仮面ライダーフォーゼ~IS学園キターッ!~   作:龍騎鯖威武

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第2話「変・身・公・開」

 

学校の敷地を少し出たところ。

宇月だった白いスーツ「フォーゼ」は、ファイティングポーズを取って構える。

この姿は「ベースステイツ」。フォーゼの基本となる形態だ。

「これは…ISなのか?」

箒の質問に、フォーゼBSは首を振る。もちろん、リンクスから目は外さない。

「違う。これは「コズミックエナジーの結晶」。さぁ来い、リンクス!」

「アンタもアタシの邪魔をするのね!?」

リンクスは右手のツメをこすりながら、女性らしい声で、フォーゼBSに襲い掛かる。

「ふん!とあぁっ!」

ドガアァ!

そのツメを避けたフォーゼBSは、思い切り殴り飛ばす。

「うっし!これで…」

<ROCKET-ON>

右端の橙色のスイッチを押し、右手にロケットモジュールが装備される。

「武装が転送された!?」

「それもちょっと違う。コズミックエナジーで生成してるんだよ」

そう言うとロケットモジュールは勢い良く噴射し、フォーゼBSの身体ごとリンクスに突進していった。

「ロケットパァァァァァンチ!」

ドガアアアアアアアアアアアァ!

「キャアアアアアァ!」

その威力は強大で、リンクスの身体を近くの壁にめり込ませるほどだった。

「次は…」

そう言いながらロケットスイッチをオフにして、新しいスイッチを使おうとした瞬間…。

「ムン!」

ドガァ!

「うおぁ!?」

何者かに蹴られ、地面を転がるフォーゼ。その方向を見ると…。

「あれも…ゾディアーツなのか?」

一夏が呟きながら、目の前の新たな怪人を見つめている。

それは金色の刺繍のあるクロークを身に包み、不敵に立ち尽くす怪人。頭は蠍を髣髴させるような形になっていた。

そのゾディアーツを見たフォーゼは、一気に声色が変わる。

「蠍座の使徒…ホロスコープス…!バカな、覚醒していたのか!?」

そう「スコーピオン・ゾディアーツ」だ。

「…早く行け。ここは私に任せろ」

「あ…ありがとうございます、スコーピオン様!」

スコーピオンはリンクスを逃がし、クロークを脱ぐ。

身体から黒い霧のようなオーラと蠍座の光が現れる。どことなく威嚇しているような雰囲気だ。

「なんか…やばそうだな」「さっきのゾディアーツとは、全てにおいて違う気がするぞ…」

フォーゼBSを見守る一夏と箒は、心配になる。

「おまえ…正体は誰だ!?」

「知りたければ、私に勝つが良い」

スコーピオンも簡単には口を割らない。彼もファイティングポーズをとって、フォーゼBSに対抗しようとする。

「やるしかないか…!」

<RAUNCHER-ON><RADER-ON>

次は青いスイッチと黒いスイッチをオンにさせ、右足にランチャーモジュールを、左手にレーダーモジュールを装備する。

レーダーの役割は標的のロックオン。ランチャーにホーミング機能を付加するのだ。

「ロックオン!いけぇ!」

ズドドドドドドドォ!

5つほどのミサイルが発射され、スコーピオンに向かっていく…。

「ヌンッ!ゼェアァ!」

「…!?」

しかし、なんと彼はホーミングつきのミサイルを一つ残らず避け、逆にフォーゼBSの懐に入り込む。

「オオオオオオオオオオォ!」

ドガアアアァ!

「ぐあああぁ!?」

至近距離から強力な蹴りをお見舞いされ、かなりの距離を吹き飛ばされる。

さらに、ランチャーの流れ弾が一夏たちに向かう。

「やべっ!箒、こっち来い!」「うっ!?」

一夏はとっさに箒を抱きかかえて、ミサイルを避ける。

ドゴオオオオオオオオォ!

「一夏、箒っ!」

間一髪で、大事には至らなかったようだ。

しかし、フォーゼBSを身ながらスコーピオンは嘲笑するように言う。

「君の作戦で仲間が傷ついたようだな。それでもフォーゼか?」

「おまえっ!」

<CHAINSAW―ON><SPIKE―ON>

フォーゼBSは右足にチェーンソーモジュール、左足にスパイクモジュールを装備し、蹴り主体の戦法を取る。

「うおおおりゃああぁ!」

「蹴りで私に挑むとは…愚かな。セェアアアァ!」

ドガッ!ガギィ!

