仮面ライダーフォーゼ~IS学園キターッ!~   作:龍騎鯖威武

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メテオストーム爆誕!
第20話「人・々・障・壁」


ヴァルゴは夏樹を呼び出している。

「ヴァルゴ様、ご用件とは…?」

「君に頼みたい事がある。我々ホロスコープスから逃れた者を、もう一度、闇に引き戻せるかどうかを、試して欲しい」

ヴァルゴは現時点でのホロスコープスの急速な覚醒は喜ばしいと考えているが、逆に減るスピードも速い。既にアリエス、ジェミニ、スコーピオン、カプリコーン、キャンサーと5体ものホロスコープスが居なくなっている。

一方の夏樹は目を輝かせる。

「じゃあ、理雄君は…」

もう一度、理雄はスコーピオンとして戦えるかもしれない。

「検討はしている。彼は星の運命を感じる力は有していないにも関わらず、2人もの十二使徒を覚醒させたのだからね。だが、まずは…」

 

「ジェミニだ。彼女を闇に引き戻す」

 

それを少し離れた場所で見つめているのはレオだ。

「…」

無言でそこから歩き去った。

 

礼は一夏達から聞いたことを思い出していた。

「レオ・ゾディアーツ…。獅子座の使徒で最強のホロスコープスか…」

レオは純粋な格闘での戦闘で言えばヴァルゴさえも上回る存在。

彼の強さは他のホロスコープスと格が違うだろう。

考えていたところにセシリアがやってきた。

「礼さん。その、レオがどうしたんですの?」

「…奴は織斑に危害を加えたんだよな?」

「えぇ…今でも許せませんわ。簪さんの心を救おうとしている一夏さんを…」

その点だった。

「…殺せたはずだ」

「え…?」

そう、それほどの力を持っていたのにも拘らず…

 

一夏を殺さなかった。

 

殺す事は難なく出来るはずだ。特に凶暴性も激しいらしいのだから、ありえるはずなのに…。

結果は、今でも一夏の顔に軽く傷が残った程度だ。

「奴は織斑を殺さなかった…。他の人間もあっさりと解放した」

「たしかに…シャルロットさんにも攻撃するような様子を見せながら、なにもしませんでしたわ…」

彼の行動の意味はなんなのだろうか。もしかしたら無いのかもしれないが、何かが引っ掛かる。

スイッチャーを探したいところだが、レオの正体を探す事は非常に困難だと考えられる。

それもそのはず、ヴァルゴとレオはお互いにしか素顔を明かしていないとリブラから聞いている。

彼等は一体、何者なのだろうか…。

「つっち~!」

「うおっ!?離せ!」

だが、まずは本音を引き剥がす事から始めなければならないようだ。

 

その夜…。

薄暗くなったラビットハッチに人が訪れた。

暫くの間、宇月と礼しか使っていない場所に訪れた者…実はメテオの装着者なのだ。

「甘い…」

その者は自分の心の甘さを悔やんでいた。

以前リブラがラウラに化けた際、仲間意識を持っていたために拳を叩き込む事をためらってしまった。その所為で窮地に追いやられた。

「彼等とは関係を絶つべきか…」

「おぉ、来てたのか」

背後から宇月が声を掛けてきた。

「どうしたんだよ?」

「一夏やラウラ達のことは仲間だと思っている。…友が居る事は強くなれると思っていたが…同時に心に隙を作る」

「それだけおまえが優しくなったって事だろ?」

確かに、以前のメテオは単独行動の多い人間だった。それが今は、一夏達とも少しだが打ち解け、仲間としての絆も深めつつある。

「だが…万が一の時に彼等を守れなかったら意味が無い。そのためにも…非情にならなければならない」

右手にあるメテオスイッチを見つめる。

「…ほら」「…ん?」

宇月がその者にあるスイッチを投げ渡した。

「…調整したのか?」

「おう。おれのほうが調整技術は高いんだからな」

そのスイッチには金色の風車が取り付けてあった。

メテオを進化させることを想定して作られた「メテオストームスイッチ」だ。

「とりあえず、もってけ。後はおまえのやりたいようにやれよ」

「すまない。…ありがとう」

その者はメテオドライバーを腰に装着する。

<METEOR-READY?>

「変身っ!」

青い発光体になって、ラビットハッチから抜けていった。

残された宇月は小さく呟く。

「でも…おまえなら最後にはみんなと分かり合える」

 

