仮面ライダーフォーゼ~IS学園キターッ!~   作:龍騎鯖威武

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第17話「超・電・磁・爆」

カプリコーンと対決した次の日。

クラス内ではある噂が持ちきりになっている。

「ねぇ聞いた?ストリートミュージシャンが、物凄くうまいんだって!」

「あたし、近くで歌ってるの聞いた!姿は見えなかったけど…」

どうやら八木の話題であるようだ。

聞いていたラウラは宇月に耳打ちする。

「もしかして…昨日のカプリコーンの事だろうか…?」

「たぶんな。シャルロットに聞いたけど、人間の時にはヘタクソだった演奏がゾディアーツになった途端、心地よく聞こえたらしい」

宇月の予想するに、カプリコーンのウルクから発せられる音にはある種の催眠効果があると思われる。ただ…。

「それで…何がしたいんだ…?」

彼の行動理由がイマイチ理解できないでいる。

その行動が、ホロスコープスに何の利益があるのだろうか…。

くぅ~…

「…腹減って、上手く脳が働かねェ…!」

ここ最近は落ち込み続きで、まともな食事を取っていない。大喰らいの宇月には結構、深刻な問題であるのだ。

そこへ、ちょんちょんと肩を指で叩かれる。

振り返ると、セシリアがニッコリと笑ってバスケットを差し出す。

「サンドイッチ、作ってきましたわ。良かったらどうぞ」

「うおぉ!サンキュー、セシリア!良い嫁になるぞ!」

ひったくるようにバスケットを受け取り、中にあるサンドイッチを頬張る。

だが…。

「…!?」

一瞬、何が起きたか理解出来なかった。

「お嫁さんですか…。わたくしも、いつか一夏さんの…」

口の中には、様々な味が交差している。お世辞にも美味しいとはいえない。

「どうです?」「…ぎゅはにゃに?(具は何?)」

舌が回らずとも、なんとか喋る。

「えっと…タバスコとマスタードと…」「ひゃぁ、しょう…(あぁ、そう…)」

宇月は決意した。

セシリアに料理をさせてはいけないと…。

「あたしも酢豚作ってきたわよ!食べたかったんでしょ?」

ふと、鈴音も弁当箱に入れてきた酢豚を宇月に渡す。

「おう…助かる…」「助かる…?」

凄まじい味だったサンドイッチの後に食べる鈴音の酢豚は、この世で一番美味しい食べ物だと思った。

 

IS学園の近くで座り込んでいる八木。ギターを抱えて空を見上げている。

同時に左手にあるカプリコーンスイッチも空に掲げた。

「こんなことでもしなきゃ、夢は叶えられねェもんなァ…」

彼自身、自分の演奏のヘタクソぶりはちゃんと理解できている。それでも、夢を諦めたくなかった。

いつか、世界に情熱を送ることができるような一曲を届けたい。

それだけを願って頑張ってきたが、その世界も現実も残酷だった。どんなに想いを込めても、必死に作った歌でも、認めてはくれなかった。

そんなときだった。レオが目の前に現れ、スイッチを渡されたのは。

数日の間、琴座のゾディアーツで活動していき、今のカプリコーンにまで進化したのだ。

「無力なヤツ独りじゃ、夢は叶わねェ…」

だからこそ、この力を使っているのだ。だが、そのやり方は正しいとは思っていない。八木もそれくらいの判断はできていた。

「止めれるモンなら、止めてみろよ…宇月!」

彼は心のどこかで、宇月に倒される事を望んでいるのかもしれない。

 

放課後…。

ある土地に大きな穴が開いていた。

「こんなに掘って見つかるの?」「うへぇ…もう疲れちゃったよ、僕」「他にも探しましょう!」

NSマグフォン捜索チームだ。今、地面を掘っているのはシャルロット、紫苑、山田の3人。

「方角的には、ここで間違いないんだが…」

箒は礼から託されたスイッチカバンを開きながらあたりを見渡している。

「篠ノ之さぁん…手伝ってよぉ…」

ヘロヘロ状態の紫苑が穴の中から箒に呼びかける。

「あ、あぁ、すまない…。ん、そうだ」

ふと、ホルワンコフを取り出して、スコップスイッチをセットする。

「この子なら…。ここ掘れワンコ!」

そう言って、ホルワンコフを穴に放り投げると…。

「あれ…ホルワンコフ…」

ドドドドドドドドドドドド!

