仮面ライダーフォーゼ~IS学園キターッ!~   作:龍騎鯖威武

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第29話「不・屈・之・魂」

海岸で、立ち尽くしている箒。

彼女は自身の至らなさで一夏を傷つけてしまった事を悔やんでいるのだ。

「…やっぱり、受け取るべきではなかった」

そう言って、左手首にある待機状態の紅椿を見つめる。

こんなモノの力があったから慢心してしまい、仲間を危機に陥れてしまったのだ。

「随分、自分勝手ね」

ふと鈴音が現れ、歩いてきた。

彼女の表情は険しく、少し凄みもあった。

「…どうせ、自分の所為で…なんて考えてるんでしょ?」

「分かるのか?」

「丸分かりよ」

箒の表情をみて、呆れたように軽く笑う鈴音。

「…その通りよ。あんたの所為で一夏が傷ついた。強いISが手に入ったからって、いい気になってたって事よ」

「だから…もうISは使えない」

待機状態の紅椿を外そうと箒が手をかけた途端…。

ガシッ…!

その手を鈴音が掴んだ。顔を真っ赤にしている。

「あんた…本気で言ってんの?」

「本気でなければ、こんな事は言わない」

箒の行動に、遂に堪忍袋の緒が切れた鈴音は…。

ドガッ!

「っ!?」

箒の右頬を殴った。

「あんた…最低よ!!!」

「鈴音…」

「宇月や礼を見てよ!あんたと同じような目に何度も遭ってきた。戦うことを迷ったりした。だけど、絶対に逃げなかったじゃない!他のみんなだってそう!自分のことをクズクズ言っている紫苑だって、弱いなりに自分に出来る事を精一杯やってるでしょう!?」

ふと、二人のことを思い返した。

宇月は仮面ライダーフォーゼとしてゾディアーツと戦い、一度はスコーピオンである理雄への罪悪感から、戦いに迷いを見せたりした。だが最後には立ち上がり、今はコズミックステイツにまで到達している。

礼も仮面ライダーメテオとして正体を隠し、心優しさから生まれる油断を作るまいと自身の本当の心すら隠していたが、他の仲間の信じる心を彼もまた信じ、全ての自分を曝け出して、戦い続けている。一度たりとも、戦いから逃げようとはしなかった。

「だが…わたしはみんなのように強くない!」

「まだ愚図るの!?逃げようとはしなかったけど、みんな逃げたかったのよ!正直、あたしだってヴァルゴに勝てるなんて思ってなかった。だから逃げたほうが安全だって思ってた。だけど、逃げるわけには行かないのよ!?」

箒の胸倉を掴み、鈴音は思いを叫び続ける。

「もうよせ、そのへんにしろ」

ふと、遠くをみると礼が声をかけてきていた。

「箒、おまえの気持ちは良く分かる。おれもメテオに初めて変身したとき…逃げたんだ」

「え…?」

 

 

 

その日は、ダスタード相手に戦っていた。

「おりゃああああぁっ!」「アタアアアアァッ!」

フォーゼBSとメテオは順調に戦い続けている。勝利は間違いないだろう。

だが…。

「ラァッ!」

ドガアアアァッ!

「ぐあああああぁっ!?」

突如現れたドラゴン・ゾディアーツによって、メテオは傷を負わされた。

「おい、礼!?」

「宇月…隙を突かれた…」

フォーゼBSが彼のみを案じて駆け寄る。

「なんだ…コズミックエナジーのスーツなんてモノも…大したこと無い!」

ドラゴンは猛攻を開始した。

ドガァッ!ズガァッ!ガギィッ!

「ぐっ!…うわぁっ!」「がはっ!?」

その時点では、ドラゴンが今まで戦ってきたゾディアーツの中で一番強かった。

成す術なく、2人は地面に叩き伏せられた。

「こいつには…勝てない…!」

メテオはそう判断した。今の状態では対抗策が見当たらない。

「逃げるぞ!」

「待て!こいつを今倒さねぇと、被害が…!」

逃げたほうが賢明と判断したメテオは、逃げる事をフォーゼBSに促すが、彼は逃げなかった。

「いつまで無駄話をしているんだよ!」

ドガアアァッ!

