第3話「決・闘・申・込」
仮面ライダー部が設立された次の日。
今は授業中で千冬の講義を聴いているのだが…。
「ぐぅー…」「宇月…」
宇月は居眠り中。フォーゼとして変身し、ゾディアーツ対策なども行なっているために、睡眠時間が非常に少ないのだ。
彼に気付き、ツカツカと歩み寄る千冬。
「おい」
スパァン!
「んごぉ!?」
突然の頭の衝撃に、宇月は飛び上がった。
「授業中、眠るとは良い度胸だ。眠気覚ましでもしてやろうか?」
「い、いえ…結構です…」
中間管理職の辛さは、これと共通しているのだろうかと一夏は考えていた。
昼休み。
「ちょっとよろしくて?」「…?」
突如、宇月に話しかけた女子生徒。日本人ではないようだ。ただ、宇月が一番最初に受けた印象は…。
「うぉ、美人…!」
どこか高貴な立ち振る舞いと整った顔立ち。もともと、このクラスは美人が多いのだが、宇月には彼女がより魅力的に見えたらしい。
「あら、イギリス代表性候補のセシリア・オルコットが話しかけて差し上げてますのに、その態度はなんですか?まるでナンパ師のような…」
「せるじあ・おりがみ?…てかイギリス人なのに日本語ペラペラ…」
「はぁ?…まったく、耳もおかしいですのね。代表候補生たるもの、日本語の理解くらい当然の事ですわ」
呆れたような様子で返す「セシリア・オルコット」に、紫苑が怯えながらも会話に介入した。
「えっと…オルコットさん。城茂君はあまり眠れてなくて、きっと集中力が…」
「外野は黙っていてくださる?…あなたのような方、特に嫌いですわ」
「ご、ごめんなさい…」
なんとか宇月を助けようとしたが、紫苑は性格ゆえに何も出来なかった。
だが、その行動が宇月に火をつけた。
「おい、紫苑に謝れ」「なんですって?」
さっきまで美人と謳っていた相手に向かって、間違いなく敵意をむき出しにしている。
「おれのことは何とでも言えばいい。でも紫苑は、おまえに何も悪いことをしてないだろう?」
「い、良いよ城茂君。僕は何言われても良いから」
「黙ってろ!」
紫苑を怒鳴りつけ、セシリアを睨む宇月。
「あら、男同士の友情ですの?…汗臭いですわね」「好きに言ってろ。だが紫苑に謝ってもらう」
セシリアの挑発には全く乗らず、紫苑に対する謝罪のみを要求する。
「はっ、冗談じゃないですわ。誰が男なんかに…」
最悪の雰囲気になってきた。箒も黙ってみているだけにしようとしていたが、我慢できずに席を立った。
ところが…。
「うるせェよ、目障りだ。教室に入って早々、胸糞悪い」「な…!?」
鬱陶しく感じたのか、珍しく無関係な事に首を突っ込んできた理雄。どうやら、今教室に戻ってきたようだ。頭を掻きながら、セシリアにガンを飛ばす。
宇月や紫苑とは迫力が違いすぎる。さすがにセシリアも怖気づきかけた。
「代表候補だかなんだか知らねぇが、あんまりつけあがるなよ?すぐに蹴落としてやる」
「あ、あなたねぇ!」
そのときチャイムが鳴り、山田が現れた。
「じゅ、授業です~」
「…逃げないことね。よろしくって?」
これは上の出来事の少し前の時間に起こった出来事である。
教室から少し離れた人気の無い廊下で、スコーピオンがとある生徒に出くわしていた。
「君の誇りを取り戻したいのだろう?…あのセシリア・オルコットに一泡吹かせたいというわけなのだね」
「あ…あの…」
「君なら出来る。上手くいけば候補生どころか、この学園でもっとも優秀な存在になり、最高の誇りを維持できるのだよ」
スコーピオンの手には、ゾディアーツスイッチが握られていた。
「さぁ…星に願いを…」
HR前。
「裾迫」「アァ?」
箒は理雄の前に立ち、少し笑みを浮かべた。
「見直したぞ、ああ言った事には無関心だと思っていたが、しっかりと向き合う姿勢があるとは…」
だが、理雄の返事はその言葉を大いに裏切るものだった。
「ハァ?笑わせんな。オレはな、あの女をモノにしたくなったから動いただけだ。理由も無く、あんな慈善事業みたいなことできるかよ」
「おまえ…!?」
「面白いだろうなぁ…あの高飛車な女が屈服したら」
にんまりと笑う理雄。そこに千冬が入ってきた。
「席に着け、ホームルームをはじめる」