『わあああああああああああああああああああぁ!?』

突如、凄まじい勢いで穴を掘り進めて行き、その勢いでシャルロット達は穴の外に放り出された。

「いたた…」「こ、殺されるかと思った…」「すごいね、コズミックエナジーって…」

一通り掘り終わったホルワンコフは、箒の元へと戻ってきた。

「ありがとう、ワンコ。それで見つかった?」

その言葉にホルワンコフはションボリと頭を下げる。どうやら見つからなかったらしい。

「気にする事はない、また探せば良いんだ!さぁ次、行こう!」

一人で意気揚々と別の候補地へと向かう箒。

「箒って…元気だね」「いや…篠ノ野さん、何もしてない…」

3人は疲れきっていながらも、彼女についていった。

 

一夏はカプリコーンである八木を探していた。

学園の近くにいることは分かっているので、大きな学園周辺を探し回る事2時間…。

「やっと…見つけた…」「ん…?オマエ、フォーゼの仲間の…」

木に寄りかかってギターを抱えつつ座り込んでいる八木の姿を見つけた。

「スイッチ…捨てる気にはならないのか…?」

「残念。自分からは捨てないぜ」

カプリコーンスイッチを見せ付けて揺らす八木。挑発をしているようにも見える。

「あんた、なんでスイッチに手を出したりなんか…」

「夢を叶えるためだ。オレ一人の力じゃ、叶えられない夢…この力なら、叶えられるんだよ」

ただ、その表情は心のそこから思っているようには見えなかった。

「でも、それで夢をかなえても自分の力じゃない!」

「確かにな。だけどよ、それが正しくなくても、叶いそうにもない夢を掴めるチャンスがあるなら、縋るのが人間だろう?」

彼の言う事は理解できた。だからこそ、今までゾディアーツが生まれ続けたのだから。

それでも、一夏は否定したかった。

「だけど…それでも…!」

「まぁ、言いたいことは分かるぜ。だから…賭けをする。オマエが勝てばスイッチを捨ててやる」

そう宣言してカプリコーンスイッチを押して姿を変えた。

「さぁ!オレのライブが始まるぜ!この情熱的な曲、聞いて腰抜かすなよォ!?」

ギュイイイイイイイイイイィ!

「うぅっ…!?」

その音を聞いた瞬間、一夏の脳は麻痺したように思考が上手く働かなくなってきた。

膝を着いて耳を塞ぎつつも息が荒くなる。

「はぁっ…はぁっ…」

「賭けの内容はこうだぜ!オマエはオレの洗脳を受ける!フォーゼ達はオマエを上手く洗脳から目覚めさせられたらオマエの勝ちだ!」

徐々に意識が遠のいていく…。そして一夏は無表情で立ち上がった。

「おっしゃぁ!本格的に殴り込みだァ!」

 

その後、学園外から聞こえてくる音に宇月達が近付くと、カプリコーンがウルクをかき鳴らしている。

「イェェェィ!来たか、フォーゼ!」

「八木さん、あんた…ん、一夏?」

隣には一夏が無表情で立ち尽くしている。不意に右手首に手を当て、白式を展開して襲い掛かった。

「お、おい!?」「まさか…紫苑の言っていた催眠!?」

つまり一夏と戦わなければならない。仲間と戦うと言う最悪の展開になってしまった。

とにかく、フォーゼに変身しない事には何の解決も出来ない。早速、フォーゼドライバーを装着して赤いスイッチを起動させる。

<3><2><1>

「変身っ!」

レバーを引いて、フォーゼBSに変身した。

「はぁっ!一夏を元に戻すためには…」

洗脳主であるカプリコーンを倒すほかに思いつかない。だが、相手はホロスコープス。一筋縄でいくわけがない。慎重に戦っていくしかないだろう。

「セシリア、鈴音、ラウラ!一夏を頼む!」

<ELEKI-ON>

「分かりましたわ!」「一夏のバカ、元に戻りなさい!」「来いっ!」

3人に指示しながら、フォーゼESにステイツチェンジして、カプリコーンに攻撃を仕掛けていった。

 

