仮面ライダーフォーゼ~IS学園キターッ!~   作:龍騎鯖威武

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第4話「誇・示・困・難」

 

「何のために、セシリアを狙う!?」

カメレオンはフォーゼBSを睨みながら、実際のカメレオンのように首を動かしている。

箒やセシリアは、その奇怪な動きに少しの恐怖を見せていた。

「アタシはソイツのせいで、自分が築き上げていたモノをぶち壊しにされたの!」

「だからってゾディアーツの力に頼んな!それで勝っても、おまえの力で勝った事にはなんないぞ!?」

カメレオンの言い分を、真っ向から否定するフォーゼBS。彼の言ったとおり、これは彼女自身の力ではない。ゾディアーツという魔力に身を任せているだけだ。

「構わない…。ソイツを叩き潰せるなら、それでも!」

「人間に戻れなくなってもか!?」

未だに意地を張るカメレオンに対して、フォーゼBSは叫びかけた。

「人間に…戻れない?」

どうやら知らされていないようだ。カメレオンは明らかに動じた。

「知らないみたいだな。ゾディアーツに変身し続けたら人間と分離し、自分の意志では元に戻れなくなる…。ずっとその姿でいるんだぞ!そんな怪物みたいな姿で!」

「嘘…!?」

カメレオンは自分の手を見ながら震え始める。それを見たセシリアは恐怖心を拭うためか、勝ち誇ったように言う。

「い、良いザマですわ!貴方みたいな野蛮な方、その姿の方がお似合いでしてよ?」

「オルコット…!」

「おまえっ!」

彼女の散々な言い分に、さすがに一夏や箒も怒り爆発だ。

 

「…だから、目障りなんだよ」

 

「理雄!?」「裾迫…!」

そこに現れたのは、以外にも理雄だった。セシリアやカメレオンを睨みながら淡々と呟く。

フォーゼBSやゾディアーツに対して、全く驚いたりしていない。

「そこのカエル女が何考えてるか知らねェが、その女はオレの獲物だ。手を出すな」

「な…カエル女!?」「あなた…人を馬鹿にするのもいい加減に…」

セシリアが反論しようとした所を、睨みで制して続ける。

「テメェも、男を馬鹿にし過ぎなんじゃね?…そろそろ、オマエの考えも古くなるからな」

「なんですって…!」

理雄は完全にセシリアを挑発している。それに乗っているのが楽しいのか、理雄はニッと笑って踵を返す。

「言い返してェなら、来週の決闘で会おうぜ。オマエの思想が時代遅れだってことを思い知らせてやる。織斑もカエル女も、それまで手を出すな。決闘が終わったら好きにしろ」

最後にもう一度振り返り…。

 

「この際、言っておく。…「オレが全て」だ」

 

そう言って、去っていった。

「…ま、アタシはセシリア・オルコットがどん底に落ちれば、それでいいわよ」

カメレオンも戦意を無くし、身体を透明にして消えた。

「あ、待て!」

フォーゼがとっさにレーダーで探すが、反応は無い。逃げたようだ。

 

再び、ラビットハッチに戻った。

「カメレオンのスイッチャーは…」

「大方、オルコットの恨みを持ってる人だろうな。口調からして女…」

箒は一応の予測を言う。ここにいる全員は同じ意見だ。

「でも…一体、誰がスイッチを配ったんでしょう…?」

「多分、ホロスコープスです。昨日のことを考えるに、スコーピオンだと思います」

山田の問いに、宇月は顎に手を置いて答える。

「この学園にいるホロスコープスは、スコーピオンだけだと信じたいけど…」

そう言っていると、モニターに受信音が鳴り響く。

 

「バガミールから、何かが届いたみたいだ」

 

最大画像で表示すると…。分析したセシリアの専用機の詳細が乗っていた。

「ブルー・ティアーズ…青い雫か。主には…」

「ちょっと待て」

分析を新たに開始しようとした宇月に箒が呼び止める。

「コズミックエナジーの発明であるバガミールに、どうしてISの分析が出来るんだ?ISの事前情報なんかあるのか?」

質問されて、初めて気づいた。ゾディアーツもコズミックエナジーを利用しているために分析が出来たが、ISは違う。なのに何故、詳細な分析が届いたのだろう。

「…そういえば確かに。母さんはISをコズミックエナジーの研究内容に取り入れてなかったし、結果的に起動できたとは言え、肉体のエナジー循環もISを利用することなんか想定してはいなかったはず…」