「ぐあああぁっ!?」

会話の途中で、ドラゴンがフォーゼBSを攻撃した。

「逃げろフォーゼ!勝てない!」

「だから…逃げないって!」

フォーゼBSの頑なな意思を見て、メテオは…。

「勝手にしろ!」

そう言って、一人で逃げ出してしまったのだ。

 

その後、宇月は重症になり、結局ドラゴンは逃がしてしまった。

 

 

 

 

「そんなことがあったのか…」

箒と鈴音は唖然とした。あの礼がそんな行動を取るなどと想像していなかった。

「あのとき…おれが逃げなければ、必要以上に誰かを傷つけることもなかったかもしれない。結局、今でもドラゴン・ゾディアーツは逃がしたままだ。あれを克服するのは、かなり時間が掛かった」

礼は困ったように笑って、箒の肩に手を置く。

「だが最終的には克服したんだ。おれに出来て、おまえに出来ないなんてことはない。おれもおまえも同じ、仮面ライダー部だからな」

それだけ言うと、礼は手を振って歩き去った。

少しの沈黙の後…。

「どうするのよ箒?」

鈴音が尋ねる。

箒の答えは…。

「…決まってる。もう一度、立ち上がってみる!」

そう決まった途端…。

 

「じゃあ、みなさん同意見ですわね」

 

セシリア、シャルロット、ラウラが現れた。

「ボク達も立ち上がるよ。レオやヴァルゴに勝てなくたって、負けを認めることはしない!」

「そういうことだ。今回はわたし達だけでやるぞ」

ラウラの発言は一見、無謀とも思えるが、それでも彼女達は一人残らず賛同した。それだけ、5人の意志は固いという事なのだ。

箒は右手を前に差し出す。

残りの4人もその意味を把握して、箒の右手にそれぞれの右手を重ねる。

「よし…いくぞ、仮面ライダー部!」

 

『おおおおぉっ!!!』

 

その頃…。

ヴァルゴは銀の福音に近付きながら、一人呟く。

「…そろそろ良いだろう。このISを起動させる」

そう言ってロディアを地面に叩きつけた瞬間、福音がゆらりと動き出し、空高く飛んでいった。

「この戦いでISが進化せねば…目的は果たされない」

 

一方、山田と千冬はISのサーチャー反応を見て驚愕した。

「織斑先生、ISの反応を5つ確認!これは…紅椿、ブルー・ティアーズ、甲龍、ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ、シュヴァルツェア・レーゲンです!」

「あの馬鹿共め…何を考えているんだ…」

彼女達は無断で銀の福音を撃墜しに向かったのだ。しかし、彼女5人でどうにかなる問題ではない。

「やっばいね~、このままじゃ」

いつの間にか、背後に束がいる。

「でも、前回ほどヤバくはないかな。あのIS、今回は間違いなく無人だし」

「何故分かる?」

「だって…ヴァルゴの今回の目的はISの進化。また彼女が向かって、ISを返り討ちにしたら意味がないもん」

彼女の意見が正しければ、この戦いは完全にヴァルゴの手の上で踊らされているに過ぎない。

ふと、山田が尋ねる。

「ヴァルゴは…ISが邪魔だったのではないですか?」

「それがねぇ…ヴァルゴって生真面目な性格で、ISを出来るだけ強くして、それからISを停止させたいんだって。まぁ、この世界への見せしめかな?」

束は両手の人差し指を頭に置いて、困ったような表情をする。

「見せしめ…か」

千冬は、その言葉に何か引っかかるものがあった。

「ヴァルゴは…ISが使用できるのに、なぜISを停止する必要がある?見せしめといっても…何の目的があって…?」

そこから導き出される答えは…。

 

上空では、箒達が銀の福音と接触した。

「見つけたぞ!」「今度こそ、倒すわよヴァル…って、いない?」

今回の福音は無人機であり、ヴァルゴやレオがいる気配はない。

「箒、スイッチカバンはあるか?」

「ゾディアーツの反応ならば、紅椿が察知できる。だが、ヴァルゴたちどころか、ダスタードの反応すらない」

状況の不審さに首を傾げていた5人だが、福音はそれを待たずして攻撃に移った。

凄まじい量の光弾が発射され、箒達を襲う。

「みんな、避けろ!」「言われずとも、避けますわ!」

ドガアアアアアアアアァッ!!!

