仮面ライダーフォーゼ~IS学園キターッ!~   作:龍騎鯖威武

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第8話「距・離・難・解」

 

ビリーザロッドの電撃が強力すぎて、フォーゼBS自身にもダメージを与えてしまっている。

「…アンタも、その力は上手く扱えないようね…」

ユニコーンは息を荒げながらも、フォーゼBSを罵る。

「くっそ!」

握っている右手から、すでに微かな電気を感じ、痺れをきたしている。

「…やはり、完成を急ぎすぎたか。コズミックエナジーが暴発している…」

「はぁ!?」

礼の言葉を聞いた鈴音は、激怒して彼に詰め寄る。

「危険だって分かって、あのスイッチを渡したの!?」

「黙れ」

礼は鈴音の言葉を一切聞かず、次はセシリアが彼に対して詰め寄った。

「聞き捨てなりませんわ!あなたは宇月さんの親友であり、最大のパートナーだとお聞きしました!なのに、不完全なものを託すなんて、どうかしてますわ!」

「黙れと言ってるだろ」

彼女達の言葉を全く聞こうとしない。完全に壁を作ってしまっている。

「落ち着けよ!まず、此処から非難だろ!?」

気絶した紫苑と、彼やフォーゼBSを心配そうに見つめるシャルルの前に立った一夏は、3人に告げる。

次に一夏は、戸惑いつつも分析を続けていた箒に呼びかける。

「箒、フラシェキーを宇月に!」

「あ、あぁ!フラ君、言って来い!」

箒は訳も分からず、一夏の指示通りフラシェキーをフォーゼBSに投げ渡す。

「フラシェキー…。なるほどな!」

それをキャッチしたフォーゼBSはエレキスイッチをオフにして、フラシェキーを起動させているフラッシュスイッチをソケットに挿入し、スモークスイッチも同時にオンした。

<FLUSH-ON><SMOKE-ON>

「目くらまし!」

「キャアッ!?」

「よし!みんな、今のうちに!」

フラッシュモジュールとスモークモジュールで視界を奪い、その隙を突いてラビットハッチに非難した。

煙が晴れると誰もおらず、ユニコーンのみが残された。

「…逃げたわね!臆病者ォ!」

 

ラビットハッチ。

紫苑は深刻な外傷が見られなかったため、シャルルも付き添いながら自室へと戻った。山田は教師として学校面の調査に向かっているため、今は居ない。

礼は宇月に頭を下げた。

「すまない、宇月。おれの気の焦りだ…」

「いや、礼は悪くない。とりあえず、エレキスイッチの再調整を頼む」

一方、宇月は彼を許したが、それを良しとしない者が居た。

「宇月、彼の気の焦りの理由くらい、分かるだろ?」

「箒…」

箒だった。バガミールで分析しつつも、礼やセシリアたちの言い争いをずっと聞いていた。

彼女の推測として、礼がエレキの完成を焦ったのは、自分たちに理由があると分かっている。

「辻永。どうしてわたし達が受け入れられないんだ?」

「おまえ達みたいな中途半端な覚悟でゾディアーツと戦う連中を、関わらせるつもりはない。スコーピオンに勝てたのは、まぐれだ」

箒のほうを見向きもせず、淡々と告げる礼。

その発言を聞いた鈴音が、我慢できずに言い返した。

「あんただって中途半端なモノを作って、宇月に渡したじゃない!」

「エレキがなければ、宇月は負けていた」

「そのエレキで宇月さんは、大怪我を負ったかもしれませんのよ!?」

セシリアも彼に反論する。確かにエレキの力で、宇月には多大なダメージが残った。

礼の感情論で、宇月が傷つけられて良い理由はない。

「あんた…あたし達に嫉妬してるんじゃないの?」

すこしだけ侮蔑のような意味を含んだ笑みを浮かべて、鈴音は言った。

次の瞬間…。

 

バシッ!

