第1話「皆・女・学・園」
第1話「皆・女・学・園」
数年前…。
「お父さん!お母さん!」
「安心しなさい、戻ってくるから」「パパより強くなるんだろう?」
<3>
「やだよ!いやだ!」
<2>
「ごめんな…宇月」
一人の少年を置いて、2人の戦士が戦った。
<1>
「それじゃあ…いきましょう。あなた」「あぁ…」
「変身!」
母は雄々しい武器や装備を纏い、父は白いスーツを身に纏い…。
<LIMIT―BREAKE>
「ライダァァァァァァ…キィィィィィック!!」
これが…白騎士事件のもう一つの話である。
そして現在。
一人の学生が、ある大きな学園に向かって悠々と歩いていた。
右手には金色のスイッチを握り、左手のカバンには父の形見を…。
「でっけぇ…!」
驚いているのは、城茂宇月。
この物語の主人公である。
つい数週間前、星空高校への入学前に「IS」と呼ばれる女性にしか扱えないはずの兵器を起動させたとして、ここに交換編入する事になった。
なんでも、男でISを扱えるものが現れたのは初の出来事で、なんと同時期に彼を含めて4人も起動させたのだ。
その一人である彼が驚いているのは、学園の広大な広さだ。
そう、ここは「IS学園」。
アラスカ条約に基づいて日本に設置された、IS操縦者育成用の特殊国立高等学校。
ここではISに関する様々な専攻科目があり、ここからISに関連した人材が生まれる。
ISは女性にしか起動できなかったため「女尊男卑」の世の中が生まれた。
だが、宇月の両親が開発した「コズミックエナジー」はその世界を変えるかも知れないと謳われている。
なぜならば、コズミックエナジーを資源に出来れば、ISにも劣らない兵器の開発も出来、更には肉体に循環させるシステムも実用化すれば男性がISを利用する事も可能だからだ。宇月がISに乗れるのは、そこにある。彼の肉体はある事情で「コズミックエナジー」に満ちている。
意気揚々と教室に入り、席に座る。あたりでは色んな生徒が最初のコミュニケーションを図っている。
中には、自分のことを奇異の目で見ているような輩もいる。
それもそのはず…。
「マジで女しかいないのか…」
見渡す限り、女子ばかり。ISは女性しか扱えないものであるために当然ではある。
ここでは男子生徒は珍しいのだ。
…いや居た。
教室の真ん中で青黒い髪の毛の少年がいる。おそらく、別の男IS使いだろう。
更に端っこのほうで、おどおどしながら辺りを見回している黒髪の少年と、その近くで鼻歌を歌いながら机に足を乗せている不良気質の金髪の少年。
どうやら、ここに男子生徒が集められているらしい。
「まずは、あいつらと友達にならないとな!」
そう言う宇月。
するとチャイムが鳴り、メガネをかけた女性が教室に入ってきた。どことなく幼げだ。
「お、おはようございます。はじめまして。私は副担任の「山田真耶」です。み、みなさん、この学園で…」
う~ん、長くなりそうだ…。
そう思いながら、窓を見つめた。
ここに来た目的は、ISの入学もあるが…まだある。
この区域は「ザ・ホール」と呼ばれる場所であるからだ。それに関してはまた別の機会に話そう。
「…くん。…織斑一夏くん」
「は、はい」
気が付くと五十音順で自己紹介をしていた。呼ばれていたのは先ほどの青黒い髪の毛の少年だ。たぶん、注意力散漫で2度呼ばれてから気付いたらしい。
この山田先生も、なぜこんなにびくびくしてるのだろう?
「えっと…あぁ、ごめんね、そのあ行からの自己紹介で今「お」なんだよね。自己紹介してもらって良いかな?」
「あ、はい。織斑一夏です。…以上です!」
ガタタタッ!