空中で小規模の爆発が何度も起きるが、彼女達はそれぞれ機敏に動き、全てを避ける。

だが…。

避けたシャルロットの目の前に、福音が近付いた。

「うっ…!?」

反応が遅れ、逃げられないと思った瞬間…。

 

「うわあああああああああああああああぁっ!!!」

 

ガギィッ!!!

「ううううぅっ…!」

「紫苑!?」

突如あらわれた紫苑が、とっさに彼女を庇い、福音の打撃を防いだ。

「ダメだよ、まだ怪我が!」

「シャル達だって、怪我はしてる!僕だけがじっとしてるなんて出来ない!」

押し返そうとしたが、相手の攻撃力は高く、逆に力負けしてしまっている。

「うぅぐ…!」

「はああぁっ!」

ドガアアァッ!

次はシャルロットが紫苑の背後から福音に攻撃を当て、距離を置かせた。

「平気?」

「いたた…ごめん、助けるつもりが…」

「ううん、こっちこそ助けてもらった。本当にありがとう」

シャルロットが微笑んで答えると、紫苑は顔を赤くして俯く。

「い、いや…僕はそんな…」

「ちょっと紫苑!ムードも良いけど、戦いに来たなら、ちゃんと援護してよ!」

その言葉に振り向くと、今度は福音が鈴音を狙って攻撃しており、彼女はそれに応戦している。

「あぁっ!大変だ、助けないと!」

紫苑は大慌てで、他の4人と一緒に援護に向かう。

 

一夏は、不思議な空間にいた。

青空と海が広がる世界。そこに白い服を着た少女が立っている。帽子の所為で顔は見えない。

「…呼んでる」

「え…?」

次の瞬間、世界が変わった。

夕焼けの世界で、目の前にはISを装着した女性がいる。

「…ここは…それに、君は一体?」

尋ねるが、その女性は答えようとはせず…。

「力を欲しますか?」

そう尋ねた。

一夏の脳裏に浮かんだのは…。

 

ゾディアーツと戦った仮面ライダー達。

仮面ライダーメテオ、仮面ライダーなでしこ、仮面ライダー龍騎、仮面ライダークウガ、仮面ライダーキバーラ、仮面ライダーディケイド…。

そして仮面ライダーフォーゼ。

 

彼等は何度も学園を脅かす脅威に立ち向かって来た。

だが…。

「もう持ってるのかもしれないな」

彼の答えは、その一言だった。

「おれだって、本当は今以上に強くなって学園や仲間を守れるようになりたい。でも、そのための力は…ただ身体が強いだけじゃないんだ」

一夏の知っている仮面ライダーは皆、優しさを持っていた。

ただの力を持つ存在ならば、仮面ライダーは悪に成り下がっていただろう。だが、彼等は優しさを兼ね備え、何かを守るために戦っている。

「その優しさなら…おれにだって持てる。だから…力は持ってるのかもしれない」

再び、世界は戻る。

「それじゃあ…行かなきゃね」

 

ふと、気が付くと目の前には宇月と礼がいた。

「一夏、目が覚めたか!?」「平気か…?」

「あぁ、大丈夫だよ」

心配そうに尋ねる二人に対して微笑んで、体を起こす。

「…箒達は?」

「それがよ、みんな急に居なくなっちまってな」

宇月は彼女達の所在に首を捻っているが、礼はなんとなく気付いている。

「おそらく、他のメンツで銀の福音に再戦を仕掛けたはず。だが…あいつらだけでは…」

不安だった。相手は全員で向かっても勝てなかった相手だ。

「おれも…」

「バカ、無茶だ!」

宇月が止めようとするが、一夏はそれを押さえつける。

「今、行かなきゃいけないんだ!宇月達だって、行くんだろう!」

一夏の言葉に、2人は口ごもった。確かに、今からでも戦いたい。

しかし、万全の状態で臨まなければ、間違いなく再び敗北を喫するだろう。

それでも…。

「…ま、答えは決まってる」「そうとう無茶することになるぞ、いいのか?」

「無茶する事なんて、毎回だろ!」

礼の差し出した右手を握り、一夏は立ち上がった。

そして、一夏は宣言する。

「行くぞ…仮面ライダ-部!」

 

『おおおおおおぉっ!!!』

 

一方の箒達は…。

福音単体とは言え、相手は強い。苦戦を強いられている。

「くそ…どうやって倒せば…!」

長い戦いで一瞬、勝てる術が見つからず、戦意を喪失しかけた箒。

その隙を福音は見逃さない。

一気に距離を詰められ、攻撃を赦された。

ガアアアアアアァッ!!!