 

「え…!?」

鈴音は、強く叩かれた。

殴ったのは…一夏だ。

「…何も知ろうとせずに、こいつを否定するな!!」

その表情は、強い怒りと共に深い悲しみが込められていた。

「なんで…なんでよ!?」

鈴音は殴られた理由が分からない。涙を目に溜めながら聞く。

理由を問われた一夏は、礼を一度見てから答える。

「たぶん、辻永は…」

 

「おれ達を危険から遠ざけるためにやっていたんだ」

 

「織斑、おまえ…!?」

「…おれ達はゾディアーツとは基本的に戦えない。取り返しのつかない怪我を負う前に、おれ達を遠ざけようとしたんだろ。エレキの完成を急いだのは、おれ達が安心して仮面ライダー部を抜けられるようにするためだよな?」

推測であった一夏の言葉だが、礼の意中を捉えていた。

「でも鈴音達に向けた罵倒は許していない。力は中途半端かもしれないが、気持ちだけは本気だ。おれも箒達も、これだけは言える」

次に宇月を見る。

「おまえも知ってたんだろ、宇月?」

一夏は分かりきった返事を想像しつつ聞く。

 

「そっか、そういうことだったのか!」

 

「…は?」

想像もつかなかった答えが返ってきた。

実は宇月、礼が何を考えて仮面ライダー部のメンバーを離れさせようとしたのかを、全く理解できていなかった。

だからこそ、一夏達に対する罵倒に対して、あんなにも激怒したのだが。

「なるほど、さすがは礼!フォーゼから離れれば、ゾディアーツの危険からある程度は遠ざけられるもんな!」

全てに納得がいったのか、大きく笑いながら礼と一夏の肩を叩く宇月。

だが、一夏は…。

「う…宇月…」

「ん?どした?」

拳を握って、プルプルと震えている。

「おまえは、空気をよめえええええええええええええええぇ!」

「えっ!なんで怒った!?意味が分かんねえええええええええぇ!?」

2人の追いかけっこが始まる。

緊迫していた雰囲気を一気に和ませ、次第にこの場にいる人からも笑みがこぼれた。

「…ふっ。宇月、相変わらずだな。相手の都合や気持ちを考えないバカ野郎だ。だが、そこがおまえの取り柄かもな。事情など気にせず、自分の正義を貫く」

礼が微笑んで、宇月を見ている。

「…だが、おれの都合は少しだけ通させてもらうぞ」

そう言って、エレキスイッチを握り締めた。

 

それから暫くして…。自室で紫苑は目を覚ました。

身体を起こすと、辺りを見渡す。

「デュノア君が運んでくれたのかな…?」

先ほどの怪物の襲撃だったため、近くにいたシャルルがそうしたと理解した。

何故か、彼は居なかったが…。

身体中から、汗が噴き出している。信じられない力で殴られれば、当然のことではあるのだろう。

「…お風呂でも入ろっかな」

そう言ってシャワー室に入ろうと、そこに続く脱衣所へのドアを開けた。

 

「…え?」

 

そこには、既に使っている者が居た。

シャルルである。

だが、彼の体は…。

 

「あ…あぁ…うわあああああぁ!?」

「え…?え、えぇ?」

 

男とは思えない身体だった。

とっさに本人が手で隠したため、はっきりとは見えなかったが、隠している胸は男性の大きさではない。

考えられる事はただ一つ。シャルルは…女性である。

「ご、ごごごごご、ごめんなさあああああああああい!」

それが理解できた瞬間、紫苑は一気に顔を赤らめて脱衣所から出て行く

ベッドに座り、頭の中を整理する。

「ど、どうなってるの…!?デュノア君は…女の子になっちゃったの!?」

だが、上手くまとめられず、あたふたとしているうちに…。

 

「し、紫苑…」

 

