第15話「魚・座・発・見」
数日後…。
鈴音とセシリアは、理雄の病室へ見舞いに訪れた。
スコーピオンの力を失ってから理雄は、全身不随のために自主退学し、病院内で塞ぎこんでしまった。
彼の本来、辿るべきだった未来だ。残酷ではあるが。
「不良男…」
「…嬉しいだろ?トラブルメーカーが居なくなったんだからな」
窓をみつめたまま、理雄は小さく呟く。
「理雄さん、貴方がやってきたことを…わたくし達は許しませんわ」
「…救いや慰めの言葉を並べても意味が無いから、説教ってところか?」
完全に心を読まれていた。理雄は嘲笑しながら返す。
「オレは絶対に貴様らを許さない。…再び掴み取った幸せを奪ったんだからな。これから歩むかもしれなかった未来も…可能性も…」
「アンタは…自分の幸せのために、他の人が苦しんでも良いって言うの?」
鈴音は彼の言葉に反論をしたが…。
「じゃあオレは、目の前の希望すら掴む資格がなかったというのかよ?」
「違いますわ。他に…」
「方法があるってか。なら、言えよ」
セシリアも鈴音も、理雄の言葉に対する答えは見つからなかった。
「それは…」
「もう帰れよ!!!!!」
理雄は最後まで、彼女達の方向を見ずに終わった。
宇月は、部屋の中でずっとフォーゼドライバーをみつめていた。
脳裏に蘇るのは、憎悪に満ちた理雄の表情。
「ゾディアーツになって…幸せになったやつもいる…」
今まで宇月は、ゾディアーツはスイッチャーをどこまでも蝕んでいく脅威の存在だと思っていた。だが間違いなく、スコーピオンになって理雄は幸福を噛みしめていた。
そして自分は…その幸福を叩き潰した。
ゆりことの最後の会話よりも、その事実が重く圧し掛かった。
一夏も手を貸したのは同じだが、最後のトドメは間違いなく宇月である。
あの戦いを通じ、彼には疑問が浮かんできた。
「おれのやっている事は…本当に正しいんだよな…?」
一夏は、自身の行いに間違いはなかったと確信しているが…。
「理雄のやつを…他に救う方法は…無かったのかよ…」
やはり、後悔はあった。もしかすれば、理雄をスコーピオンの力から引き離したうえで、あの状態に戻させない方法があったのかもしれない…。
同室の箒も不安そうな面持ちで一夏を見ている。
「一夏…。だが、おまえ達のおかげで、ゾディアーツになってしまうかもしれない人は救えたと思う…」
「それはそうだろうけど…」
「よこせ、礼!」「おい、ボーデヴィッヒ!?」
ラウラは礼から、スイッチカバンを毟り取り、メテオにメールの文章を打ち始めた。
「嫁…おまえなら、手を貸してくれるだろう…!」
その内容は…。
~嫁、ラウラだ。宇月が自責で、塞ぎ込んでしまっている。力を貸してほしい~
「これで…」「よせ!」
送信ボタンを押す直前で、礼はスイッチカバンを取り返した。
「なぜ邪魔をするんだ!?」
「考えろ!メテオは俺と宇月以外に、正体を知られてはいけない!このメールで万が一、正体が知られたら…奴は戦えなくなる。それこそ力を貸せなくなるぞ!」
戦えなくなる理由は分からないが、これだけ正体を隠しているのだから、礼の言葉は納得がいく。ラウラは自身の行いの浅はかさを感じた。
「しかし…どうすれば…」
だが宇月が戦えないようでは、この学園をホロスコープスの脅威から守る事はできない。
メテオだけでは限界がある。
「そんなこと知るか。おれは30番31番のスイッチの調整を続ける」
礼は冷たく言い放ち、ラビットハッチの扉に向かった。
不意に立ち止まり…。
「だが、宇月を支えるのが仮面ライダー部…なんだろ?」
こう言い残して、再びラビットハッチの扉を開いた。
その頃…。
ヴァルゴの前に、リブラ、レオ、夏樹が集められた。
理由は、スコーピオンの脱落だ。ホロスコープスの中でも、ジェミニやアリエスを含めれば古参者である彼が脱落した事は、大きなダメージとなった。
「スコーピオンスイッチを回収しました」
「…ご苦労。すまなかったね」
夏樹の目の前で、レオがヴァルゴにスコーピオンスイッチを渡していた。
