仮面ライダーフォーゼ~IS学園キターッ!~   作:龍騎鯖威武

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母そして人…仮面ライダー部VSヴァルゴ
第35話「乙・女・宣・言」


紫苑がダークネヴュラの彼方に消えて数日が過ぎた。

アレからシャルロットは暫く落ち込んでいたが、紫苑の最後を思い出し、何とか立ち直る事ができた。

そして…。

ラビットハッチで会議が行われた。

「とうとう、残るホロスコープスは乙女座のヴァルゴだけになったな…」

最後の強敵は、宇月の母である城茂美咲…乙女座の使徒、ヴァルゴ・ゾディアーツ。

宇月にとっては、本当に強敵だ。

何しろ、実の母であり、唯一の肉親。本当ならば争いたくはない。そして美咲もそう思っている。

争うべきではないのに、争わなければならない。

「でも母さんとの決着は…おれが着けないといけないんだよな」

フォーゼドライバーとコズミックスイッチを見つめながら呟く宇月。

結局のところ、ゾディアーツは自分の家族が放ったものであり、家族の自分がケリをつけなければならないのは当然のことなのだろう。

そのとき…

「みなさん!ナゲジャロイカが!」

セシリアの声に振り向くと、ナゲジャロイカが負のコズミックエナジーを感じ取ったために警報を鳴らしている。

「来たか…」

噂をすればだ。遂にヴァルゴが動き出す。逆を言えばこの数日の間、全く大きな動きを見せなかったのが意外だ。

「よし…みんなで」

「ちょっとまった」

一夏が立ち上がり、出発の準備を始めようとすると宇月が止める。

「…おれだけで行きたい」

「気持ちは分かるが、相手はヴァルゴ・ゾディアーツだ。コズミックステイツがあるとは言え、フォーゼ一人では不安だろう?」

箒が宇月の要求に対して異議を唱える。

「…なんか、話し合いで決着が着けられる気がするんだ」

宇月の言葉に近くで聞いていた礼や千冬も、なんとなく納得が行くような気がした。

彼女は一時期でも、フォーゼに有利なものを作った。

ヴァルゴだと正体を明かしたなら、早々にそれを破壊すればよかったのに、それを行なわなかった。

もし、その理由が母親としての心によるものだとしたら…。

「…宇月、ナゲストを近くにつけさせてもらう。これだけは譲れん」

ガシャッ…!

「礼…」

彼の要求をのめる限界を言い、礼はメテオドライバーを床に落とす。

戦いに参加する意志を見せないという意味なのだろう。

残りの者達も不安そうではあるが、まっすぐ宇月を見つめている。

彼を信じているのだ。

「…ありがとう!」

頭を下げて礼を言い、ラビットハッチを出て行った。

 

学園から少し離れた場所に、美咲はいた。

振り返った表情は、やつれている事も手伝って、少し疲れているようにも見えた。

「来たね。…監視つきで一人か」

「母さん…話がしたい」

「それは私も同じ事だ」

美咲は白衣のポケットから手を出して、ゆっくりと宇月に近付く。

その手には何もない。…ヴァルゴスイッチさえも。

正直なところを言うと、少し警戒していた。

だが、それを見て大丈夫だと判断した。

「母さん。本当にホロスコープスの首領として、目的を果たさなきゃならないのかよ?」

「…そうだね」

「今なら、やめることは出来る」

「残念だが、やめるつもりはない」

諦める事はないようだ。話し合いでの決着は無理だ。

「なら、戦うしかないのか…?」

「宇月が私を止めると言うのならば、そういうことになるね」

独り言のような返事をした美咲の表情は曇っていた。

「母さん…なんで、自分の目的のために動いているのに悲しそうなんだよ?」

「私が…悲しそう…?」

自身でも自覚がなかったようだ。宇月の言葉に驚くような様子を見せる。

「母さんの目的って…本当に母さんの望んでる事なのかよ!?」

訴えかけた。彼女の良心がまだ残っていると信じて…。

「…一番の望みはそれだ。だが、枷が多い」

しかし、美咲の返事は冷たいものだった。

「ゾディアーツを生む事によって、様々な人間の人生を狂わせた。…特に紫苑君には懺悔するだけでは足りないだろう。だが犠牲を払ってでも、目的を果たしたい。そのための犠牲に対する良心の呵責が…私にとっての大きな「枷」だ」

彼女には確かに良心がある。だが、それこそが、美咲にとって邪魔なモノなのだ。

「母さんの目的って…なんだよ?」

 

 

 

 

 