コズミックエナジーの研究は、吾朗と三咲が行方不明になって以降、全く進展が見られていない。いろんな科学者が研究に挑んでいるが、全く成果が得られていない。

無論、宇月も研究こそしていたが、結果は同様だ。

「…まぁ、調べられてるから良いじゃん。主な武器は「スターライトmkⅢ」。ビームライフルで、サブの武器として同名の「ブルーティアーズ」、ビーム起動も操れるのか…反則だな。一夏、勝てるか?」

相手の武装を調べて不安になった宇月は、戦う本人に自信の程を聞く。

「おれの専用機が来ない事には…。先生、おれの専用機はいつ届きます?」

「あ、えっと…明日には届くはずですよ?」

彼は初の男IS使い。千冬の弟であり、篠ノ之束の古い馴染みという事もあって専用機が用意された。だが、届くのは明日。

新しい作戦は、それからになりそうだ。

 

その日の夜。

理雄は、届いていた専用機を見ていた。何故、彼に専用機があるのか。

理由は簡単。彼が男IS使いの中で、もっとも試験結果が優秀だったからだ。

「ほう…これが「霧裂」か」

彼の専用機「霧裂」。主に捕縛をして、相手の動きを制限した後、直接的な打撃をして戦うというものだ。

「フン。興味ないが、あの女のハナをあかすには、ちょうど良い」

待機形態は赤黒いネックレス。理雄は首にかけて鏡を見ながら笑った。

 

次の日。

「織斑君、届きましたよ!」

山田からの一報を受けて、ISのある場所に向かった。

そこには機械的な腕輪がある。

「白式…」「これが、一夏の専用機ISかぁ…!」

宇月は専用機を持ち合わせていない。故に量産機を使用するのだが、やはり専用機には羨ましいようだ。

「ただ…武装が剣だけになります」

喜んでいる3人に水を注すのが悪いと思ったのか、山田は申し訳なさそうに言う。

「遠距離で戦うブルー・ティアーズとは、相性が悪いわけか…」

箒はどうすれば良いか必死に考えている。ピンと閃いたようで目を輝かせながら宇月に問う。

「あ…またバガミールに戦法を考えてもらうとか!」

「フードロイドに戦略が構想できるわけないだろ。できるのは分析だけ。フォーゼを介したカメラモジュールを使えば、出来ない事もないけど…。ゾディアーツもいないのに、フォーゼを使うのはちょっとなぁ…」

確かにISの分析のために利用するのは、フォーゼの存在を必要以上に認知されてしまう可能性もある。山田には宇月が黙っているように説得しているので、詳細を知られてはいない。

「さて…どうしたものか」

一夏と箒は対抗策を練っているが、宇月はラビットハッチに戻ろうとしていた。

「おい、宇月」

「今回は決闘で忙しいから、スイッチャー探しは休んで良い。ちょっと、気になることがあってな」

 

その頃…。

屋上でスコーピオンは、空を眺めている。

「おい」

スコーピオンに話しかけてきたのはレオ。彼を見た途端、スコーピオンは明らかに動揺した。

「レオ…!?な、なにか用か…?」

「貴様…遊びすぎているようだな。カメレオンの件もそうだが、自分も楽しみすぎじゃないか?」

そう、先日の戦いでスコーピオンは遠くで2人を見物していただけだ。

「…ヴァルゴ様は、速やかな結果を望んでいる。あまり行動が遅いと…ダークネヴュラに送られるぞ」

その言葉を聞いて、更にスコーピオンは震える。

「し、心配には及ばん。カメレオンの目的は、セシリア・オルコットを陥れること。彼女の面子を叩き潰せる決闘の日まで、目立った行動は取らないのだ。その目的を果たしたときこそ、カメレオンは新たな使徒に覚醒するはず」

スコーピオンの説明に対して、レオは鼻で笑ったように返す。

「そんなことより、君は新たな使徒を見つけられそうか?」

「オレにオマエの仕事を押し付けるな!」

レオは突如として怒声を発し、スコーピオンに襲い掛かった。

その動きは早く、肉眼ではまともに視認出来ないほどだ。見えるのは黒い霧と小さな光の残像。

ドゴオオオオオオオォ!