「嘘…スコーピオン様が、フォーゼ達に負けたの…!?」
夏樹はスコーピオンを尊敬していた。ゾディアーツになるチャンスを与え、ホロスコープスに覚醒するまで、ずっと指導をしてくれていたのだから。
ヴァルゴは残念そうに首を振る。
「理雄君は素晴らしい力を持っていたし、彼ほど私に対する忠誠心の強い者は居なかった。だが…フォーゼ達に敗北した以上、手を差し伸べる事はできない」
「え…裾迫君がスコーピオン様だったんですか!?」
結局は見捨てることになったが、ヴァルゴはそのことを嘆いていた。あんなに尽くすホロスコープスは他にいなかった。
「ピスケス…私としても、スコーピオンの無念は晴らしたい。だが今、私がフォーゼの前に現れることは出来ないから…」
「はい。スコーピオン様…ううん、理雄君の仇…絶対に討ち取って見せます!」
夏樹はスイッチを押してピスケスになると同時に、強い決意を持った。
彼女が去った後、リブラに声をかけた。
「まだ彼等は現れそうにも無いかな?」
「えぇ。ですが、いずれ必ず現れます。そのときこそ…このリブラの力で…」
ある謎の確認をした後に、レオのほうを向く。
「レオよ。新たな使徒覚醒のめぼしはあるのかな?」
「…山羊座の覚醒ならば、近いうちに」
静かに答えて、すぐに去っていった。
「…彼は私よりも力がある上に、スイッチを配る回数が少ないながらも、ホロスコープスを確実に覚醒させている…」
実はヴァルゴにとって、一番邪魔な存在はレオなのだ。自分の地位を脅かす存在であるのだから。
ただし忠義心は薄いが、言った事は全て応えてくれるため、もっとも信頼できる複雑な存在なのだ。
「一刻も早く十二使徒の中心…サジタリウスを覚醒させねば…」
礼はあれから緊急措置として、箒にフードロイドを託した。
「篠ノ之。フードロイドを頼めるか?」
「い、良いのか、礼?」
「宇月も戦えないんじゃ、おれ達がメテオの支援をするしかない。あの日の会話から、すでに魚座のピスケスも覚醒済みだ。黙っていても、こちらの都合など関係なくゾディアーツは現れる」
説明をしながら、バガミール、ポテチョキン、フラシェキーをとりだし、さらにもう一体のフードロイドを取り出した。
「この子は…?」
「スコップスイッチのフードロイドだ。名前は「ホルワンコフ」。地底の捜索もできる優れモノ。こいつ等の担当をして欲しい」
「あぁ、任せてくれ!」
箒にとって、フードロイド達と触れ合えるのは喜ばしい事である。すぐに受け入れた。
「バガちゃん、ポテさん、フラ君、ワンコ。改めてよろしく」
そういうと、フードロイドは嬉しそうに小躍りするような仕草を見せた。
「まず偵察だ。バガちゃん、魚座を探してくれ」
箒の言葉に反応して、バガミールは学園の偵察に向かった。
「さて…30番31番のスイッチは…」
礼は未調整のスイッチをみつめている。
そこへ…。
「つっちー!」
「ぐあぁ!?」
本音が現れ、礼に飛びついた。
「わたしも手伝う~」
「どけ!おまえは仮面ライダー部ですらないだろうが!」
シャルロットは紫苑と共に、理雄のことを思い出していた。
「僕…なにも分かってあげられなかった…」
「紫苑が悪いわけじゃないよ。でも…理雄とは、もっと違う形で会いたかったね…」
紫苑は恐怖の対象としてみていた理雄だが、彼の心はそうではなかったのかもしれない。そのことに気づいていたら、あの末路は無かったのかもしれない。
「僕には…何かできることってある?」
「…まず、ボクらが落ち込まないで元気を出すことかな。そうすれば宇月も…」
言いかけたところで、シャルロットはあることを思い出す。
「あ…そうだ!」
「どうしたの?」
此処を守ってくれるのは、フォーゼとメテオだけではない。
「もう一人いたよ、助っ人の仮面ライダー!」
そう…仮面ライダー龍騎だ。
千冬と竜也は、教務室で向かい合わせに座っている。
「竜也君…。私は彼らを近くで見守る事ができない」
「やっぱり、心配ですよね。たった一人の家族や、その友達…」