そしてHRが始まった。
「連絡事項は2つだ。1つ目、1週間後、このクラスに転校生が来る事になった。男2人だそうだ」
クラスは騒ぎ始める。また新たに2人も男IS使いが現れたようだ。
「また男が来る!?」
「まだ先の話だがな。そして2つ。クラス代表を決めたいと思う。自薦他薦は問わんが、候補はいるか?」
「わたし、織斑君が良いと思います!」「あ、あたしも!」「同感で~す!」
「お、おれかよ!?」
圧倒的に一夏が多数。
「根拠は?」
千冬が理由を聞くと、突如としてクラスは静まった。
「えっと…それは…」「男の子のIS使いが代表だと良いと思ったからです」
「それだけか?」
そこで、一人の女子生徒が手を挙げた。
「はい、あたしは城茂君を推薦します!」
その女子生徒は先日、リンクス・ゾディアーツに変身していた者だった。
「おれ…?」
「城茂君は、このクラスの中でも一番元気で、困難にも一生懸命立ち向かっていく姿勢があるからです」
その言葉に、千冬は納得した。
「なるほど…確かに。では他に無ければ、織斑か城茂のどちらかになるが…」
「納得いきません!」
そこに大きく否定したのはセシリアだ。
「男がクラス代表なんて、いい恥さらしですわ!クラス代表は、このイギリス代表候補のわたくしに…」
「それも納得いかない」
そう言って立ち上がったのは宇月。
「どこにご不満がありますの?」
「紫苑に謝ったりしないような奴が、代表なんて認めない」
「し、城茂君…僕のことは良いんだよ!」
彼女の実力など、どうでも良い。ただ、紫苑が傷ついたのに自分の非を認めない彼女を代表にする事は、彼の心が許さなかった。
「あのですね、わたくしだけですわよ。入学試験で試験官を倒したのは…」
「あ、おれも倒したよ。女子だけの話なんだろ」
そう言ったのは一夏だ。そう、彼は試験官を倒した生徒の一人なのだ。さらに、もう一人いるのだが…。
「オレも倒したんだよ、余裕だったぜ。分かるか?一番はテメェじゃないってことだ」
つまり、一夏とセシリア、そして理雄の3人が試験官を倒しているのだ。
「あ、あのケンカは…」
「うるせェな!?」
「ひっ…!」
山田は必死に止めるが、まったく状況は治まらない。
「だいたい、イギリスがなんだって言うんだ?」
衝撃の事実に追加で、理雄の最後の言葉が、セシリアの堪忍袋の緒を切ることとなった。
「わたくしの祖国の侮辱まで…。もう…我慢の限界です…!」
「決闘ですわ!」
「決闘…?」
「おもしれェ…!力の差を分からせてやる!」
こうして、一週間後に学園の管理下での決闘が決まった。
対戦カードはセシリアVS一夏。そしてセシリアVS理雄。
放課後…。
「大丈夫かよ、一夏?挑発したのは、おれと理雄なのに…」
「何とかして見せる。それに紫苑にあんな言い方をして許せないのは、おれも同じだ」
「さすが一夏!おれの分まで頼む!」
ラビットハッチで作戦会議中の4人。
「ところで、城茂君は参戦しなかったんですね。他薦あったのに…」
「だっておれ、試験官…千冬さんにボロ負けでしたから」
その発言で、宇月を残した3人は、そりゃそうだと頷く。一夏の姉である千冬は、IS使いの元日本代表。「ブリュンヒルデ」という異名もある。入学前の生徒が勝てる相手ではない。
「ところで、相手は代表候補だ。専用機もあるだろうし、まず勝ち目は無いぞ」
「そこをおれ達がフォローするんだよ、箒。たしかに相手は強いと思う。そこでだ」
宇月が取り出したのは…
「…ハンバーガー?腹ごしらえでもするのか?」
「よく見てろって」
そう言って、カメラスイッチをそのハンバーガーにセットすると…。
突如、形が変わり、生きているように動き出した。
「うお、変わった!?」
「これはバガミール。アストロスイッチの力で動くメカ「フードロイド」の一つさ」
「ちょっと…かわいいかも」
箒はバガミールをなでている。なにやら腕を頭にやって、照れているようにするバガミール。感情らしいものも多少、あるようだ。
「こいつで、いろいろと探るわけ。あのセシリアって娘の強さの秘訣とか…専用機のこととか!それで作戦を立てる。一週間あれば、なにか掴めるだろ。…そろそろ返せよ」