着替え終わり、ジャージ姿になったシャルルが出てきた。

「デュ、デュノア君…じゃなくてデュノアさん?…えっと、本当にごめんなさい。覗くつもりはなかったんだけど…うぅ」

とりあえず、頭を下げて謝った。

「だ、大丈夫だよ。こっちこそごめんね、驚かせて…」

シャルルは、紫苑の肩を持って頭を上げさせる。

「あの…女の子になっちゃったの?」

「ううん、ボクは元から女の子。でも父からの命令で、男の子として此処に来たんだよ」

つまり、経歴詐称である。なぜ、そのようなことを行なったのか、紫苑には理解できなかった。

「どうして、そんなことを?」

「世界で数少ない男のIS使いなら、デュノア社の宣伝文句になるから。そして一夏の専用機「白式」のデータを盗むため」

たしかに、彼女の意見は一理ある。だが、経歴詐称をするほどの理由ではないと紫苑は感じた。

「え…でも、それは女の子として入学しても、問題ないはずだよ。織斑君とは後から仲良くなれば良いし、デュノア社の令嬢だってだけで十分、宣伝文句には…」

「…ボクの会社は今、経営難なんだ…。第3世代のISのシェアについて来れなくて、フランス代表のボクですら、第2世代…。だから男IS使いとして注目を浴びて、おなじ境遇の一夏と仲良くなる機会を作り、最新型の一夏の白式のデータを盗んで、会社の力に変えようと、ボクが送り込まれたんだよ」

紫苑は驚いたまま、その言葉を聞いている。

「大変だったね…。でも、君のお父さんやお母さんは心配してないの?」

ふとこぼした紫苑の質問に、シャルルは少し表情を暗くして言った。

「ボクは、父との本妻の子じゃないんだ…。幼い頃からお母さんと暮らしてきたけど、お母さんが死んでから、デュノアに引き取られてからIS適性があると分かったときに、1時間くらい会っただけかな」

「あ…ごめんなさい…知らなかった…」

マズイ事を聞いたと感じて、紫苑は頭を下げる。

「…これから、どうなるの?」

「女の子って知られた以上、本国に連れ戻されるかな…。連れ戻されてからのことは分からない。良くて…牢屋行きかな」

「そ、そんなのひどいよ!」

意味が分からなかった。シャルルは経歴詐称をしたとは言え、自分が望んで罪を犯したわけではない。なのに何故、牢屋などに閉じ込められなければいけないのだろうか?

理由があるとするならば…。

「…僕のせいだ!」

紫苑は頭を抱えて、苦痛に満ちた表情になる。

「違うよ!紫苑は悪くないから…」

「僕のせいだ…やっぱり僕は、クズだああああああああああああああああああぁ!」

必死にシャルルが否定するが、紫苑は狂ったように叫んで、部屋から走り去った。

「紫苑…」

彼の姿を、シャルルは追うことが出来なかった。

 

早朝。

礼は、寝ずにスイッチ調整を進めていた。

結果…。

「…完成だ!」

エレキスイッチが完全に調整完了した。

「あとは実践で慣れてもらえば、エレキスイッチは完全に使いこなせる!」

調整室から出てくると…。

「なんだ、これは?」

宇月、一夏、箒、セシリア、鈴音の全員が、テーブルに突っ伏して寝ている。

「まったく…自分の部屋くらい…ん?」

めんどくさそうに呟いている途中、鈴音の手元にあったのは…。

「朝飯か?」

そう、朝食が作られていた。横には手紙がある。

それを手にとって、目を通した。

 

~礼!あんたに認めてもらうまで、ここに居座るわよ!~

 

「ふっ…チビ女め」

軽く笑い、朝食を手にとってラビットハッチから出て行った。

 