「世界に知らしめるのだ。ゾディアーツを」

 

 

 

 

 

目的を聞いて、宇月は唖然とした。

「いろんな人の犠牲を払って…悩んで…それ以上に望むモノが、そんな事なのかよ…?」

「仕方ないさ。ゾディアーツは私が開発した、人間を超進化させるための力。科学者を両親に持つ宇月なら分かるだろう…」

たしかに、科学者にはこういった感情がある。

 

自分の研究成果を、世間に認めさせたい。

 

殆どの科学者に、そういった願望はあるのだろう。

「夫はコズミックエナジーの第一人者。常に私を上回った研究成果を上げていた。残念ながら人間は、自分の力を認めさせるためには、とことん貪欲になるモノなのだよ」

幻滅した。あれだけ慕ってきた母は、そんな身勝手な理由で動いていたのだ。

「これだけ悲しそうにしていた母さんだったから…もしかしたら、仕方ない理由で動いていたと思ってた。だから、話し合いで分かり合えると信じていた」

拳を握って俯く宇月。

「でも、母さんは違った!!!!もう…あんたを母さんとは思わない!!!」

フォーゼドライバーを取り出して装着し、コズミックスイッチを装填する。

<COSMIC><3><2><1>

「変身っ!」

<COSMIC-ON>

宇月の体を青白い光が纏い、フォーゼCSへと変身させた。

それをみた美咲はポケットからヴァルゴスイッチを取り出して押し、彼女の体を赤黒い闇がまとう。

その身体はみるみる、ヴァルゴへと変化していった。

「残念だよ…こういうことになるのは…」

「うおおおおおおおおおおおおおおおぉっ!!!」

ヴァルゴの呟きを無視して、バリズンソードを振りかざして走るフォーゼCS。

「…フンッ!!!」

ドオォッ!!!

ロディアを地面に叩きつけると、凄まじい数の光弾が生み出され、フォーゼCSに向かっていく。

「…おおおおおおおおおおおおおおおぉっ!!!!」

ガギィッ!!!ドガアアアァッ!!!

バリズンソードや自身に張り巡らされたコズミックエナジーの結界で、なんとか攻撃をやり過ごしながらヴァルゴに近付く。

「うおあああああああああああぁっ!!!」

ブンッ!!

一心不乱にバリズンソードを振り回すが、それらは全て避けられる。

「フッ…!!」

ドガアアアアアアァッ!!!

「ぐああああああぁっ!?」

突如、至近距離でロディアを翳され、エネルギー波を浴びた。

やはり、ヴァルゴは強い。フォーゼCSのみでは勝ち目がない。

「もう君達では、私を止める事は出来ない。その目で、しかと見届けるのだ」

ヴァルゴはそう言い捨て、ロディアを地面に叩きつけて姿を消す。

「ヴァルゴ…!!」

宇月は、もはや美咲を母の名で呼ぼうとはしない。彼の中での美咲は…ヴァルゴ・ゾディアーツと認識されたのだ。

 

ヴァルゴは自分のアジトへと戻ってきた。

目の前には11個のホロスコープススイッチが配置されている。

「…もう少し待つか」

小さな声で呟き、美咲の姿に戻った。

 

再び、ラビットハッチに宇月は戻ってくる。

ナゲストの映像を見たので、全員は何が起こったのかを把握している。

「…宇月の母さんは…」

「あんなの、もう母さんでも何でもない…。ただのゾディアーツだ…!!!」

一夏の言葉を否定する宇月の表情は、怒り心頭だった。

拳を強く握り、顔を真っ赤にさせている。

「悲しいよ…親子なのに…」

シャルロットは俯いて呟く。

彼女は紫苑と勇士の争いを見てきた。

親子であるのに、和解することは出来ず、互いに憎んでいた親子。結局、彼等は直接和解しているとは言えない。紫苑は勇士を赦しているだろうが、勇士自身は面会を拒絶しているため、未だ心境が窺えない。

「だから言っただろシャルロット、あんなのは親じゃない」

再び、彼女の言葉を否定する宇月。

「でも…それでも、宇月さんがなんと仰ろうとも、宇月さんのお母様だったことを変えることは出来ませんわ」

「…」

セシリアの言葉には、宇月は何も言い返せなかった。

今の母を否定したとしても、彼女が宇月を生み、そして育てた事実は変わらないのだ。今になっては、それが悔しい。

だから、先ほどから作っている表情を変えることはしない。

実際、宇月に異論を唱える者達も、家族だからと言う理由で彼の意見を否定しているのだが、それを否定させたところで、何の解決策も思いついていないのが現状だ。

「結局、本当にヴァルゴの言うとおり、黙ってみているだけしか出来ないのかもな」

呆れたような言葉で礼が言う。

「そんなことはっ!」

宇月がそれは違うと立ち上がろうとするが、続けざまに礼が呟く。

「だったらなんで、ぐずぐずしてるんだ?もう、敵はヴァルゴだけだというんだ。それがおまえの母親だった者であっただけなんだろ。なら、すぐに全員でケリを着けに行くんだ」