「ぐっ!?うわあああぁ!」

全く歯が立たない。それどころか、更に劣勢を強いられた。

「くそ…せめて「10番」か「20番」が使えたら…!」

「さて…君達に色々、知ってもらおうと思う。我々は「ゾディアーツ」。人間を超えた存在。そしてこのIS学園を潰すために活動しているというわけだ。学校の関係者にも是非、報告してくれたまえ。では、また逢おう」

そう言って、スコーピオンは黒い霧を呼び出して消滅した。おそらく逃げたのだろう。

「この学園初戦からホロスコープス相手とは…先が思いやられる」

そう言いながら、フォーゼBSは変身を解除する。

その姿は宇月に戻っていた。

「宇月、詳しく知りたい」

箒が詰め寄る。もう、言い逃れは出来ないだろう。

「…分かったよ」

 

宇月は2人をラビットハッチに案内した。

「まさか…月面に通じてるとは…」

「フォーゼのことは説明するけど、他言無用で頼むな」

そう言って、広い部屋の椅子に座る。

「ここはラビットハッチ、おれの両親がコズミックエナジーの開発を行なっていた月面研究室。ゲートスイッチって物を使って、クローゼットから時空を捻じ曲げてここに繋いでる。システム自体は機能しているものの、今は殆ど廃墟」

「コズミックエナジー…それに城茂って苗字…。まさか君は「城茂吾朗」と「城茂三咲」の一人息子…?」

「そう。篠ノ之って苗字からして、箒は「篠ノ之束」の妹さんってわけか」

「…認めたくないけどな」

2人は納得の言ったような様子だが、一夏はついて来れていない。

「あのさ、一般人にも分かるように説明してくれよ」

「おれの父さんである吾朗は、人間が宇宙へ旅立つための可能性として、コズミックエナジーの研究をしていて、さっきの「フォーゼ」に最初に変身した人物。母の三咲は元IS使い。多分、一夏のお姉さんの千冬先生や、箒のお姉さんの束さんとも、馴染み深いはず」

つまり、彼はIS使いとコズミックエナジーの権威、両方のエキスパートの息子であるのだ。

「じゃあ、宇月がISに乗れるのは…やっぱお母さんの血…?」

一夏の質問に対して首を振り、フォーゼドライバーからロケットスイッチを取り出して説明する。

「違う。おれはフォーゼに変身して、コズミックエナジーを多く使うアストロスイッチをつかうから、身体にエナジーが溜まってる。その力で肉体を無理矢理、ISに適性化させてるんだよ。つまりフォーゼに変身しなかったらISにも乗れないわけ」

一夏にもなんとなく分かった。

「じゃあ、フォーゼって言うのは…」

「本来は肉体にコズミックエナジーを循環させるための実験スーツ。ゾディアーツの発生が確認されてから、研究室に残ってたコズミックエナジー兵器の試作品、アストロスイッチを同調させられるように改造して、戦闘用スーツにした」

次に気になるのは、先ほどの怪人「ゾディアーツ」。

「ゾディアーツってのはなんだ?」

「ゾディアーツは人間が「ゾディアーツスイッチ」を使って「負」のコズミックエナジーで超進化した生命体。当然、誰か使っているはず。あのホロスコープスもね」

そういえば、ホロスコープスという単語も気になる。

「…あぁ。ホロスコープスって言うのは、ゾディアーツの進化系。誕生月の星座の運命にある人間が覚醒する、選ばれた存在。父さんの記録によると首領は乙女座の「ヴァルゴ」。その他に獅子座の「レオ」、天秤座の「リブラ」が覚醒していて、おれの目で見たのはさっきの「スコーピオン」と、今は彼等を裏切っている牡羊座の「アリエス」。全部で5体覚醒している」

一通りの説明が終わると、宇月は溜息をついて一夏と箒を見る。

「さ、説明も終わったし、知ったからには協力してもらう」

「はぁ!?」「私達が?」

宇月の突然の申し出に困惑する2人。

「当たり前だろう。何事もギブ&テイク、秘密を教えるには見返りが必要だろ。まさか秘密を知ったのに、知らんふりするつもりだったのかよ?」

「い、いや…それは…」「でも、わたし達になにが…」

確かに宇月の言葉は筋が通っている。だが2人はコズミックエナジーのことなど、名前くらいしか知らないようなものだ。原理などは無知。

「スイッチ調整やフォーゼに変身しろなんて言わないけど、スイッチャー探しをして欲しい。さっきのリンクスの正体を探って欲しいのさ。あわよくばホロスコープスのスイッチャーも見つけて欲しいけど、彼等はそう簡単に正体がわかんないだろうなぁ…。やってくれるよな?」

少しの間、沈黙があったが…。

「乗りかかった船だ。付き合うぜ、宇月」「…わたしもやろう」

「マジか!?よっしゃ、助かる!さっそく作戦会議だ!」

「「いきなり!?」」

 