「えぇい、離れろ!」「だって、昨日休んでたから~」

礼は押しかけてきた本音を引き剥がしながら、NSマグフォンの問題を解決に努めていた。

「マグフォンが割れなかった理由…全く分からん!」

頭を抱えて机に突っ伏した。

「う~ん…どっちも離れたくなかったからじゃないの?」

「あのな…そんな感情…感情?」

言いかけたところで、はっと思い出した。

以前、エレキスイッチの発動に宇月が使うときの気持ちの変化で、スイッチが上手く利用できた事に…。

「以前、スイッチに精神論が通ると言った。同じ事がマグフォンにも言えるとするならば…」

ある可能性を信じて、コンソールを指で叩く作業を再開する。

「もしかして、わたしの一言、役に立った?」

「あぁ。何気ない一言のようだったが、意外な落とし穴に気付かされた。感謝する」

礼は本音に向かって軽く笑い、再び画面に目を向けた。

「やった!」

 

マグフォン捜索チーム。

「ワンコ~!見つからないか~?」

箒が大声で、穴を掘っているホルワンコフに呼びかけ、残りのシャルロット、紫苑、山田の3人は体操座りで見守っている。

ホルワンコフの穴掘り作業の速さは凄まじく、3人はお役御免状態だ。

「最初からいらなかったよ、僕達」「そう…だね…」「またお役に立てなかった…」

居心地の悪さを感じつつも、箒とホルワンコフの姿を見続けている。

「まだ見つかりそうにもないね…」

紫苑が仰向けに寝転がると…。

ゴツッ…!

「いたっ!?」「どうしたの?」

どうやら、何かに頭をぶつけたらしい。

「なんか、石があったみた…」

頭をさすりながら、その方向を見ると…。

「ああああああああああああああああああああああああああああぁ!?」

「どうしたの、白石君!?」

紫苑の絶叫に驚いた山田が理由を聞くと、彼は立ち上がって、頭にぶつけた物体を見せ付ける。

「あったよ、マグフォン!」

「うそぉ!?」

これが本当の「怪我の功名」と言ったところか。紫苑の頭のタンコブの代わりにNSマグフォンを見つけることが出来た。

これで礼の再調整が済めば、フォーゼにも起死回生のチャンスがあるかもしれない。

「さっそく行きましょう、先生!」「紫苑、早く!」「僕、もうヘトヘトだって…」「重労働ですね…」

箒は山田を、シャルロットは紫苑の手を引っ張ってIS学園まで急いだ。

 

千冬、竜也、あゆは、ある件で学園の外に出ていた。

「何の用件だ?」

「実はホロスコープスの首領であり乙女座の使徒、ヴァルゴ・ゾディアーツのことです」

呼び出したのは竜也だ。理由はヴァルゴの件。

「まさか、私がそのヴァルゴだとでも…?」

「違います。正体についてヒントが欲しくて…」

あゆが申し訳なさそうに話し始めた。

「宇月くん達の話では、ヴァルゴは世界中に存在するISの機能停止が目的だと言っていたんです。ISを作ったのは、あなたの古い知り合いである篠ノ之束さん。だから…」

「つまり私の知る限りで、束に恨みを持っていた人物はいないかという事か?」

頷く2人を見て、千冬は大きく溜息をつく。

「ISを作り出した時点で、恨んでる人間なんか山ほどいる。誰か一人断定するなんて事は難しい」

「そうですか…」

どうやら手掛かりは掴めそうにもない。

「だが…恨んでいる人間は比較的、男性が多いのは見当がつく。ISによって男卑の世の中になったからな。男の政府要人などは特に…」

「ということは…」

ありえない話ではない。ヴァルゴは男の可能性もある。事実、竜也達の知る「フォーゼの世界」では、ヴァルゴは男性であったのだ。

「だが、乙女座が男なんて事は…」

「可能性はあります。おれ達はその線で調べてみますね」

そう言って、竜也とあゆは離れていった。

「ヴァルゴ…。ゾディアーツの首領…」

千冬自身も心配であった。そんな強大な存在が学園を脅かしているのだから。一刻も早く対策を練りたいところだが、学園の運営では遅々として進まない。

「私個人で動く他ないか…」

そう決意したとき…

 