一方、シャルルもいつの間にか眠っていたらしい。

「あ…朝か…」

昨晩のことを思い出し、複雑な表情になった。

そこへ…。

「デュノア君!…じゃなくてデュノアさん!」

「紫苑?」

紫苑が喜びに満ちた表情でやってきた。昨日の様子がまるで嘘のようだ。

「見つけたよ!」

そういいながら、紫苑は学生手帳を手に取り、シャルルに見せつけた。

「校則には「在学中の生徒は、いかなる政府や国家の干渉も受けない」ってあったんだ!だから君は在学中だけでも連れ戻されないよ!それに僕が黙っていれば良いんだ!」

嬉しそうに言う紫苑。よく見ると、彼の目にはクマが出来ている。

おそらく、紫苑は眠らずにシャルルを救う方法を模索し、この項目を見つけ出したのだろう。

彼の優しさを感じ、シャルルは微笑んで紫苑の手をとった。

「紫苑…優しいね。ありがとう、ボクを庇ってくれて」

その言葉に対して何故か紫苑の表情は暗くなり、彼女の手も離す。

「僕は優しくない。だってクズだから…。でも、デュノアさんには何の罪も無いから。どうしても助けたかった」

紫苑は自分を否定しすぎている。現に彼はシャルルを助けるために、此処まで頑張れるほどなのだ。紫苑の肩を持って、シャルルは優しく言い諭した。

「自信を持って。紫苑はクズなんかじゃない」

 

「…何も知らないからそう言えるんだ」

 

「え…?」

「僕も秘密を教えるよ…。君の秘密も知っちゃったから」

紫苑は暗い表情をしたまま、上着を脱ぎ始める。

「うわっ!ちょっと!?」

とっさにシャルルは俯く。だが…

「僕はね…」

 

「親殺しなんだ」

 

その言葉を聞いて、彼を見た瞬間…。

「紫苑…!?」

シャルルは絶句した。

紫苑の上半身には、至る所に縫い跡があった。右腕に関しては、不自然な肌の色をしている。

「僕の身体の半分はお母さんで出来ている。僕にIS適性があったのは、体の中にあるお母さんの身体が微かに適合したから。でも微かにだから、適性度も低かった」

彼の肉体は半分が死滅しており、それを母親の身体で補っている。特に右腕と左足は母親の手足そのものを使っている。だからこそ、肌の色が違うのだ。

「昔、事故で瀕死の重傷になって…お母さんは僕を生かすために、自分の身体を提供した。そして僕は助かったけど、お母さんは死んだ」

「紫苑…でも、殺す気があったわけじゃ…」

壮絶な過去だと感じたが、紫苑は自分の意志で母親を殺しているわけではない。

だが…。

「お母さんが死んで、僕は生きてるって分かったとき、こう思ったんだ…「良かった、僕は生きてるんだ」って…」

紫苑は顔を伏せ、涙を流し始めた…。

だが、次に無理に笑った表情で前を向く。

「デュノアさんと同室になって、一緒に勉強したり、こうやって昔のことを明かしあったりして、僕も独りぼっちじゃないかもって錯覚できた」

「独りぼっちじゃないよ。だって、城茂君や一夏達もいる。ボクだって…!」

「いや、独りだよ。君やみんなは自分の親を殺した?」

その言葉に対する反論を、シャルルは出来なかった。

「みんなみたいに優しい人達が出来るわけがない。僕は優しくないからお母さんを殺せたんだ。だから僕はクズなんだよ」

彼は自分を救ってくれたのに、自分は彼を救えない。いや、本人が救われることを望んでいないといったほうが適切だろう。

それでも…。

「じゃあ、ボクと一緒にがんばろ。もし紫苑がクズでも、ボクは君を受け入れるよ。ボクも、ボクとしての在り方を探すから…」

シャルルはもう一度、紫苑の手をとって言う。

「デュノアさん…ありがとね」「うん」

その時…。

 

ドゴオオオオオン!

 

「近い…!?」「行こう、紫苑!」

シャルルは紫苑の手を引き、部屋を出て行く。

 

数分前。

「シャルル・デュノア…今度こそ!」

2人が話を続けている部屋のに続く大きなバルコニーで、女子生徒がスイッチを握っている。

それは既にラストワンの状態だ。

「待て!」

そこに現れたのは、宇月だった。

「もうやめろ!スイッチを捨てて、自分の力でシャルルと戦え!」

「そんなことしても、うちの会社がデュノア社に勝てないことくらい、アタシにだってわかる!だから、この力で…!」

宇月の警告も無視した女子生徒はスイッチを押してしまう。その身体はユニコーンと人間に分離した。

そこにスコーピオンが悠然と歩いてくる。

「分かるかね、フォーゼ。スイッチを押す者は皆、自分の意志で押すのだ。君がどこまでも戦おうが、スイッチを望む者が居る限りゾディアーツは生まれ続ける。いずれ新たなホロスコープスもね。君に私達を喰い止める事など出来ないのだよ」