「うああああぁっ!」

近くの海岸に叩きつけられ、福音の再攻撃を仕掛けられる。

「一夏…!」

そこへ…。

ドガアアアアアアアアアァッ!!!

 

<LIMIT-BREAKE>

 

「待たせたな!」

青白い空間が現れ、白式を装備した一夏、フォーゼCS、メテオSが現れた。

とっさに一夏が箒を抱きかかえて避けたため、福音の攻撃は無駄に終わった。

「一夏!?おまえ、怪我は…?」

「女の子が戦ってるのに、男が黙ってるわけにはいかないだろ?大丈夫だ、戦える」

優しく微笑む一夏。

彼の到着を見計らってか、ヴァルゴが現れる。

「待っていたよ、一夏。さぁ、君の力であのISを破壊しなさい。フォーゼ達よ、君達は邪魔をしないように相手を用意した」

その言葉と共に、闇の中から凄まじい数のダスタードが現れた。

中には赤と白の鬣のあるダスタードもいる。どうやら上位のダスタードのようだ。

「礼、おれ達はこいつらだ!」

「分かった!星の運命の従僕たちよ、この嵐で打ち砕く!」

フォーゼCSとメテオSは、福音の戦いを一夏たちに任せ、ダスタードの戦いに未を投じた。

 

箒は思う。

「わたしも…戦う。一夏の背中を守る…!今度は逃げない!」

その瞬間、紅椿のシールドエネルギーがフルに回復され。黄金色に輝く。

「これは…絢爛舞踏…?」

箒の感情に反応し、新たに備えられた紅椿の能力なのだ。

その能力を理解した箒は…。

「一夏、この力を受け取ってくれ!」

一夏の手を取り、その力を分け与えた。

「エネルギーが完全に回復した…。これは…!」

さらに白式も大きく姿を変えた。

「遂に到達したか」

ヴァルゴはそれを見て、満足そうに呟く。

 

「第2形態…雪羅…!」

 

彼女は目的を果たしたらしく、踵を返して姿を消した。

一夏が参戦したとは言え、戦況は未だ覆らず、福音が優勢だった。

福音の懐に箒が入り込む。

「一夏、いまだ!」

「おおおおおおおおおおおおおおぉっ!」

雪片弐型を振りかざして距離を詰めるも…。

ドガアァッ!

「うああああああぁっ!」

福音は箒を突き飛ばして離れていった。

「ラウラ、頼む!」

「任せろ!」

一夏に呼ばれ、ラウラは遠方から福音に向かって攻撃を放つ。

防御に徹した福音はダメージを負わなかったが、隙を作らされた。

ズドオオオォッ!

「わたしがおりましてよ!」

セシリアが上空からブルー・ティアーズで攻撃を図る。

福音はその攻撃に一度は驚くが、すぐさま彼女に近付き、翼で包み込み攻撃を与えた。

「くっ…!」

「はああぁっ!」

ドガアアアァッ!

そこに、鈴音の龍砲が襲い掛かる。

だが、それすら予測した福音は、鈴音にすさまじい量の光弾を放つ。

「鈴!」

シャルロットがとっさに彼女を庇い、シールドで防御する。

「うわあああああぁっ!」

攻撃を与えていた福音を、紫苑が空裂のムチで拘束する。

しかし、大人しくしているわけでもなく、福音は暴れ続ける。

「織斑君、早く!」

紫苑はギリギリまで福音を押さえ続けるが、限界は近い。

「うおおおおおおおおおおおおおおおぉっ!」

一気に間合いを詰めようとするが、どうしてもトドメの攻撃を与えられない。

「くそ…どうすれば…!」

<LIMIT-BREAKE>

「ライダァァァァァァァ…超銀河フィニィィィィィィィィィッシュ!!!!!」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!!