次の日の朝。

紫苑は机に肘を立てている。

「紫苑、元気ないよ?」

シャルロットが彼の様子に不安を感じ、心配そうに尋ねるが返事をしない。

「ねぇ…聞こえる?」

「…ごめん」

謝る事だけをした紫苑は、その場からすぐに離れた。

「どうしたのかな…?」

「大丈夫だろ紫苑は。シャルロットに随分、懐いてるじゃないか!」

宇月の言葉にシャルロットは、まるで紫苑が小動物かなにかと勘違いされてるよう泣きがしたがこの際放っておく。

紫苑の言葉が引っ掛かるのだ。

「実は少し前、紫苑に「シャルに心を許したらだめだ」って言われたの。…嫌われてるのかな、ボク」

「そんなこと言ってたのか…」

深刻だと思った宇月は少しくらい口調で話す。

そこへ…。

「聞かせてもらったよ、シャルロットちゃん」

あゆが現れた。

「あ、月宮先生」

「キミは…紫苑くんのことをどう思ってるの?」

「紫苑を…?えっと…優しくて一生懸命な…良い友達…かな?」

シャルロットは戸惑いつつも、紫苑の印象や自分の考えを述べる。

あゆは真剣な表情で彼女を見つめる。

「紫苑くんもそう思ってるかな?」

「え…?」

「優しさってね…中途半端だと残酷なんだよ。本当に紫苑君を救いたいなら…心から彼を思わないと」

あゆはそれだけ言うと優しく微笑んで、シャルロットの手を握る。

「大丈夫だよ、君は本当に優しいから」

 

放課後…。

夏樹は理雄の病室に訪れた。

「夏樹か?」「正解!」

彼女が現れると、理雄は優しく微笑む。

彼も宇月と和解してからは、穏やかになり、明るさも取り戻しつつあった。

「今日はね、ビッグビュースを持ってきたよ!」

「ニュース?」

夏樹がいたずらっぽい笑みを浮かべながら、高らかに宣言した。

「理雄君、また歩けるかもしれないんだよ!」

「おれが…歩ける?」

その朗報を聞いて、理雄は天井を見つめる。

理雄には夢があった。

「そうか…。もし歩けたら…夏樹と散歩がしたい。公園で競争もしてみたい…。一緒にご飯を食べに行くのもいいな…」

「ぷっ…なにそれ。理雄君って乙女チック?」

「放っとけ」

お互いくすりと笑い合う。

そんななか、ふと理雄が疑問に思ったことがあった。

「夏樹。どうして、オレは歩けるんだ?」

「それはね~」

 

「ヴァルゴ様がホロスコープスを引き戻すんだって!」

 

「何…?」

「最初はジェミニのボーデヴィッヒだけど、理雄君にもすぐに回ってくるよ!またスコーピオン様に戻れるんだよ!そうだね…一緒にコンビ組んで、フォーゼとメテオを倒そう!」

笑顔で語る夏樹だが、理雄は暗い顔をしている。

「あれ…嬉しくないの?」

以前の理雄ならば泣いて喜ぶだろう。確かに嬉しいが、それ以上に、心に引っ掛かるものがある。

「夏樹…。オレはスコーピオンに戻る事が怖いんだ…。いや…それよりもオマエがゾディアーツのことを楽しく話している姿が怖い」

「どう…して…?」

夏樹はいつもの理雄の反応ではないと感じ、動揺している。

「できれば、オマエには普通の女の子で居て欲しい。ピスケススイッチを捨てろとは言わないが…ゾディアーツのことを楽しく話すのはやめてくれ」

理雄は精一杯、自分の気持ちを伝える。

だが…。

「どうして…?どうしてよ!?いつもなら喜んでくれるのにッ!いつもなら優しく笑ってくれるのにィッ!」

夏樹は頭を抱え、発狂したように叫ぶ。

暫くして両手を下げて、椅子に座る。

「そっか…フォーゼ達の口車にのせられたんだね…」

「確かに城茂…宇月達とは和解した。あいつ等はオマエも救いたいといっている。できれば…信じてやってくれ」

懇願するように言う理雄。スコーピオンになって以降、他者のために焦るのはヴァルゴ以外では彼女が初めてであろう。

「帰るね…」

夏樹は暗い表情のまま、病室を後にした。

「頼む夏樹…分かってくれ」

 