「くっ…」

フォーゼドライバーを装着した宇月は悔しがったが、スコーピオンの意見は正しい。どんなに足掻いても、人間の感情までコントロールする事などできない。ましてや、この学園全員など不可能だ。スイッチを望む者は限りなく現れるだろう。

彼が反論できない事が分かったのか、スコーピオンは楽しそうに笑う。

「ハハハハハハハ!…ならば、彼女達の邪魔はやめたまえ。君もその方が安全だ」

そう言い放って、スコーピオンは消え去った。

「やっぱ止められないのかよ…完全には…!」

「なら、阻止し続ければいい話だ!」

その言葉と共に現れたのは、箒だ。バガミールやポテチョキンも足元に居た。

「例え止められなかったとしても、放っておけばもっと被害が増え、傷つく者が増える!それを限界まで減らすことが、フォーゼとしての宇月の役目だろう!?」

「箒…!」

彼女の後にセシリアも続く。

「そして、そのフォーゼである宇月さんを支えるのが、わたくし達の役目ですわ!」

「あたし達にだって、やれる事は沢山あるしね!」

「セシリア…鈴音…!」

最後に一夏と礼が現れて、宇月の両方に立つ。

「そういうことだ。おまえこそ、おれ達を止める事は出来ないぜ?」

「バカね…アンタたち、スコーピオン様に敵うと思ってるの?」

ユニコーンは嘲笑しながら問う。

「上等だ。必ず、おまえらに勝つ。そして、この学園を守り抜いてみせる!」

最後に礼が強く宣言し、宇月にエレキスイッチを渡す。

「宇月、エレキスイッチだ。今度こそ、上手く使ってくれ!」

「あぁ!」

宇月はエレキスイッチを手に取り、赤いスイッチを起動する。

<3><2><1>

「変身っ!」

レバーを引き、フォーゼBSに変身する。

丁度その時、紫苑とシャルルがそこにたどり着いた。

シャルルは2度目だが、紫苑は初めてフォーゼを目の当たりにした。

「あれって…噂の仮面ライダー!?」「昨日も、ボク達を助けてくれたんだよ」

ユニコーンは2人の姿を見た途端、様子が変わる。

「シャルル・デュノアァ…!」

彼女の感情に反応し、ユニコーンの頭部が変形し、大きなツノはサーベル状の武器となって右手に装着される。

「負のコズミックエナジーが活性化している…まさか!?」

その途端、ユニコーンの身体の一部が強く輝き始めた。

「最輝星…!?ますい、ホロスコープスに進化してしまうぞ!」

礼がフォーゼBSに呼びかける。

最輝星とは、ゾディアーツのモチーフとなった星座の運命に近い者を言い、それが近ければ近いほど、ホロスコープスへの覚醒も早い。

事実、礼はある星座の最輝星であり、そのためアリエスへと急速に覚醒を遂げたのだ。

フォーゼBSもアリエスが覚醒する姿を見たことがあるので、それは理解できる。

「もう時間が無い、エレキを使う!」

早速、エレキスイッチをソケットに挿してオンにする。

<ELEKI-ON>

昨日と同じく、右手が黄金色に輝きビリーザロッドが現れた。

「まだ、強力だな…!」

やはり、エナジーが強すぎてフォーゼBSにも軽く痺れが巡っている。

「やっぱり上手く扱えないのね…?」

ユニコーンは鼻で笑いながら、フォーゼBSに襲い掛かる。

とっさに防ごうとするが…。

ガキィ!

