ダンジョンでウホッするのは間違っているだろうか。   作:アルとメリー

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 自己視点で書くのはすごく久しぶりな気がします。
 


リリルカ・アーデの一日

 朝目を覚ました私はこれから日課となる朝の鍛錬(という名の超スパルタ)に行くための準備をしています。

 そうしたところ、目の前の筋肉達磨がこういったのです。

 

「あ、そうだ。今日からはこれを装備していこうか。」

 

 軽い調子でそういうと何もない空間から無造作に全身の装備品が出てきました。

 そんな非常識にも慣れたもので、落ちてきた装備を見つめます。

 

 

「これは、何でしょうか?」

 

 

 私は目の前に積まれた純白の全身鎧に対して疑問を呈します。

 作りこまれた意匠からはその装備の格というものが読み取れます。

 今までさまざまな武具を見てきた私は一発でわかりました。

 いいえ、たとえ誰であろうとも一瞬でわかるでしょう。

 それが力を秘めた第1線級の装備を超えていると。

 

「もう蟻はいいだろ。今日はもうちょっと下に行こうと思ってるんだよね」

 

 軽い口調で告げられた内容が私の頭を右から左に通過します。

 そんなスカスカな頭でつい聞いてしまいました。

 

「えっと、どこに行くんでしょうか?」

「いや、実はさ、少し下に行ったらオークの群れがいるところがあるのよ。倒しても倒しても親玉を倒さないと無限に湧いてくるからちょうどいいかなと。」

「えっと。……リリは冒険者始めて結構経つのに初耳なのですが。」

「あれよ、行けばわかるって!」

「」

 

 

 とりあえず頭を空にして目の前の装備を着てみることにしました。

 全身鎧というものは基本的にオーダーメイドで作られるものです。

 目の前の装備も明らかに大きな人サイズ。

 試しにガントレットに手を通してみます。

 

「ひゃあ!え、ええー。嘘。」

 

 手を突っ込んだところでガントレットが私の手にあったサイズに縮んでいきます。

 その感覚に思わず変な声をあげてしまいました。

 

「ああ、装備は自動で大きさ変わるらしい。俺も最近知ったんだけど。」

「そういうことは事前に教えていただけると助かります。私のか弱い心臓的に!」

 

 しっかりと苦情を伝えると他の装備品もつけていきます。

 鎧に兜にグリーブ、ガントレットにベルト、最後に大きな盾。

 

 小さな自分には勿体ない明らかに一戦級の装備。

 同じドワーフのレベル6、ガレス氏ですらこんなに良いものは装備していないでしょう。

 

「うへへへへ。はっ!」

 

 自分の姿を思い描き思わず出た声にドン引きしている筋肉を見て正気に戻ります。

 

「それじゃあ今日の鍛錬に行くかぁ。」

「わかりました!今の私は何でも倒せる気がします!」

 

そう、今の私のメラメラと燃える魂は誰も止められませんよーー!

 

 

  ■  ■  ■

 

 

「「「「ぶおおおおおおおーーー!」」」」

 

 

 目の前に展開する肉肉肉肉にくっていうか豚。

 通路の幅を埋め尽くし、その後ろからもゾロゾロと詰めてきます。

 ここはダンジョンの10階層。

 レベルが1の中でもそれなりに経験を積んだものしか来れない階層。

 そんなところに私は来ています。

 そうはいっても私も冒険者の端くれ。

 最高到達階層は11階層でありオークの相手をするのも初めてではありません。

 

 しかし、目の前の光景は私の知る其れではありませんでした。

 

 あり得ないほどの密度でやってくるそれ。

 それに対するのは私一人!

 

 そう、私一人なのです!

 

 昨日と同じく筋肉は後ろで待機しています。

 しかし目の前の肉壁は着々と近づいてきます。

 

「ああああああああああぁああ!」

 

 目の前の豚の群れに恐れを成さないように大きな声をあげます。

 そう、今の私は以前までの私じゃない。

 やってやります!

 武器も防具も完璧!

 後ろには頼もしいヒーラー?が付いています!

 

 オーク程度が何するものぞ!

 

 

「こなくそーー!」

 

 

 私はただただ手に持った鉄塊を叩きつけます。

 

 叩きつけられた豚が後ろへと吹っ飛ばされていきます。

 でもあっという間にその隙間は後ろから来たオークに補充されていきます。

 

 その光景を見ようとも私の闘志には一片の曇りもありません。

 昨日のキラーアント無限湧きを乗り越えた私に怖いものなどありはしないのです!