彼女は時折、竜也に心の奥底を話していた。本当ならば、彼女が仮面ライダー部の顧問を担いたいほどだったが、それも出来なかった。
結局は山田に押し付けてしまっているのだ。
「頼む。私の弟や…仲間を見守ってやって欲しい」
「はい。おれも彼等の支えになりたい。おれも昔、そうやって乗り越えてきた戦いがありますから」
千冬は竜也が龍騎だと知っている。都市伝説の真相や、確認されている正体不明の仮面ライダーの詳細なども知らされ、一夏達の知らないところで、着実に仮面ライダーに近付いているのだ。
「龍崎先生!」
突如、そこへセシリア、鈴音、シャルロット、本音がやってきた。
「君達は…仮面ライダー部の仲間達だね」
「お願いします!龍騎として力を貸してください!」
全員が頭を下げる。今、メテオの正体も分からないなか、頼れる仮面ライダーは龍騎だけなのだ。
だが、竜也の目は少し厳しいものになった。
「…おれにどうして欲しい?」
「え…フォーゼが戦えないから、代わりにゾディアーツと…」
「じゃあ、駄目だ」
「な…どうしてよ!?」
鈴音は拒否された理由が分からず、竜也を問い詰める。
「人々を守ってくれるのが…仮面ライダーだとお聞きしましたわ!」
「確かに、おれはその分類だ。でも、君たちはフォーゼが戦えないから、おれに頼むのか?」
「それは…」
答えに詰まった全員の様子を見ながら、竜也は小さいがはっきりと言い放つ。
「仮面ライダーだって人間だ。悩みもするし傷つく。君たちの行動は…フォーゼが使えないから、他の仮面ライダーに頼っているように感じる」
「そ、そんな…そんなこと!」
それだけは違うと思っている。否定しようとした本音の背後にあゆが現れた。
「ボクも…昔は竜也くんに頼ってばかりだった。でもね、ボクにだって竜也くんを支える事ができた。今のキミたちがすることは…他の仮面ライダーに頼るんじゃなくて、フォーゼがまた立ち上がれるように、励ますことじゃないのかな?」
この一言で気付かされた。なぜ、宇月を奮い立たせようとしなかったのか。
今一番、彼が救いを求めているはずなのに。
「…失礼しましたわ」「それと…ありがと!」
セシリアと鈴音が頭を下げた後、全員で教務室から出て行った。
「…織斑先生。おれはこういった感じで彼等を支えていくつもりです。龍騎として関わるのは、極力さけていきます」
「…ありがとう。それで頼む」
千冬が静かに頭を下げたのに対し、あゆと竜也は明るい笑顔を見せた。
「いいですよ。ライダー同士、助け合いですから!」
そして…。
「出てきなさいよ、フォーゼ!」
夜の学園にゾディアーツが現れた。
バガミールからの報告があり、動けない宇月とスイッチ調整で立て込んでいる礼を除いた仮面ライダー部のメンバーがやってきた。
「あれは…」「不良男やゴキブリと同じマント…!」
「支援者ね。フォーゼは何処!?」
完全に敵対心をむき出しにして、怒り心頭状態のゾディアーツ。
身を包んでいたクロークを脱ぎ捨てた姿は、鱗のような鎧を纏っている。
「フォーゼは療養中だよ。だから、今はボク達が頑張る」
「笑えない冗談ね。アンタ達がホロスコープスに太刀打ちできると思ってんの?」
シャルロットが強く言い放つも、ピスケスはそれを鼻で笑う。
「だが、その意志は見上げたものがある」
不意に聞こえた声。
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァン!
その場に、メテオもやってきた。
「待っていたぞ、嫁!」「…諦めろよ、いい加減」
呆れ口調でラウラにツッコミを入れたメテオは、そのゾディアーツをまじまじとみつめる。
「そのクローク…おまえが新たなホロスコープスか?」
「ピスケスよ。よろしく、メテオ」
どちらも睨み合い、攻撃の出方を窺っている。
そして…。
「ハアアアアァッ!」
「アチャアアアアアアァッ!」
先に動いたのはピスケスだった。その直後、メテオも動き出した。
持っていた槍をメテオに振るう。
「甘い!アタアアァッ!」
バシャッ…!