「グオオアアアアアアァ!?」

強烈な一撃を受けて、スコーピオンは吹き飛ばされた。

「…良いか、使徒を探すのはオマエの役目だ。オレはオレで動く。自分の仕事くらい、自分でこなせ!」

そう吐き捨てて、レオは歩き去った。

「お…おのれェ…!」

 

そして1週間が経ち、クラス代表決定戦の時が来た。

アリーナで見物する生徒たちの注目を一心に集めているのは…。

「あら、逃げずに来ただけでも、褒めて差し上げますわ」

「オマエも良く来たな」

理雄とセシリアである。どちらもISを起動させている。

「さて…オレは勝つ必要はないんでな」

「あら、負けを認めますの?」

 

「…勘違いするな、時間稼ぎだ」

 

そういった理雄の表情は、いつもの不良気質ではない。

よくは分からないが、セシリアにはそう感じた。

「それでは、始め!」

試合開始の合図が流れると、セシリアは一気に武装を展開した。

そこから放たれるビームの嵐。

「さぁ踊りなさい…私とブルー・ティアーズの奏でるワルツで!」

「下品な曲だな…!」

理雄は左手の武装からムチのようなエネルギーを放出し、そのビームの嵐を避ける。

「チッ、相手の手数が多すぎだ…。まぁ、時間稼ぎができればそれで良い…!」

 

その頃。

一夏は待機室で座り、緊張をほぐそうとしていた。

「よう、一夏」

そこに現れたのは宇月。少しだけ笑いながら、一夏の肩に手を置く。

「安心しろ、カメレオンのスイッチャーは見つかった。後は試合に臨むだけだ!」

「あ、あぁ…」

「…不安、みたいだな」

宇月が言うのも無理はない。作戦自体は立てたが、実践で通用するとは限らない。

さらに、彼を押しつぶしそうなのは…。

「箒やおまえが助けてくれたのは分かってるけど…それだけプレッシャーも強いんだよ」

「別に「勝て」だなんて、言ってないだろ?」

意外な一言を漏らした宇月。

「おれ達は、出来る全てのことをやった。それをセシリアに思いっきりぶつければ良い。それが例え敗北でも、なにか掴めるモノはあるだろ?」

そういった後、あっと思い出したように言う。

「…でも彼女に勝てなきゃ、紫苑が浮かばれないな」

「あの…別に死んでないよ?」

いつの間にか、開いているドアの前に立っていた紫苑。

「うお、いつの間に!?」

「ご、ごめんね!盗み聞きするつもりはなかったんだけど…「掴めるモノはある」ってところから…」

紫苑は頭を下げて謝った後、一夏の所へ行き、彼の手を握る。

「僕も勝ってなんて言わない。でも、君の全力をぶつけて。…応援してるから」

「…あぁ!」

 

アリーナでの試合は両者一歩も引かずといったところだ。

「…あなたが初めてですわ。わたくしと戦って、ここまで長持ちしたのは…」

セシリアの表情に少しだけ焦りがあった。彼は攻撃を一度も受けていないのだ。

「…掛かったな」

「え…?」

 

「武器は…もう尽きただろ?」

 

その瞬間、左手のムチをセシリアに放つ。

「くっ…!」

一瞬故に、セシリアは避けられずに捕縛された。

「消耗戦だという事すら分からなかったのか。こっちはただ避けただけ。オマエは武器を乱射。普通に考えれば分かるだろ?」

勝ち誇ったように言う理雄は、一気に距離を縮める。

「終わりだ…丁度5分!」

 

「…分かってましてよ?」

 