 

 新しくもらった武器を握りしめるとそれを受け取った時のことを思いだします。

 

「このメイスはなんとも言えないMODしかついてないんだけどまあ、今のリリには十分だろ。殴ったらノックバックする!これさえわかっておけば大丈夫よ。」

 

 確かその時にこの武器のことを圧砕のフランジと言っていたでしょうか。

 まあぶっちゃけると金属でできたメイスです。

 まさに脳筋武器。

 一つ前に渡されたフレイルといいこのメイスといい、私を何だと思っているのでしょうか?

 

「こなくそーーー!」

 

 殴りつけたオークが魔石を残して魔素へと還っていきます。

 しかし全く減っていく気配がありません。

 私は目の前の肉の壁を見ながら只々メイスを効率よく振るっていきます。

 

 この、メイスという武器は有り余る重量で相手を粉砕する得物です。

 しかしながら弱点というものもあります。

 まず、リーチが短いこと。

 

 つまり、私がオークを殴るためには相手の攻撃を一度受けなければいけません。

 

 左手に持った身長ほどもある大きな盾を体に密着させるようにして構えます。

 そして相手の攻撃を一度受けて、相手が体勢を整える前にこちらの攻撃を叩きこみます。

 オークと私の身長差は歴然としていますので、まず一撃目は膝を狙います。

 

 メイスの弱点の二つ目は、硬いものを殴るのに向いていないことです。

 相手が盾を持っていたり、有り余る肉の鎧をつけていたりするとあまり効果がありません。

 なので、狙うのはメイスより柔らかい部位。

 つまりは関節、もしくは衝撃を逃がすことのできない頭とか首であるとか、を狙います。

 

 近づいてきたオークの攻撃を受け止めます。

 すかさずメイスを膝に叩き込みます。

 ふっとばされてなおかつ膝が粉砕されて立ち上がれないでいるオークの頭は私にとって丁度いい高さにあります。

 それを圧砕すると、オークが魔素へと還っていきます。

 

 まるで作業のようにそれを続けていきます。

 

 オークの有り余る筋肉から放たれる攻撃を完全に受け止めるこの純白の全身鎧。

 勘違いしてはいけません。

 

 これは私が強いのではないのです。

 装備が強いのです。

 

 

 私は弱い。

 私は弱いのです。

 

 

 その証拠と言わんばかりに目の前を稲妻が走り抜けます。

 

 それは一度敵に当たると更に次の敵に、次の敵にと稲妻が連鎖していきます。

 そして残されたのは辺りに巻き散らかされた魔素と、肉の焦げたような臭い。

 

「よし、そろそろ時間だから帰るぞー。」

 

 

 

 そう、私は弱いのです。

 

 

 

  ■  ■  ■

 

 

 

 朝練を終えた私はシャワーを浴びてオークの返り血を洗い流します。

 一体朝の数時間だけで何体のオークをこの手で圧殺したでしょうか。

 今ファルナの更新を受けたら今までになく成長していると自信をもって言えるでしょう。

 特に力と耐久が!

 

 そんなことを考えながら私は着替えます。

 さっきまで着ていた全身鎧は明らかに目立ちます。

 私のような駆け出しのレベル1が着ていていいものではありません。

 バックパックへと入れると急ぎます。

 

 

「お待たせしました!」

 

 バベルの塔のヘファイストスファミリアのお店の前で壁に体重を預けている女性に声をかけます。

 

「ん、大丈夫。じゃいこっか。」

「あ、はい!」

「ああ、俺はヘファイストスに用があるから二人で行っててくれ。アイズ、昼にまたダンジョンの入り口でなー。」

 

 自由人の筋肉が相変わらずのことを言っていますがそこはもう慣れました。

 

「わかった。それじゃあリリ、行こう。」

 

 あっという間に居なくなった筋肉のことは忘れて目の前のアイズ氏についていきます。

 しかし入ろうとしているところを見て顔が引きつります。

 

 ヘファイストス本店!

