仮面ライダーフォーゼ~IS学園キターッ!~   作:龍騎鯖威武

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第5話「第・二・幼・馴」

 

「紫苑さん、あのときは本当にごめんなさい」

「や、やめてオルコットさん!顔を上げてよ!?」

セシリアは日を改めて、紫苑に謝った。

彼女の持っている男に対する考え方が、一夏たちによって大きく変えられたからだ。彼女の父親は婿入りの身で、母親家族にいつも頭を低くして、ビクビクしていた。父のような存在は絶対に認めたくなかったのだ。

そして、一夏や宇月はそれを覆す存在だった。決して卑屈にならず、常に強い意志を持っている存在。

特に、自分のことを守ってくれた一夏には恋愛的な感情さえ湧き上がっている。

そして、セシリアが仮面ライダー部に入部して数日後の放課後。

宇月達のいるクラスは、ある話題で持ちきりである。

「今週末、クラス対抗戦だよね!」

そう、ISのクラス対抗戦。クラス代表は一夏なので、彼が頑張りを見せる機会である。

「一夏さん、仮面ライダー部のメンツにかけても、負けられませんわよ!」

「あぁ、任せとけ」

一夏は、セシリアの激励に対し非常に爽やかに返した。

それに対して、セシリアの腕をツンツンと指差し、コソコソと言う宇月。

「あのさ、メンツにかけるのはいいけど、仮面ライダー部のことをあんまり口外するな」

「あ…ごめんなさい。気をつけます」

フォーゼが表沙汰になるのは、出来れば避けたいようである。その方が活動も面倒ごとが起きないため、より円滑にゾディアーツ対策が行える。

だが…。

 

「知ってる?あの仮面ライダーが、この学園にもいるんだって!」

 

もう遅いようだ。すでに仮面ライダーの存在が認知されている。

実際、クラス代表決定戦でフォーゼやスコーピオンが視認されてしまっている以上、避けようのないことだ。

「手遅れ…のようですね」

「…正体知られない限りは、まだ大丈夫…きっと」

宇月は自分に言い聞かせた。

気づくと周りの話は再び、クラス対抗戦の話に戻っていた。

「まぁ、専用機持ちのクラス代表は、この1組以外、4組だけだから楽勝ね!」

1人の女子生徒が自信満々に言っていた。

 

「その情報、もう古いわよ!」

 

唐突に、クラスの入り口から別の女子生徒が口を挟んできた。

随分と気が強そうな印象がある。箒と並んでいる気がした。

「あ…鈴か!?」

呼びかけ方が、古い馴染みの友人との形によく似ている。いや、そのものだ。

と、言う事は…。

「まぁた、幼馴染かよ!」

宇月の大きな声がクラスに響いた。そして聞こえるヒソヒソとした話し声。

「あの子って、たしか…」「中国の代表候補生よね…」

どうやら、鈴と呼ばれた彼女も代表候補生であるようだ。

「そろそろ自己紹介しろよ。宇月達がなんて呼べば良いか、わかんないだろ」

彼女が一夏と話を再会しようとしていたので、そのまえに宇月が鈴に自己紹介を求める。

「それもそうね。あたしは鳳鈴音、中国の代表候補生」

「あ、中国人なのか。てっきり日本人かと…」

宇月が言うのも理解できる。中国人は日系なので、日本人と見た雰囲気に大差がないのだ。さらにセシリアに続き、日本語が流暢。判断するのは名前くらいだろう。

「そうだ、おれは城茂宇月。よろしくな」

手を差し出した宇月だが、鈴音は無視して一夏の手を引っ張って、教室から外に出た。

「なんだよ、感じわる。なぁ箒…」

共感を求めようと、箒の方を見ると…。

「…」「む~」

彼女も不機嫌そうだ。隣にいるセシリアも口を膨らませている。

「…なんで?」

 

それから少し時間が経ち…。

2組の誰もいない教室で、一人の女子生徒が拳を強く握っていた。

「…過去の栄光が忘れられないようだね?」

「なによ、アンタ!?」

そこに現れたのは、スコーピオン。右手にはゾディアーツスイッチが握られている。

「君も素晴らしい力の持ち主だ。彼女達はそれを理解できなかったようだが、私は違う。もっと強くなれると信じているよ。ただ…今の状態では、彼女達に認めさせることは難しい。ならば、それ以上の力を持てば良い」