本当のところを言うと、礼も踏ん切りがついたわけではない。

だが、誰かがこうでも言わなければ、ずっとくすぶり続けてしまうと思っていた。

「宇月、辛いかもしれないけど…受け入れて戦おうよ。宇月のお母さんだったって事実は…変えられない」

ゆりこが宇月の手を握って言う。

ふと、竜也とあゆの言っていた言葉を思い出した。

 

一番辛いのは、忘れてしまう事。だから、嫌な事でも、受け入れて前に進むべき。

 

「…仲間がいるもんな。独りぼっちじゃない」

宇月は、家族を失った。だが、それ以上のものをこの戦いや学園生活の中で手にした。

だから、受け入れられないことなどない。

「ヴァルゴを止める。この学園も、宇宙も地球も…守る!!!」

改めて宣言したそのとき…。

 

「おい!全員、来るんだ!!」

 

「織斑先生に山田先生…?」

焦っている千冬と山田がいる。

彼女たちに連れられるまま、宇月達はラビットハッチから出て行った。

 

連れられた先には、ISのアリーナを中継したりする際に使われる大きなモニター

だった。

その画面いっぱいに、ヴァルゴ・ゾディアーツが写っている。

「ヴァルゴ…!?なんで、急に…?」

「分からん。ずっと沈黙を保ったままだ」

彼女のたくらみは分からず、ただ映像を見つめる。

ふと、ヴァルゴが喋り始めた。

 

『親愛なる、地球の人間達よ。私は、人類に宇宙へ向かうための進化を促す存在「ヴァルゴ・ゾディアーツ」だ』

 

その言葉に不安を感じ、千冬は山田に指示をした。

「真耶、テレビの映像を映せるか?」

「はい、やってみます」

コンソールを指で叩くも、変化はない。

「ダメです…。繋がりません…」

「いや、違う」

千冬は確信した。

テレビのチャンネル全てが、ヴァルゴにジャックされている。

それは、全世界に広がっていた。

『一概に進化といっても、理解できない者も多いだろう。私の言う進化とは、人間が人間の域を超越した存在になること』

上に手を挙げ、拳を握りながら力説するヴァルゴ。

『革新や進化には…常に痛みを伴う。今回も例外ではない。進化を促され…犠牲になる人間もいる。私もこの進化の過程で…家族を失った』

様々な場所で映し出されるヴァルゴの演説。

世界中の誰しもが、驚いたり恐れたり…中には熱心に見つめる者もいる。

『しかし私は抗うことなく、あくまでも流れに身を任せるつもりでいる』

日本で、その映像を見つめる人々の中に…。

 

少し風変わりなスーツを着た青年がいた。

 

腕を組んで、少し冷や汗を流す。

「やべぇな…」

そう呟き、人込みの中に消えていった。

 

『人間よ…今こそ目を見開き、考えてもらいたい』

ふと、ヴァルゴの様子が変わる。淡々とだが力説している様子から一転、力強く言葉を紡ぐようになる。

『我々の真の敵は…一体、何であるのかを!!』

強く言い放ち、ロディアを叩きつける。

そうすると、映像は複数のISが映し出されている映像だ。

それは、ゾディアーツと交戦する一夏達。傍らにはフォーゼやメテオもいる。

『進化を促すものを阻害するIS。しかも、このISによって世界のバランスは乱れている。今までの私の言葉を聞いて、私は狂人だとのたまう者もいるだろう。だが、それは本当に正しいのか、もう一度、心に問いかけてみては貰えないだろうか!?』

その映像を見ていた一夏達がうろたえる。

「まさか…IS学園の襲撃が目的…!?」

この言葉から、ヴァルゴは全世界にISへの疑問を投げかけている。

それに乗じた者達はおそらく少なくないだろう。特に男性はそうだ。

そうなれば、考えられる事は一つ。

 

 

 

ゾディアーツを肯定し、且つISに不満を持つ者の過激派が、IS学園に襲撃を始める。

 

 

 