数時間後…。

ラウラは部屋に戻ろうと廊下を歩いていると…。

「待ってたわ、ジェミニ」

T字の廊下の向こうから、夏樹が歩いてきた。

「その名で呼ぶな。わたしはラウラ・ボーデヴィッヒだ。それ以上でもそれ以下でもない」

「知った事じゃないわ。それよりも、アンタに朗報よ」

夏樹はラウラにジェミニスイッチを差し出した。

「それは…!?」

「ヴァルゴ様がアンタを呼び戻したいんだって。悪い話じゃないと思うけど?お咎めも無いようだから」

そう言いながらスイッチ突き出してくる夏樹の目には狂気を感じる。

だがラウラはそれに負けず、その手を押しのけて言い放った。

「断る。わたしにはもう、そんなモノは必要ない。スイッチに頼らなくても、わたしを支えてくれる人たちがいるんだ」

「あっそ。断らなきゃ、手荒なマネはせずに済んだのに」

ジェミニスイッチを仕舞い、ピスケススイッチを取り出してオンにする。

「残念だけどジェミニ、アンタはヴァルゴ様のモノなの。そして…アタシの願いを果たすための道具よ!」

「くっ!?」

襲い掛かってくるピスケスに対応するため、シュヴァルツェア・レーゲンを展開して、学園の外へと離れる。

「逃がさない!」

ピスケスも後を追う。

 

同時刻。

理雄の病室に一夏、箒、セシリア、鈴音が集められた。

「珍しいな。おまえから、おれ達を呼ぶなんて」「なにかあったのか?」

一夏と箒の言葉に理雄は天井を見つめながら答えた。

「夏樹を…救ってくれるとオマエ達は約束してくれた」

「当然だろ」「そうですわ。わたし達、約束を違えることはしません」

彼等のことをもう一度信じなおして…。

「教える。夏樹がスイッチを手にした理由を…」

 

 

 

尾坂夏樹。

彼女は1年3組のクラス代表であり成績も上位に食い込み、生活態度も模範的と、教師からは信頼が厚かった。

その彼女がIS学園には言った理由は…。

自身のトラウマからだった。

夏樹の両親は他者から見ても異常なほど仲が良く、娘が成長するに従って邪魔者として扱うようになってしまった。

誕生日や行事も独りぼっち。

少しでも両親から愛情を向けられたいがために、猛勉強をしてIS学園に入学した。

だが、両親の言葉は冷たかった。

 

「学費が高いから、自分で何とかしてね」

 

それだけだった。それ以外に何も言ってくれなかった。

「わたし…いらないのかな…」

「君は愛に飢えている」

そんなときだった。目の前に裾迫理雄こと、スコーピオン・ゾディアーツが現れたのは。

「か…怪人!?」

「落ち着きたまえ。私は君に力を与えたいのだよ」

「ちから…?」

いつもどおり、スコーピオンの口車に乗った。

「君は両親から愛情を向けられたい…。今の君が愛されないならば…もっと愛されるほどの力を持つものに成れば良い」

そう言って、ゾディアーツスイッチを渡した。

「さぁ…星に願いを…」

 