 

 私如きでは敷居をまたぐのも憚られる場所です。

 

「あ、あの!ここはさすがに高すぎるので一つ上の階に行きましょう!」

「そう?リリがそういうならそうしよっか。」

 

 危ないところでした。

 どうやらアイズ氏は見たまんま金銭感覚のないお人のようです。

 ヘファイストス本店何てゼロが3つか4つ多い値段がするのです。

 

 午前の朝練にも感じましたが、やはり普段は自分の身の丈に合った装備品を使うのがいいと思ったのです。

 

 というわけでやってきたヘファイストスの支店。

 ここは本店におけるレベルではない試作品の山。

 つまりはリーズナブルな廃品置き場ということなのです。

 

「そういえばリリは何か買おうと思っている装備品はあるの?」

「そうですね、ちょっと近接戦闘を行うための物を買おうと思っているのです。」

 

 言いながら頭の中で買うものを整理します。

 欲を言えば全身鎧。しかしながらお値段がすごいのでやめます。

 なので最低限としては盾と武器。

 武器は剣とかはうまく扱える自信がないので棍棒、メイス、槌。このあたりでしょうか。

 

「えっと、なるべくお手頃な鎧があればうれしいです。あとはいい感じの盾とか、武器としては鈍器が欲しいです。」

「……リリはちっちゃいのに前に出て戦うんだね。わかった、頑張って探そう。」

「ありがとうございます!」

 

 そうして手分けして良いものを物色し始めました。

 

 まずは盾コーナー。

 相手の攻撃を受け止めるためにはある程度の大きさが必要です。

 そこで目に留まったのは少し小さなラウンドシールド。

 体の小さな私であればほとんど隠れてしまう大きさです。

 中々良いですね。キープで。

 

 次に来たのは鈍器コーナー。

 色んな鈍器が置いてあります。

 私もここ最近鈍器を使ったのでわかるのですが、鈍器に大切なのは重心です。頭を重くしすぎると遠心力が働いて強い一撃を放つことができますが、そのあとは隙だらけです。丁度いい場所に重心があると振りやすく、相手に当たった時に手首を締めて衝撃を余すことなく伝えることができます。

 そういう意味ではやはりここは駆け出し鍛冶師のお店。

 なかなか良い鈍器がありません。

 

 

 その雑多に立てかけられている中に頭一つ突き出した得物。

 

「これは、ハルバード、ですか。」

 

 手に取ったのはリリの身長の2倍ほどの長さの長柄の武器。

 その頭には小ぶりの斧と尖った槍頭。石柄は少し細いメイスかという程に重厚です。

 それを持ち上げて持ってみます。

 

「意外と重くないですね。」

 

 そうなのです。

 ファルナの更新をしたわけではないのに力が強くなっている気がするのです。

 最初は気のせいかと思っていたのですが、もうそう思うのには限界に来ています。

 

 そんなことを思いながらハルバードを振り下ろしてみます。

 それを地面ぎりぎりで止め、もう一度持ち上げます。

 

「これは良いかもしれませんね。」

 

 しげしげと細部の造りを見ていきます。

 そして値段が目に入りました。

 55000ヴァリス。

 ちょっと高いですけど全然手が届きます。

 でもそうすると当初の予定の盾とメイスを買うのは諦めることになってしまいます。

 

「どうしたの?」

「うひゃあああ!」

 

 いやいやいや、急に顔をのぞき込まないで!

 気配を消してするのはよくないと思うのです。

 

「そのですね、自分の戦闘スタイルをどうしようかと、悩んでいたのですよ。」

「あー、私はずっと剣を使ってきたから。参考にならないかもだけど、みんなと一緒にダンジョンに行っている時のことを頭の中に思い浮かべて、その時に自分が一番活躍できそうな武器にすればいいと思う。」

「はー、そんなこと考えたことなかったです。」

「あ、それはそうとこの軽装の鎧とかどうかな?顔に着けるお面?みたいなのがすごくかっこいい。」

 

 アイズ氏が差し出してきた軽鎧を出してみます。

 胸当てに体の各部を動きを阻害することなく補強しているのが分かります。

 そこまではオーソドックスなのですが。

 

「これは、お面というかなんというか。」

 

 最後に手に取ったのは顔を保護するお面のような物体。

 上下に分かれていて、口周りと目の周りに穴が開いています。

 そして何故か上半分の上部には角が二つ。

 これは所謂、鬼を模したものでしょうか?

 

「……かっこよくない?」

「かっこいい、ですね。」

 

 かっこいいかもしれないのですが、私がこれをつけるのは非常に抵抗があるというか。

 しかし思い出すのです。

 今日の朝に着た全身鎧はもっとやばかったのです。あれに比べればこんなものいくらでも着れます!