…ドリフか。全員の期待の眼差しに答えない「織斑一夏」。アドリブが利かなかったらしい。次に来る男子は…あの怯えてる少年。
宇月は不安だった。
そして、順番が回ってくる。
「次は…し、白石君」
「ひゃいっ!?」
…最初から予感は的中。さっそく噛んでいる。
「えっと…白石紫苑です。しゅしゅ…趣味は…ないです。とく、特技は…ないです。えっと…以上です!」
…負の連鎖である。これは紫苑、根暗っ子確定だ。
次は…
「えと…城茂君」
「はい!」
宇月だった。ここで負の連鎖を断ち切ってみせる!…と意気込んだ。
「城茂宇月です。「コズミックエナジー」の開発をしてたけど、ISが使えたから、ここにきました。できれば、気軽に話しかけて欲しいです。よろしく願いしましゅ!」
ガタッ!
最後の最後で詰めが甘かった。結局、ドリフになってしまった。
次は…
「あ、裾迫君」
彼は鼻歌を歌いながら聞いていない。いや、無視している。
「あの、裾迫君!」
「アァ?」
「ひっ…!」
勇気を振り絞った山田先生に対して、ガンを飛ばす裾迫。
これは長丁場になりそうだ。
すると…。
スパァンッ!
「いてッ!?」
「教師に向かって、その態度はなんだ?」
「ンだと!?やんのかテメェ!」
厳しそうな先生が現れ、裾迫の頭を出席簿で殴った。おそらく担任だろう。
「きゃーっ!千冬様ー!」「本物よー!」
あたりから不思議なほど黄色い声援が聞こえる。
相手は、この厳しそうな先生に対してだ。
周りが先生のほうに味方する雰囲気だと理解したのか、裾迫は黙り込んだ。これ以上の反抗は面倒だと思ったのだろう。
「お前は自己紹介も満足に出来ないのか?」
「チッ、うぜェな。すりゃあいいんだろ?」
ダルそうに立ち上がって、ぶつぶつといい始めた。
「裾迫理雄。よろしく」
それだけ言うと、ドカッと座った。
そして、全員の自己紹介が終わった後…。
「諸君、私が担任の織斑千冬だ。私は若弱冠15歳を16歳まで鍛え抜き、使い物にするのが仕事だ。私の言うことには全てイエスで答えろ」
(ん…織斑…親戚?)
聞いた苗字…と考え始めた瞬間。
「「「「「「きゃーっ!!!」」」」」」
「うおっ!?」
沢山の女生徒が黄色い声援を再び向ける。あまりの音に宇月は耳を塞いだ。
その声が落ち着くと、咳払いをしてもう一度喋り始める千冬。
「この一年でISの基礎を叩き込んでもらう。嫌でもついてきてもらうぞ。反抗的な態度だろうと私の言葉には返事をしろ。いいな!」
「「「「はい!」」」」
ほぼ全員、気合の入った返事だ。千冬も納得がいったらしい。
「…毎年よくもこれだけの馬鹿者が集まるものだ、それとも私のクラスだけに馬鹿者を集中させているのか?」
この点は気に食わなかったようだが…。
そしてHR。
「…ッたくよォ!あの女教師、メンドくせぇよな!?」
「え…えっと…」
急に話を振られた紫苑はびくびくおどおど。
「ンだよ、ハッキリしろよ!」
「え…そ、そうかもしれないけど…織斑先生も、裾迫君のことを思ってやってるんだよ」
紫苑の言葉で、理雄はキレたらしい。
「アァ!?テメェもあの女に味方すんのかよ!?」
「ち、違うよ!僕は君の事を…」
「うるせェ!」
ドカッ!