それから彼女をホロスコープスに覚醒すべく、指導をした。

遅々としていたが、ゾディアーツとして進化していくうちに彼女は両親への興味をなくした。

代わりに…。

「ねぇ、スコーピオン様!アタシね…恋してるんだ~」

「…誰にだね?」

「2人いてね…本命は…貴方です!きゃ~言っちゃった~!」

夏樹はスコーピオンに恋をしたのだ。自分へ熱心に指導してくれて、大切に育ててくれる彼に惹かれたのだ。

もう一人とは裾迫理雄。自分とは対照的な存在に興味を持った。

つまり、夏樹は2人を同一人物とは知らずに恋をした。

「でも…一般ゾディアーツのアタシなんかじゃ…興味ないですよね…」

彼女はゾディアーツになった人間の中では、前例が無いほど明るかった。

彼女の暗い表情を見たくないと思った。

だから…。

「ホロスコープスに覚醒したまえ。私と同格になれば、君の申し出を受け入れよう。私の目から見ても…君は魅力的だ」

「ほんと…?アタシ…魅力的…?」

「私は役割柄、君のような明るい少女と接する事は少なくてね」

彼女は涙を流しながら喜んだ。

「嬉しい…。アタシ…頑張ります…!絶対に、ホロスコープスになってみせます!」

「期待しているよ」

その次の日に夏樹はピスケスに覚醒したのだ。

 

 

 

「ライオンの言うとおりなんだ…」

「彼女は愛情の渇望を力にピスケスへと覚醒した。今も求め続けている…」

ふと小灯台を見ると、理雄と夏樹が笑っている写真がある。

「アイツを…助けてくれ。今なら間に合うかもしれない」

 

一方、ピスケスとラウラは…。

「そんなものなの、ジェミニ!」

「くっ…うぅ…」

ピスケスが液状化することでラウラを捕縛していた。

ワイヤーブレードで切り裂こうとするも、液体なので全く効き目が無い。

そこへ…。

ドガアアアアアアアアアンッ!

「なっ…!?」

青い発光体が現れ、ピスケスに体当たりをぶつける。

コズミックエナジーの塊がぶつかってきたようなものだ。ピスケスは体制を崩してラウラを離す。

地面に降り立った発光体は、メテオを形作った。

「来てくれたのか、嫁!」

嬉しそうにラウラが言うが、メテオは全く反応しない。

「星の運命に惑わされた愚かな者よ。その運命…おれが消し去る」

「アタシがアンタを消し去ってあげるわ!」

ピスケスは槍を、メテオは自慢の拳で戦闘を始めた。

「ハァッ!セアァッ!」

「アチャァッ!ウアタアアアアアアアァッ!」

ザッ!ガキィ!ドゴオォ!

格闘能力は同等のようだ。だが…。

「埒が明かないわね…。なら…」

ピスケスは呟きながら、赤黒い霧を立ち込めさせた。

「その霧…まさか!?」

「そう。アタシもヴァルゴ様から超新星を頂いたの。早すぎるって言われたけど、構わない。理雄君のために…!」

そして、胸部から白い光が現れ…。

 

「超・新・星!」

 

「ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!!!!!」

ピスケスは足の生えた巨大な魚に変化した。魚の額部分からピスケスの上半身が出てきている。

ピスケスの進化形態「ピスケス・ノヴァ」だ。

「このままでは…」

メテオは以前、IS複数と共にスコーピオン・ノヴァに惨敗した過去がある。覚醒して間もないとは言え、超新星に単身で挑んだとしても勝ち目は無いだろう。

だが…。

「コレを使えば…」

そう言って取り出したのはメテオストームスイッチ。

メテオの進化を促すスイッチだ。

「それはなんだ、嫁!?」

ラウラの言葉を無視して、メテオドライバーのソケットに挿入しようとするが…。

バチバチィッ!

「くそ…ダメか!?」

ある程度は想定していたが、メテオストームスイッチはソケットの寸前で凄まじい火花を散らして挿入を拒否する。このまま無理矢理セットすれば、メテオドライバーが支障をきたし、変身が解けるであろう。

「おい嫁!」「…?」

ラウラが指を挿している事に気づき、後ろを向くと…。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!!!!!」

ドガアアアアアアアアァッ!

「うわああああああああぁっ!?」

ピスケスの尾がメテオに激突して、近くの壁にめり込ませた。

「嫁っ!しっかりしろ!」

ラウラが心配そうな表情で助けに来るが…。

「どけ…」

それを押しのけて、ピスケスに向かってゆっくりと歩くメテオ。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!!!」

「本当に愚かだな。…覚醒が早すぎたんだ」

ピスケスは超新星の力に耐え切れず、理性を失ってしまっている。

次の攻撃に掛かろうとするが…。

ズキッ…!