「回りくどい手ね…!」

いやみったらしそうに呟く鈴音。

その間も、ヴァルゴの演説は続く。

『ISに犠牲になった者達も少なくはないだろう。死んでいった者達の心の中に、燻っている者たちの心の中に、もう一度、本当の理想を描こう!!!』

 

 

 

『その理想が達成されてこそ、真の意味で人類は進化するのだ!!!!!』

 

 

 

「…まずいことになったな」

千冬は額に汗を一筋流す。

「このままじゃ…IS学園は、全世界のIS否定の過激派と戦争になる」

全員が絶句した。

それは、人間と戦うことになる。

「どうしよう…!?」

本音は慌て始める。彼女もこの危機を感じ、怯えに近い感情を抱き始めたのかもしれない。

「生徒の安全は、絶対に守らねばならん。だが…」

千冬や山田も人間と本気で戦うのは気が進まない。

バンッ!!!

不意に、テーブルを強く叩く音がして全員が振り返ると、凄まじい形相の宇月がいた。

「ヴァルゴ…どうして…!!!」

先ほど、仲間に説得されたばかりだと言うのに、心から溢れ出る怒りを抑えることができない。

仲間を傷つけるのが母親なのだ。

そんな者の息子だと思うと、悔しさと怒りが募る。

「落ち着くんだ、宇月。気持ちは分かるが…」

箒に諭され、少しだけ我にかえる宇月。

「悪い…。もう少し、頭を冷やさねぇとな…」

とは言え、母に対する怒りが収まったわけではない。どうにかして、ヴァルゴを止めない事には不毛な戦いが繰り広げられてしまう。

「…大変です!早速、襲撃が始まりました!!」

山田が慌ててモニターを表示すると、様々な戦闘機や兵器を積んだ車が、IS学園に向かってきている。

「お出ましか…。止むを得ん、学園内のISの操縦が出来る教師、代表候補生達で、なんとか迎え撃つ」

「人間と争うつもりですか!!!?」

礼が声を荒げる。

彼は人間の争いを絶対に許したくない。避けられないのかもしれないが、それでも千冬の判断を真っ向から否定する。

「間違ってます…絶対に!!!」

「辻永、おまえの気持ちは良く分かるが…このままでは、学園の生徒を危険に晒してしまうんだ」

もちろん、千冬も苦渋の決断を下した。

礼は俯き…。

 

「ならば、おれがその役を引き受ける…!!」

 

<METEOR-READY?>

「礼!!」

ラウラが驚いて彼の名前を呼ぶが、礼は動きを止めない。

「変身っ!」

メテオに変身し、青い発光体となって学園から出て行った。

「おれ達も追うぞ!!」

一夏の言葉で、仮面ライダー部のメンバーはいっせいに飛び出す。

 

ドガアアアアアアアアアァンッ!!!

メテオは戦車が向かっている目の前に現れた。

「速やかに離れよ!!」

戦車から避難命令が聞こえるが…。

「IS学園に…手は出させない!!!」

いつもの構えを取り、命令には従わない。

「…撃て!!!」

「オオオォォォォ…アタアアアアアアアアアアアアアァッ!!!!!」

今のメテオが一番望んでいなかったモノは…大切な者たちが人間同士と争う事。

だからこそ、彼がその役を引き受けたのだ。

例え心が引き裂かれそうになったとしても、望まない争いだったとしても…。

 

 

 

そして…。

 

 

 

メテオの善戦により、過激派の大半は撤退を余儀なくされた。

残りの過激派は、千冬や山田等の教師、さらに楯無が戦うことによって強制的に撤退させた。

ここまでをやってのけたのに、人間を誰一人として殺さなかった。

代わりに…。

「…」

メテオは自分の心を殺しかけた。

人間と何度も戦い、傷つけ、傷つけられた。

彼は戦いの中で、心をズタボロにされた。

変身を解除せず、スーツは傷だらけの状態で壁に背中を預けて座り込んでいる。

「礼っ!!」

ラウラが走り寄り、メテオドライバーを引き剥がして変身を解除させた。

「礼、しっかりしろ!!」

「…生きてるよ…」

スーツが消えて見えてきた表情は、礼とは思えないほど淀んだものになっていた。

「何故、あんな無茶を…!!」

「…何故だったかな…」

虚ろな表情で、前を見ている。

すぐ横にはラウラがいるのだが、彼女に興味がないように目を合わせようとしない。

濁りきった意識の中で聞こえる声に、なんとか反応しているような状態だ。

後ろから宇月達も走ってくる。

礼の惨状を見て、誰もが閉口した。

それは、彼の傷の問題ではない。実際、スーツ越しであったために傷は多くない。

彼等が閉口した理由は、礼の様子だ。

「…あぁ…」

礼は自分の手を見て呻く。

 