セシリアは腰部分からもビームライフルを出した。

「このわたくしが、何も考えずに乱射すると思って?」

ここから一撃を放てば、相手には大きなダメージを追わせられる。

なのに、理雄は全く同様していない

「…だろうな。良く見ろ」

「…!?」

見ると、捕縛していたムチは銃口に入り込み、損傷を起こしていた。

これでは発射できない。

「改めて…終わりだ!」

右手にある刀が、セシリアに向かっていく…。

 

だが…

 

「…え?」

攻撃が当たらない。

「もう良い。時間稼ぎは終了だ」

そう言いながら、理雄は離れて霧裂を解除する。

そして、アリーナに向かって呼びかけた。

「飽きた。オレの負けで良い」

この戦い、間違いなく理雄が勝っていたが、彼は勝利のチャンスを逃した。

「勝者、セシリア・オルコット!」

 

箒はモニターで2人の戦いを見ていた。

「裾迫…強いな。あれは事実上、勝ちだ」

次はセシリアと一夏。彼女のISの修理が終わり次第、すぐに開始される。

「頑張れ…一夏」

一夏の勝利を願う箒。

 

そこへ…。

 

「そろそろ準備が整ったわ」「な…カメレオン!?」

そこに現れたのはカメレオン。

「スコーピオン様も応援してくださっている。セシリア・オルコットは…アタシが潰す!」

宣戦布告なのだろうか…。試合会場へ向かうカメレオン。

「そこまでだ!」

振り返ると、フォーゼドライバーを装着した宇月がいた。

<3>

「この戦いは、おれ達の全てを込めた戦い。邪魔はさせない!」

<2>

「アタシの邪魔はいいってことなの?」

<1>

「邪魔じゃない…止めるんだ。変身っ!」

そう言って、宇月はフォーゼBSに変身した。

「おまえ…セシリアと同じイギリス人の子だろ。一夏を推薦していた子」

「…!?」

突如、正体を見破られた。

「1週間、探って分かった。セシリアにぶち壊しにされたって言うのは…おまえが代表候補生から蹴落とされたんじゃないのかって思ってな。すぐに見つかったよ」

「そうよ。アタシは死物狂いで頑張ったのに…アイツが全部奪ったの!」

「多分…セシリアも同じだ」

フォーゼBSは、以外にもセシリアを擁護した。

「宇月…?」

「紫苑から聞いたけど、候補生ってのは、並の努力じゃなれないらしい。セシリアだってそうだろ。だからって、紫苑を傷つけたのは許さないけどな」

カメレオンを指差すフォーゼBS。その指先は彼女の心の奥さえも指しているようだ。

「でもおまえは、スイッチに頼った。そういう意味では、自力のセシリアの方がまだ頑張ってる」

指差した手を開いて差出す。スイッチを渡すように言っているのと同意義だ。

「スイッチに頼っても、何も得られない。だから人間の力で勝負しろ。人間には誰でも可能性がある」

説得が通じたのかカメレオンはスイッチを切り、イギリス人の女子生徒に戻った。

「…変わり者ね、白いロケットさん」

「フォーゼです…」

そう言って、スイッチを渡そうとする。

 

「私達の邪魔も勘弁願いたい」

 

「おまえ…!」「スコーピオン!?」

そう言って現れたのはスコーピオン。

「カメレオン、最後のチャンスだ。セシリア・オルコットを不幸のどん底に陥れられるのは、今しかないのだよ?」

「す、スコーピオン様…。あたし…やっぱりスイッチなんか使いません!」

女子生徒は叫びながら、スコーピオンにスイッチを投げつける。

それをキャッチしたスコーピオンは、一気に雰囲気が変わった。

「使えないゴミが…!」

<LAST ONE>

スイッチの形が変形し、それを確認したスコーピオンは女子生徒を背中の尾で捕まえる。

「きゃあっ!」

「おい!その娘を放せ!」

フォーゼBSが彼女を解放させようと近付くも…。

「退けエエエェ!」

ドガアアアアアァ!