「な…!?」
「甘いのは、そっちよ!」
彼女の動きを読み、拳を繰り出したのだが、ピスケスは身体を液状化させて避けた。
そして槍の部分だけを元の状態に戻し、メテオに突き刺した。
ドガアアァッ!
「ヌアアアアアアァッ!」
全く動きの読めない攻撃だったため、メテオはまともに受けて地面を転がる。
「スコーピオン様の仇…まずアンタから討たせてもらうわよ!」
「おい、しっかりしろメテオ!」
一夏が抱き起こす。メテオはその中でも、戦略を巡らせる。
「すまない一夏…。相手が水ならば…おい、エレキスイッチは在るか!?」
「それなら、箒が…」
一夏の目線の先には、バガミールを抱えた箒。すぐ横にはスイッチカバンもあった。
「渡せ、箒!」
「わかった!」
箒はメテオにエレキスイッチを投げて渡した。
<ELEKI-ON READY?>
ソケットへ挿入してオンにし、身体中にエレキの電撃を纏う。
メテオはフォーゼのようにステイツチェンジが出来ないのだが、特殊なアストロスイッチの力は身体に反映させることができるのだ。
「ゲームの理論ならば、水には電撃だ…!ホワチャアアアァッ!」
液状化しているピスケスに電撃の拳を放つ。
バリイイイィィッ!
「キャアアアァッ!?」
作戦通りだ。電気はピスケスの身体にめぐり、強烈な一撃を与えられた。
ピスケスの身体は元の形に戻り、痺れている為に動く事もままならない。
「リミットブレイクだ!」
天球儀を回し、電撃とコズミックエナジーを更に強く纏う。
<ELEKI LIMIT-BREAKE>
「オオオオオォ…アチャアァァァァァッ!」
メテオストライクに電撃を込めた一撃をピスケスに放とうとするが…。
「フン!」
ドガアアアアアアアァ!
「ウアアアアアァッ!?」「め、メテオ!?」
突如、何者かに邪魔をされた。そこにいたのは…。
「ヴァルゴ様の命だ。手を貸そう」「リブラ様!」
リブラだった。クロークを脱いでディケを地面に叩きつける。
「ちっ…一気にホロスコープス2体か。しかも、片方はホロスコープス古参のリブラ…」
状況は一気に悪くなった。
「やっぱ、見てらんない!」「わたくし達も!」「助けるぞ、嫁!」
一夏、セシリア、鈴音、シャルロット、ラウラがISを展開して、メテオを庇うように立ち塞がる。
「バカか、離れろ!」「バカはそっちだ!一人で行っても負けるだけだぞ!?」
メテオが警告するも一夏が反論し、他の4人も逃げる様子を見せなかった。
「…一人じゃないわけか。手を貸してくれ、仮面ライダー部!」
「了解だよ!」「ほんと…礼もこのくらい協力的だったら良いのに…」
メテオと一夏が中心に、他の4人が攻撃を開始した。
「フフ…それで勝てるかな?」
リブラは瞬間的に高速移動を連続使用する事で、攻撃を避け続ける。
「ふん!」「はあああぁっ!」
ラウラのワイヤーブレードとシャルロットのショットガンがピスケスを狙うも、その攻撃は全く通用しない。
身体を液状化しているために、弾丸などは意味を成さないのだ。
「無駄弾よ。数撃っても、あたりはしない!」
「ならば、こちらはどうです!?」「喰らいなさぁい!」
次にセシリアのスターライトmkⅢと鈴音の龍砲が襲う。
この攻撃はエネルギー波であり、液状化していてもダメージは在る。
ドゴオオオオォ!