 

「すごく良さそうです。この鎧と、武器は今回はこのハルバードを買います。メイスと盾を買うのが堅実なのでしょうが、アイズ様に言われて気が付きました。ちょっと冒険してきます。」

 

 ちまちまと敵の攻撃を受けて立ち回っていたら置いて行かれちゃいます。

 筋肉の塊もそうですが、一緒にダンジョンに潜っているベル様にだって追いついて見せます。

 

 

「今日は一緒に買い物に来ていただきありがとうございました。これから頑張って足手まといにならないように頑張りますのでよろしくお願いします!」

「これぐらいなんでもないよ。昼からは昨日行った地点からダンジョン再開なんだって。今からワクワクしてるんだ。」

 

 あ、オーラがやばい。

 完全に戦闘民族の目をしています。

 でも、いつかは一緒に肩を並べれるようになりますからね!

 

「それじゃあ帰りましょうか?というよりも行ってらっしゃいといったほうがいいんでしょうか。」

「うん、行ってくるね。じゃあねリリ。」

 

 手を振って分かれます。

 姿が見えなくなると私も行きましょうか。

 今日は昼からベル様と待ち合わせをしているのです。

 

 

 

 ■  ■  ■

 

 

 私はダンジョンの入り口でベル様を待っています。

 白髪頭に赤い瞳の小柄なヒューマン。

 決して強くなさそうな見た目にカモだと思って声をかけたのが少し前の話。

 身分相応にもヘファイストスのナイフを持っているので何度か頂戴しようとしましたが失敗してしまいました。

 今は失敗して良かったと思っています。

 

 リリは一人で、余りにも一人で生きていこうとするあまりに色んなものを失くしてしまっていたのだと思います。

 他者に対する信頼も、依存も期待さえも。

 でも今は、全てから解放されて気持ちが身軽になっています。

 だから、やらねばいけません。

 過去は清算しなければならないのです。

 

 

「ベル様、今日は10階層まで行ってみませんか?」

 

 

 だから、私は言いました。

 ちっぽけな勇気をもって前に進むと決めたのです。

 

 

 それから何事もなくベル様の先導で10階層へとやってきてしまいました。

 いつもの通り、ベル様が倒し、私が支援する。

 本当にベル様は強くなっていきます。

 普段見ている筋肉とは比べるべくもありませんが、その成長速度は驚嘆に値します。

 

「ねぇリリ、どうかしたの?」

 

 一体だけでいたオークを倒し終えた後、ベル様が話しかけてきました。

 ここまで緊張して口数が減っていたのを不審に思ったのかもしれません。

 もはやこれまでです。

 大きく息を吸うと私は覚悟を決めました。

 

「ベル様、申し訳ありませんでした!」

 

 バックパックを下すと私はベル様の前に跪きます。

 

「へっ!?リリ!?」

「今までベル様を騙していました!ベル様が大事にしていたナイフを盗ったのも私です!しかも二回も!他にもベル様の優しさに付け込んでドロップアイテムをくすねたり換金所に魔石を全部出さなかったり、消耗品を過剰に申告したりしました!」

「え、あ、うん。って、そんなことしてたの!?全く気が付かなかったよ……。」

「本当は今回ここに連れてきたのは魔物をけしかけてその隙にベル様のナイフを盗ろうと思っていたのです。でも色々あって、この数日本当に色々あって、もう一度ちゃんとやり直そうって思い直したんです。だから、せめてベル様だけには謝罪しようと思ったのです。」

 

 今まで色んな冒険者のサポーターをしてきました。

 でも、ベル様は、ベル様だけはそのどんな冒険者とも違ったのです。

 だから、新しくやり直すのだったらこの底抜けに優しいヒューマンにだけは全部を話しておかないといけないと思うのです。

 そうしないと、いけないと思ったのです。

 

「その、僕馬鹿だからさ。今までリリに何かされてたなんて全く気が付かなかったよ。はは……。その、だから別にいいんだけど。そんなことより、何があったの?リリ大丈夫?」

 

 心配そうにこちらに手を差し伸べてくるベル様にさすがの私もプッツンします。

 

「あああもう!ベル様ばっかじゃないんですか!?もしかしたらベル様殺されてたかもしれないんですよ!?良くても身ぐるみはがされてたのにその犯人を気遣ってる場合ですかもう!」

「そんなこと言われても放っておけないよ。」

「リリは盗人で汚くて役立たずで卑しい小人族です!」

「リリにはいつも助けられてるよ。ここまで来れたのだってリリのおかげだよ。」

「……私じゃなくてもサポーターならこれぐらい誰でもします。」

「だってリリだから。」

「……またベル様が馬鹿なことを言ってます。」

「僕はリリが良い。リリじゃなきゃダメなんだ。」

「ばかです。本当に馬鹿です。」

「そんなに馬鹿かなぁ僕。」

 