「ぐああっ!?」「宇月!しっかりしろ!」

足蹴りで吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

「いやっ!離して!」

「貴様の意志など関係ない。星に願いを込めた代償を…!」

スコーピオンは、女子生徒に無理矢理スイッチを握らせ、押させた。

「いやああああああああああああぁ!」

その途端、女子生徒とカメレオンは2体に分離した。

「自分の意志以外でラストワンを押した場合、スイッチの中にある魔力が人格を形成する。さぁ…試合を台無しにするのだ」

「クルルルルル…!」

人の声を失ったカメレオンは、スコーピオンの意志に従い、アリーナに向かった。

「スコーピオン、てめぇ!」

「君の相手は私だ。今日はもっと相手が出来そうだ」

スコーピオンはそう言って、クロークを脱ぎ捨てた。

「…箒!一夏に教えろ!カメレオンが向かってる!」

「わかった!」

 

アリーナでは、戦闘開始の合図が鳴り響いた。

「さぁ…覚悟なさって!」

「行くか…!」

セシリアはブルー・ティアーズを、一夏は白式を展開。

「あなたも、このワルツで踊りなさい!」

先ほどと同じ戦闘を行なう。ビームの嵐が一夏目掛けて襲ってきた。

「分析どおりだな!」

しかし、それを全く苦にもせず避ける。

「そんな…こんな正確に避けるなんて…!?」

「おれ達の力をなめるなよ!」

確かにビームの軌道を操れる力は厄介だ。だが、その武器を使っている間、他の武器は使えない。

白式は武装が少ない分、機動性に長けている。その速度を利用すれば、相手の懐に入り込むことも容易い。

このことを1週間かけて、宇月、箒、一夏、山田の3人で分析し、戦法を編み出したのだ。

「使わせてもらうぜ、千冬姉!」

誇らしげに叫び、主な武装である「雪片弐型」を装備する。これは、姉の千冬が使っていた「雪片」の後継にあたる。

「…千冬姉、もう守ってもらわなくていいからな!」

雪片弐型を振りかざし、セシリアの懐に向かう一夏。

 

離れた場所のモニターで、山田と一緒にその試合を見ている千冬。

「…守らなければならん。まだまだ未熟だ」

「織斑先生…」

厳しそうな目つきだが、誰にも聞こえない声で言う。

「ふ…『おれ達』か」

 

セシリアの全ての戦法は、ほぼ意味がなかった。理雄のような感覚やその場の対応ではない。練りに練って、じっくりと攻略法を熟知した戦い方だ。

「はああああああああああああああぁ!」

ここで攻撃が当たれば、間違いなく勝てる。

だが…。

 

ドガアアァ!

 

「きゃああああああぁ!?」「オルコット!?」

何かの衝撃を受け、セシリアのブルー・ティアーズは急降下する。

不安定な態勢ゆえに、このままでは地面に激突する。

「くっ…間に合え!」

速度を最大にして、セシリアを救助に向かう。それに気づかない彼女は、とっさに目を閉じるが…。

「間に合ってよかった…!」「織斑さん…!」

なんとか一夏はセシリアの救助に成功した。

丁度そのとき、箒が現れて一夏に呼びかけた。

「一夏ぁ!ラストワンのカメレオンがここに来ている!気をつけろ!」

「宇月はどうした!?」

やはりカメレオンが邪魔をしたようだ。だがゾディアーツ相手ならば、宇月のフォーゼが有利なはず。彼の居場所を聞くが…。

「今、スコーピオンと戦っている!当分、こちらには来れない!」

「そうか…持ちこたえなきゃな!セシリア、行けるか?」

この状況では、セシリアの協力が必要だ。しかし彼女は…。

「なんでわたくしが、そんなことを…。誰かの前座なんて御免ですわ!」

「いい加減にしろ!」

一夏に怒鳴られて、びくりと驚いたセシリア。

「おまえ、代表候補生だろ!そんな意地を張ってどうする!?…クラス代表なら、代表らしい誇りを見せてみろ!」

「織斑さん…」

セシリアは驚いていた。自分の中にある「男」の印象を覆している、この少年達。

とくに一夏のこの目を見ていると…。

なにか動かされるような気がする。

一夏は、相手の居場所を探ろうとしたとき…。

 