甘い誘惑の言葉を並べながら、スイッチを女子生徒の目の前にそっと差し出す。

「これは…?」

差し出されたスイッチを恐る恐る手に取る女子生徒。

「君を栄光の座に返り咲かせる道標だよ。さぁ…星に願いを…」

 

鈴音によって、屋上につれてこられた一夏。

「おい、どうしたんだよ急に?」

「久しぶり、一夏。会いたかったわ!」

2人きりになった途端、ニッコリとして一夏と再会を喜ぶ鈴音。

「お、おぉ。久しぶりだな。でも、どうして急に?」

「あんたがこの学園に入学したって聞いたから、転校してきたの。もともと、中国の代表候補生として声が掛かってたから、すぐにOKが出たのよね」

得意げに言う鈴音。かなりの自信家のようだ。

「そっか。おれも会えてよかったよ。元気そうだしな」

一夏も純粋に彼女との再会を喜んだ。

「そ…それでさ。あの約束…覚えてる?」

「約束…もしかして、酢豚を食べさせてくれるってヤツか?」

「そう!」

実は鈴音、幼い頃から一夏に積極的なアプローチをとっていた。

だが、残念な事に…。

「あれって、酢豚を奢ってくれるって事か?」

この一夏、かなりの鈍感であり、これを恋愛的な意味合いでとっていなかったのだ。

悪意がないのだから、さらにタチが悪い。

「…もぉ知らない!」

もちろん、鈴音はご立腹。プイっと顔をそっぽに向けた。

「おい、一夏と鈴音!急にどっかいくなよなぁ!」

その声と共に、宇月と箒にセシリアが現れた。

「一夏、その娘が幼馴染って言うのは…」

箒が尋ねると、一夏は思い出したように言い始めた。

「そういえば、箒とは入れ替わりだったな。箒が転校してすぐに、おれの小学校に転校してきたんだよ鈴は。まぁ言うなれば、鈴は「セカンド幼馴染」で、箒は「ファースト幼馴染」ってところだ」

「ファースト…か。そうか…」

どうやら、その発言は箒の気分を良くしたものだったようだ。逆に鈴音は不満そうな面持ち。

「エヴァン…」「宇月さん!その発言はダメですわ!」

これはいろいろとマズい。主にメタ的な意味で。

「そうだ、一夏さん!食堂で、一夏さんのクラス代表就任パーティーをやるみたいですわ。早く行きましょう」

「強制参加だってよ。主役がこんなところで油売ってるんじゃねぇ!」

セシリアと宇月がこの場の状況を切り抜けるため、本来の目的を述べて一夏を引っ張っていった。

「うおぉ!?」

「あ、一夏!」「こら、まちなさぁい!」

 

一方、紫苑は自室で相変わらず溜息をついていた。

「白石君…いますか?」「は、はい」

ノックが聞こえて、山田が現れた。

「今日、クラス代表が織斑君に決まったお祝いをするそうですよ。いかないんですか?」

「僕は…いいです。織斑君には迷惑をかけましたから…」

空を見ながら言う紫苑。

「オルコットさんも君に謝りましたし、織斑君達も気にしてないですよ」

「行けないんです。だって僕は…クズですから」

山田は、彼が自分をクズ扱いする理由をしらない。彼女は副担任なので、生徒の過去の記録を見られないのだ。

「あの…なんで自分をクズって言うんですか?」

「教えたくないです。どうしても…」

理由を問うが、後をむいたまま首を横に振る。

「相談しないと…何も解決できませんよ。わたしは教師ですから、なんでも…」

「山田先生は優しい先生だと思います。でも…こればかりは…」

どうしても理由を明かそうとはしない。山田は心から彼を救いたいと思い、もう少しだけ粘ってみようとした。

「言ってみてください。わたし、なんでも受け入れてみせますから…」

「嫌です。言いたくないです」

相変わらず、顔を見ようともしない。紫苑の所へ行き、彼の肩に手を置く。

「お願いですから…」

その瞬間…。

 

「黙れぇっ!!!!」

 

ドカッ!