 ポリポリと頬をかくその姿は何とも頼りなく、でもとても誠実です。

 この人を信じられなかったら何も信じられない。

 もう一度、一歩を踏み出すと私は決めたのです。

 

 顔を上げた私とベル様の瞳が交錯します。

 こういう時、普段の頼りなさが嘘みたいに頑固になるのを短い付き合いで私も知っています。

 

「あの!」

「あ、うん。」

 

 一瞬の静寂の後、ベル様が口を開こうとするのを大きな声を上げて邪魔をします。

 これは私から言わないと駄目なのです。

 

「ベル様、こんなリリですが、これからもパーティを組んで頂けないでしょうか?」

 

 私はもう一度頭を下げます。

 そんな私の手をベル様は取って持ち上げると優しく言いました。

 

「ほら立って?僕ってほら、こんなだからさ。リリが居てくれると心強いんだ。また新しく、よろしくお願いします?」

「……なんで疑問形なんですかぁ。」

「いや、その。僕としては別にパーティ解散したつもりがないから最初っから続いているわけで改めて言うのは何か違わない?」

「ベル様は天然というかなんというか。まあいいです。私に隠し事はもうないですし、これからバリバリお役に立って見せます!」

 

 そうしてバックパックから今日買った軽鎧とハルバードを取り出します。

 

「今日から私は戦うサポーターです。ベル様の足はひっぱりません!」

「え、あ、うん。無理はしないでね。」

 

 明らかに引いた表情のベル様。

 ここは一つデモンストレーションが必要ですね。

 

 そう考えていたところにオークが3体やってきます。

 その手にランドフォームである棍棒を持っています。

 朝に相手をした重装備のオークに比べると雑魚もいいところです。

 

「リリっ!」

 

 オークの接近に同じく気が付いたベル様が戦闘態勢を整えます。

 

「ベル様、私が戦えるとお見せしましょう!この3体は私に任せてください!

「えっ!?無茶だよリリ!?」

 

 私の言葉がそんなにも意外だったのか、明らかに狼狽したベル様の横を通り過ぎて私はオークに接敵します。

 先頭のオークが私に標準をつけます。そして射程に収めてその棍棒を振り上げていく。

 

「こなくそーー!」

 

 遅い。

 遅すぎる。

 私が横から振りぬいた長柄の斧頭がオークの分厚い首に刺さります。

 それは止まらずに反対側へと抜けていきます。

 少し遅れてオークの頭が回転しながら飛んでいきました。

 それが一拍の後魔素へと戻っていきます。

 

「え、つよ。」

 

 後ろから聞こえる声から意識を戻し次のオークへと向き直ります。

 先頭のオークが瞬コロされたからなのか、完全に腰が引けている。

 それに近づくとオークが横なぎに棍棒を振り回した。

 それをバックステップで避けるとすぐさま前に飛び出す。

 ハルバードを振りかぶりながら。

 

 それは斜め上からオークの頭へと突き刺さり、胸のあたりまでめり込む。

 すかさずぐっと手首を返して肉をえぐるとそのまま引き抜いた。

 

 仲間がやられているすきにこちらを攻撃しようとしていたオークに槍の穂先を向ける。

 それを渾身の力で突き刺した。

 

 あとに残ったのはまき散らされる魔素と血に染まったハルバードを持ったリリだけでした。

 

「ふぅーーー。あ、どうでしたかベル様!最近リリも鍛錬していまして前より力が強くなったんです!」

「う、うん。頑張る。僕ももっともっと頑張らなくちゃ!」

 

 

 

 その日、10階層のオークが絶滅するのではないかという勢いで狩りつくされるのであった。

 

 

 

 




ソーマファミリア団員A(以下A)「っていうかおせーな」
B「本当に今日決行すんのか?」
C「ちょっと様子見に行ってこようぜ」

 ベルたちのところまで行く3人衆

A「おい、あれがリリなのか?」
B「嘘だろ、レベル1の動きじゃねぇぞ」
C「あ、俺もうこの案件下りるわ」

 そこには鬼の面頬をつけ、身の丈を遥かに超えるハルバードを振り回しオークを殲滅するリリの姿が。

A「もう俺あいつに舐めた口きくのやめるわ」
B「俺もう近づかんわ」
C「早く帰ろうぜ」


 意図せずリリはソーマファミリアから距離を置かれるのであった。

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