「ぐああああああああああああぁ!」

 

アリーナの壁を破壊して、フォーゼBSが吹き飛ばされてきた。

開いた穴から、スコーピオンも現れる。

「やぁ。ご機嫌如何かな、IS学園の諸君」

「きゃああああぁ!」「怪物よ!」「助けてえええええええぇ!」

突如現れた怪物に、試合観戦していた生徒は取り乱しながら逃げ惑う。

「フフフ…。この程度で逃げ出すとは…IS乗りという者も、その程度らしい」

スコーピオンは、生徒達の姿を楽しそうに見物しながら笑う。

「何者ですの、あなた?」

セシリアの問いに、スコーピオンは更に可笑しそうに言う。

「聞いていないのか?ゾディアーツ…その選ばれた12使徒、ホロスコープスだよ。さて、専用機の力とやら、見せてもらおうか?」

スコーピオンは両手を広げて、攻撃を待っているような素振りを見せる。

彼の挑発に乗ってはいけない。フォーゼでも全く歯が立たない相手だ。

「セシリア、やつは…!」

「代表らしく…戦わなきゃいけないんでしょう?」

セシリアは穏やかな笑みを一夏に向け、スコーピオンに狙いを定める。

「うけてたちます!はあっ!」

再び来るビームの嵐。

「ムン!ヌオォ!」

それを紙一重で避けながら、セシリアの懐まで入り込んだ。一夏よりも遥かに早く。

「ゼエエェアァ!」

ドガアアアアアァ!

「ああああっ!」

強烈な蹴りを受け、セシリアのISは解除され、それを一夏が抱きとめる。

「セシリア、大丈夫か!?」「え、えぇ…平気ですわ」

何故だか分からないが、セシリアは一夏から顔を背ける。

「この程度か。やはりIS如きでは宇宙へ旅立てん。…カメレオンは使い物にならない。後片付けを頼めるかな?」

「まてっ、スコーピオン!」

一夏が追おうをするが、それは敵わなかった。

ドガアアァ!

「ぐうっ!?」

さらに透明になったカメレオンからの追い討ち。セシリアを闘争本能だけで狙っているため、彼女を抱きかかえている一夏を狙うのだ。

「何か手は…そうだ!」

フォーゼBSはビートスイッチを取り出してオンにする。

<BEAT ON>

「みんな、耳を塞げ!」「あ、あぁ!」

フォーゼBSの警告の後、右足に現れたビートモジュールから強烈な音波が流れ、カメレオンを苦しめる。

「クルルルァァ!!」

集中が途切れたのか、カメレオンは姿を現し、頭を抱えているために隙だらけ。

「今なら…」

<ROCKET-ON><DRILL-ON>

右手にロケットモジュール、左足にドリルモジュールを装備し、空を飛ぶ。

更にレバーを押して…。

<ROCKET DRILL LIMIT-BREAKE>

「行くぞ!ライダァァァ…ロケットドリルキィィック!」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアァ!

フォーゼBSのリミットブレイクがカメレオンに激突。残されたスイッチをオフにして、消滅させた。

 

倒れていた女子生徒が目を覚ます。

視界には、宇月、一夏、箒、セシリアがいた。

「あ…助かったの?」

「おう!気分はどうだ?」

「う、うん、大丈夫…」

罪悪感に苛まれているせいか、俯いている女子生徒にセシリアが近付いた。

「今のあなたでは、わたしには勝てなくってよ」

「オルコット、おまえ!」

こんなときでも、酷い言い方をするセシリアに、箒も反論しようとするが…。

「でも、あなたが必死に努力していた事は認めますわ。わたくしに勝ちたかったら、もっと努力して出直してきなさい。いつでも相手になりますわよ」

そう言ってセシリアは、その女子生徒を抱きしめた。

「…待ってなさいよ…!」

女子生徒は、涙を流しながら答えた。

 