「私の噂話か…千冬?」

 

空から声が聞こえ、紅い光と共にヴァルゴが現れた。

「貴様がヴァルゴ…!?」

「いかにも。私こそ、この世界の救世主たる女王だ…」

ロディアを地面に叩きつけ、威厳たる姿で立ち尽くすヴァルゴ。さすがの千冬も少し後ずさりをした。

「一体、何者だ…?」

「知っているはずだよ、千冬。私は間違いなく、君の知っている人間だ…」

無表情なヴァルゴの顔だったが、声は微かに笑っているように感じた。

知っている人間だというが、皆目、見当がつかない。ミスリードを狙っているのだろうか…。

「さて…私がここに現れた理由が分かるか?」

ホロスコープスの行動は主にスイッチを配って、生徒をゾディアーツに進化させることだ。事実、生徒のラウラ、夏樹、理雄がホロスコープスに覚醒したのだから。

ヴァルゴの手には、ゾディアーツスイッチが握られている。

「君に微かだが、星座の運命を感じる。君ほどの存在ならば、ホロスコープス…その中心であるサジタリウスに進化する可能性があるかもしれない…」

そう言いながら、スイッチを手渡そうと近付くが…。

バシッ…!

その手を払い除け、スイッチを弾き飛ばした。

「私は断じて、そんなモノに手を出すつもりはない。いや、お前も止めてやる」

「…残念だね。星の力の素晴らしさが理解できないとは…」

この状況に対しても、ヴァルゴは敵意を見せるような様子は無い。

「だが断言しておこう。君に私を止める事は出来ない。必ず十二使徒は覚醒し、私の目的は果たされる」

そう宣言して、ロディアを振るって姿を消した。

取り残された千冬は、顎に手を当てて考えている…。

「…私も奴の正体を探ってみよう」

 

「ロックンロォォォォル!」

ギイイイィンッ!

「うわあああああああぁっ!」

怪音波攻撃で、フォーゼESは吹き飛ばされた。さすがにホロスコープスであることもあり強い。

そしてセシリア達も、一夏は仲間であり友達。セシリアと鈴音は彼に好意を抱いているために、余計に攻撃が出来ない。

ザンッ!

「きゃあっ!」「うぅ…このぉ…!」

絶体絶命の危機。

「賭けはオレの勝ちだな…。勝った暁には、コイツらをオレのバックダンサーにするかぁ?」

そこへ…。

 

「マグフォン、見つかったぞ!」

 

泥だらけになったシャルロット、紫苑、山田を引き連れて、箒がNSマグフォンを掲げた。

「み、見つかったか!」

「だが…まだ礼に調整してもらわないことには…」

そう、礼でなければスイッチ調整は出来ない、宇月も出来るには出来るのだが、礼はステイツチェンジのスイッチの調整が唯一成功した人物であるからだ。

 

「心配はいらん」

 

ドガアアアアアアアアアアアアァン!

その声とともに、メテオが姿を現した。

「うおっ…メテオ!?コンニャロ、良いところで!」

「待っていたぞ、嫁!」

「もう良いって。フォーゼ!辻永礼から聞いた。マグフォンが割れなかった理由は、おまえの心に迷いがあるからだ!」

メテオが大きく呼びかける。

「迷い…?」

「スイッチは使用者の心を感じ取るモノが存在するようだ。特にステイツチェンジ系のスイッチはな。そのマグネットスイッチは、おまえの心の迷い…割り切れない感情があるために、分割が出来ないんだ。おまえがゾディアーツを倒す決意を持てるなら…使える!」