「がぁっ!」

身体に痺れをきたしていたために自由が利かず、攻撃を防ぐ事が出来なかった。

「何故だ…?何故、上手くコントロールできないんだ!?」

礼は何度もチェックをしたのだが、調整は完璧だった。フォーゼ自体の損傷はないはずであり、理由が見つからない。

「どうしよう…」

それを見ていた紫苑はあたふたと戸惑っている。だが、シャルルは違った。

「城茂君!その力を操ろうと思わないで!」

「シャルル…?」

フォーゼBSはシャルルの声に反応し、彼女のほうを見る。

「その力を…受け入れて!」

「受け入れる…」

感覚的なものだが、フォーゼBSにはなんとなく理解できた。

だが、礼は彼女の言葉の意味が分からず、即座に罵倒した。

「バカかデュノア!コズミックエナジーにそんな感情論が通るはずは…」

「いや通るぜ、礼!ユニコーンも感情に反応して形態を変化させた。フォーゼもコズミックエナジーを使うのなら…」

そう言って、フォーゼBSは仮面の下で目を閉じ、意識を集中させる。

 

「さぁ…おれは身体全部で…おまえを受け入れる!」

 

その途端、フォーゼの右手の電気が身体中を巡り、身体中が黄金色に輝いた。

「あれは…!?」

一夏は驚いている。フォーゼの白い身体はシルエットだけを残して大きく変化したのだ。

「そうか…エレキはステイツチェンジのスイッチだったのか!」

礼は全てが納得できたように言う。

フォーゼは新たな形態「仮面ライダーフォーゼ・エレキステイツ」へとステイツチェンジしたのだ。

「サンキュ、シャルル!これなら行けそうだ!身体中が痺れるぜ!」

「うん、頑張って!」

フォーゼESは、ビリーザロッドのプラグをソケットに挿して、振り回しながらユニコーンに向かって駆ける。

「はあああああああああああああああぁ!」

「セェアアアアアアアアァ!」

ガキィ!バリィ!

ユニコーンのサーベルにビリーザロッドがぶつかった瞬間、彼女の右手は強い電流が走り、強い痺れをきたした。

「キャアッ!?」

「今だ!」

そこで出来た隙を利用し、渾身の力を込めてビリーザロッドを振り抜いた。

バリイイイイィ!

「ウアアアアアアアアアァ!?」

身体中に電撃が流れ、地面に座り込んだ。

「よし、トドメ!」

エレキスイッチをビリーザロッドに挿入し、電撃を纏う。

<LIMIT-BREAKE>

「喰らえ!ライダァァァァ…100億ボルト・ブレェェェェイク!」

ズバッ!ドガアアアアアアアアアアアァ!

強力な電撃がユニコーンの身体を貫き、爆発を起こした。

中から現れたスイッチをキャッチしたフォーゼESは、オフにして消滅させた。

「一件落着…!」

 

暫くすると、ユニコーンだった女子生徒は目を覚ました。

「なんで…どうしてアタシが負けるのよ!?」

彼女は自分の敗北が納得できず、取り乱すがシャルルが優しく肩を抱く。

「事情は聞いたよ、君が苦しんでる理由…。でも、ボクは君に命を差し出したりはしない。これからボクは、ボクとしての在り方を探すから。君も他にあるはずだよ。君らしい在り方が」

シャルルの言葉に変身を解いた宇月も続く。

「シャルルの言うとおりだ。スイッチに頼らなくても、コイツに真っ向から勝負して、勝つことだって出来る。おまえにも、おまえらしい可能性があるんだ。人間には誰でもな!」

屈託のない笑顔で、女子生徒の肩に手を置く宇月。

「ほんとバカね…白いロケットさん」「フォーゼです…」

 

その日のホームルーム前。

シャルルと紫苑に対して、フォーゼやゾディアーツのことは話したので、彼等も秘密を共有する事になった。

そして…。

「城茂君…ううん、宇月。ボクも仮面ライダー部に入るよ!」

「シャルル…?」

突然のシャルルの宣言。宇月達からすれば、彼女が仮面ライダー部に入りたがる理由が見つからない。一夏と箒、セシリアや鈴音は明確な理由があったが、彼女には何もないように感じる。