「あぁ…バガミール…」
宇月にバガミールを取り上げられ、しゅんとする箒。
「さ、よろしくな!」
バガミールは目を光らせ、偵察に向かった。
「バガミールの情報は、このモニターに転送されるから、今日はこれでお開き」
そのとき…。
「きゃあああああああぁ!」
「…!?」
セシリアの声だ。
「バガミールに驚いたんじゃないのか!?」
「あんなにかわいい子に対して、あんなリアクションあるか!行くぞ!」
一夏の言葉は、箒に否定された。すぐにラビットハッチから出る3人。
人気の無い廊下。
「アンタの天下もここまでよ…」
「どこにいらっしゃるの!?」
セシリアは目に見えない「何か」に怯えている。先ほど、いきなり衝撃に襲われて地面に叩きつけられたのだ。
「おい、セシリア!」「あなた達は…!」
そこに宇月達が現れる。
「どうしたって言うんだ!?」
「ふ、ふん!下々の者に言う事ではありませんわ!」
彼女のプライドがそうさせているのか、口を割ろうとしない。
「ええい!ごちゃごちゃ言わずに、早く答えろ!」「ちょ、ちょっと!やめてください!」
宇月はそれを待つほど我慢がきかない。セシリアの肩を持って強く揺する。
「これで終わらせてあげる!」
ギシイィ!
「あうっ!」
そのセシリアの身体は、唐突に宙に浮く。…なにかにぶら下げられているようだ。
「くぅうっ…うあぁ…!」
強い力で締め上げられている。このままでは危険だ。
「…箒、透明になるISとかあるのか?」「多分…ない」
箒の知っている知識では、迷彩機能など無いはずだ。だとすると、答えは一つ…。
「なら、ゾディアーツか!」
フォーゼドライバーを装着し、変身準備に入る。
<3><2><1>
「変身っ!」
宇月は、レバーを引き、フォーゼBSに変身した。
「はあっ!」「なんなのよ、アンタ!」
透明な「何か」の質問に、フォーゼBSは胸を張って答える。
「おれはフォーゼ…いや」
「仮面ライダーフォーゼだ!」
戦略は立てている。カメラスイッチならば、透明な敵でも瞬時に見つけられることが出来る。さらに見つけ方や攻略法まで分かる優れモノだ。
「透明ならカメラで…あ!?」「どうした!?」
だが、ここでフォーゼBSは重大な出来事に気付いた。
「カメラスイッチが無い!」
そう、バガミールの起動スイッチはカメラ。今現在、フォーゼの手元にはカメラが無いのだ。
「レーダーで…いけるか?」
<RADER-ON>
レーダーを装備するが、これは敵の居場所が分かるだけ。廊下ではランチャーが使えない。つまり、レーダーのモニターを確認しながら攻撃するという二度手間を喰う羽目になった。
「えっと…ここにいるから…ここか!」
ドガッ!
「ウアッ!」
なんとか攻撃に成功し、セシリアも開放された。
「ちょっと…なんなのよ全く!」
文句を言いながら現れたのは…。
「カメレオンか…!」
そう、カメレオン・ゾディアーツ。スコーピオンからスイッチを貰った者だ。
「アタシはね、セシリア・オルコットをどん底に叩き落とすのよ!」
「恨みを買ってるのは、おれ達だけじゃないらしいな…!」
対峙するフォーゼBSとカメレオン。
それを遠くで見ている者…スコーピオンだ。
「ククク…精々、苦しんでくれたまえ。セシリア・オルコットとフォーゼ…」
続く…。
次回!
白式…
一夏専用のISかぁ…!
踊りなさい、私とブルーティアーズの奏でるワルツに…!
来週は…礼がくるのか!
理雄って…強すぎだろ…!
この際、言っておく「オレが全て」だ…!
代表なら、代表らしい誇りを見せろ!
第4話「誇・示・困・難」
青春スイッチ・オン!
キャスト
城茂宇月=仮面ライダーフォーゼ
織斑一夏
篠ノ之箒
セシリア・オルコット
白石紫苑
裾迫理雄
リンクスだった女子生徒
???=カメレオン・ゾディアーツ
山田真耶
織斑千冬
???=スコーピオン・ゾディアーツ
あとがき
如何でしたか?
…ISの話題が少ない(大汗)。次回こそ、ISの戦闘シーンがありますので…。
暫くの間、ゲスト怪人は名も無きモブキャラになります。予告である礼というのは…まだ秘密です!
ご感想お待ちしてます!
それでは…。