「くっ…!」

腹部に強い痛みが走る。先ほどの攻撃で怪我を負ったらしい。

「メテオおおおおおおおおおおおおおぉっ!」

そこへ、マシンマッシグラーでフォーゼBSが駆けつけてきた。後ろには箒を乗せており、一夏達はISでこちらに向かってくる。

「大丈夫か、ラウラ、メテオ!?」「大丈夫だ…」

一夏の言葉にラウラは返事をするが…。

「来るな…」

メテオは静かに言い放ち、メテオギャラクシーにスイッチをセットする。

<LIMIT-BREAKE LIMIT-BREAKE>

「これで…一矢報いる!」

<OK>

「オオオオオオオオオオオオオオォ…アチャアアアアアアアアアアァッ!」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!

スターライトシャワーの攻撃を一発に集中させ、強い一撃を放った。

だが…。

「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!!!」

「まさか、ここまでとは…」

全く効き目が無い。

箒がアストロスイッチカバンでピスケスの分析をみると、異常なコズミックエナジーの増幅現象が起こっていた。

「宇月…これは」

「…まずい!ピスケスの超新星は吸収だ!攻撃を与えれば与えるほど、エネルギーが膨張するんだ!」

フォーゼBSがメテオに呼びかける。

鈴音、セシリア、シャルロットはそれを聞いて対策を思いつく。

「よぉし!それなら、破裂させるまでよ!」

「限界が来るまで攻撃を与え続けますわ!」

「そうすればチャンスが…!」

フォーゼBSは3人の言葉を否定する。

「バカ言うな!破裂なんてさせてみろ!この街3つ分は一瞬で消し飛ぶぞ!」

「ば、バカってなによぉ!」

鈴印は怒鳴るが、ピスケスの件は事実である。

コズミックエナジーが身体に溜まりすぎた今の状態では、倒す事すら危険だろう。

現にスコーピオンの時も宇宙空間に連れて行かなければ、街が壊滅レベルの爆発が起きたのだから。

そのとき…。

 

「気を静めろ、ピスケス」

 

「れ、レオ…!?」

唸るような声と共に、レオが現れた。

ピスケスの姿にもなんら驚く様子はなく、ゆっくりと歩いていく。

「ウオオオォッ!!!!!」

シュアアアアアァッ!

レオが咆えた瞬間、ピスケスの超新星の光が現れ弾けるように消えた。

それによりピスケスの超新星は解除され、元の状態に戻った。

「ハァッ…!ハァッ…!あ、ありがとうございます、レオ様…」

「超新星は早すぎたようだな。ジェミニを回収して引き上げるぞ」

「はい…!」

ピスケスは自分の左手を液状にして伸ばし、ラウラを絡め取った。

「うっ…!?」

「このやろう!ラウラを離せ!」「やめろぉっ!」

メテオと箒を除く全員が、2人に向かって攻撃を仕掛けようとするが…。

「グワオオオオオオオオオオオオオオオオオォッ!!!!!」

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォッ!!!!!

「うわああああああああああああああぁっ!?」「きゃああああああああぁっ!」

レオの咆哮がエネルギー波となって全員を包み込む。

それに巻き込まれた瞬間、フォーゼBSは変身を解除され、ISも強制解除にまで追い込まれた。

たった一撃の攻撃で、全員が戦闘不能にまで陥ったのだ。

「行くぞ」

なんの抵抗も出来ず、ラウラは連れて行かれてしまった。

「おい、メテオ!一体どうしたんだ!?」

先ほどから様子がおかしいメテオに、箒が突っかかる。

「うるさい…」

箒にも何も語らず、青い発光体となって去っていった。

 

一旦、宇月と礼の部屋に戻ってきた。

「みんな、大事にならなくて良かったです…」

「ありがとうございます」

山田は応急処置を施しながら安心したような口調で言う。

「ラウラ…」「このままじゃジェミニに…!」

理雄の言っていた場所も捜索したが見つからない。おそらく場所を変えたのだろう。

礼はパソコンを見ながら、唸る。

「メテオストームスイッチも、ステイツチェンジスイッチレベルのコズミックエナジーを備えている。しかもマグフォンより高いエナジーだ…。やはり、通常では使用できないか…」