そのころ、紫苑は自室で夜空を見つめている。彼も1人部屋なのだ。

「…はぁ」

力の無い溜息。どうやら憂鬱らしい。

突如、ドアからノックが聞こえる。

「織斑だ、入る」「どうぞ」

現れたのは、千冬だ。

「白石。どうやら初日早々、裾迫に殴られたようだな」

「…は、はい」

彼女の雰囲気的になぐさめに来たようではないらしい。目つきは鋭いまま淡々と言う。

「たしかに内容からして裾迫が一方的に悪い。それに私のことに関して、君がとばっちりを受けたと聞いた。そのことは謝る。問題は…それを自分の力で何とかしなかったところだ。織斑、篠ノ之、城茂に頼ったらしいな。この学園ではISを乗りこなせるようにすることが目的だが、同時に精神面やコミュニケーション力を培うことも学園の目的でもある。ある程度なら問題を起こしても構わん。だが、自分に降りかかった災難くらい自分で解決しろ」

「あの…一ついいですか?」

なんだと尋ねる千冬に対して、星空を見つめながら答える紫苑。人が少ないからか、日中のような緊張は見られない。

「僕は頼ってないです…。だって、織斑君達から僕を助けてくれたんです。それに僕、仮に3人が助けてくれなくても良かったんです」

「どういう意味だ?」

さらに聞く千冬。振り返った紫苑の表情は悲しい笑顔だった。

 

「僕は…「クズの塊」ですから。何されても仕方が無いんです」

 

「本気で思ってるのか?」

「織斑先生位の素晴らしい先生なら、担任している生徒の記録くらい目を通してるでしょう?…特に男のIS使いである僕なんかは…」

その言葉を聞いて、千冬は言い返せなくなった。

「…でも正直に言うと、織斑君の行動は嬉しかったです。だから、頑張ってみようと思ってます。どこまで出来るかは…分かりませんけど」

「…そうか」

千冬はそれだけ言って、部屋を出ていった。再び夜空を見つめる紫苑。

「…僕もこの夜空みたいに、綺麗な存在になりたいよ…」

 

次の日。

「あぁあ、またあの鉄仮面女の説教染みた授業受けるのかよ、めんどくせぇ…」

そう言いながら、席でふんぞり返っている理雄。相変わらず、紫苑は彼に怯えながらも予習を始めていた。

「がんばらないと…」

そんなクラスの中で、一人の女子生徒に箒が声をかけた。

昨日、千冬の登場でかなりの声援を送っていた者だ。

「ちょっといいか?」「何?」

 

呼び出した屋上には、宇月と一夏が居た。

「あ…織斑君!」

一夏は千冬の弟。彼女の考えから彼と仲良くなれば、千冬とも親睦が深められるはず。

しかし、口を開いた一夏の言葉は…。

「おまえ…リンクスだな?」「え…?」

そう、彼女をリンクスのスイッチャーとして予測した。

「昨日言っていた「邪魔」っていうのは、強さを見せ付けるため。その理由は千冬姉だろ。千冬姉に強さを見せ付ければ、気を引くことが出来ると思って…」

「そ、そんなの理由に…」

そう言いながら、右手のツメをこする。それを宇月は見逃さなかった。

「それ、リンクスもやってたぞ。動機があって癖も一緒。もう言い逃れは出来ないな」

「…やっぱり邪魔するのね」

そう言いながら、取り出したのはゾディアーツスイッチ。

 

<LAST ONE>

 

その音声が鳴り、形状が変化する。

「なんだ…?」「ラストワン…!やめろ、押すな!」

女生徒は構わず、スイッチを押した。

その瞬間、リンクスと女生徒の2つに身体が分離した。

「あたしは強くなるの…もっと!」

「止められなかったか…。一夏、箒。その娘の肉体を守ってくれ!」

「わかった!」「一夏、こっちに!」

フォーゼドライバーを装着した宇月は、スイッチを押して構える。

<3><2><1>

「変身っ!」

レバーを押すと、オーラが宇月を纏い、フォーゼBSに変える。

「はあっ!…行くぞリンクス!」

「邪魔しないでって言ってるでしょ!?」

2人は同時に駆け出すが、その姿を見ている女性が居た。山田である。

彼女は授業を抜けている4人が気になって探していた途中だった。

 

「あれって…まさか!」

 

「どらああぁ!」

ドガアアアアアアァ!