スーツから染み渡ってきたのは、僅かだったが…他者の人間の血だ。

 

今まで、人間が進化したゾディアーツと戦ってきたときは何も苦しむ事はなかったのに、ゾディアーツではない人と戦うと、ここまで悲しくなるものなのか。

「…おれは…人を傷つけたか…」

「違う…違う!!!」

ラウラは、礼を強く抱きしめる。

「おまえは人を傷つけてなどいない。…守ったんだ。今までの仮面ライダーメテオとして、学園やわたし達を守ってきたように…!!」

その言葉を聞いて、少しだけ我に返り始めた。

「本当か…?おれは…アリエスの頃のような罪は…犯してないのか…?」

「大丈夫だ。わたしが保証する」

少しはなれて礼を見つめる。

その礼も、今度は間違いなくラウラを瞳の中に捉えていた。

「…よかった…おれは…間違ってなかった…。ありがとう…ラウラ…」

礼は、今まで抑えていた気持ちを遂に隠せなくなり、ラウラの頭をそっと寄せ、自分の唇に彼女の唇を触れさせた。

そのときの2人は、間違いなく幸せだったのだろう。

 

その日の夜。

礼は明日まで療養することになり、ラウラも付き添う事になった。

メテオという大きな戦力を失ったが、彼等はそれを止める事はしなかった。

「つっちー…よかったね」

嬉しそうに呟く本音。礼が初めて転校してきたときは、彼女が何かと礼に構っていた。

「のほほんさんは、行かなくていいの?」

ゆりこが聞くが、本音は首をゆっくりと左右に振る。

「ラウラちゃんがいるから大丈夫だよ、きっと…」

彼女が礼に抱いていた感情は何だったのか…何故、邪険にしていた礼にあれほど構っていたのか…それは彼女のみが知っているのだろう。

これからもずっと…。

 

「…IS学園を狙う人が増えてしまいましたね…」

学園側で、セキュリティや警護を強化したため、暫くは大丈夫だとは考えられるが、それもいつまで持つかは分からない。

「やっぱり、ヴァルゴを倒すしかないな…」

一夏はこの惨状を打開する唯一の手段を述べる。

「…もう迷ってる暇も燻ってる暇もない。すぐに行こう」

宇月はフォーゼドライバーを握り締め、立ち上がり、全員がそれに続く。

全員で気合を入れるようなことはしない。

いつもより、暗い雰囲気の中で戦地に向かった。

 

ヴァルゴは彼等を待ち構えていたように立っていた。

その横には11個のホロスコープススイッチが備えられてある。残った一つの空洞にはヴァルゴスイッチが装填されるのだろう。

「…また来たね」

「今度こそ…あんたを止める!!」

宇月とゆりこはドライバーをセットする。一夏達も待機状態のISに手を触れた。

<3><2><1>

「変身っ!」

フォーゼBSとなでしこに変身し、同時にそれぞれのISも展開された。

「決着をつけるぞ…ヴァルゴ!!!!!」

「来るが良い」

全員が、ヴァルゴに向かって走り始めた。

 

 

 

 

 

 

続く。

 

 

 

 

 

 

 

次回…

 

                              IS学園は敵が多い

 

どうした、宇月。君の怒りはその程度か!?

 

                              これで終わりだ…母さん

 

これも、ホロスコープスの運命か…

 

                              そこにあるモノは…。

 

 

 

 

第36話「最・終・決・戦」

 

 

青春スイッチ・オン!

 

 





キャスト

城茂宇月=仮面ライダーフォーゼ

織斑一夏

篠ノ之箒
セシリア・オルコット
鳳鈴音

辻永礼=仮面ライダーメテオ
ラウラ・ボーデヴィッヒ

布仏本音
シャルロット・デュノア

ゆりこ/SOLU=仮面ライダーなでしこ

織斑千冬
山田真耶

城茂美咲=ヴァルゴ・ゾディアーツ

風変わりなスーツの青年


如何だったでしょうか?
今回、またしてもメテオが離脱(汗)。次回で復帰しますが、これは平成ライダー特有の2号ライダーヘタレ化の兆しが…。
ヴァルゴの行動理念も明かされましたが、まぁ…科学者らしいというか…。
今回と次回は、少なめで行きます。その次が本番ですので。
お楽しみに!

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