メテオはそう言って、箒を見る。意図を理解した彼女は、NSマグフォンを投げてフォーゼESに渡す。

「使え、宇月!」「おっと!」

それをキャッチしたフォーゼESはエレキスイッチをオフにして、NSマグフォンを構える。

「…おれは…」

脳裏には、未だ憎しみのこもった理雄の表情が浮かぶ。果たして、振り切れるか…。

「宇月…」

ふと、持っていたロケットスイッチスーパー1からゆりこの声が聞こえる。

「大丈夫だよ…。宇月は何も間違ってない。誰かが否定しても、わたしが信じる。だから迷わないで…」

「…サンキュー、ゆりこ。いつも助けてくれてるな、おまえ」

マスクの奥で軽く笑い、もう一度、NSマグフォンを握る両手に力を加える。

 

「分割っ!」

 

その瞬間、意図も簡単にマグフォンはNマグネットとSマグネットに分割できた。

「成功だ!」「やったぁ!」

仲間の声援を背に、2つのスイッチをソケットにセットする。

「セット!」

<N・MAGNET><S・MAGNET>

<N・S MAGNET-ON>

スイッチをオンにすると、辺りに磁石のようなオーラが現れ、フォーゼBSを包み込んだ。

それが消えたとき、フォーゼBSの身体は銀色に変化し、肩には大きなキャノン砲が装備されていた。

「いくぞ、マグネットステイツ!」

これが「仮面ライダーフォーゼマグネットステイツ」の誕生だ。

「銀色になったところで、なんだっていうんだよォ!?」

ギュイイイイイィ!!

再び、怪音波で攻撃を仕掛けるカプリコーン。だが…。

「おりゃあああああああああぁっ!」

ドドドドドドドドド!

マグネットキャノンから放たれる電磁力を利用したエネルギー弾がそれを凌いで、カプリコーンに攻撃する。

「グオオオオオオオオオオオォ!?」

意表をついた一撃に、カプリコーンは吹き飛ばされた。

「暫く大人しくしてろよ、一夏!」

バシュッ!ガキィ!

フォーゼMSは、磁力を纏ったエネルギーを一夏に送り、近くの金属片に貼り付けさせた。その磁力は凄まじく、一夏は必死にもがくが、身動きは取れない。

「コンニャロ…!来い、ダスタード!」

「ムゥゥゥウゥ!」

苛立ったカプリコーンの声と共に、ダスタードが複数現れた。

「ここは任せろ!ホォォォォ…アチャアアアアァッ!」

「よし、わたしも加勢するぞ!」「ボクも!」

メテオ、ラウラ、シャルロットがダスタード達の前に立ち塞がり、迎え撃った。

「チィッ!クソォ!」

ギャイイィ!ギュイイイイイイィ!

半ばヤケクソで怪音波を放ち続けるが、マグネットキャノンの前には、全てが無意味だった。

「トドメだ…八木さん、あんたを止める!」

レバーを引いて、マグネットキャノンを自立飛行式に切り替えて、Nマグネットスイッチのボタンを押す。

<LIMIT-BREAKE>

「喰らえ!ライダアァァァァァ…超電磁ボンバアァァァァァァァッ!」

ズドオオオオオオオォッ!

赤と青の光弾がカプリコーンに向かっていく。怪音波で防ごうとするも、全く効き目はなかった。

「ヘッ…オレの負けかよ…」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!

「グアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!」

最後に負けを認めて、カプリコーンは爆発に巻き込まれた。

<LIMIT-BREAKE><OK>

「オオオオオオオオォ…アタタタタタタタタタタタァッ!」

ドガガガガガガガガガァッ!

メテオ達もダスタードを一掃した。

「あとはおまえ達に任せる。じゃあな」

そのままメテオは、その場を去っていった。

「うぅ…な、なにが…?」

「一夏さん!ひどいですわ!」「そうよ、あんなにボコボコにしてくれて!」

意識を取り戻した一夏は、セシリアと鈴音に非難の嵐を浴びせられた。

「まぁまぁ…一夏は操られていたんだから」「それに、元に戻れたから良かったよ」

シャルロットと紫苑がそれを何とかなだめようとしている。

「八木さん」

フォーゼMSは、人間の姿に戻った八木に近付いた。今度は後悔など持たない表情で…。

「やるじゃねぇか、宇月。それがオマエの本当の顔なんだな?」

「…あぁ!」

ボロボロになっても、八木はニッと笑っている。

「音楽じゃなかったけどよ…オマエ達に情熱的な「何か」は届けられたか?」

「…届いたっす!」

仮面ライダー部全員を見ながら答えた。誰もが喜びに満ちた表情をしている。

「完敗だな…カプリコーンスイッチも持ってけ。オレは情熱を届けられたから、それで良い。病院は自分で行くからな」

ブチッ…!