「きゃあっ!?」

「中途半端に関わるなぁっ!!」

今までの紫苑とは思えないほどの声で拒絶し、山田を突き飛ばした。

突然の事で山田は何が起こったのかが理解できなかった。

「…あっ!?ご、ごめんなさい!大丈夫ですか!?」

我に返ったのか、顔を歪ませて謝りながら山田を抱き起こす紫苑。

「へ、平気です。わたしこそ、ごめんなさい…。イヤなのに無理矢理、聞いたりして…」

「違います…。山田先生は悪くないです。僕の事を心配してくれてるのに…」

ずれたメガネを掛け直し、困ったように笑う山田。

「…ありがとうございます。お邪魔しました。また明日、教室で逢いましょうね」

「はい…」

肩を落としながら、山田は紫苑の部屋から出て行く。

「あの…!」

「はい?」

紫苑は最後に山田に声をかけた。

「僕…織斑君達のところに行ってみます。山田先生の行動を無駄にしたくないですし…やっぱり、独りぼっちは寂しいですから…」

「…はい!」

 

それから…。

「「「「織斑一夏君。クラス代表就任、おめでとう!」」」」

少し遅れて紫苑が到着し、ささやかなお祝いが行なわれた。

「それにしても、一夏がクラス代表だなんて。自己紹介の時はボキャブラリーのないヤツだと思ってたのにさ!」

「おい、そりゃないだろ!?」

「あはは…誰だって緊張するよ。僕もダメダメだったし」

宇月の豪快な笑い声と共に、一夏の情けない声、紫苑の優しくフォローする声が食堂に響く。

「いやぁ、めでたい!食欲も増すな!」

「た、食べ過ぎだよ…」

宇月は、料理を手当たり次第に食べ、底なしといえるほどだった。主役の一夏など、全くお構いなく。

一方、女子組の一部…というより、箒、セシリア、鈴音の3人は…。

「うわぁ…」

他の女子生徒が引き下がるほど、火花を散らしている。

「おいおい、そんな眉間に皺寄せすんなよ。今日はお祝いだぜ?」

「黙ってろ!」「黙っててくださる!?」「うっさい!」

「はい…」

宇月が軽いノリで3人の険悪な雰囲気を解決しようとしたが、返り討ちに遭った。

 

「こんばんは!インフィニット・ストライプスの者です!」

 

そこへ現れたのは、記者のような挨拶で登場した女子生徒。

「クラス代表になった、初の男IS使い「織斑一夏」の特集を組みたいんです!」

「あ、あぁ、良いけど…」

戸惑いつつも、快く引き受ける一夏。だが、いろいろなインタビューが待っていた。

一通り終わると…。

「あ…君は2人目の男IS使いにして、初回起動で史上初の「適性度S」を叩き出した城茂宇月君!?」

「は、はぁ」

次の獲物は宇月らしい。

だが…。

 

 

『初回でS!?』

 

 

その場にいる一同が驚愕した。

「なんだよ、そんなに珍しいのか?」

訳が分からず、ポカンとしたまま答える宇月。

「城茂君!適性度Sって、織斑先生みたいな「ヴァルキリー」や「ブリュンヒルデ」並の人じゃないと、なれないんだよ!?…世界でも10人に満たないくらい!」

「マジか!?」

紫苑が慌てて説明すると、宇月もその凄まじさに驚く。

「セシリアや鈴音は、代表候補生だからSSくらい行くものかと…」

「あたしだってAよ!?」「わたくしも同じですわよ!」

早速、女子生徒たちから興味の的にされた。女とはイロモノや強いモノに惹かれるようだ。

「城茂君、クラス代表にならなかったのは理由があるの?」

「適性度Sだって黙ってた理由は?」

「あ、えーと…その」

一夏と共に宇月も、もみくちゃにされてしまった。一方、弱いものは相手にされない。

その証拠に、強さの欠片もない紫苑は完全に蚊帳の外。

「なんだろう…複雑」

そのとき…。

 

ドガアアアァ!