有無を言わさず、理雄は紫苑を突き飛ばした。
「うあっ!」
紫苑は地面に倒れてうずくまる。
「テメェもムカつくんだよな。自己紹介もビビッてやがるし、おどおどしやがってよ」
「やめろ」
そこに入ってきたのは、髪の長い女の子だ。
「ん?オマエもこのビビリの味方か?」
「このクラスで面倒事を起こすな」
「ハァ?」
宇月も見ていられず、出てきた。一夏も一緒に。
「そうだ。千冬姉の迷惑になるし、そいつは悪気があった訳じゃないだろう?」
「おまえの気分で、そいつが苦しい目に遭うってことがわかんねぇのかよ!」
一度に3人も邪魔をされ、やはりこれ以上の抵抗が面倒になったのか…。
「チッ…」
理雄は舌打ちをして、教室を出て行った。
「大丈夫か?」
一夏が手を差し出すと、困ったように笑いながら紫苑もその手をとる。
「うん…ありがと。えっと…織斑先生の弟さんの織斑君に、篠ノ之さん、それに城茂君だよね?」
「おう!よし、おれと友達になるか?この際だから、そこの2人も!」
宇月は紫苑の肩に手を置いて、一夏と「篠ノ之箒」を指差す。
2人は笑いあう。どうやらOKのようだ。
「えっと…ありがとね」
「あぁ、よろしくな」「よろしく」
一夏は宇月と、箒は紫苑と握手をした。スタートは幸先の良い感じになりそうだ。
「さっそく、友達が出来たぜ!」
その日の夕方。
誰もいない学校の屋上に3体の異形が現れる。
ゾディアーツ。
星の力と「負のコズミックエナジー」を利用した、超進化生命体。
「…星の運命を持つ者は見つかったのかい?」
そう聞くのは、天秤座の使徒「リブラ・ゾディアーツ」だ。
「えぇ、目星はあります。明日はスイッチを渡し、学園で暴れてもらい、ここの生徒や教師にゾディアーツを認識させる予定です。全ては、我らが主「ヴァルゴ様」のため」
リブラに答えたのは、蠍座の使徒「スコーピオン・ゾディアーツ」である。
「良い心がけだね。その調子で頼むよ」
2人の会話を聞き終えると、さっさと立ち去る獅子座の使徒「レオ・ゾディアーツ」。
「レオ、君は役割を決めているのかい?」
「黙れ。オレに指図するな」
リブラが呼んで引き止めるも、そう言い捨ててレオは歩き去った。
「機嫌が良くないらしいね…困ったものだ。レオは実力がありすぎて、言う事を聞いてくれないから。アリエスも裏切ってからは行方知れず。そういったところでは、スコーピオンの方が可愛げがあるよ」
その会話の後、スコーピオンとリブラもそれぞれに散っていった。
そして夜。
宇月は一人部屋。これからのことを考えると、非常に好都合だ。寮部屋の荷物の整理が終わり…。
「あとは…これだな」
金色のアストロスイッチ「ゲートスイッチ」を空っぽのクローゼットの中に入れ、扉を開閉すると…。
「よし、成功!」
クローゼットの中は光り輝く道ができていた。そこに入り歩いていくと…。
機械的な扉に通じており、中は様々な機械で埋め尽くされていた。
コズミックエナジーの研究室。通称「ラビットハッチ」である。
ここは月面に建設されている。コズミックエナジーの力を利用して、空間を捻じ曲げて通じさせているのだ。
そこの自動調整室のプラグに、カバンに入れていた父の形見「フォーゼドライバー」を繋げて調整を行ないながら、ある調べ物をしようとしたそのとき。
ォォォン…!
「…なんだ?」
ラビットハッチからも聞こえるような、凄まじい轟音だった。
距離的には、寮部屋の隣くらい…。
「まさか!?」
フォーゼドライバーを手に取り、カバンに収めて走っていった。
同じ頃の一夏。
自分の寮部屋に入り、荷物の整理を始めようとしていた。
そのとき…。
「誰だ?」「…!?」
女の声…。
「あぁ、ルームメイトか。こんな格好ですまないが、これから仲良くし…」
振り向くと、タオル一枚を身体に巻いていただけの箒がいる。その顔は一気に真っ赤になった。
「一夏!?」「箒か!?」
とっさの出来事なのか、照れ隠しなのか、箒は竹刀を持って一夏に襲い掛かった。
「み、見るな!」「うわっ、やめろ!」
ドォォォン!