メテオがメテオストームスイッチを使用できなかったものについての理由を探っている。

「エレキスイッチもマグネットスイッチも、感情によって使用可能となったスイッチ…。メテオストームスイッチにも同じことが言えるか…?」

「なに呟いてるの?」

本音が礼の両肩に手を置いてたずねるが…。

 

「うるさいっ!!!!!」

 

いつものような雰囲気ではなかった。本音を心から拒絶しているようだった。

彼が怒鳴った途端、本音は少し涙を目に溜めて謝る。

「つ、つっちー…ごめんね…」

「礼!何もそこまで…」

鈴音はさすがに礼の行動が変だと気づき、咎めようとするが…。

「きさま等…よくも、こんな状況で呑気に居られるな!ピスケスが超新星となった今、おれ達の勝機は下がった!それだけじゃない…見ただろ、あのレオの戦闘力を!今のおれ達ではまるで相手にならない!」

礼は自身の怒りを鈴音にすらぶつけようとする。

「あんた…あたし達に責任を押し付けるってわけ!?」

「やめろよ、礼、鈴!」

一触即発状態の2人を何とか一夏が落ち着かせる。

「たしかに夏樹もレオも強すぎるけど…おれ達が諦めてどうするんだよ!ラウラだって助けなきゃいけないのに」

全員が黙って一夏の言葉を聞いていた。

「もう良い」

礼は暫くして、そこから離れて部屋を出て行った。

「あぁ~もう!なんであんなに偉そうなのよ、あいつ!」

鈴音は悔しそうに礼が出て行った部屋を見つめる。

「そういえば…メテオはどうして急に冷たくなったのでしょう…?」

セシリアが先ほどのメテオの挙動を思い出して考える。

「確かにそうだね…今まではボクらを仲間だって認めてくれていたのに…」

彼女達の会話を聞いて宇月は下を向いた。その様子に気付いた箒は、彼に問いかけた。

「やっぱり…何か知ってるんだな、宇月?」

「でも…」

本当は伝えたかった。でも、それがメテオの意志ならば伝えるわけには行かない…。

「教えてくださりますか?どうして、メテオは正体を明かせないのか…」

セシリアが唯一尋ねられそうな疑問を思いついて、尋ねてみた。

「あいつ…本当はおまえらに正体明かすつもりだったんだけど…ラウラのことがあっただろ?あれ以来、頑なに嫌がってるんだ…」

「ラウラの…?」

メテオはラウラに心を寄せられている事を気に病んでいたのだ。もし正体を知られて幻滅すれば、彼女を傷つけるかもしれない。

他にも一夏達と絆を深めすぎたら、いざという時に油断を作って隙を生んでしまうと恐れていたのだ。

「でも…それだけ、あいつは優しいんだろう?」

「そうだよ。メテオはここに来たときから、みんなの事を信じていた。最初は共に戦う同志が増えたって喜んでた…」

宇月が呟きながら話していたのを聞いた一同は…。

「なら、おれ達がしっかりすればいいんだな?」

「そうだな。メテオやおまえだけにゾディアーツの戦いを任せがちになっていたが…わたし達も頑張れば…!」

「そうですわ!ISでも十分、援護は出来ます!」「パワーダイザーだってあるし!」

「それに…絆が深まれば、同時にもっと強くなれる。隙なんて吹き飛ばせるくらいに!」

メテオを支援する事をさらに強く決意した。

 

同時刻…。

理雄は宇月達の勝利を信じて病室に横たわっていたところ…。

「久しぶりだね。理雄君」

懐かしい声と共に、目の前にヴァルゴが現れた。

「ヴァ…ヴァルゴ様!」

「そのままで良い。君の状態は知っているからね」

そう言いながら、彼女は理雄にスコーピオンスイッチを渡した。

「君には再び、スコーピオン・ゾディアーツとして働いて欲しい」

「…出来ません。一度、フォーゼに敗北したオレはもう、貴女に従う資格すら…」

「ピスケスが超新星を獲得した」

遠慮がちに呟いた理雄にヴァルゴが淡々と告げる。ピスケスの近況。

その言葉で、理雄は目を大きく見開いた。

「…私も早計過ぎると思ったが、彼女の頼みを断りきれなかったんだ」

悔やむような口調で言った後、スコーピオンスイッチを理雄の枕元に置く。

そのまま姿を消した。

理雄はスコーピオンスイッチを見つめる。

そして…。

 