窓が突き破られ、一体の怪人が現れた。その身体は犬を模しているようだ。

「鈴音!アンタをその地位から引き摺り下ろしてやるわ!」

「きゃああああぁ!?」「う、うわあああああああああああああああぁ!」

集まっていた紫苑や女子生徒は一目散に逃げる。

一方、箒とセシリアは事態がある程度把握できるため、逃げ出す事もなく、鈴音は持ち前の気の強さで持ちこたえている。

「なんなの、この怪物!?」「猟犬座…ハウンドだな!」

宇月の分析どおり、この怪人は「ハウンド・ゾディアーツ」。

彼女の言葉からして、鈴音に恨みを持った者がスイッチャーである可能性が高い。

「…恨まれてるやつ、多すぎじゃね?」

似たパターンが2度も続いたので、少々呆れながらも、フォーゼドライバーを装着する。

4つのスイッチを押して拳を構える。

<3>

「箒、バガミールで分析を頼む!」

<2>

「あぁ!バガちゃん、行くぞ!」

<1>

「変身っ!」

レバーを引き、フォーゼBSに変身した。

「はぁっ!」

「うわ、仮面ライダーだ!」

すっかり、鈴音がいることを忘れて変身してしまった。また一人、正体を明かしてしまう羽目になった。

「あっ!?しまったぁ!」

「隙ありッ!」

ドガアアアアアァ!

「どああっ!」

自分の行いに後悔し、頭を抱えていたフォーゼBSを思い切り切り裂くハウンド。

よろけた拍子に、食堂の机を破壊してしまう。さらにその机の上にあった食べ物は地面に散乱。

大喰らいのフォーゼBSは、そのことで頭に血が昇った。

「あぁ、ご飯が!このぉ、食い物の恨みぃ!」

<SCISSOUS-ON>

鋏のような形をしたシザースモジュールを装備し、ハウンドに襲い掛かる。

「うおりゃああああああああぁ!」

ズババババババババ!

「クッ!ウアッ!」

戦い方がメチャクチャだが、一応優勢ではある。

「あたしも見てらんない!」「お、おい鈴!?」

鈴音は、口より先に手が出てしまう性格。この戦いも黙ってみている訳には行かないようだ。

なんと、この場でISを展開する。と言っても、右手だけの部分展開だが。

「ロケット頭!あたしも加勢するわよ!」「ロケット頭だと!?」

食って掛かるフォーゼBSだが、鈴音はお構い無しにハウンドに攻撃を仕掛ける。

「はあああああああああああぁ!」

ドゴオオオオオオォ!

「キャアアアアアアアアアァ!」

その威力は凄まじく、ハウンドは全く無抵抗のまま、吹き飛ばされてしまう。

「鈴音、強いな!さすが中国代表候補生!」「でしょ?」

なんとなく、意気投合してきたようだ。

「あぁもう、頭来た!」

そう言い放った瞬間、ハウンドの動きが俊敏になった。

ズガァ!ドゴォ!

「ぐあっ!」「きゃあっ!」

肉眼で追いつける動きではなく、攻撃を受けてしまった。

「くそ…早い相手には…これだ!」

<WINCH-ON>

クレーン式のウインチモジュールを装備し、近くの柱に低く括りつける。

ガッ!

「ヒャアッ!?」

それに足を引っ掛けたハウンドは、床に倒れこむ。

「良いですわ!その調子!」「よし、リミットブレイクだ!」

セシリアや箒の言葉に呼応し、ロケットとドリルをオンにしようとするが…。

「ハアッ!」

ドガアアアァッ!

「ぐっ!?」

何者かに阻害され、フォーゼBSは床を転がる。

「また怪物!?」

「はじめまして、中国代表候補生よ」

そこに現れたのはスコーピオン。挑発気味な口調で両手を広げる。

「鈴、逃げろ!そいつはハウンドと格が違う!」

「面白いじゃない。勝負よ!」

一夏の静止も聞かず、スコーピオンに攻撃を仕掛けるが…。

「愚かな…。ヌンッ!セアアァ!」

ガッ!ドゴオオオオオオオオオオオォ!