「クッ…。そうこなくちゃね。スコーピオン様を倒した奴らが弱かったら、すごく悔しいし!」
だが、ピスケスは返って好戦的な様子を隠さない。
そこへ…。
<3>
「こ、この音声…!」
<2>
「まさか…!」
<1>
「宇月!?」
「変身っ!」
全員が振り返ると、フォーゼBSがこちらへ走ってきていた。
「はあああああああああぁっ!」
「待ってたわよ、フォーゼ!」
ピスケスは彼を見るなり、標的を変更して襲い掛かってくる。
<FREEZE-ON>
「どぉりゃああっ!」
フリーズモジュールを起動し、右足から強い冷気を放つ。
ピキィ…!
「え…嘘!?」
ピスケスは液状化して攻撃するように準備をしていたため、身体が凍り付いて動けなくなってしまった。
「喰らええええええええぇっ!」
「こ、このォ…!」
握り締めた拳をピスケスに向けるが…。
~死ぬまで呪ってやる~
「う…く…くそ…やっぱり…」
あのときの後悔から抜けられなくなってしまい、拳をぶつけることが出来なくなった。
「怯んじゃって…とんだ臆病者ね!」
ズバアアァ!
「がはあああああぁっ!?」
隙だらけになったフォーゼBSを槍で切り裂いたピスケス。
気をそがれていた彼は吹き飛ばされてしまう。
彼の様子を見ていたリブラは不敵に笑う。
「迷いが見えた戦士は弱くなる。ピスケス、一旦退却だ」
「な…どうしてですリブラ様!?今なら…」
「良いから。とても面白い案が思い浮かんだ…」
リブラの言葉にしぶしぶ頷き、ピスケスは彼と共に姿を消した。
残された者達のなかで、メテオはラウラに歩み寄る。
「ラウラ。フォーゼは見たとおり、まともに戦えない。支えるのはおまえ達の役目だ。頼む、これはおれに出来る事ではない」
それだけ言うと、青い発光体になって去っていった。
「分かっている」
一旦、宇月と礼の部屋に戻ってきた一同。
礼は、難しそうな表情でパソコンをみつめている。
「駄目だ…。30・31番のスイッチがまともに起動しない」
「そんなに難しいの…?」
シャルロットが聞くと、礼は赤と青のアストロスイッチを投げて渡す。
素体のスイッチからちゃんと変化している。
「なんだ…調整は終了しているんじゃ…」
「いや、それで起動させても、エナジーが一極化されて全身に行き渡らせることができない。これは2つセットで発動する、ステイツチェンジのスイッチだからな」
そう、このスイッチはマグネットスイッチ。
だがエレキ以上にエナジーが強力すぎて、現時点ではオンにしても良い効果は得られないだろう。
「う~ん…難しいことはわかんないけど、そのエネルギーを制御できれば良いんだよね~?」
「簡単に言うなノロマ」
「あ~!またノロマに戻った~」
確かに、本音の案は礼も考えたが、それを制御する物質が存在しない。それどころかアストロスイッチを改造するなど、言語道断であるのだ。
その間に、一夏と箒がやってきてバガミールから印刷した映像を置く。
それには、スイッチを持つ女子生徒が映っていた。長いストレートの髪に凛々しい瞳が印象的である。
「ピスケスのスイッチャーはこの娘だ。「尾坂夏樹」。3組の生徒でクラス代表…」
ピスケスの夏樹は3組の生徒であり、クラス代表である。専用機は持っていないが、ISの操縦の実力は代表候補生にも劣らないという噂だ。
「ホロスコープスになる奴は、少なからずISにも実力がある奴ばかりだな。専用機持ちのボーデヴィッヒや裾迫、そしてクラス代表のこいつ…」
ふと、礼はこのメンバーを見渡す。
「そういえば、宇月とおれと篠ノ之以外は全員、専用機持ちか。織斑はクラス代表で残りは代表候補生…」
「な、なんだよ」
一夏は礼の視線が気に入らず、文句を言うと…。
「スイッチを押し付けられそうになるかもしれないから、気をつけておけ」
「だ、だれが…!」
「わたしは…理雄に渡されそうになった」
以外にも、箒が手を挙げた。
礼が一気に目つきを悪くする。
「だが…断固拒否した。それよりも、気になることが…」
「気になること…?」