千冬は再び束と会い、話を聞いていた。

「束、ヴァルゴの正体を知っているんだな」

「そうだよ?」

やはり、彼女はゾディアーツの何か核心に気付いている。

「誰なんだ?」

「ちーちゃんだって、会ってたじゃないか~」

「誰だと聞いている!」

千冬は打鉄の刀を束に向けて、脅迫するように聞く。

「わぁ~怖いよ~!落ち着いてよ~!」

「ふざけるな!学園が危機に晒されているんだ!」

どうやら、脅しは通じないらしい。

 

ラウラはピスケスに拘束されて、レオの元に連れてこられた。

「レオ…!」

「久しぶりだなジェミニ。さぁ、スイッチを押して、再び仲間に戻るのだ」

「こ、断る!」

軍人として鍛えられたラウラであっても、レオの発する凄まじい殺気と威圧感には恐怖するが、それでも負けずに反論する。

「ゾディアーツが自分の意志以外でスイッチを押すとどうなるか、覚えているか?」

「…まさか!?や、やめろ!」

レオはジェミニスイッチを取り出して、ラウラの手に握らせて強制的に押させた。

「うわあああああああああああああああああああああぁ!?」

その瞬間、ラウラの身体からもう一人のラウラが現れる。だが、その顔は不気味な白い仮面が貼り付けられていた。

「なんだ…おまえは!?」

「アハハ…ワタシハ、ラウラ・ボーデヴィッヒ。イヤ…ソレヲ超越スルジェミニ・ゾディアーツ!」

改めてスイッチを押した闇ラウラは、ジェミニへと変化した。

「これはオマエの深層に潜むもう一人の自分と、ジェミニスイッチに宿る闇が混ざり合って具現化したものだ。少しずつ…おまえを吸収していくだろう」

レオが淡々と説明している間に、ジェミニはラウラの身体に触れようと手を伸ばす。

「やめろ…さわるなっ!」

「アハハ…」

身体に触れた瞬間、ラウラから少しずつ「何か」がジェミニに吸い取られていく。

自分の存在意義どころか自分自身が消えていく、凄まじい恐怖に襲われる。

薄れゆく意識の中、ラウラはある者の名を呼んだ。

「バイバイ…モウ一人ノワタシ!」

「た…助けて…メテオ…」

 

 

 

 

続く…。

 

 

 

 

 

次回!

 

                        ラウラハワタシダヨ!

 

違う…そんなの違う!

 

                        おれだって…仲間と笑いたい…!

 

夏樹いいいいいいいいいいぃっ!!!!!

 

                        来たんだな…!

 

闇に蠢く星座の運命…

 

                        この「嵐」で打ち砕く!!!!!

 

 

 

第21話「再・誕・星・嵐」

 

 

 

青春スイッチ・オン!

 

 

 




キャスト

城茂宇月=仮面ライダーフォーゼ

織斑一夏

篠ノ之箒
セシリア・オルコット
鳳鈴音

???=仮面ライダーメテオ
ラウラ・ボーデヴィッヒ
ラウラ・ボーデヴィッヒ(闇)=ジェミニ・ゾディアーツ

辻永礼=アリエス・ゾディアーツ
布仏本音

シャルロット・デュノア
白石紫苑

織斑千冬
篠ノ之束
山田真耶

龍崎竜也=仮面ライダー龍騎
月宮あゆ

尾坂夏樹=ピスケス・ゾディアーツ
裾迫理雄=スコーピオン・ゾディアーツ(回想シーンのみ変身)
???=レオ・ゾディアーツ

???=ヴァルゴ・ゾディアーツ



あとがき
如何でしたか?
急に決めた事ですが、単発でジェミニ再登場です!闇ラウラは、原作の闇ユウキと酷似したキャラで行きます!
さらに次回、バレてるでしょうが再登場がもう一人…。
次回は遂にメテオストームの登場と変身前の人物公開です!
ついでに、リブラの正体もさらっと明かします(笑)
お楽しみに!
それでは…。

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