ギターの弦を自分で引きちぎり、カプリコーンスイッチをフォーゼMSに渡した。

「…アンタのおかげで、おれは元のフォーゼに戻れた。ありがとう!」

全員で手を振りながら、その場を離れた。

 

それから暫くして…。

「…ヴァルゴさんか」「フォーゼに負けたようだね」

ヴァルゴが八木の前に現れた。目的は一つ…失敗した部下の排除。

「敗北者が何処へ行くかは…理解できているね?」「おう、好きにしろ。オレの夢は叶った」

自身の末路を自覚しながらも、八木は悔いのない笑みを浮かべていた。

「さらばだ…カプリコーン」

少しだけ悲しそうな声でロディアを振るい、闇の時空を作り上げた。

ゴオォォォォォォ…!

 

「ダークネヴュラ」

 

ゾディアーツの生み出す負のコズミックエナジーを吸収して成長する、永遠の牢獄だ。

ゆっくりと八木の体が浮いていく…。

「宇月…オマエは良い奴だった。オマエじゃなきゃ、ここに行くはイヤだっただろうな」

目の前が少しずつ、暗くなっていった。

「夢…叶えさせてくれて、ありがとうな」

最後にそう言い残して…

 

 

 

八木はダークネヴュラに消えた。

 

 

 

同時刻…。

<LAST-ONE>

「アンタ…女の子なのに恐ろしいねェ…」

「フン…アンタもでしょ」

夏樹はある男と会っていた。着物に身を包み、帯には扇子が差されている。どうやら落語家のようだ。

芸名を「九番亭二式」と言う。

その手には、夏樹から渡されたゾディアーツスイッチが握られている。既にラストワンだ。

「んじゃ…許しを請うと掛けまして、アタシが進化するゾディアーツと解く」

「…なによ?」

笑いながら、二式はスイッチを押した。

「どちらも「堪忍(カニ)して」ってね」

その身体はみるみる黒い霧に包まれ…。

 

蟹座の使徒「キャンサー・ゾディアーツ」へと進化した…。

 

 

 

 

続く…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回!

                       落語…?

 

アタシはしがない落語家さ

 

                       蟹座の使徒だ…!

 

あいや~みなさん、可愛らしい!

 

                       口達者なやつめ…

 

 

 

 

 

 

「蟹・座・落・語」

 

 

 

青春スイッチ・オン!

 

 






キャスト


城茂宇月=仮面ライダーフォーゼ

織斑一夏

篠ノ之箒
セシリア・オルコット
鳳鈴音

???=仮面ライダーメテオ
ラウラ・ボーデヴィッヒ

辻永礼=アリエス・ゾディアーツ
布仏本音

シャルロット・デュノア
白石紫苑

織斑千冬
山田真耶

龍崎竜也=仮面ライダー龍騎
月宮あゆ

尾坂夏樹=ピスケス・ゾディアーツ
八木鳴介=カプリコーン・ゾディアーツ
九番亭二式=キャンサー・ゾディアーツ

???=ヴァルゴ・ゾディアーツ



あとがき
如何でしたか?
カプリコーンは今回で出番終了です。少しは良い印象を与えられたでしょうか…?
ヴァルゴの正体にも少しずつ触れられます。正体判明は後半になるでしょうが(汗)。
そして次回のホロスコープスはキャンサーです!今は芸名だけですが、本名は超人機さんに考えていただきました。ちなみに九番亭というのは、私の作品内での登場したホロスコープスで9番目だからです。
次回もお楽しみに!



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