃によって見事なまでにチリチリパーマ、爆発状態となっていた。

 

「あのガキ、絶対許さないからね!!」

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 月村邸の一室にて。

 

「というわけで鈴君にすずかを人生の伴侶として推薦しておきました♪」

「お、お姉ちゃん! 何言ってるの!?」

「いやぁ、だってこのままだと何時まで経っても進展が無さそうだし♪ 私って優しいでしょ?」

「よ、余計な事しないで!」

「ほらすずか。こんなお姉ちゃんを褒めて褒めて♪」

「……お姉ちゃん……ウゴカナイデ」

「あ、あれ?」

「スコシ、アタマヒヤソウカ…」

「ま、待ってすずか! って本当に動けないし!? ノエル助けて!」

 

 いやあぁぁぁぁぁぁぁ……!!

 

 




時間が欲しい。

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