「ムウウウウゥッ!?」

そのとき、丁度フォーゼCSがダスタードを倒し終え、一夏の元に現れた。

「ここをくぐれ!離脱・セット!」

<LIMIT-BREAKE>

フォーゼCSが作り出したワープドライブの空間。

これならゼロ距離で福音に攻撃が出来る。

「一夏、行けええええええええええええええっ!!!」

全員の想いを胸に、一夏は最後の一撃に望んだ。

「今度は逃がさねええええええええええええええええぇっ!!!!!」

ドガアアアアアアアアアアアアアアァッ!

遂に福音に大きな一撃を与える事に成功した。

近くの砂浜にまで叩きつけ、なおも攻撃を続ける。

「おおおおおおおおおおおおおおぉっ!!!!」

ギ…ギギィ…!

最後の抵抗か、福音は一夏の首を掴み締め上げる。それでも一夏は攻撃を止めなかった。

そして…。

ガシャッ…

遂に福音のエネルギーは0になり、完全に停止した。

「終わったな…」

「…あぁ」

 

あの後…。

束は海岸の隅で足を下ろし、海を見つめながら呟く。

「あぁ~あ、白式には驚かされたな。装着者の生態エネルギーまで回復させるなんて…まるで…」

「世界初のIS…白騎士のようだな」

背後に千冬が現れた。

「やぁ、ちーちゃん」

古い友人の二人…。

そこに、水を差すものも現れた。

「IS側の準備は完了した」

ヴァルゴだった。

「ヴァルゴか…」

「貴方の目的に使われちゃったね」

ヴァルゴの今回の目的は、雪羅を発動させる事なのだ。

「だが、君の目的も果たされた。箒は初白星を飾れたというわけだ」

「まぁね」

「全く…君には困らされる。ISを開発した所為で世界の情勢を激変させ、私の目的の邪魔を間接的に行なう。白騎士事件でもそうだ。あの所為で…」

 

「城茂吾朗は死んだ」

 

「…出来れば、その話は引っ張り出して欲しくはなかったなぁ」

束の表情に若干の曇りが見えた。

「吾朗さんが…」

千冬は驚く。彼女は吾朗とも面識があり、彼がどんなに強い心と力を持った人物かは知っている。その彼は行方不明と言われ、後に死亡扱いされていたが、まさか本当に死んでいるとは思って居なかった。

「千冬、君のおかげで、あの事件の犠牲者は「彼のみ」となった…」

ヴァルゴの口から告げられた言葉から、千冬はあの女性を思い出した

「という事は…美咲さんは…」

「あぁ、生きている。今は何処にいるか知らないがな」

まだ希望は見出せた。城茂美咲はまだ生きている。

「奇跡と思えるが…結局、IS絡みの事件は全て君の筋書き通り。この私もあの事件で踊らされたからな」

「まぁまぁ、そう言わないで。あの事件で、貴方は初のホロスコープス、ヴァルゴ・ゾディアーツになれたんでしょ。ゾディアーツ関連は、本当に予想外だったけど」

「そう。その意味では感謝しなければいけない」

ヴァルゴの素顔は複雑な表情をしているのだろうと千冬は思った。

「…ねぇ、ちーちゃん、ヴァルゴ。今の世界は…好き?」

不意に束が尋ねた。

「そこそこにな」

「私は嫌いだ。だからこそ今、ゾディアーツとして活動しているのだからな」

二人の答えは全く相反するものだった。

「…そっか」

それだけ言うと、束は姿を消した。

「束…」

「また会おう、千冬」

そして、ヴァルゴもロディアを地面に叩きつけて姿を消した。

 

その日の朝。

千冬によって一夏、箒、セシリア、鈴音、シャルロット、ラウラ、紫苑が集められた。

「作戦終了。だが命令違反などを始め、おまえ達は様々な違反を犯した。戻ってから、反省文の提出、罰のトレーニングを用意しているからそのつもりでいろ」

千冬の少し離れた後ろを宇月と礼がソロ~リと歩き去ろうとしているが…。

ガッ!!