「ああああああああああああああぁっ!」

攻撃を足で防ぎ、軽々と蹴り吹き飛ばす。全く歯が立たない。

「ハウンド、一旦ここは退こう。もっと君の力を伸ばしてから挑戦するのだ」

「はい、スコーピオン様…!」

そう言って、フォーゼBS達を残し、スコーピオン達は姿を消した。

 

ラビットハッチに戻り、作戦の構想中。

だが、いつもと違うのは…。

「なんで鈴音がいるんだよ」

「あんたには任せられないわ。あたしがやる」

そう、鈴音も強引にラビットハッチについてきたのだ。

「…まぁ、良いや。なんかどうでも良くなってきた気がしたよ」

山田はバガミールのデータをコンピュータに送る作業をしている。データの転送などは普通のパソコンと動作は変わらないので、彼女にも出来るのだ。

「城茂君、終了しましたよ!」「お疲れ様、バガちゃん」

分析結果を、宇月に渡す山田。バガミールは役割を終え、箒とじゃれあっている。

「ありがとうございます、先生。え~と、ハウンドの特性は…あの速さか。しかもパワーも兼ね備えてる…厄介な敵だな。礼がいないと、スイッチ調整も進まないし…」

コンソールを指で叩きながら、分析している。

「なぁ。さっきはISでゾディアーツと戦えたけど、おれやセシリアが戦えば、ハウンドくらいなら倒せるんじゃないのか?」

ふと気になった一夏の質問。たしかにゾディアーツにISの攻撃は有効だった。わざわざフォーゼに変身せずとも、専用機持ちならば2~3人で倒せるのではないのだろうか?

「まぁ、物理攻撃は有効だろうけど、結局のところ、目には目、歯には歯を。負のコズミックエナジーを浄化できるのは、本来のコズミックエナジーを使うフォーゼだけ。倒したとしても、スイッチはオフに出来ないだろうな。ISのことなんか、さっぱりわかんないけど」

言われた事はなんとなく理解できた。とにかく、トドメはフォーゼのリミットブレイク以外に方法はない。

「わたしの知ってる限りでは、ISにコズミックエナジーに対する有効な攻撃手段は持ちえないはずですわ。コズミックエナジーの研究さえ、まだ進んでないのですから」

セシリアもISについての知識を持って、個人の分析を行なった。

「やっぱりな。でも確か…」

そう言いながら、別のコンソールを打つと…。

近くのハッチが開かれて、巨大な機械と白いバイクが現れた。

「これは…?」

 

「スクラップになった母さんのISを改造したモノ。名前は「パワーダイザー」。バイクはコズミックエナジーを原動力に動く「マシンマッシグラー」って言うんだ」

 

「さっきの戦いで思ったんだけど…」

宇月は鈴音を見る。

「な、なによ…?」

「パワーダイザーの操縦、やってみないか?操作方法はある程度、ISと同じだから」

「はぁ!?」

いきなりの申し出に、鈴音は呆れたような声で返す。

「イヤよ!なんで、あんなゴリラみたいなものを!」

明らかに拒絶するような様子を見せながら首を左右に振る鈴音に対し、宇月は悲しそうな表情で言う。

「改造上、仕方なかったんだ。本来はもっとスマートな形だったけどな…」

パワーダイザーを大切そうにさすりながら、それを見つめる宇月。

「鈴。人の母親の形見に向かって、そんな言い方はないだろ」

「あ…」

一夏の言葉で、自分の言葉の無責任さに気付いた。

「ごめん、宇月。あたし言い過ぎた」

悲しそうな表情でパワーダイザーを見つめる宇月に、素直に頭を下げる鈴音。

「…コズミックエナジー版のISみたいなものだから、ゾディアーツとちゃんと対抗できる。フォーゼと力を合わせれば、スコーピオンにだって勝てるかもしれない」

あえて彼女の謝罪には触れず、宇月は続きを言う。

「…まぁ、無理にとは言わない。ちょっと…これを動かす姿が見たいって言う、おれの願望もあったからな」

そう言って、ラビットハッチを出て行った。

 

次の日…。

理雄は珍しく、人混みの中に居た。理由は掲載新聞。

学校の掲示板に掲載されていた新聞には…。

「見てみて、また怪人と仮面ライダーが出たって!」

そう、ハウンドとフォーゼが映っていた。

さらに、隣の見出しには…

「この近くで隕石が落下だってさ…」

隕石が落下した事によるクレーターが写真として掲載されている。

その写真に…理雄以外で気付いたものはいなかったが…。

 