「ウアアァ!」

戦況はフォーゼBSが優勢。もともと、通常のゾディアーツ程度なら何度も戦ってきたので、問題なく戦える。

「お次はこれだ!」

<HOPPING-ON><MAGICHAND-ON>

右手にマジックハンドモジュール、左足にホッピングモジュールを装備して、バッタのように跳ねながら、マジックハンドで叩きつける。

バゴオオオォ!

「クウウウゥ!」

動きが変則的なので、攻撃に集中できずダメージを受ける一方だ。

「よっしゃ、これで…!」

<ROCKET-ON><DRILL-ON>

右手にロケットモジュール、左足にドリルモジュールを装備し、空を飛ぶ。

更にレバーを押して…。

<ROCKET DRILL LIMIT-BREAKE>

「トドメだ!ロケットドリルキィィィィィック!!」

ドガアアアアアアアアアアアァ!

フォーゼの必殺技「リミットブレイク」。アストロスイッチのコズミックエナジーを極限にまで引き出した大技である。

リンクスは溜まらず爆発し、その中からゾディアーツスイッチが現れた。

それをキャッチし、スイッチをオフにする。

スイッチは途端に霧状になって消えた。ゾディアーツの生態活動が終わったのだ。

「一件落着…!」

 

倒れていた女生徒はうっすらと目を開ける。スイッチがオフになったことが理由だ。

「一夏、目を覚ましたぞ!」「大丈夫か?」

「あぁ…あたし、負けちゃったんだね」

残念そうに言うが、どこか晴れ晴れしてるようにも見えた。

そこにフォーゼBSが歩いてくる。

「なら、これから勝てるようにすればいい。人間の力でな。人は誰でも可能性がある。その可能性を可能にできるかどうかは、自分次第だ」

女生徒の肩に手を置いて、マスクの奥で笑うフォーゼBS。

「ありがとう…白いロケットさん」「フォーゼです…」

その一部始終を見ていた山田は…。

 

「か…仮面ライダー…!?」

 

「仮面ライダー?」「って言うか山田先生、いつから!?」

「えっと…城茂君が能美さんと戦い始めたところから…」

「殆ど見てたのかよ…」

教師は生徒を守る事が使命なのに…。

「あ…ごめんなさい…」

「まぁ、仕方ないけど。それより、仮面ライダーって…」

一夏の質問に対して、山田は手にあるファイルをゴソゴソと漁る。

「こ、これ!」

山田が取り出したのは、数枚の資料。

 

「正体不明の「仮面ライダー」について」

 

そう書いており、写真には「緑の仮面に赤いマフラーをした戦士」「頭が赤い鳥、腕が黄色い虎、足が緑のバッタを模した戦士」「マゼンタの戦士」「龍の紋章が額にある赤い戦士」のぼやけた写真がある。とっさに撮影したもののようだ。

「この学園でも会議の内容に上がってるの。この世界の悪に人知れず立ち向かう正体不明の人物達…それが「仮面ライダー」って…。まさか、この学園にも…」

「仮面…ライダー…」

 

そして…。

「これからも、みんなで力を合わせてゾディアーツ事件を解決しよう!」

宇月はラビットハッチで張り切る…のだが…。

「で…これは?」

ラビットハッチの壁にフォーゼの頭をデフォルメした絵柄と「仮面ライダー部」と書かれたタペストリーが張られていた。

「部活だよ部活。なんでもやり方が重要だって」「ノリが軽すぎるような…」

一夏が発端らしい。箒はさすがに首を捻っているが。

「わ、私は顧問ですね」

山田も顧問として参加。これで名実共に「部活動」となったのだ。

「…まぁ、活動内容は変わらないからいいけど…」

「じゃあ、行くか仮面ライダー部!」

 

今ここに「仮面ライダー部」が設立されたのだった。

 

 

 

 

 

 

続く…。

 

次回!

 

                       ちょっとよろしくて?

 

うおぉ、美人…!

 

                       イギリス人なのに、日本語ペラペラ…

 

本格的なISの特訓だね…

 

                       また男子が来る!?

 

まだ先の話だがな

 

                       スイッチ調整が進まない!

 

 

 

第3話「決・闘・申・込」

 

 

 

青春スイッチ・オン!

 

 

 





キャスト

城茂宇月=仮面ライダーフォーゼ

織斑一夏

篠ノ之箒

白石紫苑
裾迫理雄

女生徒=リンクス・ゾディアーツ

山田真耶
織斑千冬

???=スコーピオン・ゾディアーツ



あとがき
いかがでしたか?
こちらは2話完結式にしたいと思ってます!スコーピオンが強く表現できるように努力しました!
次回のゾディアーツは誰にするかなと考え中です。ISの話も進めないとです…(汗)
ご感想おまちしております!
ではまた…。

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