「どっ!?」「うっ!?」

手裏剣のように投げられた出席簿で、2人の後頭部を直撃した。

「後ろの二人、お前達もだ」

「は、はぁい…」

宇月は観念して頷く。

一方の礼は…。

「…織斑先生」

「なんだ?」

「おれは何もしていません。あの場に駆けつけたのは、学園では一応、正体不明の「仮面ライダー」が2人です」

盲点を突いて、軽く笑う。

千冬は眉間に手を当てて答えた。

「…確かにそうだな。悔しいが辻永は、待機命令を破っただけの罰に留めよう」

そうなると…

「じゃ、じゃあおれも…!」

「お前は認めただろう」

「そんな、ひどい!?」

罰を逃れられると思っていた宇月は、その希望が潰された事に落胆した。

そんなやり取りを見ていた山田は…。

「あの…織斑先生。もうこのくらいにしましょう…。みんな、疲れているんですから」

見ていられず、助け舟を出した。

「…まぁ、良く無事で戻ってきた」

少しだけ、千冬は微笑んで彼等の帰還を喜んだ。

 

その日の夜。

明日の昼で、臨海学校は終わる。

一夏は箒を呼び出した。

「一夏、話とは何だ?」

「あのさ…昨日はいろいろあって渡せなかったけど…」

 

「誕生日、おめでとう」

 

その言葉と共に渡されたのは、綺麗にラッピングされた紙袋。

「ほら、7月7日は箒の誕生日だからさ」

「覚えててくれたのか…」

その事実に喜びながら、袋を見つめる。

「あけても良いか?」

「あぁ」

一夏の返事を聞いて、ゆっくりと丁寧に袋を開けた。

そこには、白い髪留め用のリボンがあった。

「もしかしたら、丁度よかったかもな。今回の戦いで前の髪留め用のリボン、燃えただろ?」

その言葉で、箒は自分のリボンがなくなっていたことに気付いた。

「…ありがとう一夏」

箒は早速、リボンを髪に結んでいつものヘアスタイルにした。

「似合ってるか…?」

「あぁ、良く似合ってる」

お互い、夜の海岸で笑いあっていた。

 

その頃…。

レオがある人物の前に来ていた。

…ドラゴン・ゾディアーツだ。

「遂に覚醒したか」

「はい…」

レオへの返事のあと、その姿は黒い霧に包まれ…。

 

牡牛座の使徒「タウラス・ゾディアーツ」に変化した。

 

「お前は、レオ、リブラ、スコーピオンに続く、ヴァルゴ様が直々に選んだ使徒だ。IS学園での本格的な襲撃も近い。今後の作戦を伝える」

そして、レオがタウラスにあることを伝えた。

それは…。

 

 

 

 

 

 

続く…。

 

 

 

次回!

 

                           レオ・ゾディアーツの襲撃です!

 

あの人が…レオのスイッチャー!?

 

                            牡牛座…タウラスか!

 

お父さん…どうして?

 

                            私は、お前を許さない!

 

 

 

 

第30話「牡・牛・暗・躍」

 

 

 

青春スイッチ・オン!

 

 




キャスト

城茂宇月=仮面ライダーフォーゼ

織斑一夏

篠ノ之箒
セシリア・オルコット
鳳鈴音

辻永礼=仮面ライダーメテオ
ラウラ・ボーデヴィッヒ
布仏本音

シャルロット・デュノア
白石紫苑

織斑千冬
山田真耶
篠ノ之束

???=タウラス・ゾディアーツ/ドラゴン・ゾディアーツ
???=レオ・ゾディアーツ

白い少女
ISを装備した女性

???=ヴァルゴ・ゾディアーツ



如何でしたか?
やっぱIS側の話って、作るのが大変でした…(汗)。
あまり良い話にもなってない気がします…
今回は、ヴァルゴが物語に結構絡んできました。
次回からホロスコープスが、IS学園へ本格的な襲撃を始めますので、激動してくると思います!
そして11番目の使徒のタウラスも覚醒です!彼も物語で大きく絡んでくる人物になります!
次回と次々回は、タウラスとレオと紫苑の親子が物語の中心になります!そろそろ、レオのスイッチャーも明かすかも…(バレてるかも知れませんが…)
お楽しみに!


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