隅に赤い龍のシンボルが額にある仮面ライダーが映りこんでいた。

 

理雄はそれをじっと眺めながら…。

「…興味深いな」

そう言って、そこから離れた。

遠くから、その記事を見ていた千冬と山田。

「山田君。もしかしたら、あの怪人以上の脅威がやってくるかもしれない。我々も気を抜けないぞ」

「はい」

そう言って、教師としての業務に戻った。

 

別の場所では…。

レオがリブラと顔を合わせている。

「リブラ、あの隕石は…」

「分かっているよ。SOLUだね?」

彼等も隕石の事は理解しているようだ。

 

「私としても、あれは手に入れたい」

 

唐突に響く女性の声。

上から降りてきたのは…。

「…ヴァルゴ様!」

そう、乙女座の使徒にしてホロスコープスの首領「ヴァルゴ・ゾディアーツ」

彼女の出現に際し、リブラは膝を着き、頭を下げる。一方のレオは軽く会釈をした。

「ヴァルゴ様。少し、動いてもよろしいでしょうか…?」

「そのつもりだったよ。リブラ、SOLUの回収に向かって欲しい。フォーゼ達はスコーピオンが相手をするからね」

「はっ、任務をご依頼くださり、光栄でございます」

ヴァルゴ直々の依頼は、ホロスコープスの役割の中でも重要な役目。それと同時に彼等にとって最大の誇り高き仕事なのだ。

一方のレオは…。

「レオ。君は全く動いていないようだが、大丈夫かな?まぁ、君の事だから考えがあると思うが…」

「オレよりもスコーピオンの心配をしたほうが良いのでは?オレに仕事を押し付けようとしてるほど、出来損ないですからね」

今までよりも穏やかな口調で返したレオは、再び軽く会釈をして姿を消した。

その後、リブラはヴァルゴに聞く。

「ヴァルゴ様、そろそろレオの正体を教えては頂けないでしょうか?私よりも位は下であるはずなのに、彼は私の正体を知っています」

リブラはヴァルゴを除けば、ホロスコープス最古参。それなのに、彼より後に入ってきたレオの正体を知らない。逆にレオは、ヴァルゴからリブラの正体を知らされている。

「スコーピオンに関しては、レオどころか、君の正体も知らないだろう?」

「スコーピオンは、アリエスを除けば新参者です。当然でしょう」

「…だから言わないのだよ。レオは私以外に誰も素性を教えないと言う条件で、我等の傘下にいるのだから」

そう言い残して、ヴァルゴは消えた。

 

 

 

 

 

続く…。

 

 

 

 

 

次回!

 

                             すっかり忘れてた!

 

決着をつける!

 

                             絶対に妨害するはず!

 

ポテチョキンにフラシェキーだ!

 

                             さぁて、暴れるわよ!

 

 

 

 

 

第6話「中・国・実・力」

 

 

 

青春スイッチ・オン!





キャスト


城茂宇月=仮面ライダーフォーゼ

織斑一夏

篠ノ之箒
セシリア・オルコット
鳳鈴音

白石紫苑
裾迫理雄

女子生徒=ハウンド・ゾディアーツ

織斑千冬
山田真耶

???=スコーピオン・ゾディアーツ
???=リブラ・ゾディアーツ
???=レオ・ゾディアーツ

???=ヴァルゴ・ゾディアーツ



あとがき
如何でしたか?
箒の出番が少ないですし、鈴音って難しいですね(汗)。ここら辺から、ISの把握ぶりがもっと少なくなっていきます。
パワーダイザーは次回でちゃんと登場しますが、マッシグラーの出番が不安です…(汗)。
紫苑の過去…どこまで引っ張ろうかなと。一応、シャルルが登場するまでは引っ張るつもりですが…。
あと、SOLUやホロスコープスの関係も少しだけ。リブラの不憫さはこちらでも健在です(笑)。
次回は、対抗戦です。ちょっとセシリアとパターンが似るかもしれません…。
それでは…。




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