次の日。

手紙を見ている宇月。送り主はかつての友人。

「マジか!来週、転入する男2人の内の1人は礼か!」

「れい…?」

聞きなれない名前だ。

「礼は、おれの中学時代の友達。星空高校だったけど…ISが使えるようになったみたいだ!」

「そうか、古い友達がいるのは良い事だな」

「だろ!?」

ラビットハッチの道を一緒に歩く宇月と箒。

箒の腕には、今回がんばっていたバガミールが大切そうに抱きかかえられている。

「宇月、バガミールの他にフードロイドはあるのか?」

「あぁ…。シザースとフラッシュのフードロイドを調整中だから、あと3日もすれば、ロールアウトする予定」

現時点で、アストロスイッチは10、20、30、31、40以外は全て調整完了している。フードロイドも充実させたいと、現在は調整中なのだ。

とりあえず、間もなく2体のフードロイドが完成する。

「ホントか?ホントなんだな!?」

「こんなことで、嘘つくかよ」

どうやら、箒はフードロイドの虜になったようだ。

「あの…宇月、お願いだ。わたしに、この子達の世話係をやらせてくれ!」

彼女はスイッチャー探しも任せてもらっている。偵察用のフードロイドを担当させるのは、好都合かもしれない。

「まぁ、良いけど。じゃあ今日、ある程度の操作方法を…」

「やった…!これからよろしく、バガちゃん!」

「聞いちゃいない…」

すでにバガミールにニックネームまでつけている。まぁ、こんなに大切にしてくれるなら大丈夫だろう。

見えてきたラビットハッチの扉を開けると…。

 

「…なんだこれは?」

 

ラビットハッチに様々な装飾が飾られている。犯人は…。

「あら。宇月さんに箒さん、ごきげんよう」

「ご、ごきげんよう」「セシリア…?」

セシリアだ。彼女好みの概観に改装されてしまっている。

「わたくし、一夏さんにクラス代表をお譲りしましたの。今度、改めて紫苑さんにも謝りますわ」

「本当か!さすがイギリス代表候補生!」

彼女の行動を知って、喜ぶ宇月。掴めたモノはあったのだから。

 

「その代わり、仮面ライダー部に入部しますわ!」

 

「マジかよ!…え?」

喜んでいる途中で、不思議な感覚になって聞きなおす。

「だから、わたくしも仮面ライダー部に入部しますわ!」

「…誰が喋った?」

既に入部しているメンバーを見渡すと…。

箒はバガミールを撫でている。

山田は困ったように笑いながら、残りの一人を見ている。

そして一夏は目を背けている。

「一夏、おまえかぁ!?」「すまん!セシリアに後を付けられたんだよ!」

怒りが爆発した宇月は、一夏を追い掛け回す。

「こんのやろおおおおおおおおおおぉ!他言無用だろうがああああああぁ!」

「すまないいいいいいいいいいいいぃ!」

舞台にしては狭いラビットハッチで、鬼ごっこが開始された。

「ふふ…賑やかでよろしいですわ」

こうして、仮面ライダー部にあらたな部員が入部した。

 

 

 

 

 

続く…。

 

 

 

 

 

次回!

 

                     その情報、古いわよ!

 

鈴!? 

 

まぁた、幼馴染かよ!?

 

2組のクラス代表、変わったって

 

 

                         恨まれるやつ、多すぎだろう?

 

少し…動いてもよろしいでしょうか?

 

                         この近くに隕石が落下…?

 

礼がいないと、スイッチ調整が出来ないからな…

 

 

 

 

第5話「第・二・幼・馴」

 

 

青春スイッチ・オン!

 

 






キャスト

城茂宇月=仮面ライダーフォーゼ

織斑一夏

篠ノ之箒
セシリア・オルコット

白石紫苑
裾迫理雄

イギリス人の女子生徒=カメレオン・ゾディアーツ

山田真耶
織斑千冬

???=スコーピオン・ゾディアーツ
???=レオ・ゾディアーツ




あとがき
如何でしたか?
ちょっと、作戦立てていた割には実践シーンが少ないような気がしますし、セシリアの心変わりもちょっと急すぎたかもしれませんが…まいっか(爆)!
スコーピオンとレオの関係性もちょっとだけ。
次回は原作どおりセカンド幼馴染が来ます!いろんな伏線もはりますよ!
おたのしみに!

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