「ボク、自分の在り方を探してみたいんだ。この部活に入ったら、何か見つけられそうな気がして…」

「…もう、隠してないもんな。どうするよ、礼?」

宇月は近くにいた礼に聞く。

「…個人的な理由でラビットハッチを利用されるのはお断りだ」

「う、うぅ…」

残念ながら礼はきっぱりと断る。

しかし…。

「だが仮面ライダー部はどうでも良い。入ろうが入るまいが、それは自分の意志と宇月の了承があれば、おれはとやかく言うつもりはない」

「じゃあ…!」

意気消沈していた表情が一気に明るくなるシャルル。

「入部決定だ!よろしくな、シャルル!」「うん、頑張るよ!」

宇月は手を差し出し、シャルルはその手を握る。

「そこの奴らも、仮面ライダー部は好きにしろ」

礼は軽く笑いながら、鈴音達にも呼びかけた。

「認めてくれたようね!」

「勘違いするな、チビ女。ラビットハッチは出入り禁止だ」

「なんですってえええええええええぇ!?」

鈴音はムキになって礼に突っかかるが、彼女の頭を持って阻止している。

「篠ノ之、フードロイドは返してもらう。必要なときだけ貸し出す」

「そ、そんな!?」

礼は否応なしにバガミール達を取り上げ、自分のカバンの中に入れた。

「紫苑も入るよね?」

シャルルは近くで聞いていた紫苑に呼びかける。

「…僕はいいよ」

「え…どうして?」

以外にも、彼は仮面ライダー部への入部を拒絶した。

「僕は僕なりに頑張ってみたいんだ。今の僕が自分を受け入れるためには、仮面ライダー部に入ることじゃないんだと思う」

「そっか…」

シャルルと紫苑はなかなか計りかねない距離を持っている。しかし、これからゆっくりと変わっていけば良い。

「まったく、礼も素直じゃないよな。認めたんだろ?」

「…まだ完全じゃない。本当に信頼できたら、ラビットハッチの出入りを許すつもりだ」

宇月の問いに対して、礼は他のメンバーには聞こえないように言った。

「つっち~!」「うおっ、来るなノロマ!」

一方、礼には本音が抱きついてこようとしたので、鈴音を押さえていた手を離し、本音を突き放す。

ゴツンッ!

「いたぁ!?」

その拍子に鈴音は机に頭をぶつけた。

「もぉ~のほほんだよ~」

「来るな!寄るな!あっちにいけ!」

クラス内で追いかけっこが始まった。

「おい、ホームルームを始めるぞ!」

千冬が教室に入ってきて、いつもの1日が始まった。

 

 

 

 

 

続く…。

 

 

 

 

 

次回!

 

                       ラウラ・ボーデヴィッヒだ

 

始めまして、誇り高きドイツ代表候補生よ

 

                       君は…だれ?

 

わたしはゆりこ

 

                       か、かわいい…!

 

宇月に恋の季節…!?

 

                       フォーゼの女性用「なでしこ」だ。

 

認めない…おまえがあの人の弟だなんて…!

 

 

 

第9話「独・逸・対・立」

 

 

 

 

青春スイッチ・オン!

 

 

 

 

 

 






キャスト


城茂宇月=仮面ライダーフォーゼ

織斑一夏

篠ノ之箒
セシリア・オルコット
鳳鈴音

辻永礼=アリエス・ゾディアーツ
布仏本音

シャルル・デュノア
白石紫苑

女子生徒=ユニコーン・ゾディアーツ

織斑千冬

???=スコーピオン・ゾディアーツ



あとがき
いかがでしたか?
やっとステイツチェンジです!
今回は、シャルルと紫苑の心の距離をとにかく明確にしておく必要があったので、他の話が薄かった気がします(汗)
紫苑の秘密、どうでした?一応、ISの適性が低い理由も、これにあります。
登場キャラの中で一番、重い過去を目指したのですが…。本人のネガティブ思考のせいでもありますね。
次回はなでしこ編とラウラ編、同時進行で行きます!そろそろ、リブラを本格登場させるかもしれません。
ではまた…。

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