先にあった音の正体はこれだ。実はこの2人と宇月は部屋が隣なのだ。
扉が開かれ、宇月が現れた。
「なんだ、ゾディアーツか!?」
しかし、目の前にあるのは…。
タオル一枚で竹刀を握る箒と、その竹刀を必死に防いでいる一夏。
「あれ…違う」
「お、おまえは宇月!」「おい、助けろ!」
そして、色々説明やら後処理があって…。
「なんだよ、2人とも昔なじみなのか!」
宇月は、納得がいったように頷いている。
「よ、箒。こうやって話すのは久しぶりかな」
「あぁ…げ、元気にしてたか?」
この2人、実は幼馴染で数年ぶりの再会になったというわけである。
「まぁな。そういえば、剣道の大会で優勝したんだっけか?ちゃんと言えなかったけど、おめでとう」
「な…知ってたのか?」
「もちろんさ。そりゃあ嬉しかったよ」
2人の会話を楽しそうに見る宇月。彼の視線が気になったらしく…。
「な、なんだ?」
箒が尋ねる。
「いや、お似合いだと思ってな。いっそ付き合えば?」
「…ッ!?」「はぁ!?」
ベシン!
「あだっ!?」
箒は照れ隠しに宇月の顔面を竹刀で強打。
「くああぁぁぁ…いってえええぇ…!」
顔を抑えて、身体を丸める宇月。
そういえば彼は…。
「そうだ…。宇月、ゾディアーツってなんだよ?」「私も聞いたことが無いが…」
先ほどの発言で気になっていた単語「ゾディアーツ」。ISの専門用語でもないらしい。
「…ひ・み・つ?」
復活した宇月は、人差し指を可愛らしく振りながら、ごまかそうとする。
…が。
ドガアアアアアアアァン!!!
「なんだ!?」「秘密にも出来ないか…!」「さっきから、なにを…?」
宇月はこの場の誰よりも早く、部屋を飛び出した。
「きゃあああぁ!」「怪物よ!?」
たどり着いたそこには、身体に宝石のようなものを散りばめた怪人が暴れている。
「…山猫座…リンクスか!」
そう、そこにいたのは「リンクス・ゾディアーツ」。
「リンクス…?」「さっきのゾディアーツってのは、あの怪物だ!」
そういいながら、彼はフォーゼドライバーをベルトに装着させる。
「お、おい、宇月…!?」
一夏の言葉を無視して、4つのスイッチを押し、左手を握りしめて構える。
<3><2><1>
「変身っ!」
ベルトのレバーを押し、右手を空に伸ばすと、辺りから煙と機械のようなオーラが現れ、宇月を包み込む。
「はあっ!」
それを振り払うと、そこに居たのは白いスーツを纏った存在…。
「それって…」
「これは宇宙への可能性…「フォーゼ」だ!」
続く…。
次回!
武器が転送された!?
ちょっと違う
城茂って、あの…
平気さ。僕はクズだから…
リンクスって、アイツかよ!?
仮面ライダー…!
第2話「変・身・公・開」
青春スイッチ・オン!
キャスト
城茂宇月=仮面ライダーフォーゼ
織斑一夏
篠ノ之箒
白石紫苑
裾迫理雄
山田真耶
織斑千冬
???=スコーピオン・ゾディアーツ
???=リブラ・ゾディアーツ
???=レオ・ゾディアーツ
宇月の母
宇月の父=仮面ライダーフォーゼ(初代)
あとがき
いかがでしたか?
見切り発車レベルは半端じゃないですが、初めて見ました。これから頑張りますので、応援よろしくお願いします!
よろしかったら、感想のほうも下さると嬉しいです。
それでは…。