「そのやり取りの中で…ヴァルゴに逢った。ISを機能停止させることが目的らしい…」
「な、なんだと!?」
礼はその言葉に驚愕した。
「どうしたんだ…?」
「ヴァルゴは、ホロスコープス以外には姿すら見せなかった。事実、宇月でさえ見てなかったほどだぞ!」
ヴァルゴは自身の姿をホロスコープス以外に見せるのは極力避けている。見せるのは、ホロスコープスへの覚醒によっぽど素質があるものくらいだ。
礼も一度しか顔を見たことがない。スイッチャーなどそれこそ見られるはずがないのだ。
「それで…やつはなんて…」
「理雄に、わたしにスイッチを渡すなと指示していた。それにわたしのことを箒と親しみを込めて呼んでいた」
「じゃあ…」
「行方不明になっているわたしの姉…篠ノ之束が…ヴァルゴかもしれない…」
礼は彼女の推理に少し首を捻る。
「どうした?」
「ならば何故、篠ノ之博士はISを作っている?作っている者が停止させるなど、子を殺すようなものだぞ」
盲点だった。たしかに束とヴァルゴは、行動原理が矛盾している。
つまり、この2人が同一人物で在る可能性は低い。
「とにかく、今はピスケスだな。ヴァルゴなんて相手をしていれば、瞬く間に殺されるだろう」
山田は宇月達の元へ急いでいた。
「今日こそ、ちゃんと部活に出ないと…!」
いつも会議や職務で部活の顧問として顔出しが出来ない現状、なんとしても打破したい。
そこへ…。
「あ、山田先生!」
あゆが現れる。
「月宮先生?えっと…今日は部活の顧問として…」
「協力して欲しい事が…仮面ライダーの事です!」
同時刻。
IS学園の近くでストリートミュージシャンのような姿をした男性がアコースティックギターをかき鳴らしている。
随分とヘタクソだ。お世辞にも上手いとはいえない。
「ふぅ~!真夜中の一曲は情熱的でイイネ!」
「時は来たか?」
そこへ、レオがやってくる。その威圧感は男も感じ取り、一気に縮こまる。
「お、おう!もうカンペキさ!」
怯えつつも取り出したのは…ホロスコープススイッチ。
それを押すと…。
「誕生したな」
そこには、山羊座の使徒「カプリコーン・ゾディアーツ」が現れた。
「じゃあ、飛ばしてくぜ!IS学園に殴り込みだァ!」
そう叫びながらエレキギター型の武器「多弦琴ウルク」をかき鳴らし続けた…。
続く…。
次回!
もう山羊座まで…!?
オレの情熱的な一曲、迷惑だと思うなら聞いてからにしな!
アンタも一緒に、スコーピオン様の仇を…!
あの音は…催眠効果がある!
マグフォンだ!
これでも…!
第16話「山・羊・入・魂」
青春スイッチ・オン!
キャスト
城茂宇月=仮面ライダーフォーゼ
織斑一夏
篠ノ之箒
セシリア・オルコット
鳳鈴音
???=仮面ライダーメテオ
ラウラ・ボーデヴィッヒ
辻永礼=アリエス・ゾディアーツ
布仏本音
シャルロット・デュノア
白石紫苑
織斑千冬
山田真耶
龍崎竜也=仮面ライダー龍騎
月宮あゆ
尾坂夏樹=ピスケス・ゾディアーツ
???=カプリコーン・ゾディアーツ
裾迫理雄
???=リブラ・ゾディアーツ
???=レオ・ゾディアーツ
???=ヴァルゴ・ゾディアーツ
あとがき
如何でしたか?
夏樹=ピスケスの行動原理は…スコーピオンの敵討ちですね。ちなみに理雄に恋をしていた裏設定ありです。
意外かもしれませんが、あのホロスコープスで、リブラ以外はスコーピオンの脱落を悲しんでます。まぁ、再び迎え入れる事はできませんが…。
宇月はなんとか立ち直ろうと努力しますが、後悔や理雄の言葉でまだ完全に吹っ切れません…。次々回で吹っ切れると良いなぁ…という予定です。
もう駆け足で出します、ホロスコープス!次は山羊座です!
スイッチャーの名前は、ジャマール首領ガオームさんの案を採用させていただいてます!
ちなみに、ジャマールさんには水瓶座も考案していただいており、蟹座は超人機(断空我)さんに考案いただきました!
この場を借りまして、本当にご協力、ありがとうございました!
次回もお楽しみに!