あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
「おれは 海に飛び込んで気絶したと思ったら いつのまにか暗い箱の中だった」
な…何を言っているのかわからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった…。頭がどうにかなりそうだった…、催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…。
はいそこ、『言ってる事がわからない…イカレてるのか?』って表情しないよー。俺だってわかんないんだからさ。
というわけで俺です。
つーかここほんとにどこなんだろうか。なんかばっちゃばっちゃ音が聞こえるし、ものっそい揺れるし、ぶっちゃけ酔いそう。身動きも取れないが腕ぐらいはなんとか動かせるし、ちょっと叩いてみよう。
がたがたがたがた。
がたがたがたがたがたがたがたがたがたゴガァンッ! …こけた。やばい。
「いま何か大きな音が…ってドラム缶こけてるわね、直さないと」
ドラム缶の中かよ。なんでそこに入れようと思ったんだよ。まったくかわいいやつらめ。
とにかく気づいてもらえたし生存アピールしよう。
「あ…あの、ラーメ、じゃなくて出してください」
「ねえこれ、さっきの娘起きたんじゃない?」
「なら出してあげないと、なのです」
がこん、という鈍い音とともに外の光が差し込んでくる。いよいよ艦娘とご対面だ。
「"楔"ちゃん、始めましてなのです」
「暁よ!」
「響だよ」
「雷よ、よろしくね!」
「うぇ、えっと…はじめまして、よろしく」
どうやら俺の名前は"楔"というらしい。よく覚えておこう。…しかし変だな。
"楔"なんて船、聞き覚えが無いな。もしかするとかなりマイナーな艦だったのかもしれない。有名どころは既に艦娘が存在するしな。
まあいいか。艦娘とのファーストコンタクトは無事成功したことだし。
あたりはやはりというべきか海で、空は先ほどとは異なって澄みわたり雲ひとつ無い快晴。波も穏やかで吹き付ける風もひんやりとして心地いい。要するにものすごくいい天気だ。そして…。
「見えてきたわ、あそこが私たちの家…鎮守府よ」
そう雷が指差す先でどんな生活が待っているのだろうか、などとぼんやり考えながら4人が引く船に揺られていたのだった。
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着いた。気絶していたものの結構疲れた。ここはそこまで大きな鎮守府ではないようだが、工廠やドックなどの設備はきちんと整っているようだ。穏やかな空間の中に何かを作るような音や話し声が流れていく。いい場所だな、と思った。
「おーい!」
六駆の4人が戻ってきたようだ。遠征の完了報告を済ませたのだろう。
「さて、遠征も終わったことだしあらためて自己紹介するわね! 私は特Ⅲ型駆逐艦3番艦の雷よ。かみなりじゃないわ、そこのところもよろしく頼むわねっ!」
ダメ提督製造機もといロリお艦の雷。茶色い髪と大きな目はとても快活そうな印象を与える元気娘である。
「電です、どうかよろしくお願いいたします」
雷とよく似たこの娘は電なのです。しかし姉とは対照的に穏やかな性格の艦娘なのです。
「響だよ。よろしく」
響。銀色の髪をたなびかせた、落ち着いた佇まいをしている。しっかりものなのだろう。
「ごきげんよう、暁よ! よろしくおねがいするわね!」
そして一人前のレディこと
「私は駆逐艦"楔"。よろしくお願いします」
そう言って俺もきちんと挨拶を返す。
「自己紹介も終わったところで、執務室に案内するわね。司令官にも会ってもらわないと」
そういって雷は手を差し出してきたので、その手を掴む。そして執務室へ歩き始めた。
執務室に着くと、入れという声が中から聞こえてきた。
そして俺は中に入り、「駆逐艦"楔"です、よろしくお願いします」と挨拶をする。その声に応えるように振り向いた司令官は…。
俺だった。
…えぇー。
「君が楔だね、わが鎮守府は君を歓迎するよ」
そうやってにこやかに話す俺。やめてくれほんとに。
「…どうした、具合悪いのか? かなり顔色が悪い気がするが」
お前のせいだよ。こっちはショックで気分どん底まで突き落とされてるんだよ。
「まあ話によるとドラム缶に詰め込まれていたようだし、軽く休むといい。部屋は案内を頼んであるから、下がっていいぞ」
違うそうじゃない。いやあんまり違わないけど…なんかこう、むなしい。司令官との素敵な恋ができないことが確定した。だってお前俺だもん。
「は、はい、失礼しました」
…ちくしょう。俺はどんより気分なのを悟られないようにしながら、部屋へと案内されていくのだった。
ちなみに私の嫁はBepちゃんです。
暁たちが引いてる船はアニメ艦これで吹雪が大和を引っ張ってたあの船のでかいやつみたいに思って頂ければ。
読んでくださりありがとうございました!
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微妙に文章が変わりました。